みらい(新人医療事務)
院長から「慢性維持透析濾過加算って、うちも算定候補になるか確認しておいて」と言われたんですが、まず何の加算なのか教えてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。これは人工透析の中でも「人工腎臓(区分番号J038)」という処置に対する加算のひとつです。透析の中でも特定のやり方(血液透析濾過のうち、置換液を院内で分離作製して使う方法)を行った場合に、区分「1」から「3」の所定点数に50点を上乗せする仕組みになっています。
みらい(新人医療事務)
「置換液を分離作製」ってどういうことですか?普通の透析と何が違うんでしょう。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には次のように定義が書かれています。「『注13』慢性維持透析濾過(複雑なもの)は、血液透析濾過のうち、透析液から分離作製した置換液を用いて血液透析濾過を行うことをいう。」つまり、市販の置換液パックを使うのではなく、院内で透析液から置換液を分離作製する体制で行う血液透析濾過が対象になります。ここが「複雑なもの」と呼ばれる理由ですね。
対象になる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関、どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は人工腎臓(血液透析・血液濾過・血液透析濾過)を実施している診療所・病院で、外来・入院どちらも含まれます。そのうえで、血液透析濾過を行っている患者さんのうち、置換液を院内で分離作製する「複雑なもの」に該当する治療を受けている方が対象になります。すべての透析患者さんが自動的に対象になるわけではなく、実施している透析の方法が条件になっている点に注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
「うちは血液透析しかやっていない」という診療所は対象外の可能性が高いということですね。
あおい(元・医療事務)
そうなりますね。ただし実際にどの治療法をどのくらい実施しているかは施設ごとに違うので、対象外の可能性がある場合も含めて、自院の透析室の運用を確認するところから始めるのが安全です。
点数の考え方(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどう計算するんですか?
あおい(元・医療事務)
まず土台になるJ038人工腎臓(1日につき)の点数を確認します。区分「1」「2」「3」は医療機関の規模や効率性等を踏まえて分かれていて、それぞれ実施時間で点数が変わります。

| J038の区分 | 4時間未満 | 4時間以上5時間未満 | 5時間以上 |
|---|---|---|---|
| 慢性維持透析を行った場合1 | 1,856点 | 2,016点 | 2,151点 |
| 慢性維持透析を行った場合2 | 1,816点 | 1,976点 | 2,106点 |
| 慢性維持透析を行った場合3 | 1,776点 | 1,931点 | 2,061点 |
| その他の場合(4) | 1,560点 | ー | ー |
みらい(新人医療事務)
この表のどこに50点が乗るんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表にはこうあります。「1から3までについては、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において慢性維持透析濾過(複雑なものに限る。)を行った場合には、慢性維持透析濾過加算として、所定点数に50点を加算する。」つまり区分「1」〜「3」のいずれかを算定していて、かつ複雑な血液透析濾過を行った場合に、その所定点数に50点を加算する、という組み立てです。区分「4 その他の場合」には、この加算は乗りません。
みらい(新人医療事務)
「4」は対象外なんですね。ここ、うっかり見落としそうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。ここは自院のレセプトを確認するときに必ず見てほしいポイントですね。
施設基準の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
施設基準は具体的に何を見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
まず土台として、J038の区分「1」「2」「3」自体にそれぞれ施設基準があります。留意事項通知には次のように書かれています。「人工腎臓を行う医療機関の規模や効率性等を踏まえた評価とする観点から、『1』については『慢性維持透析を行った場合1』の施設基準、『2』については『慢性維持透析を行った場合2』の施設基準の届出を行った保険医療機関において算定する。『慢性維持透析を行った場合3』については、『1』又は『2』の施設基準のいずれかに該当するものとして届出を行った保険医療機関以外の保険医療機関において算定する。」
みらい(新人医療事務)
つまり「1」「2」の施設基準を届け出ていない医療機関は自動的に「3」の扱いになる、ということですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の記載を素直に読むとそう整理できます。そのうえで慢性維持透析濾過加算(注13)自体にも、別に厚生労働大臣が定める施設基準への適合と地方厚生局長等への届出が必要と点数表に明記されています。区分の施設基準と、加算そのものの施設基準は別ものとして両方確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
水質管理とか、そういう体制面の要件もあるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の同じ項目群には、関連学会が示す基準に基づく水質管理の実施や、透析機器安全管理委員会の設置、その責任者としての専任の医師または専任の臨床工学技士の配置についての記載も並んでいます。届出にあたっては、透析液の水質管理体制や委員会の設置状況もあわせて確認しておくと安心です。ただし、この記載が慢性維持透析濾過加算の届出要件そのものとして扱われるかどうかは、届出様式や地方厚生局の案内でも確認することをおすすめします。
施設基準は二段構えで確認する
J038区分の施設基準: 「慢性維持透析を行った場合1」「2」のどちらかを届け出ているか、それとも「3」の扱いになるか。 加算自体の施設基準: 慢性維持透析濾過加算として別途、地方厚生局長等への届出が必要。区分の届出と加算の届出は別物として確認します。
届出の要否
みらい(新人医療事務)
届出は必ず必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、点数表の記載上、慢性維持透析濾過加算は「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが算定の条件です。届出をしていない状態では、複雑な血液透析濾過を実施していても、この加算の算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
届出さえ出せば自動的に算定できる、というものでもないですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出は前提条件のひとつで、実際に算定できるかどうかは、個々の患者さんに対して複雑な血液透析濾過を実施しているかどうかという診療内容の実態も合わせて確認する必要があります。届出済みであれば算定候補になりますが、最終的な可否は自院の記録と公式資料で確認することが必要です。
算定のタイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、J038のどの区分で算定しているかを確認することです。区分「1」〜「3」に対する加算なので、「4 その他の場合」で算定している患者さんには、この50点は乗りません。また、この加算は血液透析濾過のうち「複雑なもの」に限られるので、通常の血液透析濾過との違いを診療録やカルテ上で区別できるようにしておくことも大切です。
区分の取り違えに注意
J038の区分「1」〜「3」(慢性維持透析を行った場合)と「4」(その他の場合)を取り違えると、本来加算できない区分で50点を算定してしまうリスクがあります。レセプト作成時は、どの区分で算定しているかを都度確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の点数表・留意事項通知の範囲では、慢性維持透析濾過加算そのものの点数(50点)や、注13の定義(血液透析濾過のうち透析液から分離作製した置換液を用いる、複雑なものに限る)についての変更は確認されていません(2026年7月時点の一次資料の確認範囲)。J038人工腎臓全体には導入期加算や長時間加算、下肢末梢動脈疾患指導管理加算など複数の注書きがあるので、この加算以外の部分に改定の動きがないかは、別途、最新の告示・通知でご確認いただくと安心です。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」も、ちゃんと確認したうえでの結論なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。点数だけでなく、施設基準や算定要件の記載も含めて一次資料を確認したうえで「今回確認できた範囲では変更なし」とお伝えしています。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの医院としては何から確認すればいいんでしょう?
あおい(元・医療事務)
順番に並べてみますね。

自院で確認する順番
J038人工腎臓の届出区分を確認する: 「慢性維持透析を行った場合1」「2」の施設基準を届け出ているか、それとも「3」の扱いか。 慢性維持透析濾過加算そのものの施設基準・届出を確認する: 区分の届出とは別に、加算自体の届出が地方厚生局に出ているか。 実施している血液透析濾過の内容を確認する: 透析液から分離作製した置換液を用いる「複雑なもの」に該当する治療を行っているか、診療録で確認する。 算定区分を確認する: 対象患者の算定がJ038の「1」〜「3」であり、「4 その他の場合」になっていないか。
みらい(新人医療事務)
この順番なら自分でも確認できそうです。
あおい(元・医療事務)
この4つを順番に見ていけば、算定候補になりそうかどうか、かなり整理できるはずです。
よくある取り漏れ・誤解しやすいポイント
区分「4」で算定していないか
複雑な血液透析濾過を実施していても、J038の算定区分が「4 その他の場合」になっていると、慢性維持透析濾過加算は乗りません。区分の選択自体が正しいかどうかを先に確認しておく必要があります。
施設基準の届出を『区分の届出』だけで済ませていないか
「慢性維持透析を行った場合1」「2」の施設基準を届け出ていても、それだけでは慢性維持透析濾過加算(注13)の届出をしたことにはなりません。加算自体の届出状況を別途確認しておくと、取り漏れの防止につながります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
いくつか気になっていることを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
通常の血液透析濾過をしている患者さんにも、この加算はつくんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の定義上、対象は「透析液から分離作製した置換液を用いて」行う血液透析濾過に限られています。市販の置換液を使う通常の血液透析濾過の場合は、この定義に当てはまるかどうかを診療内容から確認する必要があります。判断に迷う場合は確認が必要な事例として扱うのが安全です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていない状態で、実施だけはしていた場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
点数表の記載上、加算の算定には地方厚生局長等への届出が前提になっています。届出をしていない期間については、この加算の算定候補にはならないと考えるのが基本です。届出のタイミングと算定開始日の関係は、自院の届出書類で確認しておくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)のときは、この加算はどうだったんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)時点の内容まではこの記事の確認範囲に含めていないため、断定的なことは言えません。今回の令和8年度の一次資料で確認できた範囲では、点数・定義に変更は見当たらないというところまでが、ここでお伝えできる内容です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。透析患者さんの外来管理について、あわせて慢性維持透析患者外来医学管理料のページも参考になるかもしれません。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。