この加算はどんな加算?
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「人工腎臓 下肢末梢動脈疾患指導管理加算」っていう名前を初めて見たんですけど、どんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは人工腎臓、つまり血液透析を行っている患者さんの下肢(脚)の末梢動脈疾患を早期に見つけるための指導管理を評価する加算です。区分番号「J038」人工腎臓の注10に規定されていて、令和8年度の医科診療報酬点数表に基づく算定候補になります。
みらい(新人医療事務)
下肢の血管の状態を、透析のときに一緒にチェックするということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。透析を受けている患者さんは血管の状態が悪化しやすいと言われていて、下肢の血流を定期的に評価し、必要な指導管理を行った場合に算定候補になる、という位置づけの加算です。
みらい(新人医療事務)
加算の名前だけだと、正直どこまでが対象なのか想像しにくいです。
あおい(元・医療事務)
少しずつ整理していきましょう。対象医療機関、点数、施設基準、届出、算定タイミングの順に見ていくと分かりやすいです。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
人工腎臓(血液透析)を実施している診療所・病院が対象です。厚生労働省の留意事項通知は「当該保険医療機関において慢性維持透析を実施している全ての患者」を前提にしており、外来・入院どちらの透析患者さんも対象になり得ます。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件はどうですか?誰でも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では「当該保険医療機関において慢性維持透析を実施している全ての患者に対しリスク評価等を行った場合に算定できる」とされています。つまり、まずは自院で透析を受けているすべての患者さんに対してリスク評価を行うことが前提になっている加算です。
みらい(新人医療事務)
「全ての患者」が前提、というのは意外でした。一部の患者さんだけ評価すればいい、というわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。この前提を満たさないまま一部の患者さんだけを評価している場合、算定候補として整理する前に運用の見直しが必要になることがあります。
点数・区分番号
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
表にまとめますね。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 区分番号 | J038 人工腎臓(1日につき)注10 |
| 加算名 | 下肢末梢動脈疾患指導管理加算 |
| 点数 | 100点 |
| 算定回数 | 月1回に限り |
| 届出 | 必要 |
| 施設基準 | あり |
みらい(新人医療事務)
100点を月1回まで、ということなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。厚生労働省の医科点数表では「下肢末梢動脈疾患指導管理加算として、月1回に限り所定点数に100点を加算する」と定められています。人工腎臓そのものの点数に上乗せする形の加算候補、という位置づけです。

みらい(新人医療事務)
透析の点数とは別に、月1回100点が上乗せされる、というイメージでいいですか?
あおい(元・医療事務)
はい、そのイメージで大きくは間違っていません。ただし要件を満たしているかどうかは個別に確認が必要なので、算定候補という前提で見ていってください。
施設基準・算定要件
みらい(新人医療事務)
具体的にどんな指導管理を行えば、算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には具体的な手順が示されています。まず、透析を実施しているすべての患者さんに対して、関連するガイドラインに基づき下肢動脈の触診や下垂試験・挙上試験などを実施することが前提です。
みらい(新人医療事務)
それだけで算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いえ、そこで下肢末梢動脈の虚血性病変が疑われた場合に、足関節上腕血圧比(ABI)検査または皮膚組織灌流圧(SPP)検査によるリスク評価を行っていることが必要とされています。
見落としやすいポイント
留意事項通知では、ABI検査が0.7以下、またはSPP検査が40mmHg以下だった患者さんについて、専門的な治療体制を有する医療機関へ紹介するか、自院がその専門的治療体制の要件を満たしている場合は院内の専門科と連携することが求められています。この紹介・連携の実施状況も確認しておきたいポイントです。
みらい(新人医療事務)
検査は他の病院に任せてもいいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に確認したいところです。過去の疑義解釈(平成28年度公表分、当時は区分番号「J038」人工腎臓の注3として整理されていました)では、「当該医療機関がABI検査やSPP検査の設備を有しておらず、他の医療機関で実施した検査の結果を見て、専門的な医療機関へ紹介している場合、当該加算の施設基準を満たすか」という問いに対し、「当該医療機関で検査を実施している場合に限り算定できる」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、自院に検査機器がないと厳しいということですか?
あおい(元・医療事務)
この疑義解釈の考え方に沿うなら、そう受け止められます。ただしこれは平成28年度時点の疑義解釈であり、現行の令和8年度・注10と当時の注3は加算名としては一次資料上つながっていますが、最新の取り扱いは公式資料や地方厚生局への確認で裏付けるのが確実です。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
届出は必ず必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、この加算は「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」において行った場合の加算、と規定されています。届出をしていない状態では、要件を満たす指導管理を行っていても算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
うちは透析をやっているクリニックなんですが、届出をしているかどうか、正直よくわからなくて…。
あおい(元・医療事務)
それはよくあることです。まずは自院の届出台帳や地方厚生局への届出控えを確認し、届出済みであれば算定候補として運用を整理していく、という順番が安全です。届出の有無が曖昧な場合は、地方厚生局へ確認するのが確実です。
算定タイミング・回数制限・注意点
算定にあたっての注意
この加算は月1回に限る算定です。透析実施のたびに毎回算定できるものではありません。また、対象は「当該保険医療機関において慢性維持透析を実施している全ての患者」に対するリスク評価が前提とされているため、一部の患者さんだけを評価する運用では要件を満たさない可能性があります。
みらい(新人医療事務)
併算定については何か注意点ありますか?
あおい(元・医療事務)
人工腎臓(J038)には他にも導入期加算や透析液水質確保加算、慢性維持透析濾過加算など複数の注加算があります。これらとの組み合わせ方は個々の算定要件によって変わるため、資料の範囲だけで一律に「併算定できる」とは言えません。実際の算定にあたっては、自院のレセプトコンピュータの設定や審査支払機関への確認も含めて、個別に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
「まとめて全部算定できる」とは言い切れないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。加算ごとに要件が違うので、この加算単体の要件を満たしているかを、まずはしっかり確認するのが先決です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度の改定で新しくできたものなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、新設ではなさそうです。当サイトが収集している一次資料の範囲では、この下肢末梢動脈疾患指導管理加算に相当する規定は平成28年度公表の疑義解釈にも登場していて、その当時から同種の加算が存在していたことが確認できます(当時は区分番号の中の「注3」として整理されていました)。
改定前後の位置づけ
過去の疑義解釈(平成28年度・当時の注3)と現行の令和8年度・注10は、いずれも「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」という同じ名称の加算として一次資料に登場します。改定を重ねる中で他の注加算が追加され、注の番号がずれてきたと考えられますが、当サイトが収集している一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)からの点数(100点・月1回)や算定要件そのものの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月・厚労省一次情報ベース)。
みらい(新人医療事務)
番号だけを見て「新しい加算だ」と思い込むのは危ないですね。
あおい(元・医療事務)
はい。加算名と算定要件の中身で確認するのが確実です。区分番号の注の並び順は改定のたびに前後することがあります。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの場合はどう確認していけばいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
確認する順番で並べると、こんな流れになります。
自院で確認する順番
- 自院で人工腎臓(血液透析)を実施しているか、対象患者がいるかを確認する
- 下肢末梢動脈疾患指導管理加算の施設基準について、届出済みかどうかを地方厚生局への届出控えで確認する
- 慢性維持透析を実施している全ての患者に対し、ガイドラインに基づく下肢動脈の触診・下垂試験・挙上試験等を実施しているかを確認する
- 虚血性病変が疑われる患者に対し、自院でABI検査またはSPP検査を実施しているかを確認する
- 基準値に該当する患者への紹介・連携の記録が残っているかを確認し、月1回の算定候補として整理する
みらい(新人医療事務)
届出があって、検査や紹介の記録もちゃんと残っていれば、算定候補になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし最終的な判断は自院の届出状況や実際の診療内容、審査支払機関の確認によって変わってきます。
よくある取り漏れ
取り漏れやすいケース
届出済みなのに未算定: 施設基準の届出は済んでいるのに、リスク評価や検査の実施記録が診療録に残っておらず、算定候補として拾いきれていないケースがあります。
他院検査結果での代用: 他の医療機関で実施したABI検査・SPP検査の結果だけをもとに紹介している場合、施設基準を満たすかどうかは慎重に確認する必要があります(前述の疑義解釈の考え方を参照してください)。
評価対象の絞り込み漏れ: 一部の透析患者さんにしかリスク評価を行っておらず、「全ての患者に対して」という前提を満たせていない可能性があるケースもあります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する人工腎臓の加算については、人工腎臓 透析液水質確保加算や人工腎臓 慢性維持透析濾過加算もあわせて確認しておくと、透析患者さんに関する加算の全体像がつかみやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。