みらい(新人医療事務)
先輩、心肺蘇生の記録を見ていたら「体温維持迅速導入加算」という聞き慣れない加算が出てきたんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。これは、心停止から蘇生した患者さんに行う「体温維持療法」という治療の中で、特に早い段階から体温管理を始めた場合につく加算なんです。令和8年度(2026年度)の医科点数表に定められている麻酔料の加算区分の一つですよ。
みらい(新人医療事務)
体温維持療法自体もよく分からないんですが……。
あおい(元・医療事務)
体温維持療法は、心肺蘇生後の患者さんなどに対して、体温を一定の低い状態に保って脳や臓器のダメージを抑えようとする治療です。今回の体温維持迅速導入加算は、その治療を「咽頭冷却装置」という器具を使って、心肺蘇生を行っている最中から早期に始めた場合に、本体の点数に上乗せする加算という位置づけです。
体温維持迅速導入加算とはどんな加算ですか
みらい(新人医療事務)
「上乗せ」ということは、単独では算定できない加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。体温維持療法(L008-2)という基本の点数があり、その注に定められた加算として体温維持迅速導入加算があります。厚生労働省の医科点数表には、次のように記載されています。
点数表の規定(令和8年度)
体温維持療法(L008-2): 心肺蘇生中に咽頭冷却装置を使用して体温維持療法を開始した場合は、体温維持迅速導入加算として、5,000点を所定点数に加算する、と規定されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、咽頭冷却装置を使わずに体温維持療法を始めた場合はこの加算はつかない、ということですか?
あおい(元・医療事務)
資料の文言を見る限り、その理解でよさそうです。加算の対象は「心肺蘇生中に咽頭冷却装置を使用して」開始した場合に限定されていますので、通常の冷却方法(体表冷却や輸液冷却など)だけで開始したケースは、この加算の対象にはならない可能性が高いと考えられます。ただし個別のケースの判定は自院で確認してくださいね。
対象になる患者・場面
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、対象となる患者や手順がかなり具体的に定められています。主な条件は次のとおりです。
算定要件(留意事項通知より)
- 心停止が目撃されていること
- 心停止発症後15分以内に、医療従事者による蘇生術が開始されていること
- 心拍再開後15分以内に、咽頭冷却装置を用いて体温維持を開始していること
- 診療報酬明細書に症状詳記を記載していること
みらい(新人医療事務)
「目撃された心停止」というのは、誰かが心停止の瞬間を見ていた、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そのように読み取れます。留意事項通知の原文では「目撃された心停止発症後15分以内に医療従事者による蘇生術が開始された心停止患者」に対して「心拍再開の15分後までに咽頭冷却装置を用いて体温維持を行った場合」に算定できると定められています。心停止から蘇生開始、そして体温維持の開始まで、それぞれに時間の条件がついている点が特徴です。
みらい(新人医療事務)
時間の条件、細かいですね……。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。この加算は「できるだけ早く体温管理を始めることで転帰を改善しよう」という趣旨のものなので、蘇生開始のタイミングと体温維持開始のタイミング、両方の時間管理が重要になります。カルテや記録に、心停止の発見時刻・蘇生開始時刻・心拍再開時刻・体温維持開始時刻をそれぞれ記録しておくことが、算定候補かどうかを後から確認する上でも大切です。
点数と算定の考え方
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
体温維持療法(L008-2)本体は1日につき12,200点で、開始から3日間を限度として算定する仕組みです。そこに体温維持迅速導入加算の5,000点が加わる形です。
| 項目 | 点数 | 算定の単位 |
|---|---|---|
| 体温維持療法(L008-2) | 12,200点 | 1日につき(治療開始日から3日間が限度) |
| 体温維持迅速導入加算 | +5,000点 | 咽頭冷却装置を用いて開始した場合、所定点数に加算 |
| 開始初日の点数の目安 | 17,200点 | 初日に加算要件を満たした場合の合計(2日目以降は基本点数のみ) |
みらい(新人医療事務)
加算は毎日つくものではなく、体温維持療法を始めた日だけなんですね。
あおい(元・医療事務)
点数表の文言では「咽頭冷却装置を使用して体温維持療法を開始した場合」に加算する、とされていて、"開始"という言葉が使われています。そのため、加算の対象になるのは治療を開始した際の1回に限られると考えるのが自然です。2日目以降も基本点数(12,200点)は算定候補になりますが、迅速導入加算そのものが日々つくかどうかは、記録と合わせて自院で確認しておくと安心です。
施設基準・届出は必要ですか
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した一次資料(医科点数表・留意事項通知)の中には、体温維持迅速導入加算そのものについて、個別の施設基準や届出を定めた記載は見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出なしでいきなり算定していいということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは断定できません。この加算はあくまで体温維持療法(L008-2)の"加算"という位置づけなので、体温維持療法自体の算定要件(対象患者・実施内容の要件など)を満たしていることが前提になります。届出の要否や運用ルールに変更がないか、地方厚生局への確認や院内の算定担当者との共有はしておくことをおすすめします。
算定のタイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、時間の記録と症状詳記です。留意事項通知には「体温維持迅速導入加算の算定に当たっては、診療報酬明細書に症状詳記を記載する」と明記されています。
算定時の注意点
体温維持迅速導入加算は、心停止の目撃・蘇生開始・心拍再開・体温維持開始のそれぞれの時刻が算定要件に直結します。記録が不十分だと、要件を満たしているかどうかの確認自体が難しくなりますので、時刻の記載漏れがないか診療録とレセプトを突き合わせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
症状詳記って、具体的に何を書けばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の原文には「症状詳記を記載する」とあるだけで、様式や記載項目まで細かく指定されているわけではありません。少なくとも、心停止の目撃状況、蘇生開始時刻、心拍再開時刻、咽頭冷却装置による体温維持開始時刻といった、算定要件に対応する事実関係が確認できる記載を残しておくのが安全と考えられます。詳しい記載方法に迷う場合は、審査支払機関への確認も検討してください。

令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算って、前の改定からある加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは正直にお伝えすると、今回私たちが確認できた一次資料は令和8年度の医科点数表と留意事項通知の範囲にとどまっていて、前回改定(令和6年度)時点の点数表との詳細な比較資料までは確認できていません。ですので「新設された」「据え置かれた」といった断定はできない状態です。
みらい(新人医療事務)
そうなんですね……。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の一次資料の中には、体温維持迅速導入加算について、前回改定(令和6年度)からの変更である旨の記載は見当たりませんでした。ただしこれは、私たちが確認した資料の範囲内での話です。正確な改定経緯を知りたい場合は、厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定の告示・通知の原文、または個別改定項目の資料を直接ご確認いただくことをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院で算定候補かどうか確認するには、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 心停止が目撃されたケースかどうかを診療録で確認する
- 心停止発症後15分以内に医療従事者による蘇生術が開始されているかを時刻記録で確認する
- 咽頭冷却装置を使用して体温維持療法を開始したかどうかを確認する
- 心拍再開後15分以内に体温維持を開始できているかを時刻記録で確認する
- 診療報酬明細書に症状詳記が記載できる材料(時刻・状況)がそろっているかを確認する

みらい(新人医療事務)
これを一つずつ満たしていれば、算定候補になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい、要件を満たしていそうであれば算定候補になり得ます。ただし最終的な判断は、記録の実態と自院の運用、そして必要に応じて審査支払機関への確認をもとに行ってください。
よくある取り漏れ・誤解
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますね。
よくある取り漏れ・誤解
- 咽頭冷却装置以外の方法(体表冷却など)で体温維持療法を開始したケースを、迅速導入加算の対象と誤解してしまう
- 心停止の目撃有無や各時刻の記録が診療録に残っておらず、あとから算定要件を満たしているか確認できなくなる
- 体温維持療法(L008-2)本体の算定要件(対象患者や実施内容)を満たさないまま、加算部分だけを検討してしまう
- 症状詳記の記載を忘れ、レセプト提出後に指摘を受ける
みらい(新人医療事務)
記録と時間管理がやっぱり大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
この加算に限らず、時間の要件がある加算は「あとから確認できる記録」が算定候補かどうかを左右します。日頃から救急・集中治療の現場で時刻記録を徹底しておくと安心です。同じ麻酔加算の区分には、周術期の状態管理に関する術中脳灌流モニタリング加算もありますので、集中治療・周術期領域の加算をまとめて見直す際にあわせて確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
体温維持迅速導入加算は、外来でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
体温維持療法自体、心肺蘇生後の患者さんに継続的な体温管理を行う治療で、通常は入院中の救急・集中治療の現場で行われるものです。外来の場面でこの加算が問題になるケースは基本的に想定しにくいと考えられますが、個別の状況については自院で確認してください。
みらい(新人医療事務)
心停止が目撃されていなかった場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の要件は「目撃された心停止」を前提としていますので、目撃されていないケースは、この加算の対象外の可能性があります。ただし記事の内容はあくまで一般的な整理ですので、個別のケースは公式資料と照らし合わせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
咽頭冷却装置以外の冷却方法で治療を開始した場合、あとから咽頭冷却装置に切り替えても加算はつきますか?
あおい(元・医療事務)
資料には「咽頭冷却装置を使用して体温維持療法を開始した場合」と、開始時点の方法が要件になっていますので、開始後に方法を切り替えたケースが対象になるかどうかは、確認が必要な論点だと考えられます。判断に迷う場合は審査支払機関へ確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちの病院で算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。診療録の記録内容や実施した処置を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な算定要件は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(医科点数表 L008-2 体温維持療法・令和8年度) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省特設ページ・留意事項通知等の参照先) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・診療内容・公式資料・審査支払機関の判断で確認してください。