みらい(新人医療事務)
今日「遺伝性乳癌卵巣癌症候群乳房切除加算」っていう加算名を初めて見たんですけど、これって何のための加算なんですか?名前が長くて身構えちゃいます。
あおい(元・医療事務)
落ち着いてくださいね。まず名前を分解すると分かりやすいです。「遺伝性乳癌卵巣癌症候群」は、よくHBOC(エイチ・ビー・オー・シー)と略される遺伝性のがん体質のことです。BRCA1・BRCA2という遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんのリスクが高くなることが分かっています。この加算は、そのHBOCと診断された患者さんに対して「K475 乳房切除術」を行った場合に、所定点数へ上乗せする加算です。
みらい(新人医療事務)
上乗せって、普通の乳房切除術とは別に追加で点数がつくということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。当サイトが収録している一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号)では、K475 乳房切除術の注として、「注 遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者に対して行う場合は、遺伝性乳癌卵巣癌症候群乳房切除加算として、8,780点を所定点数に加算する。」と定められています。
みらい(新人医療事務)
普通のがんの手術じゃなくて、HBOCの患者さんに限った加算なんですね。予防的に乳房を切除するようなケースも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこがこの加算の特徴です。次のセクションで、対象になる手術の範囲を一緒に確認していきましょう。
どんな手術・患者が対象になりますか
みらい(新人医療事務)
まず対象になる患者さんって、具体的にどう確認すればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について)の関連箇所では、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断そのものについて、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群が疑われる者(乳癌若しくは卵巣癌患者である場合又は『D006-18』の『2』に掲げるBRCA1/2遺伝子検査の血液を検体とするものにより遺伝性乳癌卵巣癌症候群と診断された者の父母、子若しくは兄弟姉妹である場合に限る。)の血液を検体とし、PCR法等により、抗悪性腫瘍剤による治療法の選択又は遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断を目的として、BRCA1遺伝子及びBRCA2遺伝子の変異の評価を行った場合に限り算定する。」という記載があります。
みらい(新人医療事務)
つまり、BRCA1・BRCA2遺伝子検査などを経て、遺伝性乳癌卵巣癌症候群だと診断されていることが前提になるということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。そのうえで、対象になる手術の範囲は、医科点数表第2章第10部手術の「通則19」で定められています。当サイトが収録している一次資料(同じ告示)では、「19 区分番号K475及びK888に掲げる手術については、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者に対して行った場合においても算定できる。」と書かれています。
みらい(新人医療事務)
K475が乳房切除術で、K888は何の手術ですか?
あおい(元・医療事務)
K888は「子宮附属器腫瘍摘出術(両側)」、つまり卵巣・卵管を摘出する手術です。通則19は、この2つの手術を、HBOCの患者さんに対するリスク低減目的で行う場合の算定の根拠になっています。ただし、今回の記事のテーマである「8,780点の加算」が明記されているのはK475(乳房切除術)の注だけです。K888側は、加算ではなく別の診療報酬明細書用コードで区別して扱われている点に注意が必要です。

K888(卵巣・卵管摘出)側の扱いに注意
当サイトが収録している一次資料(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて)では、K888を遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者に行った場合の診療報酬明細書用コードとして「子宮附属器腫瘍摘出術(両側、開腹、遺伝性乳癌卵巣癌症候群患者)」「子宮附属器腫瘍摘出術(両側、腹腔鏡、遺伝性乳癌卵巣癌症候群患者)」という区分が別途示されています。ここで扱う「遺伝性乳癌卵巣癌症候群乳房切除加算」(8,780点)はK475側の加算であり、K888側にこの加算が別途つくものではない点を混同しないよう確認してください。
対象になる医療機関はどこですか
みらい(新人医療事務)
対象医療機関について確認したいです。診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが登録している加算区分では、この加算は病院・入院での手術が中心に位置づけられています。診療所・外来・在宅での算定は対象外の可能性がありますが、実際にどの区分で届出が必要かは、自院の施設基準の届出状況によって変わるため、断定はできません。まずは自院が地方厚生局長等への届出を行っているかどうかを確認するところから始めてください。
みらい(新人医療事務)
「対象外の可能性がある」というのは、必ずダメというわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。一次資料でも「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」という条件がついているだけで、医療機関の種別(病院・診療所)そのものを明示的に除外する文言までは、当サイトが確認した範囲では見当たりません。届出の実態と自院の体制次第、というのが正確なところです。
施設基準・研修要件はどうなっていますか
みらい(新人医療事務)
施設基準の中身がいちばん気になります。どんな要件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは少し注意が必要なところです。当サイトが確認できた一次資料は、令和2年度に発出された疑義解釈です。通則19に関する施設基準の一部として、「質問: 医科点数表第2章第10部手術の通則の19に関する施設基準に『当該医師は医療関係団体が主催する遺伝性乳癌卵巣癌症候群に関する研修を修了していること。』とあるが、この研修とは具体的に何を指すのか。回答: 現時点では、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構が行う教育セミナーを指す。」というやり取りが公開されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、担当する医師が特定の研修を修了している必要があるということですか?
あおい(元・医療事務)
令和2年度時点の疑義解釈では、そのように示されていました。通則19という区分自体は令和8年度の告示にも引き続き存在していますが、この研修要件の詳細(研修の主催団体や具体的な修了条件)が令和8年度時点でも同じ内容かどうかは、当サイトが確認した範囲の資料だけでは確定できません。届出の際は、必ず最新の施設基準通知で研修要件の詳細を確認してください。
みらい(新人医療事務)
ほかにも施設基準の要件ってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、同じく令和2年度の疑義解釈に、画像診断に関する要件も出てきます。「質問: 医科点数表第2章第10部手術の通則の19に関する施設基準において、『乳房切除術を行う施設においては乳房MRI撮影加算の施設基準に係る届出を行っていること』とあるが、乳房MRI撮影加算の施設基準を満たさないが、当該診療を行うに十分な体制が取られている場合、算定できないのか。回答: 画像診断管理加算2又は3を算定しており、関連学会より乳癌の専門的な診療が可能として認定されている保険医療機関が、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の患者の診療に当たり、1.5テスラ以上のMRI装置を有する他の保険医療機関と連携し、当該患者に対してMRI撮影ができる等、乳房MRI撮影加算の施設基準を満たす保険医療機関と同等の診療ができる場合においては、当該施設基準を満たすものとして差し支えない。」という内容です。
みらい(新人医療事務)
自院に1.5テスラ以上のMRI装置がなくても、連携があれば要件を満たせる場合があるということですね。
あおい(元・医療事務)
疑義解釈ではそのように整理されていますが、これも令和2年度時点の内容です。連携の文書契約が必要とされている点も含めて、現行の施設基準通知・届出様式で必ず裏取りしてください。ここは資料の年度が古いので、確認が必要な項目として扱ってくださいね。
施設基準の年度差に注意
研修要件・MRI連携要件は令和2年度の疑義解釈で示された内容です。通則19そのものは令和8年度の告示にも存在していますが、要件の細部が変わっている可能性があるため、届出前に必ず最新の施設基準通知・届出様式で確認が必要です。
カンファレンス・患者説明の要件は必須ですか
みらい(新人医療事務)
施設基準以外に、実施前にやっておくべきことってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。当サイトが収録している一次資料(診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について、令和8年3月5日 保医発0305第6号)には、「26 『通則19』に掲げる手術を実施するに当たっては、実施前に臨床遺伝学に関わる専門的な知識及び技能を有する医師並びに乳腺外科、産婦人科又は婦人科の医師が参加するカンファレンスを実施し、遺伝カウンセリング等の結果を踏まえた治療方針の検討を行うこと。また当該カンファレンスにおける検討内容を踏まえ、当該手術の目的並びに当該手術の実施によって生じうる利益及び不利益について当該患者に事前に説明を行うこと。」と、通則19の手術を実施するときの手順が具体的に書かれています。
みらい(新人医療事務)
カンファレンスと患者説明の両方が必要なんですね。カンファレンスのメンバーは誰と誰になりますか?
あおい(元・医療事務)
引用のとおり、臨床遺伝学に関わる専門的な知識及び技能を有する医師と、乳腺外科・産婦人科・婦人科いずれかの医師が参加することが求められています。そのうえで、遺伝カウンセリングの結果を踏まえた治療方針の検討を行い、手術の目的と利益・不利益を患者さんに事前説明する、という流れです。これは令和8年度の留意事項通知に明記されている内容なので、現行の要件として確認しておく必要があります。
みらい(新人医療事務)
これは記録に残しておいたほうがよさそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。カンファレンスの実施記録や説明内容の記録がなければ、後から算定の根拠を示せなくなる可能性があります。診療録への記載を徹底しておくことをおすすめします。
届出はどのように確認すればいいですか
みらい(新人医療事務)
届出そのものは、どこに出すものなんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では「地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」という表現になっています。具体的な届出様式や提出窓口は、基本診療料・特掲診療料の施設基準等の届出に関する手続きを定めた通知(基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて、令和8年3月5日 保医発0305第7号)に基づいて手続きすることになります。当サイトが確認した範囲では、様式の具体的な項目までは今回の資料に含まれていないため、実際の届出様式は地方厚生局のホームページや同通知の別添で確認してください。
みらい(新人医療事務)
届出さえ出しておけば、あとは自動的に算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、それだけでは足りません。届出はあくまで前提条件のひとつです。施設基準の研修要件やMRI連携要件、そしてカンファレンス・患者説明の実施という複数の条件がそろって、はじめて算定候補になります。順番に確認していきましょう。

自院で確認する順番(令和8年度)
- 患者さんがBRCA1/2遺伝子検査等により遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と診断されているか確認する
- 実施予定の手術がK475(乳房切除術)に該当するか確認する(K888側は加算対象外で扱いが異なる)
- 臨床遺伝学の専門知識を持つ医師と乳腺外科・産婦人科(婦人科)の医師によるカンファレンスを事前に実施し、記録を残す
- カンファレンスの検討内容を踏まえて、手術の目的・利益・不利益を患者さんに事前説明し、記録を残す
- 施設基準(研修要件・画像診断の連携体制を含む)の届出が地方厚生局長等に受理されているか確認する
- すべて確認できたら、遺伝性乳癌卵巣癌症候群乳房切除加算の算定候補として院内で最終確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなものがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかパターンがあります。ひとつずつ見ていきましょう。
取り漏れが起きやすいポイント
- 診断根拠の記録漏れ: BRCA1/2遺伝子検査の結果や、遺伝性乳癌卵巣癌症候群と診断された経緯がカルテに明記されていないケースがあります
- カンファレンス記録の未整備: カンファレンスを実施していても、参加した医師の専門性(臨床遺伝学・乳腺外科等)や検討内容が記録に残っていない場合、後から算定根拠を示しにくくなります
- K888側との混同: 卵巣・卵管摘出(K888)を行った場合に、乳房切除加算(8,780点)を誤って併せて計上してしまう取り違えが起こり得ます。加算はK475側にのみ規定されています
- 施設基準届出の失効確認漏れ: 研修を修了した医師が異動・退職した場合、施設基準を満たさなくなっている可能性があります
みらい(新人医療事務)
K888との混同は、名前が似ているだけに怖いですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。似た名前の加算・関連コードを扱うときほど、条文の主語(どの区分番号の話をしているか)を確認する癖をつけておくと安心です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集した一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号の通則19、令和8年3月5日保医発0305第6号の留意事項通知)の範囲では、前回改定(令和6年度)からの点数・対象手術(K475及びK888)・カンファレンス要件についての変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。
みらい(新人医療事務)
変更なしということは、これまでの考え方がそのまま続いているということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし、施設基準の研修要件やMRI連携要件については、当サイトが確認できた一次資料が令和2年度時点の疑義解釈にとどまっており、令和8年度時点でも同一の運用かどうかまでは確認しきれていません。点数や対象手術の範囲は安定していますが、施設基準の細部は必ず最新の通知で確認する、という姿勢を崩さないようにしてください。
前回→今回の時系列(当サイト確認範囲)
- 令和2年度: 疑義解釈で通則19の施設基準(研修要件・MRI連携要件)が示される
- 令和6年度: 当サイトが確認した資料の範囲では、点数・対象手術に関する変更は確認されていない
- 令和8年度: 8,780点の加算・通則19(K475及びK888が対象)・カンファレンス要件(留意事項通知)が現行の一次資料で確認できる
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をまとめておきたいです。まず、外来で検査だけ受けた場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
この加算はK475(乳房切除術)の実施に対する加算なので、検査のみでは対象になりません。手術そのものが行われ、かつHBOCの診断・カンファレンス・施設基準の要件を満たしている場合に、算定候補として検討する流れになります。
みらい(新人医療事務)
遺伝カウンセリングは院内で完結させないといけないんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「遺伝カウンセリング等の結果を踏まえた治療方針の検討」という記載があるだけで、院内実施に限定するとまでは書かれていません。他院や専門機関と連携して行った遺伝カウンセリングの結果を踏まえてカンファレンスを行うケースもあり得ますが、その場合の記録の残し方も含めて自院の運用で確認しておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていないことに、あとから気づいた場合はどうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
その場合は速やかに地方厚生局へ相談し、必要な変更届出を行うことが基本です。研修を修了した医師が不在になった、連携体制が崩れたといった変化に気づいたときほど、早めの確認と届出の見直しが大切になります。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠にしています。詳細な施設基準・届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号、厚生労働省公表資料)
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号、厚生労働省公表資料)
- 疑義解釈資料の送付について(その1/その23、令和2年度) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。同じ手術料の通則にある加算として、施設基準の考え方を比較したい場合は外科医療確保特別加算(長時間・高難度手術に対する通則加算)もあわせてご覧ください。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。