みらい(新人医療事務)
精神科のクリニックさんから「重度認知症患者デイ・ケア料って、うちでも算定候補になりますか?」って聞かれたんですけど、正直あまり馴染みがなくて…。どんな加算なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
重度認知症患者デイ・ケア料(区分I015)ですね。精神症状や行動異常が著しい認知症の患者さんに対して、心身機能の回復や維持を目的に、日中(または夜間ケアを含む)まとまった時間のケアを提供したときに算定する診療料です。令和8年度の点数表では1日につき1,040点が設定されています。
みらい(新人医療事務)
「精神症状や行動異常が著しい」というのは、具体的にどのくらいの状態を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」がランクMに該当する患者さんが対象とされています。ランクMは、著しい精神症状や周辺症状、あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態を指す区分です。単に「認知症がある」というだけでは対象にならず、行動・心理症状(BPSD)が強く出ている患者さんが想定されている点は、まず押さえておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
なるほど…対象がかなり絞られているんですね。医療機関側の条件はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが算定の大前提です。精神科を標榜する医療機関で、専用の人員・専用施設を用意し、施設基準の届出を済ませていることが必要になります。詳しくは後ほど施設基準のところで整理しますね。
対象になる患者・場面は?
みらい(新人医療事務)
対象患者のイメージはつかめました。実際にどんな場面で使う診療料なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神病床からの退院直後や、在宅・施設で認知症の行動・心理症状が強く出て日常生活に支障が出ている患者さんに対して、医師の診療に基づくプログラムに沿って、まとまった時間のケア(作業療法的な活動や生活リハビリ、集団でのかかわりなど)を提供する場面が中心です。留意事項通知には「医師の診療に基づき、対象となる患者ごとにプログラムを作成し、当該プログラムに従って行うものであって、定期的にその評価を行う等計画的な医学的管理に基づいて行うもの」と明記されています。
みらい(新人医療事務)
「なんとなくデイケアっぽいことをやっている」だけでは対象にならなそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。個別のプログラム作成と定期評価という「計画性」が要件に含まれている点は見落とされやすいので、確認が必要なポイントです。また、対象は入院中の患者さん以外に限られます。入院患者さんに院内で同様のケアを行っても、この診療料の対象にはなりません。
みらい(新人医療事務)
入院患者さんは対象外なんですね、それも意外と見落としそうです。
あおい(元・医療事務)
あわせて、治療の一環として食事を提供する場合、その費用は所定点数に含まれるとされています。食事代を別途請求できるわけではない、という点も確認ポイントの一つです。
点数はいくら?(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的な点数を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、基本の点数と2つの加算があります。表にまとめますね。
| 項目 | 点数 | 算定の考え方(令和8年度) |
|---|---|---|
| 重度認知症患者デイ・ケア料(基本) | 1,040点 | 1日につき6時間以上実施した場合に算定候補 |
| 早期加算 | +50点 | 当該療法を最初に算定した日から起算して1年以内の期間に行われる場合の加算候補 |
| 夜間ケア加算 | +100点 | 施設基準に適合し届け出た医療機関で、当該療法に引き続き2時間以上の夜間ケアを行った場合の加算候補(最初に算定した日から起算して1年以内に限る) |

みらい(新人医療事務)
早期加算と夜間ケア加算、どちらも「最初に算定した日から1年以内」という縛りがあるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知でも「早期加算の対象となる患者は、当該療法の算定を開始してから1年以内又は精神病床を退院して1年以内の患者であること」「夜間ケア加算の対象となる患者は…当該療法を最初に算定した日から起算して1年以内の期間に限り算定できる」とされています。1年を過ぎた継続例では、加算の算定候補から外れる可能性があるので、算定開始日をきちんと管理しておく必要があります。
みらい(新人医療事務)
6時間以上っていうのも結構長い時間ですよね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。「1日につき6時間以上行った場合に算定する」という時間要件は基本点数の算定条件そのものなので、実施時間の記録は必須です。診療録等に要点および診療時間を記載することも留意事項で求められています。
施設基準はどうなっている?
みらい(新人医療事務)
届出が必要というお話でしたが、施設基準はかなり細かいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
はい、人員配置と施設の広さの両方が定められています。まず人員は、次のいずれかのパターンで構成する必要があります。
人員配置のパターン(令和8年度)
基本パターン(4人構成): 精神科医師1人+専従3人(作業療法士1人、看護師1人、精神科病棟勤務経験を有する看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれか1人)で、患者数は1日25人が上限の候補です。 拡大パターン(8人構成): 基本パターンの4人に加えて精神科医師1人と専従3人(同様の職種構成)を加えた8人構成では、患者数は1日50人が上限の候補です。 夜間ケアを行う場合(5人・10人構成): 基本パターンに専従1人を加えた5人構成なら1日25人、拡大パターンに専従2人を加えた10人構成なら1日50人が、それぞれ患者数上限の候補になります。
みらい(新人医療事務)
専従の職種の組み合わせが細かいですね。作業療法士さんや看護師さんの配置って、他の業務と兼務はできないんですか?
あおい(元・医療事務)
専従者については、重度認知症患者デイ・ケアを実施しない時間帯に限り、精神科作業療法や精神科ショート・ケアなど他の精神科専門療法に従事することが認められています。また、重度認知症患者デイ・ケア料と他の精神科専門療法の実施日・時間が異なる場合は、その専門療法の専従者として届け出ることも可能とされています。ただし、これは施設基準通知に基づく整理なので、自院のシフト体制に当てはめられるかは個別に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
施設の広さにも基準があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。専用の施設は、内法による測定で60平方メートル以上、かつ患者1人当たりの面積が内法測定で4.0平方メートルを基準とすることとされています。専用の器械・器具を備えていることも要件の一つです。なお、平成26年3月31日時点で既に重度認知症患者デイ・ケア料の届出を行っていた医療機関には、増改築までの間、この面積基準について経過措置が設けられています。自院が該当するかどうかは、届出時期を含めて確認したいところです。
届出は必要?
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていれば、自動的に算定できるようになるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、施設基準に適合しているだけでは足りず、地方厚生局長等への届出が必須です。届出には様式47を使用し、精神科を診療科名として標榜している保険医療機関を単位として受理されます。また、実際にケアを行う専用施設の配置図・平面図の添付も必要です。
みらい(新人医療事務)
届出済みかどうかは、事務局の記録を確認すればいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そうですね。まずは自院が重度認知症患者デイ・ケア料の届出を済ませているかどうかを、施設基準の届出台帳や地方厚生局への提出控えで確認するのが確実です。届出済みであれば算定候補になりますが、届出前の状態で算定することはできませんので、その点は必ず確認が必要です。
算定のタイミング・回数制限で気をつけたいこと
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングで、他に注意したいことはありますか?
あおい(元・医療事務)
特に押さえておきたいのが、他の精神科専門療法との重複算定に関するルールです。
併算定の制限に注意
重度認知症患者デイ・ケア料を算定した場合、精神科ショート・ケア(I008-2)、精神科デイ・ケア(I009)、精神科ナイト・ケア(I010)、精神科デイ・ナイト・ケア(I010-2)は算定できません。また、重度認知症患者デイ・ケア料を算定している患者さんに対しては、同一日に行う他の精神科専門療法も別に算定できないとされています。同じ日に複数の精神科専門療法を組み合わせて算定していないか、レセプト作成時に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
同じ日に他のケアも一緒に…というのはやってしまいそうな気がします。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に精神科デイ・ケアや精神科ショート・ケアと運用が近い分、現場のスタッフが「その日はどちらで算定するか」を意識していないと、同一日の重複が起きやすいところです。運用ルールとして、どちらの区分で算定するかを事前に決めておく医療機関も多いです。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わった点はあるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが確認できた一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知・施設基準通知)の範囲では、重度認知症患者デイ・ケア料の点数・施設基準・算定要件について、前回改定(令和6年度)からの変更点は確認されていません(確認日: 2026年8月)。
みらい(新人医療事務)
変更なしと言い切っていいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、「言い切る」のではなく「今回確認できた範囲では変更が見当たらなかった」という状態です。改定のたびに小さな運用上の見直しが疑義解釈で示されることもあるので、気になる場合は最新の疑義解釈資料もあわせて確認していただくのがおすすめです。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
いろいろ確認ポイントが出てきたので、順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、次の順番で確認していくのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 対象患者が「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」ランクM相当(精神症状・行動異常が著しい認知症)に該当するかを確認する
- 入院中の患者ではないこと、医師の診療に基づく個別プログラムと定期評価の体制があることを確認する
- 自院が重度認知症患者デイ・ケア料の施設基準(人員配置パターン・専用施設60平方メートル以上・患者1人当たり4.0平方メートル)を満たしているかを確認する
- 地方厚生局長等への届出(様式47)を済ませているかを確認する
- 1日6時間以上の実施時間を記録できる体制か、早期加算・夜間ケア加算の対象期間(算定開始から1年以内等)を確認する
- 同一日・同一患者について、精神科ショート・ケア等の他の精神科専門療法と重複算定していないかを確認する

みらい(新人医療事務)
この順番で見ていけば、抜け漏れが減りそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特に3番目の施設基準と4番目の届出は、どちらか一方だけでは算定候補になりません。「基準は満たしているつもりだけど、届出がまだ」というケースもあるので、両方セットで確認してください。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実際の現場で見落とされやすいポイントがあれば教えてください。
あおい(元・医療事務)
いくつかありますが、代表的なものを挙げますね。
見落とされやすいポイント
早期加算・夜間ケア加算の期限管理: どちらも「最初に算定した日から1年以内」という期限があるため、算定開始日を記録・管理していないと、期限を過ぎた後も加算を付けたままにしてしまう、あるいは逆に対象期間内なのに加算を取り忘れる、といったことが起こりえます。 実施時間6時間の記録: 「1日6時間以上」は基本点数そのものの算定条件です。診療録やケア記録に実施時間が明記されていないと、算定候補としての根拠が弱くなります。 他の精神科専門療法との同日重複: 前述のとおり、精神科ショート・ケアや精神科デイ・ケアなどと同一日に重複して算定していないか、レセプト点検の段階で確認しておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
どれも「うっかり」で起こりそうなことばかりですね…。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。加算の存在自体は知られていても、期限や記録の細かい要件まで運用に落とし込めていないケースは少なくありません。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。
参考にした公式資料
あおい(元・医療事務)
最後に、この記事の根拠にした公式資料をまとめておきますね。
みらい(新人医療事務)
お願いします。
あおい(元・医療事務)
診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号、区分I015)、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)、特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号)の3点を厚生労働省の公開資料として参照しています。関連する 夜間ケア加算(重度認知症患者デイ・ケア料) のページもあわせてご確認ください。