みらい(新人医療事務)
「医療観察疾患別等診療計画加算」って加算表で見つけたんですけど、これ、うちのクリニックでも算定候補になりますか?名前だけだと精神科の加算っぽいのは分かるんですけど…。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。結論から言うと、多くの一般クリニック・病院にとっては対象外の可能性が高い加算です。まず大前提として、この加算は普通の精神科の診療報酬とは別枠の「医療観察法」という制度専用の点数なんです。
みらい(新人医療事務)
医療観察法…聞いたことはありますけど、詳しくは知らないです。
あおい(元・医療事務)
正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。心神喪失や心神耗弱の状態で重大な他害行為(殺人・放火・強盗などが想定されています)を行い、不起訴や無罪等が確定した人に対して、社会復帰に向けた専門的な医療を提供するための制度です。この制度に基づく通院医療は、どの医療機関でも受けられるわけではなく、**厚生労働大臣が指定した「指定通院医療機関」**でしか実施できません。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、うちのクリニックが精神科を標榜していても、その指定を受けていなければ関係ない加算ということですか?
あおい(元・医療事務)
その理解でだいたい合っています。ただし「関係ない」と断定はせず、まずは自院が指定通院医療機関にあたるかどうかから確認するのが安全です。指定を受けていない医療機関では、この加算はもちろん、土台になる医療観察精神科デイ・ナイト・ケア自体を算定する場面がそもそも発生しません。なお、一般の精神科病棟で算定する加算(例: 精神科隔離室管理加算)は、この医療観察法の点数表とは別の一般の医科点数表に基づく加算です。同じ「精神科の加算」でも制度が異なる点は押さえておくとよいでしょう。
医療観察疾患別等診療計画加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも、この加算は何に対しての加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法に基づく通院医療の点数表の中に「医療観察精神科デイ・ナイト・ケア」という項目があります。これは1日につき1,000点の療法です。この療法を実施する際に、対象者の疾患等に応じた診療計画を作成して行った場合に、上乗せで算定できるのが医療観察疾患別等診療計画加算です。
みらい(新人医療事務)
「疾患別等診療計画加算」って、普通の精神科デイ・ケアにもある名前と似ていませんか?
あおい(元・医療事務)
よく気づきましたね。実は一般の医科点数表側にも、区分番号「I010-2」精神科デイ・ナイト・ケアの注加算として「疾患別等診療計画加算」という似た名前の加算があります。ただし、こちらは通常の保険診療(医療観察法の対象ではない一般の患者さん)向けの加算で、算定する点数表も届出先も別です。名前が似ているだけの別の加算なので、混同しないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
名前だけで「同じものだろう」と思い込むのは危険なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。医療観察法の通院医療の点数表は「医療観察診療報酬点数表」という独立した告示で定められていて、一般の医科点数表とは別の体系です。今回の医療観察疾患別等診療計画加算は、あくまでこの医療観察法側の告示に基づく加算です。
点数と根拠(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどれくらいなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示に基づくと、医療観察疾患別等診療計画加算は40点です。これは土台となる医療観察精神科デイ・ナイト・ケア(1日につき1,000点)に上乗せする形で算定します。厚生労働省の告示本文には次のように書かれています。
根拠となる告示の文言(原文)
「10 医療観察精神科デイ・ナイト・ケア(1日につき) 1,000点」 「注4 当該療法について、疾患等に応じた診療計画を作成して行った場合は、医療観察疾患別等診療計画加算として、所定点数に40点を加算する。」 (心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第八十三条第二項の規定による医療に要する費用の額の算定方法、平成17年厚生労働省告示第365号、最終改正: 令和8年3月31日厚生労働省告示第146号)
みらい(新人医療事務)
なるほど、あくまで「デイ・ナイト・ケア」の注加算なんですね。表にしてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
まとめるとこうなります。
| 項目 | 点数 | 算定単位 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 医療観察精神科デイ・ナイト・ケア | 1,000点 | 1日につき | 医療観察診療報酬点数表 第2章第10節 |
| 医療観察疾患別等診療計画加算 | 40点 | 上記療法の実施日に加算 | 同 注4 |
| 医療観察通院前期・中期加算(参考・別加算) | 50点 | 前期・中期通院対象者通院医学管理料算定月 | 同 注3 |
みらい(新人医療事務)
一番下の「医療観察通院前期・中期加算」は、今回の加算とは別物なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、別の加算です。どちらも医療観察精神科デイ・ナイト・ケアに対する上乗せですが、加算の理由(要件)が違います。疾患別等診療計画加算は「診療計画を作成したか」、通院前期・中期加算は「前期・中期の通院対象者通院医学管理料を算定した月かどうか」で判定されます。両方の要件を満たせば、それぞれ別に算定できると読めますが、実際の運用では請求システムや地方厚生局の指導内容も踏まえて確認することをおすすめします。

対象になりうる医療機関・対象者
みらい(新人医療事務)
「指定通院医療機関」というのは、どうやって決まるんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法に基づいて厚生労働大臣が指定した医療機関だけが指定通院医療機関になれます。一般の保険医療機関の指定とは別の仕組みで、通常の届出だけで得られるものではありません。厚生労働省のページでは、この制度についてこう説明されています。
制度の説明(厚生労働省)
「医療観察法の通院による医療の決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた人及び退院を許可された人については、保護観察所の社会復帰調整官が中心となって作成する処遇実施計画に基づいて、原則として3年間、地域において、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定通院医療機関)による医療を受けることとなります。」 (厚生労働省「心神喪失者等医療観察法」制度概要ページより)
みらい(新人医療事務)
つまり対象になる患者さんも、一般の精神科の患者さんではなく、医療観察法の審判で通院処遇と決定された方に限られる、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そういうことになります。加えて、この加算そのものの算定要件は「当該療法(医療観察精神科デイ・ナイト・ケア)について、疾患等に応じた診療計画を作成して行った場合」です。診療計画の様式や記載項目の細部までは、当サイトが確認した告示本文の範囲では明記されていませんでした。この点は算定方法通知や記載要領など、告示に付随する通知類も合わせて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
資料に書かれていないことは、憶測で埋めない方がいいですよね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。書かれていない具体的な様式や運用細則については、当サイトでは断定せず「要確認」として扱います。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
医療観察疾患別等診療計画加算そのものに固有の施設基準は、当サイトが確認した告示本文の範囲では明記されていません。ただし、土台となる医療観察精神科デイ・ナイト・ケア自体には、次の施設基準要件があります。
土台となる療法の施設基準(告示原文)
「注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た指定通院医療機関において行われる場合に算定する。」 (同告示 第2章第10節「10 医療観察精神科デイ・ナイト・ケア」注1)
みらい(新人医療事務)
ということは、まず医療観察精神科デイ・ナイト・ケアの施設基準に適合して地方厚生局長へ届出をしていることが前提で、そのうえで診療計画を作成すれば加算できる、という流れですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した条文の構造からは、そのように読めます。ただし「施設基準に適合しているとみなされるかどうか」「届出が受理されているかどうか」の最終判断は、実際に届出先である地方厚生局が行うものです。当サイトの整理だけで届出済みとみなさず、自院の届出状況を地方厚生局に確認することをおすすめします。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、他の加算との関係で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
大きく2点あります。
併算定に関する告示の記載
「注5 医療観察精神科デイ・ナイト・ケアを算定した場合は、医療観察精神科デイ・ケア及び医療観察精神科ナイト・ケアは算定しない。」 (同告示 第2章第10節「10 医療観察精神科デイ・ナイト・ケア」注5)
あおい(元・医療事務)
これは土台の療法どうしの併算定制限です。医療観察精神科デイ・ナイト・ケアを算定した日には、同じ日に医療観察精神科デイ・ケアや医療観察精神科ナイト・ケアを重ねて算定できません。今回の疾患別等診療計画加算自体について、他の加算との併算定を明示的に禁止する記載は、当サイトが確認した告示本文の範囲では見当たりませんでした。見当たらないことをもって「併算定できる」と断定するのではなく、実際の請求前に地方厚生局や算定方法通知で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
もう一つは何ですか?
あおい(元・医療事務)
名前が似ている一般の医科点数表側の「疾患別等診療計画加算」(I010-2精神科デイ・ナイト・ケアの注加算)と取り違えないことです。対象患者・届出先・点数表そのものが異なるので、レセプトのコード選択を間違えないよう注意してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法の診療報酬は、令和8年3月31日付の厚生労働省告示第146号によって一部改正されています。近畿厚生局が公表している令和8年度改定関係ページでも、この告示番号が令和8年度改定の算定方法告示として掲載されています。
改定の位置づけ(令和8年度・一次情報ベース)
「算定方法告示 令和8年3月31日 厚生労働省告示第146号(一部改正)」 (近畿厚生局「令和8年度 医療観察法の診療報酬等改定関係」ページより)
あおい(元・医療事務)
そのうえで、厚生労働省が公表している令和8年度医療観察診療報酬改定の概要資料を確認しましたが、今回の医療観察精神科デイ・ナイト・ケアおよび医療観察疾患別等診療計画加算(40点)についての新設・点数変更・要件変更の記載は見当たりませんでした。改定資料で大きく取り上げられていたのは、入院処遇側(医療観察一般病棟入院料の新設など)や通院対象者の急性増悪時の管理料の見直しが中心でした。
みらい(新人医療事務)
つまり、この40点の加算自体は、前回改定から大きくは変わっていない、ということですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した一次資料(告示本文および厚生労働省公表の改定概要資料)の範囲では、医療観察疾患別等診療計画加算そのものの点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。ただし、告示は令和8年度改定でも一部改正されているため、条文の他の部分(訪問看護基本料など)には変更が入っています。加算そのものではなく制度全体としては改定が入っている点は押さえておくとよいでしょう。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の「指定通院医療機関」の指定を受けているかを確認する
- 医療観察精神科デイ・ナイト・ケアの施設基準に適合し、地方厚生局長へ届出をしているかを確認する
- 対象患者(医療観察法の通院処遇決定を受けた方)に対して、疾患等に応じた診療計画を作成しているかを確認する
- ここまで満たしていれば算定候補。実際の請求前に算定方法通知・記載要領も合わせて確認する
みらい(新人医療事務)
1番目の「指定を受けているか」で、そもそも多くのクリニックは対象外になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。指定通院医療機関は全国的にも数が限られており、精神科を標榜しているだけでは対象になりません。まずこの前提を押さえることが、無駄な確認作業を減らすことにつながります。
よくある取り漏れ・勘違い
みらい(新人医療事務)
実際によくある勘違いってありますか?
よくある取り漏れ・勘違い
名前の似た加算との混同: 一般の医科点数表側の「疾患別等診療計画加算」(I010-2の注加算)と、医療観察法側の「医療観察疾患別等診療計画加算」を混同してしまうケース。 土台の療法の取り違え: 医療観察精神科デイ・ケアや医療観察精神科ナイト・ケアを実施した日に、デイ・ナイト・ケア用の加算を誤って算定候補としてしまうケース。 指定の有無を確認せず検討してしまう: 指定通院医療機関の指定を受けていないのに、点数表の名称だけを見て算定を検討してしまうケース。
あおい(元・医療事務)
どれも「名称・コードだけを見て判断する」ことから起きやすい取り違えです。必ず自院の指定状況と、実施した療法がどれだったかをセットで確認してください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
うちは精神科クリニックですが、医療観察法の指定は受けていません。この加算は関係ないと考えていいですか?
あおい(元・医療事務)
指定通院医療機関でなければ、医療観察精神科デイ・ナイト・ケア自体を算定する場面が発生しないため、この加算も対象外の可能性が高いです。ただし今後指定を受ける予定がある場合は、要件を押さえておく価値はあります。
みらい(新人医療事務)
一般の「疾患別等診療計画加算」と両方の届出が必要になることはありますか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法側と一般の医科点数表側は別の点数表・別の届出体系です。両方の診療(医療観察法対象の患者さんと、一般の精神科デイ・ナイト・ケア対象の患者さん)を行う医療機関であれば、それぞれの要件を別々に確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
診療計画の様式は決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した告示本文の範囲では、様式の詳細までは明記されていませんでした。算定方法通知や記載要領など、告示に付随する通知文書で確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。