みらい(新人医療事務)
精神科病棟のカルテを見ていたら「入院生活技能訓練療法」っていう項目があったんですけど、これって何をする治療なんですか?
あおい(元・医療事務)
入院生活技能訓練療法(区分番号I008)ですね。入院中の精神疾患の患者さんに対して、服薬の続け方や金銭管理、対人関係、作業能力といった生活面のスキルを、行動療法の理論に基づいて訓練する専門療法です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では「精神科専門療法」の区分に位置づけられています。
みらい(新人医療事務)
「行動療法の理論」って、具体的にはどんなやり方をするんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知には、こう定義されています。「入院生活技能訓練療法とは、入院中の患者であって精神疾患を有するものに対して、行動療法の理論に裏付けられた一定の治療計画に基づき、観察学習、ロールプレイ等の手法により、服薬習慣、再発徴候への対処技能、着衣や金銭管理等の基本生活技能、対人関係保持能力及び作業能力等の獲得をもたらすことにより、病状の改善と社会生活機能の回復を図る治療法をいう。」
あおい(元・医療事務)
観察学習やロールプレイを使いながら、患者さんが退院後の生活で困らないようにスキルを身につけてもらう、というイメージです。
点数区分(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示では、入院期間に応じて2段階に分かれています。条文を確認すると、「I008 入院生活技能訓練療法 1 入院の日から起算して6月以内の期間に行った場合 100点 2 入院の日から起算して6月を超えた期間に行った場合 75点 注1 入院中の患者について、週1回に限り算定する。2 入院生活技能訓練療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、所定点数に含まれるものとする。」とされています。
あおい(元・医療事務)
この告示のとおり、点数は次のように整理できます。
| 区分 | 入院期間の目安 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 | 入院の日から起算して6月以内の期間に行った場合 | 100点 |
| 2 | 入院の日から起算して6月を超えた期間に行った場合 | 75点 |
みらい(新人医療事務)
6ヶ月を境に点数が変わるんですね。カウントを間違えると誤請求になりそうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。起算点は「入院の日」なので、療法を開始した日ではなく、入院した日から数える点に注意してください。長期入院の患者さんほど区分2(75点)に該当しやすくなります。
対象患者・対象医療機関
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
「入院中の患者であって精神疾患を有するもの」が対象です。ただし留意事項通知には、対象から除く患者についての記載もあります。「複数の患者を対象とする場合は、1回に15人に限る。ただし、精神症状の安定しない急性期の精神疾患患者は、対象としない。」とされています。
あおい(元・医療事務)
つまり、精神症状が不安定な急性期の患者さんは対象外とされています。生活技能訓練は、ある程度病状が落ち着いてから、退院後の生活を見据えて行う訓練という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
医療機関側の条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(2)に、実施できる医療機関と実施者の条件が書かれています。「精神科を標榜している保険医療機関において、経験のある2人以上の従事者が行った場合に限り算定できる。この場合、少なくとも1人は、看護師、准看護師又は作業療法士のいずれかとし、他の1人は精神保健福祉士、公認心理師又は看護補助者のいずれかとすることが必要である。なお、看護補助者は専門機関等による生活技能訓練、生活療法又は作業療法に関する研修を修了したものでなければならない。」
あおい(元・医療事務)
精神科を標榜していることに加えて、経験のある2人以上の従事者が同時に関わる体制が前提です。
実施する人員体制の組み合わせ
みらい(新人医療事務)
「2人以上」の中身がちょっと複雑ですね。整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
条文の内容を、次の表にまとめました。
| 立場 | 該当する職種 | 備考 |
|---|---|---|
| 1人目 | 看護師・准看護師・作業療法士のいずれか | 経験のある従事者であること |
| 2人目 | 精神保健福祉士・公認心理師・看護補助者のいずれか | 看護補助者は生活技能訓練・生活療法・作業療法に関する研修修了が必要 |
あおい(元・医療事務)
看護補助者を2人目に充てる場合は、「専門機関等による研修を修了しているか」を必ず確認してください。研修修了の記録が無いと、算定要件を満たしていないと判断される可能性があります。
人員要件の確認漏れに注意
「経験のある2人以上の従事者」という表現には、明確な経験年数の基準が留意事項通知の本文には示されていません。院内で「経験あり」とする根拠(研修歴・従事年数の記録など)を整理しておくことをおすすめします。
算定回数・タイミングの注意
みらい(新人医療事務)
週に何回でも算定していいわけじゃないですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、週1回までです。告示の注1に「入院中の患者について、週1回に限り算定する。」とはっきり書かれています。
あおい(元・医療事務)
さらに、実施時間や人数についても留意事項通知に規定があります。「対象人数及び実施される訓練内容の種類にかかわらず、患者1人当たり1日につき1時間以上実施した場合に限り、週1回に限り算定できる。」とされています。
みらい(新人医療事務)
1時間に満たない実施だと算定できないということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。患者1人あたり1日につき1時間以上の実施が条件になっています。複数の患者さんを対象にグループで行う場合は「1回に15人まで」という人数上限もあわせて確認してください。
他の精神科専門療法との併算定
みらい(新人医療事務)
同じ日に他の精神科の治療もしていたら、それぞれ算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは注意が必要です。告示の注2には「入院生活技能訓練療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、所定点数に含まれるものとする。」とあり、留意事項通知(7)にも「入院生活技能訓練療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、別に算定できない。」と明記されています。
あおい(元・医療事務)
つまり同一日に他の精神科専門療法を行っても、入院生活技能訓練療法の所定点数に含まれてしまい、別立てでは算定できません。実施日をずらすかどうかは治療計画の判断になりますが、算定上はこの制限を踏まえておく必要があります。
併算定の取り漏れ・請求誤りに注意
同一日に複数の精神科専門療法を実施したレセプトでは、入院生活技能訓練療法と重複算定していないかを確認しましょう。所定点数に含まれる関係にあるため、両方を別立てで請求すると査定の対象になり得ます。
記録・その他の実施要件
みらい(新人医療事務)
実施した記録は何か残す必要がありますか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知(6)に「入院生活技能訓練療法を実施した場合はその要点を個々の患者の診療録等に記載する。」と記録義務が定められています。
あおい(元・医療事務)
実施内容の要点を診療録に記載しておくことが必要です。また、消耗材料については「当該療法に要する消耗材料等については、当該保険医療機関の負担とする。」と、医療機関側の負担とすることも明記されています。
あおい(元・医療事務)
あわせて、この療法に従事する作業療法士や看護師等の勤務時間の扱いについても留意事項通知(5)に規定があります。「当該療法に従事する作業療法士は、精神科作業療法の施設基準において、精神科作業療法に専従する作業療法士の数には算入できない。また、当該療法に従事する看護師、准看護師及び看護補助者が従事する時間については、入院基本料等の施設基準における看護要員の数に算入できない。」
あおい(元・医療事務)
つまり、この療法に携わった時間は、精神科作業療法や入院基本料など「他の施設基準の人員配置」にはカウントできません。人員配置の計算を院内で行う際は、この点を混同しないよう注意してください。
施設基準・届出の要否
みらい(新人医療事務)
事前に地方厚生局への届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、入院生活技能訓練療法そのものについて、個別の施設基準の届出書式を提出するという記載は確認できていません。求められているのは、上で説明した「経験のある2人以上の従事者」という人員要件を、実施のたびに満たしているかどうかです。
届出要否は自院・審査支払機関で最終確認を
届出の要否や運用の詳細は、地方厚生局への確認や院内の施設基準台帳との突合が必要です。当サイトの資料範囲で「届出不要」と断定しているわけではなく、確認が必要な項目として整理しています。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定(令和6年度)から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の一次資料の範囲では、入院生活技能訓練療法の点数・算定要件・人員体制の要件について、前回改定(令和6年度)からの変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。区分1が100点、区分2が75点という2段階の点数構成、週1回の算定制限、経験のある2人以上の従事者による実施という骨格は、当サイトで確認できる令和8年度の条文上、そのまま維持されています。
「変更なし」も点数だけでなく人員基準まで確認
改定のたびに点数だけを見て「変わっていない」と判断するのは危険です。今回は施設基準・人員要件・記録要件も含めて一次資料を確認したうえで、大きな変更点は見当たらないという整理です。最新の告示・通知が更新されていないか、自院でも定期的に確認しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
うちの病棟で算定候補になるか、順番に確認したいです。
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認してみてください。
自院で確認する順番
- 対象患者が「入院中の精神疾患を有する患者」であり、精神症状の安定しない急性期ではないかを確認する
- 精神科を標榜する医療機関であり、経験のある2人以上の従事者(看護師・准看護師・作業療法士のいずれか1人+精神保健福祉士・公認心理師・看護補助者のいずれか1人)を配置できるか確認する
- 看護補助者を担当させる場合は、生活技能訓練・生活療法・作業療法に関する研修修了の記録があるかを確認する
- 患者1人あたり1日1時間以上の実施ができているか、複数患者の場合は1回15人以内かを確認する
- 同一日に他の精神科専門療法を行っていないか、行っている場合は所定点数に含まれる関係になることを確認する
- 入院日からの経過期間(6月以内か6月超か)に応じて、区分1(100点)か区分2(75点)かを確認する
- 実施の要点を診療録に記載し、週1回の算定制限を超えていないかを確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって何かありますか?
あおい(元・医療事務)
よく挙がるのは次のようなケースです。
よくある取り漏れ・誤請求のパターン
- 入院日からの経過期間を数え間違え、6月を超えているのに区分1(100点)で請求してしまう
- 看護補助者を2人目の従事者としているのに、研修修了の記録が院内に残っていない
- 同一日に他の精神科専門療法を実施し、両方を別立てで算定してしまう
- 患者1人あたりの実施時間が1時間未満なのに算定してしまう
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。