みらい(新人医療事務)
精神科の病棟に配属されたんですけど、レセプトに「精神科作業療法」ってよく出てきます。これってどんな項目なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科作業療法(区分I007)は、精神疾患を有する患者さんの社会生活機能の回復を目的として、作業療法士が実施する療法を評価する項目です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では「1日につき220点」とされていて、精神科病棟がある医療機関では日常的に算定される項目のひとつです。
みらい(新人医療事務)
「作業療法」というと、リハビリの作業療法士さんがやる訓練のイメージなんですけど、精神科でも同じ職種の方が担当するんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。担当するのは作業療法士で、内容は創作活動や日常生活活動、通信・コミュニケーション活動、余暇活動、職業関連活動など幅は広いのですが、目的はあくまで精神疾患を有する患者さんの社会生活機能の回復です。単なるレクリエーションや趣味活動として行っているだけでは、算定候補になるかどうかは慎重な確認が必要になります。
精神科作業療法とは
みらい(新人医療事務)
この項目、施設基準の届出が必要なんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。告示の注書きでは「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に算定する」とされています。つまり、作業療法士を配置しているだけでは足りず、施設基準を満たしたうえで届出を行っていることが前提です。届出済みであれば算定候補になりますが、届出前の医療機関ではまず施設基準の充足から確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
具体的にはどんな療法をイメージすればいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「精神科作業療法は、精神疾患を有する者の社会生活機能の回復を目的として行うものであり、実施される作業内容の種類にかかわらずその実施時間は患者1人当たり1日につき2時間を標準とする」と説明されています。作業内容そのものより、社会生活機能の回復という目的と、記録に残る実施時間が算定候補になるかどうかの重要な手がかりになります。
対象になる医療機関・実施する職種
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関で算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準では「精神科病院又は精神病棟を有する一般病院にあって、入院基本料(特別入院基本料を除く。)、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料又は精神科地域包括ケア病棟入院料を算定する入院医療を行っていること」とされています。つまり、対象は精神科病棟を有する入院医療機関が前提です。ただし当分の間、精神病棟入院基本料の特別入院基本料を算定している場合も算定できることとされているので、この点も個別に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
精神科の外来だけをやっているクリニックだと対象にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の記載を見る限り、入院医療を行っていることが前提になっているので、外来のみの医療機関では対象外の可能性が高いといえます。ただし治療上必要があれば病棟や屋外など専用施設以外で実施することも認められているので、実施場所の柔軟性と、対象医療機関の要件は分けて考える必要があります。最終的には自院の入院料の算定状況とあわせて確認してください。
対象医療機関を確認するときのポイント
入院料の種類: 入院基本料(特別入院基本料を除く)、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料、精神科地域包括ケア病棟入院料のいずれかを算定しているか。 特別入院基本料の経過措置: 当分の間、特別入院基本料を算定している場合も算定候補になり得るとされています。 作業療法士の配置: 専従者として最低1人の作業療法士が配置されているか。
点数(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 精神科作業療法(I007) | 1日につき | 220点 |
あおい(元・医療事務)
告示の原文では「I007 精神科作業療法(1日につき) 220点」とされ、続けて「注 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に算定する」と注記されています。点数区分は1本のみで、実施時間や患者数によって細分化されているわけではありません。
みらい(新人医療事務)
1日に何回も実施したら、その分算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、「1日につき」の算定なので、同じ日に複数回実施しても220点を超えて算定候補になるわけではありません。1日あたりの実施時間や取扱い患者数には別の基準があるので、次の施設基準・留意事項の部分で確認していきます。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準は具体的にどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつかの要件があります。ひとつずつ確認していきましょう。
精神科作業療法に関する施設基準(主な項目)
作業療法士の配置: 「作業療法士は、専従者として最低1人が必要であること」とされています。ただし精神科作業療法を実施しない時間帯に、精神科ショート・ケアや精神科デイ・ケアなどに従事することは差し支えないとされています。 患者数の標準: 「患者数は、作業療法士1人に対しては、1日 50 人を標準とすること」とされています。 専用施設の広さ: 「作業療法を行うためにふさわしい専用の施設を有しており、当該専用の施設の広さは、作業療法士1人に対して 50 平方メートル(内法による測定による。)を基準とすること」とされています。
みらい(新人医療事務)
専用施設って、精神科作業療法以外に使っちゃいけないんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準では「当該専用の施設は、精神科作業療法を実施している時間帯において『専用』ということであり、当該療法を実施する時間帯以外の時間帯において、他の用途に使用することは差し支えない」とされています。常時専用というより、実施時間帯に専用であることが求められている点がポイントです。
みらい(新人医療事務)
器械・器具についても何か基準があるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。「当該療法を行うために必要な専用の器械・器具を対象患者の状態と当該療法の目的に応じて具備すること」とされ、代表的な諸活動として創作活動(手工芸、絵画、音楽等)、日常生活活動(調理等)、通信・コミュニケーション・表現活動、各種余暇・身体活動、職業関連活動等が挙げられています。どのような活動を用意しているかも、施設基準を満たしているかの確認材料になります。
施設基準は複数項目の同時充足が前提
作業療法士の専従配置・患者数の標準・専用施設の広さ・器械器具・対象医療機関の入院料要件は、いずれか1つを満たせば足りるものではなく、すべてを満たしていることが前提とされています。1項目だけを確認して「対象」と判断しないよう注意が必要です。
届出に関する事項
みらい(新人医療事務)
届出はどうやって出すんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の届出に関する事項として、「精神科作業療法の施設基準に係る届出は、別添2の様式 45 を用いること」とされています。あわせて「当該治療に従事する作業療法士の氏名、勤務の態様(常勤・非常勤、専従・非専従、専任・非専任の別)及び勤務時間を別添2の様式4を用いて提出すること」「当該治療が行われる専用の施設の配置図及び平面図を添付すること」も求められています。
みらい(新人医療事務)
届出さえ出せば、その後は特に確認しなくても大丈夫ですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。届出は「その時点で基準を満たしている」ことの申告なので、その後に作業療法士の配置が専従でなくなったり、患者数が標準を大きく超えたりすると、実態が基準からずれてしまう可能性があります。届出済みであれば算定候補にはなりますが、実施体制が継続して基準どおりかどうかは、定期的な確認が必要です。
算定できる時間・人数の目安
みらい(新人医療事務)
実施時間や患者数にも基準があるんでしたよね?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知に記載があります。
実施時間・患者数の標準(留意事項通知)
実施時間: 「実施される作業内容の種類にかかわらずその実施時間は患者1人当たり1日につき2時間を標準とする」とされています。 取扱い患者数: 「1日当たりの取扱い患者数は、概ね 25 人を1単位として、1人の作業療法士の取扱い患者数は1日2単位50 人以内を標準とする」とされています。 実施場所: 「治療上の必要がある場合には、病棟や屋外など、専用の施設以外において当該療法を実施することも可能である」とされています。
みらい(新人医療事務)
記録はどう残せばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
「精神科作業療法を実施した場合はその要点を個々の患者の診療録等に記載する」とされています。実施時間・内容の要点が診療録に残っていないと、220点を算定していても根拠が確認できない状態になってしまいます。また「当該療法に要する消耗材料及び作業衣等については、当該保険医療機関の負担とする」ともされているので、費用面の扱いもあわせて確認しておくとよいでしょう。
標準を超える運用は要確認
実施時間2時間・取扱い患者数1日50人はいずれも「標準」という表現で示されています。標準を大きく超える運用が常態化している場合は、施設基準を満たしているといえるかどうか、自院での確認が必要です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している令和8年度の告示・留意事項通知の範囲では、精神科作業療法(I007)の点数(220点)・施設基準について、前回改定(令和6年度)からの明示的な変更点の記載は確認されていません(確認日: 2026年8月)。実施時間2時間・患者数50人以内という標準や、作業療法士の専従配置・専用施設の要件も、同じ内容で示されています。
みらい(新人医療事務)
じゃあ今までどおりの運用で大丈夫そうですね。
あおい(元・医療事務)
現時点の一次資料の範囲ではそう見えますが、改定のたびに疑義解釈や訂正通知で細部が追加されることもあります。「変更がない」という情報自体も年度が経つと古くなるので、自院で確認する際は必ず最新の告示・通知にあたるようにしてください。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
結局、自院ではどんな順番で確認すればいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこの順番で見ていくとわかりやすいです。
自院で確認する順番
入院基本料等(特別入院基本料を除く入院基本料、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料、精神科地域包括ケア病棟入院料のいずれか、または当分の間の特別入院基本料)を算定する入院医療を行っているか確認する 作業療法士が専従者として最低1人配置されているか確認する 専用施設の広さ(作業療法士1人あたり50平方メートルを基準)と、必要な器械・器具の備えを確認する 施設基準の届出(様式45・様式4・配置図・平面図)を提出済みか確認する 実施時間(患者1人1日2時間を標準)・取扱い患者数(作業療法士1人1日50人以内を標準)が標準の範囲で運用されているか確認する 診療録に実施の要点が記載されているか確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としがちなポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
見落としやすいケース
専用施設の目的外使用の誤解: 「常に他の用途に使ってはいけない」と誤解して届出を諦めてしまうケースがありますが、実施時間帯以外の他用途使用は差し支えないとされています。 診療録への記載不足: 実施時間・要点の記載が不十分で、220点を算定していてもその根拠が診療録から確認しづらいケースがあります。 外来のみの医療機関での誤算定: 施設基準は入院医療を行っていることが前提のため、外来のみの医療機関で算定してしまっていないか確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
逆に、取り漏れてしまうケースもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。作業療法士が精神科作業療法以外の時間帯に精神科ショート・ケアやデイ・ケアなどに従事しているケースで、「専従配置が崩れているのでは」と誤解して届出自体を見送ってしまう、という取り漏れの典型例があります。実施時間帯が異なれば専従として届け出ることも可能とされているので、勤務の態様を整理したうえで検討する価値があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。