みらい(新人医療事務)
先輩、「非血縁者間移植加算」ってレセプトで見たことがあるんですが、正直どんな加算なのか全然わかっていなくて…。これって普通のクリニックでも関係ありますか?
あおい(元・医療事務)
結論から言うと、この加算は診療所ではなく病院、それも造血幹細胞移植を行うような大きな病院向けの加算です。名前の通り「非血縁者間移植」、つまり血縁関係にない提供者から造血幹細胞の提供を受けて移植を行った場合に上乗せされる加算ですね。
みらい(新人医療事務)
造血幹細胞移植というと、骨髄移植とか、そういうものですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。区分番号K922「造血幹細胞移植」という手術の中に、骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植という3つの種類があります。非血縁者間移植加算は、このうち骨髄移植と末梢血幹細胞移植の「同種移植」を行った場合だけが対象になります。
非血縁者間移植加算とは(概要)
みらい(新人医療事務)
「同種移植」というのも初めて聞く言葉です。詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、「同種移植とは、ヒト組織適合性抗原が概ね一致する提供者の造血幹細胞を移植する場合をいう」と説明されています。つまり、患者さん自身の細胞を使う「自家移植」ではなく、他の人から提供された造血幹細胞を移植することです。
みらい(新人医療事務)
「他の人」というのは、家族とか親戚のことですか?
あおい(元・医療事務)
提供者が家族・親族であれば「血縁者間移植」、骨髄バンクなどを介して血縁関係のない第三者から提供を受けた場合は「非血縁者間移植」と呼ばれます。今回の加算は、この非血縁者間移植を実施した場合に限って算定候補になる、という位置づけです。
この加算の対象になる場合(令和8年度)
- 造血幹細胞移植(区分番号K922)のうち、骨髄移植の「イ 同種移植の場合」を実施した場合
- 造血幹細胞移植(区分番号K922)のうち、末梢血幹細胞移植の「イ 同種移植の場合」を実施した場合
- かつ、提供者が血縁関係にない「非血縁者間移植」であった場合
あおい(元・医療事務)
逆に言うと、自家移植や臍帯血移植、それに血縁者からの移植の場合はこの加算の対象にはなりません。当サイトが収録している一次資料の範囲では、対象を「1のイ及び2のイ」に限定していることが明記されています。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
この加算は診療所では算定候補にならないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。当サイトの整理では、この加算は病院かつ入院での実施が前提で、外来・在宅・診療所は対象外としています。造血幹細胞移植そのものが高度な血液内科・移植医療の体制を持つ病院で行われる手術のため、実施できる医療機関はもともと限られています。
対象範囲の整理(令和8年度)
- 対象医療機関: 病院(入院)
- 対象外: 診療所、外来、在宅医療
- 対象手技: K922造血幹細胞移植のうち、骨髄移植・末梢血幹細胞移植の「同種移植」のみ(自家移植・臍帯血移植は対象外)
みらい(新人医療事務)
なるほど、そもそも造血幹細胞移植ができる病院じゃないと関係ない話なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただ、移植医療を行っている病院の医事課の方であれば、この加算の算定漏れがないか確認する価値は十分にあります。
点数と算定の考え方
みらい(新人医療事務)
具体的に何点くらいの加算になるんですか?
あおい(元・医療事務)
非血縁者間移植加算そのものは10,000点です。ただしこれは単独で算定するものではなく、造血幹細胞移植(K922)の所定点数に上乗せする加算という位置づけです。まず土台になる造血幹細胞移植の点数を見てみましょう。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K922 1 骨髄移植 イ | 同種移植の場合 | 66,450点 |
| K922 1 骨髄移植 ロ | 自家移植の場合 | 25,850点 |
| K922 2 末梢血幹細胞移植 イ | 同種移植の場合 | 66,450点 |
| K922 2 末梢血幹細胞移植 ロ | 自家移植の場合 | 30,850点 |
| K922 3 臍帯血移植 | ― | 66,450点 |
| 非血縁者間移植加算(本加算) | 1のイ・2のイの場合に非血縁者間移植を実施したとき | +10,000点 |

みらい(新人医療事務)
表の一番下に載っている加算の「10,000点」は、上の66,450点に足す形なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。骨髄移植・末梢血幹細胞移植の同種移植(66,450点)を実施し、かつ提供者が非血縁者だった場合に、この10,000点が所定点数に上乗せされます。厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)でも「1のイ及び2のイの場合において、非血縁者間移植を実施した場合は、非血縁者間移植加算として、10,000点を所定点数に加算する」と明記されています。
みらい(新人医療事務)
他にも似たような加算がついているのを見た気がするんですが…。
あおい(元・医療事務)
はい、K922にはこの加算のほかにも、6歳未満の患者に対する乳幼児加算(2,000点)、抗HLA抗体検査加算(4,000点)、施設基準の届出がある場合のコーディネート体制充実加算(1,500点)などが並んでいます。それぞれ算定要件が別なので、非血縁者間移植加算の対象になるからといって、他の加算も自動的に算定候補になるわけではありません。1つずつ要件を確認する必要があります。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、事前に届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、非血縁者間移植加算そのものには、個別の施設基準や事前の届出は設定されていません。造血幹細胞移植(K922)を実施でき、かつ提供者が非血縁者であるという事実に基づいて算定する加算、という位置づけです。
届出不要でも確認は必要
届出が不要な加算だからといって、確認作業が不要というわけではありません。「本当に同種移植だったか」「提供者が血縁者かどうか」「対象となる区分(1のイ・2のイ)に該当するか」を、診療録・提供者情報と突き合わせて確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
届出がいらないなら気楽ですね。
あおい(元・医療事務)
気楽、というよりは「届出という形式的なチェックポイントがない分、自分たちで実態を確認する意識がより大事」と考えたほうがいいですね。届出がある加算は地方厚生局のチェックが入りますが、この加算は診療の実態そのものが根拠になるので、記録の整備が重要です。
算定タイミング・レセプト記載の注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、レセプトに書く内容で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
造血幹細胞移植(K922)を実施した際に、同種移植・非血縁者間移植であったことを確認したうえで、所定点数に上乗せする形で算定します。加えて、厚生労働省の留意事項通知では、同種移植の請求にあたって「造血幹細胞移植者の診療報酬明細書の摘要欄に、造血幹細胞提供者の療養上の費用に係る合計点数を併せて記載するとともに、造血幹細胞提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付する」ことが求められています。
レセプト記載の確認ポイント(令和8年度)
- 摘要欄への記載: 提供者の療養上の費用に係る合計点数を、移植者側の明細書の摘要欄に記載する
- 提供者側明細書の添付: 提供者の療養に係る所定点数を記載した診療報酬明細書を添付する
- 非血縁者であることの確認: 骨髄バンク等を介した提供であることが分かる記録を診療録に残しておく
みらい(新人医療事務)
提供者側の分の書類まで必要なんですね、思ったより手間がかかりそうです。
あおい(元・医療事務)
同種移植の場合は、提供者(ドナー)側にも療養上の費用が発生するので、そちらの記載・添付が組み合わさって初めて請求が完結する形になっています。医事課だけでなく、移植コーディネーターや看護部門との連携が欠かせません。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の令和6年度改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和6年度点数表との比較資料を確認できておらず、非血縁者間移植加算の点数・算定要件について変更があったかどうかは、現時点では確認できていません。誤った情報をお伝えするよりも、確認できていないことを明示しておきますね。
改定差分について(確認状況)
- 令和8年度点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)では、非血縁者間移植加算は10,000点として明記されています
- 前回改定(令和6年度)からの変更有無は、当サイトの一次資料の範囲では確認できていません
- 正確な比較は、厚生労働省が公開する改定前後の比較資料(個別改定項目について等)でご確認ください
みらい(新人医療事務)
わかりました。確認できていないことは、はっきり言ってもらえるほうが助かります。
あおい(元・医療事務)
「変わっていないはず」という推測で書いてしまうと、かえって現場を混乱させてしまいますからね。確認できないことは確認できないと伝えるのが、このサイトの基本方針です。
自院での確認手順
みらい(新人医療事務)
移植を行っている病院の場合、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
病院・入院での実施かを確認 — 非血縁者間移植加算は病院・入院が前提。外来や在宅では対象外
-
造血幹細胞移植(K922)の実施区分を確認 — 骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植のどれを行ったか、診療録とオーダーで確認
-
同種移植かどうかを確認 — 自家移植ではなく、提供者からの同種移植(1のイ・2のイ)であるかを確認
-
提供者が非血縁者かどうかを確認 — 骨髄バンク等を介した非血縁者からの提供であることを、コーディネート記録・同意書等で確認
-
レセプト記載事項を整える — 提供者側の療養費用の合計点数を摘要欄に記載し、提供者側の明細書を添付
-
関連加算の対象可否も合わせて確認 — 乳幼児加算・抗HLA抗体検査加算・コーディネート体制充実加算など、要件が異なる加算の対象可否を個別に確認

みらい(新人医療事務)
移植の種類と提供者の関係、両方確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特に「同種移植かどうか」と「非血縁者かどうか」の2つは見落としやすいポイントです。カルテ上の記載が曖昧だと、算定の可否を判断する材料が不足してしまいます。
よくある取り漏れ
よくある取り漏れポイント
- 同種移植であることは確認したが、提供者が血縁者か非血縁者かの記録が曖昧なまま算定してしまうケース
- 骨髄移植・末梢血幹細胞移植の「イ(同種移植)」ではなく「ロ(自家移植)」で実施していたのに、加算だけ算定候補としてしまうケース
- 提供者側の診療報酬明細書の添付が漏れてしまうケース
- 乳幼児加算や抗HLA抗体検査加算など、別要件の加算との併算定の可否を個別に確認していないケース
- コーディネート体制充実加算(届出制)と非血縁者間移植加算(届出不要)を混同してしまうケース
関連する加算
みらい(新人医療事務)
この加算とセットで確認しておいたほうがいい加算はありますか?
あおい(元・医療事務)
同じ造血幹細胞移植(K922)に関連する加算として、コーディネート体制充実加算 があります。こちらは同種移植を実施した場合に1,500点が加算されるものですが、非血縁者間移植加算とは違って、地方厚生局への施設基準の届出が前提になっている点が異なります。同じ造血幹細胞移植の患者さんでも、加算ごとに要件が違うので、それぞれ別に確認しておくと取り漏れを防ぎやすいです。
みらい(新人医療事務)
届出がいる加算といらない加算が混ざっているんですね、ややこしいです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。だからこそ、加算ごとに「届出が必要か」「実施の事実だけで算定候補になるか」を1つずつ整理しておくことが大切です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後によくある疑問も聞いておきたいです。臍帯血移植の場合はこの加算の対象にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、非血縁者間移植加算の対象は「1のイ(骨髄移植の同種移植)及び2のイ(末梢血幹細胞移植の同種移植)」に限定されており、3の臍帯血移植は対象として明記されていません。臍帯血移植については別の枠組み(NGS-SBT法実施加算など)が設けられていますので、混同しないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
自家移植のときに間違えて算定してしまったら、どうなりますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の届出がある加算とは違い、この加算は診療の実態(同種移植・非血縁者間であること)に基づいて算定する加算です。実態と異なる算定は過誤請求につながりますので、算定前に診療録や提供者情報で「同種移植かつ非血縁者間移植」であることを必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
病床数が少ない病院でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、この加算に病床数による対象外規定は設けられていません。ただし、造血幹細胞移植自体を実施できる体制(血液内科・移植医療の専門体制など)がなければそもそも土台となる手術自体を算定できませんので、まずは造血幹細胞移植の実施体制があるかどうかが前提になります。
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の点数・算定要件は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)「K922 造血幹細胞移植」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)「K922 造血幹細胞移植」(留意事項通知本文はPDF差し替えのため直接リンクを掲載していません。厚労省の改定関連ページからご確認ください)
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
この加算、対象になるかどうか自分でチェックできる方法があれば知りたいです。
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。造血幹細胞移植の実施状況や提供者の情報を整理しながら、確認すべきポイントを一つずつ整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の診療実態・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。同種移植であること、提供者が非血縁者であることの記録整備を必ず自院で確認してください。