みらい(新人医療事務)
透析を始めたばかりの患者さんのレセプトを見ていたら「導入期加算」という項目があったんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
「人工腎臓 導入期加算」ですね。これは区分番号J038「人工腎臓」の注2に定められている加算です。継続して血液透析を行う必要があると判断されてから最初の1月間、つまり透析を始めたばかりの時期に、1日につき加算できるものです。令和8年度の医科点数表でも同じ位置づけで規定されています。
みらい(新人医療事務)
「最初の1月間だけ」なんですね。ずっと算定できるわけじゃないんだ。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。厚生労働省の留意事項通知には「『人工腎臓における導入期』とは継続して血液透析を実施する必要があると判断された場合の血液透析の開始日より1月間をいう」と定義されています。この期間の考え方を取り違えると算定期間がずれてしまうので、まず「開始日」をどう特定するかが最初の確認ポイントになります。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
診療所・病院のどちらも対象になり得ますし、外来・入院いずれの場面でも人工腎臓を実施していれば算定候補になります。ただし届出が必要な加算なので、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出ていることが前提です。届出をしていない医療機関は、たとえ実際に導入期の透析を行っていても算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
届出は必須なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。人工腎臓を実施している医療機関だから自動的に算定できる、というものではなく「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行った場合」という条件が点数表の本文にはっきり書かれています。届出の有無は自院で必ず確認してください。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の区分によって3段階に分かれています。表にしますね。
| 区分 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|
| 導入期加算1 | 200点 | 導入期1月に限り、1日につき |
| 導入期加算2 | 410点 | 導入期1月に限り、1日につき |
| 導入期加算3 | 810点 | 導入期1月に限り、1日につき |
あおい(元・医療事務)
これは令和8年度の医科点数表本文に記載されている点数です。「イ」が導入期加算1、「ロ」が導入期加算2、「ハ」が導入期加算3にそれぞれ対応します。

みらい(新人医療事務)
段階が上がるほど点数も上がるんですね。何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「『注2』の加算について、『イ』については、『導入期加算1』の施設基準、『ロ』については、『導入期加算2』の施設基準、『ハ』については、『導入期加算3』の施設基準の届出を行った保険医療機関において、それぞれ1日につき200点、410点又は810点を1月間に限り算定する」とされていて、区分ごとに別々の施設基準の届出が対応しています。つまり自院がどの区分の届出をしているかによって、算定できる点数が変わるということです。
施設基準の届出区分と疑義解釈のポイント
みらい(新人医療事務)
施設基準はそれぞれどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは疑義解釈で示されている範囲でお伝えしますね。まず導入期加算1と2の施設基準に共通して出てくるのが「関連学会の作成した資料」です。厚生労働省の疑義解釈(平成30年度)では「導入期加算1及び2の施設基準における『関連学会の作成した資料』とは、どのような資料を指すのか」という質問に対し、「日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会作成の『腎不全治療選択とその実際』等、患者の治療選択に活用することを目的として作成された資料を指す」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
導入期加算2はさらに条件がありそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。同じく平成30年度の疑義解釈では「導入期加算2の施設基準における『腎移植に向けた手続きを行った患者』とは、どのような患者を指すのか」という問いに対し、「臓器移植ネットワークに腎臓移植希望者として新規に登録した患者及び生体腎移植が実施され透析を離脱した患者を指す」と示されています。この定義は導入期加算2・3に関わる患者対応の基準として位置づけられています。
あおい(元・医療事務)
さらに令和4年度の疑義解釈では、「区分番号『J038』人工腎臓の注2に規定する導入期加算の施設基準における『腎代替療法に係る所定の研修』には、具体的にはどのようなものがあるか」という質問に「現時点では、日本腎代替療法医療専門職推進協会『腎代替療法専門指導士』の研修が該当する」と回答があり、続く問では「導入期加算3を算定している施設が実施する腎代替療法に係る研修を定期的に受講していること」の「定期的」について「年1回以上の受講が必要である」とされています。
みらい(新人医療事務)
導入期加算3はもっと重い基準なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。同じく令和4年度の疑義解釈では、導入期加算2及び3の施設基準について「導入期加算3を算定している施設が実施する腎代替療法に係る研修を定期的に受講していること」「導入期加算1又は2を算定している施設と連携して、腎代替療法に係る研修を実施」という要件が示されていて、その研修の要件として「(イ)導入期加算3を算定している施設が主催する研修であること」「(ロ)当該研修を実施又は受講する各施設に配置されている『腎代替療法に係る所定の研修を修了した者』が参加していること」「(ハ)在宅血液透析、腹膜透析及び腎移植に関する基礎知識、腎代替療法の特性に応じた情報提供、腎代替療法に係る意思決定支援等の内容が含まれる研修であること」の3点が挙げられています。
施設基準の充足は自院での確認が必須です
ここでご紹介した疑義解釈は、それぞれ発出された年度(平成30年度・令和4年度・前回改定の令和6年度)が異なります。研修の実施状況や説明体制など、施設基準を実際に満たしているかどうかは告示・施設基準通知の原文と自院の体制を照合しないと判断できません。届出の適否・研修の充足状況をこの記事だけで断定することはできませんので、必ず地方厚生局や公式資料で確認してください。
全身合併症の説明に関する疑義解釈
みらい(新人医療事務)
患者さんへの説明についても決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)の疑義解釈では、導入期加算2及び3の施設基準にある「心血管障害を含む全身合併症の状態及び当該合併症について選択することができる治療法について、患者に対し十分な説明を行っていること」という要件について、具体例が示されています。「心臓弁膜症の患者に対しては具体的にどのような説明を行う必要があるのか」という質問に対し、「日本透析医学会、日本胸部外科学会等による説明文書においては、透析患者の心臓弁膜症に対する治療としては、自己心膜を用いた弁形成術や経カテーテル的大動脈弁植込術が例示されているため、日本透析医学会ホームページにて公開されている説明文書を参考とすること」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
この説明は必ず医師がしないといけないんですか?
あおい(元・医療事務)
同じく前回改定(令和6年度)の疑義解釈に回答があって、「腎代替療法指導士が、医師の指示のもと、パンフレット等を用いて説明することは可能。ただし、腎代替療法指導士が当該説明を行った場合は、説明時の状況等を当該医療機関内で共有し、必要に応じて主治医が患者に説明すること」とされています。医師以外が説明を行う場合の情報共有の流れまで確認しておく必要がありそうです。
DPC対象病院での取り扱い
みらい(新人医療事務)
うちの病院はDPC対象病院なんですけど、導入期加算はDPCの包括評価に含まれてしまうんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは繰り返し確認されているポイントですね。令和8年度の疑義解釈でも「包括評価の範囲に含まれない処置料については、人工腎臓の導入期加算等の処置料に係る加算点数を算定することができるか」という質問に「算定することができる」と回答されています。人工腎臓に関する処置料の加算は、DPCの包括評価の対象外として扱われているということです。ただし、自院の届出状況や算定条件を満たしているかは別途確認が必要な点は変わりません。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
正直なところ、当サイトが収録している一次資料の範囲では、導入期加算の点数区分(200点・410点・810点)や施設基準の届出区分についての変更は確認されていません(2026年8月確認・厚労省一次情報ベース)。前回改定(令和6年度)時点の点数表そのものは当サイトにまだ収録されていないため、点数や算定単位が完全に据え置きだったと断定することはできませんが、少なくとも令和8年度の告示・留意事項通知の内容としては、これまでご紹介した区分がそのまま確認できています。
改定差分の確認について
「変更なし」に見える加算でも、点数だけでなく施設基準・研修要件・様式が改定で変わっているケースがあります。自院の届出内容が最新の基準に対応しているか、契約している医事コンピュータ会社の更新情報や地方厚生局の通知もあわせて確認することをおすすめします。
関連する加算との関係
みらい(新人医療事務)
導入期加算以外にも人工腎臓には色々な加算があるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。同じ区分番号J038「人工腎臓」の注に基づく加算として、透析液水質確保加算や慢性維持透析濾過加算などもあります。これらは導入期加算とは施設基準も算定条件も別の加算なので、どれか一つを届け出れば他も自動的に算定できる、というものではありません。それぞれの記事で施設基準を個別に確認してみてください。

自院で確認する順番
自院で確認する順番
継続して血液透析を実施する必要があると判断された「血液透析の開始日」を診療録で確認する 自院が導入期加算1・2・3のどの区分の施設基準の届出を行っているか(あるいは届出をしていないか)を確認する 届出している区分に対応する研修受講・患者説明などの運用が実際に継続できているかを確認する 開始日から1月間、1日につき届出区分に応じた点数(200点・410点・810点)を算定候補として記録する
よくある取り漏れ
取り漏れやすいポイント
- 導入期の起算日を「入院日」や「透析開始を検討した日」と混同してしまい、「継続して血液透析を実施する必要があると判断された血液透析の開始日」からの1月間とずれてしまうケース
- 施設基準の届出区分(導入期加算1・2・3)と、実際に運用している研修受講・患者説明体制が食い違っていないかの確認が漏れるケース
- DPC対象病院で「包括評価に含まれるはず」と思い込み、算定候補から外してしまうケース
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。