みらい(新人医療事務)
精神科の入院患者さんが退院するとき、「精神科地域移行支援加算」っていう名前を見かけたんですけど、これって何を評価する加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科退院指導料(I011)に上乗せできる加算の一つです。令和8年度の告示では、精神科退院指導料の注2として「入院期間が1年を超える精神障害者である患者又はその家族等に対して、精神科の医師、看護師、作業療法士及び精神保健福祉士が共同して、退院後に必要となる保健医療サービス又は福祉サービス等に関する計画を策定し、当該計画に基づき必要な指導を行った場合であって、当該患者が退院したときに、精神科地域移行支援加算として、退院時に1回に限り200点を所定点数に加算する」と定められています。長期入院の患者さんが地域に戻るときの多職種での退院支援を評価する加算、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
「精神科退院指導料」自体とは別物なんですか?
あおい(元・医療事務)
別物というより「上乗せ」の関係です。精神科退院指導料(I011)という320点の指導料がベースにあって、そのうち入院期間が1年を超える患者さんが対象の場合に限り、退院時にさらに200点が加算候補になる、という構造です。ベースの指導料と加算のどちらも算定できるかは、入院期間の要件が異なる点に注意が必要です。
精神科地域移行支援加算とは
みらい(新人医療事務)
もう少し具体的に、どんな場面で出てくる加算なのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
精神科病棟に長期入院している患者さんを地域生活へ戻す「地域移行」の取り組みを後押しする加算です。入院が長引くほど、退院後の生活を支えるための保健医療サービスや福祉サービスとの調整が複雑になります。そこで、精神科の医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士が共同で退院後の計画を作り、その計画に基づいて指導を行った上で実際に退院した場合に、退院時の指導料に上乗せする形で評価されています。
みらい(新人医療事務)
「共同して」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。一次資料の文言でも「精神科の医師、看護師、作業療法士及び精神保健福祉士が共同して」と多職種の関与が明記されています。特定の職種一人だけで計画を作った場合は、この文言に照らして算定候補になるか確認が必要です。
対象になる患者・医療機関
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんの条件を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の要件をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 対象患者 | 入院期間が1年を超える精神障害者である患者、又はその家族等 |
| 実施者 | 精神科の医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士が共同 |
| 内容 | 退院後に必要な保健医療サービス又は福祉サービス等に関する計画の策定と、計画に基づく指導 |
| 算定のタイミング | 当該患者が退院したとき(退院時) |
| 医療機関の種別 | 診療所・病院の入院(対象: 診療所・病院・入院) |
みらい(新人医療事務)
「入院期間が1年を超える」というのは、精神科退院指導料そのもの(注1・320点)とは条件が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、そこが混同しやすいポイントです。精神科退院指導料の注1(320点)は「入院期間が1月を超える」患者又は家族等が対象ですが、精神科地域移行支援加算(注2・200点)は「入院期間が1年を超える」患者又は家族等が対象と、期間の基準が異なります。自院で該当患者を確認するときは、まず入院期間が1年を超えているかどうかを最初にチェックしてください。
点数と算定単位(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数の関係を図でも見てみたいです。
あおい(元・医療事務)
それでは点数の位置づけを整理した図を見てみましょう。

あおい(元・医療事務)
図の通り、ベースとなる精神科退院指導料320点(入院中1回)に対して、精神科地域移行支援加算は退院時に1回に限り200点が加算候補になる、という構造です。合計点数は状況によって変わるため、実際のレセプトでは自院の算定履歴と合わせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
「退院時に1回に限り」というのは、月に1回とかではなく、その患者さんの退院につき1回ということですか?
あおい(元・医療事務)
その理解で合っています。一次資料には「退院時に1回に限り200点を所定点数に加算する」とあり、月単位の上限ではなく、対象患者の退院という出来事に対して1回の算定になります。同じ患者さんが再入院・再退院した場合にどう扱うかなど、個別のケースで判断に迷う場合は、審査支払機関への確認をお勧めします。
施設基準・届出の考え方
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、施設基準の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、精神科地域移行支援加算そのものについて、個別の施設基準や地方厚生局への届出を求める記載は確認されていません。ベースとなる精神科退院指導料が診療所・病院の入院医療で対象になる指導料であるため、その枠組みの中で対象患者の要件(入院期間・多職種共同・計画策定と指導)を満たしているかどうかが、算定候補になるかの中心的な確認ポイントになります。
みらい(新人医療事務)
「届出が要らないなら気にしなくていい」って思っちゃいそうですが。
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。届出の有無にかかわらず、対象患者の入院期間・多職種の共同関与・計画の策定と指導の実施・退院というタイミングの4つが揃っているかどうかは、カルテや退院時の記録で自院が確認する必要があります。届出不要という整理は、あくまで現時点で確認できている一次資料の範囲での話ですので、最終的には自院の届出状況・診療内容を公式資料と照らし合わせてご確認ください。
自院で見落としやすいポイント
- 入院期間の起算: 「1年を超える」の起算点(入院日からの経過期間)をカルテで確認する
- 多職種の関与記録: 医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士の共同関与が記録に残っているか
- 計画書と指導記録: 退院後の保健医療サービス・福祉サービスに関する計画書と、それに基づく指導の記録が揃っているか
- 精神科退院指導料(注1)との違い: 対象となる入院期間の基準(1月超と1年超)を取り違えていないか
算定タイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングでほかに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
ベースの精神科退院指導料(注1・320点)は「入院中1回」を算定単位とする一方、精神科地域移行支援加算(注2・200点)は「退院時に1回」が算定単位です。つまり指導自体は入院中に行われますが、加算の算定タイミングは退院というタイミングに紐づいている点を混同しないようにしてください。
算定タイミングの注意
精神科地域移行支援加算は「退院したとき」に退院時1回に限り加算する加算です。指導を行った時点ではなく、患者が実際に退院した事実が算定候補の条件になります。指導後に退院に至らなかった場合の扱いなど、個別の事情がある場合は自院の届出状況や公式資料、審査支払機関で確認が必要です。
精神科地域移行実施加算との違い(似た名前の加算に注意)
みらい(新人医療事務)
「精神科地域移行実施加算」という、似た名前の加算も見つけたんですが、これは同じものですか?
あおい(元・医療事務)
名前は似ていますが、告示上は別の区分の加算です。混同しやすいので整理しておきましょう。
| 項目 | 精神科地域移行支援加算(本記事) | 精神科地域移行実施加算 |
|---|---|---|
| コード区分 | I011(精神科退院指導料)の注2 | A230-2 |
| 点数 | +200点 | 20点 |
| 算定単位 | 退院時1回 | 1日につき |
| 対象 | 入院期間が1年を超える精神障害者である患者又はその家族等 | 精神病棟における入院期間が5年を超える患者 |
| 施設基準の届出 | 当サイトが収録している一次資料の範囲では届出を求める記載は確認されていません | 必要(一次資料に施設基準への適合・地方厚生局長等への届出の記載あり) |
あおい(元・医療事務)
精神科地域移行実施加算(A230-2)は、告示で「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、精神病棟における入院期間が5年を超える患者に対して、退院調整を実施し、計画的に地域への移行を進めた場合」に1日につき加算する、と定められています。入院期間の基準(1年超か5年超か)も、算定単位(退院時1回か1日につきか)も異なるため、名前だけで同じ加算だと判断しないよう注意してください。
みらい(新人医療事務)
名前だけ見て「地域移行」つながりで同じだと思ってしまいそうです。
あおい(元・医療事務)
よくある取り違えです。自院で確認する際は、対象になっている加算がどちらの区分番号(I011の注2か、A230-2か)に基づくものかを、必ず告示の条文と突き合わせてください。
精神科地域移行支援加算 令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の一次資料(告示)の範囲では、精神科地域移行支援加算(I011 精神科退院指導料 注2)について、前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026-08)。
改定の確認状況(令和8年度)
- 点数(200点)・算定単位(退院時1回)ともに、当サイトが収録している一次資料の範囲では変更は確認されていません
- 対象患者の要件(入院期間が1年を超える精神障害者である患者又はその家族等)についても同様です
- 今後、疑義解釈や訂正通知が発出された場合は、公式資料を優先して確認してください
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
では実際に自院で確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと整理しやすいです。

自院で確認する順番
- 対象患者かどうかを確認する — 入院期間が1年を超える精神障害者である患者、又はその家族等に該当するか
- 多職種の共同関与を確認する — 精神科の医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士が共同で計画策定に関わっているか
- 計画書と指導記録を確認する — 退院後の保健医療サービス・福祉サービス等に関する計画書があり、それに基づく指導記録が残っているか
- 退院のタイミングを確認する — 対象患者が実際に退院したかどうか(退院時に1回のみの加算のため)
- 精神科退院指導料(注1)との重複整理 — 入院期間1月超で算定した注1と、入院期間1年超の注2の要件を取り違えていないか確認する
みらい(新人医療事務)
この順番で一つずつ見ていけば、算定候補かどうか整理しやすそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、あくまで一次資料をもとにした確認の順番であって、最終的な算定可否を保証するものではありません。カルテ・計画書・指導記録を突き合わせて、自院の実態と一次資料の要件が一致しているかを確認してください。
よくある取り漏れ
取り漏れやすいケース
- 退院後の計画策定に多職種のうち一部の職種しか関わっておらず、「共同して」の要件を満たしているか確認が漏れているケース
- 入院期間が1年に近い患者について、起算日を勘違いして「1年を超える」に該当すると誤認してしまうケース
- 精神科退院指導料の注1(320点・入院中1回)だけを算定して、注2(200点・退院時1回)の対象になり得るかの確認自体を行っていないケース
- 精神科地域移行実施加算(A230-2)と名前だけで混同し、施設基準の届出要否を誤って判断してしまうケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか気になったことを聞いてもいいですか? 診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の索引上、精神科地域移行支援加算の対象は「診療所・病院・入院」と整理されており、病院か診療所かという医療機関の種別だけで一律に対象外になるものではありません。ただし実際には長期入院の患者を扱う精神科病棟がある医療機関で該当するケースが中心になりますので、自院の入院患者の状況と照らして確認してください。
みらい(新人医療事務)
入院期間の「1年」は、暦年ではなく実際の入院日数で数えるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「入院期間が1年を超える」とだけ記載されており、当サイトが収録している範囲では起算日の詳細な計算方法までは確認できていません。入院日からの通算期間の考え方など、判断に迷う場合は公式資料や審査支払機関に確認することをお勧めします。
みらい(新人医療事務)
精神科退院指導料の注1(320点)と、この注2(200点)は、同じ患者さんで両方算定できますか?
あおい(元・医療事務)
対象となる入院期間の要件が異なるため(注1は1月超、注2は1年超)、同一患者について両方の要件を満たす場合には両方が算定候補になり得る整理です。ただし個別の算定順序や記録の整え方によって扱いが変わる可能性もあるため、実際の算定にあたっては公式資料や自院のレセプト担当者、審査支払機関で確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の入院期間や多職種の関与状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な算定要件は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)区分番号I011 精神科退院指導料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 同告示 区分番号A230-2 精神科地域移行実施加算 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。