みらい(新人医療事務)
院長から「透析液水質確保加算も算定候補になるか確認しておいて」と言われました。透析液の水質を確保する加算、ということはわかるんですが、具体的にどんな仕組みなんですか?
あおい(元・医療事務)
これも「人工腎臓(区分番号J038、1日につき)」という処置に対する加算のひとつです。人工腎臓を実施する保険医療機関が、透析液の水質管理体制について施設基準を満たし、地方厚生局長等へ届け出ている場合に、所定点数へ10点を加算する仕組みになっています。
みらい(新人医療事務)
さっき教えてもらった慢性維持透析濾過加算と似た形の加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
似ている部分もありますが、対象範囲が少し違います。点数表の記載を見ると、慢性維持透析濾過加算(注13)は「1から3までについては」と区分が限定されているのに対して、透析液水質確保加算(注9)にはその限定がありません。つまり区分「1」から「4(その他の場合)」まで、人工腎臓を実施していれば区分を問わず対象になり得る、という違いがあります。
対象になる医療機関・患者
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関や患者さんはどう考えればいいですか?
あおい(元・医療事務)
対象は人工腎臓(J038)を実施している保険医療機関です。慢性維持透析を行っている患者さんが中心ですが、区分の限定がないため、区分「4 その他の場合」で算定している患者さんも対象候補として関わってくる加算です。ただし、人工腎臓(J038)以外の算定区分・場面については、今回の記事の対象からは切り分けて考える必要があります。
みらい(新人医療事務)
「うちは血液透析を毎日やっている診療所だけど、区分がいろいろ混ざっている」という場合でも関係してくるということですね。
あおい(元・医療事務)
その可能性はあります。区分にかかわらず、透析液の水質管理体制と届出の状況がポイントになる加算なので、区分の違いよりも施設全体の水質管理体制が整っているかどうかを先に確認するのがおすすめです。
点数の考え方(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどう組み立てられているんですか?
あおい(元・医療事務)
まず土台になるJ038人工腎臓(1日につき)の点数を確認します。区分「1」「2」「3」は医療機関の規模や効率性等を踏まえて分かれていて、それぞれ実施時間で点数が変わります。区分「4」はその他の場合として、時間区分のない点数になっています。

| J038の区分 | 4時間未満 | 4時間以上5時間未満 | 5時間以上 |
|---|---|---|---|
| 慢性維持透析を行った場合1 | 1,856点 | 2,016点 | 2,151点 |
| 慢性維持透析を行った場合2 | 1,816点 | 1,976点 | 2,106点 |
| 慢性維持透析を行った場合3 | 1,776点 | 1,931点 | 2,061点 |
| その他の場合(4) | 1,560点 | ー | ー |
みらい(新人医療事務)
この表のどこに10点が乗るんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表にはこうあります。「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行った場合には、透析液水質確保加算として、所定点数に10点を加算する。」先ほどお話ししたとおり、この条文には「1から3までについては」という限定の言葉が付いていません。区分を問わず、施設基準に適合し届け出た保険医療機関で人工腎臓を行った場合に、所定点数へ10点を加算する、という組み立てです。
みらい(新人医療事務)
慢性維持透析濾過加算は区分「4」だと対象外でしたけど、こちらは区分「4」でも対象候補になり得るということですね。
あおい(元・医療事務)
条文を素直に読むとそう整理できます。区分ごとの制限がない分、水質管理体制と届出の有無がより重要な確認ポイントになる加算です。
施設基準の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
施設基準は具体的に何を見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には次のように書かれています。「原則として、関連学会から示されている基準に基づき、水質管理が適切に実施されていること及び透析機器安全管理委員会を設置し、その責任者として専任の医師又は専任の臨床工学技士が1名以上配置されていること。」つまり大きく2つの柱があります。ひとつは関連学会の基準に基づく水質管理の実施、もうひとつは透析機器安全管理委員会の設置と、その責任者としての専任の医師または専任の臨床工学技士の配置です。
みらい(新人医療事務)
「関連学会の基準」って具体的にはどこの基準を指しているんでしょう。
あおい(元・医療事務)
疑義解釈では次のように説明されています。「透析液水質確保加算について、関係学会の定める『透析液水質基準』とは何か」という質問に対して、「日本透析医学会学術委員会による『透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準』を指す」と回答されています。この疑義解釈は平成22年度のものですが、留意事項通知の「関連学会から示されている基準」が具体的にどの基準を指すかを示した解釈として参考になります。
みらい(新人医療事務)
透析機器安全管理委員会の方は、メンバー構成とか開催頻度とか決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
この点についても疑義解釈があります。「透析機器安全管理委員会を設置することとなっているが、構成委員や開催頻度の要件はあるか」という質問に対して、「関係学会の定める基準を参考にすること」という回答にとどまっています。つまり構成委員の人数や開催頻度そのものを明確な数値要件として定めた記載は、確認できた範囲にはありません。この点は関連学会のガイドライン等を参照しながら、自院の体制を整理する必要がありそうです。
施設基準は2つの柱で確認する
水質管理の実施: 関連学会(日本透析医学会等)が示す基準に基づき、水質管理が適切に実施されているか。 透析機器安全管理委員会: 委員会を設置し、その責任者として専任の医師または専任の臨床工学技士が1名以上配置されているか。
届出の要否
みらい(新人医療事務)
届出は必ず必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、点数表の記載上、透析液水質確保加算は「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが算定の条件です。水質管理体制や委員会を実際に整えていても、届出をしていない状態では、この加算の算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
届出さえ出せば自動的に算定できる、というわけでもないですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出は前提条件のひとつで、実際に人工腎臓を実施しているかどうかという診療実態も合わせて確認する必要があります。届出済みであれば算定候補になりますが、最終的な可否は自院の記録と公式資料で確認することが必要です。
算定のタイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、水質管理体制と委員会の設置・責任者配置が「実態として」続いているかどうかです。届出をした時点では要件を満たしていても、責任者の異動や委員会の休止などで体制が変わっていないか、定期的に見直すことをおすすめします。区分を問わない加算だからこそ、区分の切り替えではなく体制面の継続性がチェックポイントになります。
体制の継続確認を忘れずに
透析液水質確保加算は区分「1」〜「4」のいずれでも対象候補になり得る一方、水質管理体制や透析機器安全管理委員会の責任者配置が崩れていないかは、届出後も定期的に自院で確認しておく必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の点数表・留意事項通知の範囲では、透析液水質確保加算そのものの点数(10点)や、施設基準の記載(水質管理の実施、透析機器安全管理委員会の設置と専任の医師または専任の臨床工学技士の配置)についての変更は確認されていません(2026年7月時点の一次資料の確認範囲)。関係学会の基準や透析機器安全管理委員会の運用に関する疑義解釈は平成22年度に発出されたものが確認できる最も具体的な解釈で、それ以降の年度で内容を更新する新たな疑義解釈は、当サイトの収録範囲では見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」も、ちゃんと確認したうえでの結論なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。点数だけでなく、施設基準の記載内容も一次資料で確認したうえで「今回確認できた範囲では変更なし」とお伝えしています。もし関連学会の基準そのものが更新されている場合は、点数表とは別に、学会側の最新のガイドラインも確認しておくと安心です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの医院としては何から確認すればいいんでしょう?
あおい(元・医療事務)
順番に並べてみますね。

自院で確認する順番
水質管理体制を確認する: 関連学会(日本透析医学会等)が示す基準に基づき、透析液の水質管理が適切に実施されているか。 透析機器安全管理委員会の設置状況を確認する: 委員会が設置され、その責任者として専任の医師または専任の臨床工学技士が1名以上配置されているか。 施設基準の届出状況を確認する: 透析液水質確保加算として、地方厚生局長等への届出が済んでいるか。 人工腎臓の実施区分を確認する: どの区分(1〜4)で人工腎臓を算定していても、この加算の対象候補になり得ることを踏まえて算定状況を確認する。
みらい(新人医療事務)
この順番なら自分でも確認できそうです。
あおい(元・医療事務)
この4つを順番に見ていけば、算定候補になりそうかどうか、かなり整理できるはずです。
よくある取り漏れ・誤解しやすいポイント
区分「4」だから対象外と思い込んでいないか
慢性維持透析濾過加算のように区分「1」〜「3」限定の加算と混同して、区分「4 その他の場合」だから最初から対象外と判断してしまうケースがあります。透析液水質確保加算の条文には区分の限定がないため、区分「4」であっても、施設基準と届出の状況をあらためて確認する価値があります。
水質管理体制の『実施』と『届出』を混同していないか
関連学会の基準に沿って水質管理を実際に行っていても、それだけでは届出をしたことにはなりません。透析機器安全管理委員会の設置・責任者配置とあわせて、届出書類が地方厚生局に提出されているかどうかを別途確認しておくと、取り漏れの防止につながります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
いくつか気になっていることを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
区分「4 その他の場合」で人工腎臓を算定している患者さんにも、この加算はつくんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表の条文上、透析液水質確保加算には区分の限定がないため、区分「4」であっても施設基準に適合し届出済みであれば算定候補になり得ます。ただし個別の算定可否は自院の届出内容や診療実態を踏まえて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
透析機器安全管理委員会は、何人以上、何回以上開催しないといけないんですか?
あおい(元・医療事務)
確認できた疑義解釈の範囲では、構成委員の人数や開催頻度について具体的な数値要件は示されておらず、「関係学会の定める基準を参考にすること」という回答にとどまっています。明確な人数・頻度の基準を確認したい場合は、関連学会のガイドラインや地方厚生局への確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)のときは、この加算はどうだったんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)時点の内容まではこの記事の確認範囲に含めていないため、断定的なことは言えません。今回の令和8年度の一次資料で確認できた範囲では、点数・施設基準の記載に変更は見当たらないというところまでが、ここでお伝えできる内容です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。同じJ038人工腎臓の加算として、あわせて慢性維持透析濾過加算のページも参考になるかもしれません。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。