みらい(新人医療事務)
あおいさん、「治療抵抗性統合失調症対象者受入促進加算」って名前を初めて見たんですけど、これって普通のクリニックでも算定候補になる加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
結論から言うと、この加算は通常の医科点数表の加算とは少し違う位置づけなんです。医療観察法(心神喪失者等医療観察法)という別の制度のもとで運用されている「医療観察診療報酬点数表」の加算で、令和8年度時点で2,220点となっています。まずは制度の枠組みから確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
医療観察法…学生時代に聞いた気がしますが、詳しくは覚えていないです。
あおい(元・医療事務)
医療観察法は、重大な他害行為を、心神喪失などの状態で行った人に対して、継続的で適切な医療と、その確保に必要な観察・指導を行うことで、病状の改善と再他害行為の防止を図り、社会復帰を促進するための手続きなどを定めた法律です。厚生労働省の資料でも「心神喪失等で重大な他害行為を行った者に対して、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、病状の改善及び同様の行為の再発防止を図り、その社会復帰を促進するよう、対象者の処遇を決定する手続等を定めるもの」と説明されています。
みらい(新人医療事務)
つまり普通の外来・入院の診療報酬とは別の枠組みなんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。医療観察法の対象になった方の医療は、入院による医療の場合と、入院によらない通院医療の場合とに分かれます。厚生労働省の資料でも、指定通院医療機関は「入院によらない医療を提供」する機関と説明されています。入院によらない通院医療を受ける方を「通院対象者」と呼び、この加算は通院対象者を対象にした点数表の中に位置づけられている加算です。基礎点数になっている医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料についても、あわせて確認しておくとわかりやすいと思います。
この加算の土台になっている点数
みらい(新人医療事務)
この加算、単独で算定できるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、これは単独の点数ではなく、「医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料」という基礎点数への上乗せ(加算)です。令和8年度の医療観察診療報酬点数表では、この基礎点数は500点とされています。
みらい(新人医療事務)
500点の管理料に、2,220点が上乗せされるということですか?
あおい(元・医療事務)
はい。ただし後で説明しますが、この加算は毎回つくものではなく、条件を満たしたときに一度だけ加算されるものです。まずは全体像を表で整理しますね。
| 項目 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|
| 医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料(基礎点数) | 500点 | 月1回(治療薬を投与したとき) |
| 治療抵抗性統合失調症対象者受入促進加算 | 2,220点 | 初回算定時に限り(1回のみ) |

みらい(新人医療事務)
マスターコードなど、事務的な整理もしておきたいです。
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している医科診療行為マスターの範囲では、次のように登録されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算名 | 治療抵抗性統合失調症対象者受入促進加算 |
| マスターコード | 188010970 |
| 対象年度 | 令和8年度 |
| 適用開始 | 令和8年6月1日 |
| 区分 | 加算(基礎点数への上乗せ) |
対象になるのはどんな場面か
みらい(新人医療事務)
「受け入れた場合」というのが加算の名前にも入っていますが、具体的にはどういう場面を指すんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の条文をそのまま引くと、「クロザピンによる治療を受けている対象者を受け入れた場合は、治療抵抗性統合失調症対象者受入促進加算として、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料の初回算定時に限り、所定点数に2,220点を加算する」とされています。つまり、クロザピンによる治療をすでに受けている通院対象者を、自院(指定通院医療機関)が新たに受け入れたときに、その方について初めてこの管理料を算定するタイミングで加算が候補になる、という構造です。
みらい(新人医療事務)
クロザピンというのは、統合失調症のお薬ですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。厚生労働省の特定疾患治療管理料の告示では「特定薬剤治療管理料1を算定できる治療抵抗性統合失調症治療薬とは、クロザピンをいう」と定義されています。医療観察の点数表でも「治療抵抗性統合失調症治療薬」という同じ言葉が使われているので、実務上はクロザピンを指すと理解されています。
用語の整理
治療抵抗性統合失調症治療薬: 特定疾患治療管理料の告示で「クロザピンをいう」と定義されている用語です。通院対象者: 医療観察法にもとづき、入院によらない通院医療を受けている方を指します。指定通院医療機関: 医療観察法にもとづき、入院によらない医療を提供する機関として指定を受けた医療機関です。基準を満たせば設置主体は民間でも可能とされています。
みらい(新人医療事務)
ということは、対象になる医療機関もかなり限定されるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、そこは特に誤解しやすいポイントです。この加算は、医療観察法にもとづく「指定通院医療機関」であることが前提です。通常の医科点数表の届出とは別に、医療観察法上の指定を受ける必要があります。一般的な精神科クリニックが、通常の統合失調症の外来診療の延長でこの加算を算定できる、という制度ではない可能性が高いです。
対象医療機関について
この加算は医療観察法の「指定通院医療機関」における通院対象者への医療を前提にした点数表の加算です。医療観察法の対象ではない一般の外来診療は、資料の範囲では対象に含まれていない可能性が高いですが、自院が医療観察法上の指定を受けているかどうかは、地方厚生局への確認が必要です。
施設基準・届出の考え方
みらい(新人医療事務)
基礎点数である「医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料」自体にも、施設基準ってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。一次資料には「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た指定通院医療機関において、治療抵抗性統合失調症治療薬を投与している治療抵抗性統合失調症の通院対象者に対して、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、当該薬剤の効果及び副作用等について通院対象者に説明し、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り、当該薬剤を投与したときに算定する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
つまり、①施設基準を満たして地方厚生局長に届け出ていること、②通院対象者にクロザピンを投与していること、③計画的な医学管理と、薬の効果・副作用の説明を含む療養指導を行っていること、が条件になっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。ただし、「厚生労働大臣が定める施設基準」の具体的な人員配置や実績要件など、告示・通知本文以上の細かい内容までは、当サイトが確認できた一次資料の範囲では確認できていません。届出を検討する場合は、地方厚生局の窓口で最新の要件を直接確認することをおすすめします。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度 | 医療観察法(心神喪失者等医療観察法)にもとづく通院医療 |
| 対象医療機関 | 指定通院医療機関(施設基準の届出を地方厚生局長に行った機関) |
| 対象患者 | 通院対象者のうち、クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)による治療を受けている方 |
| 加算の算定タイミング | 医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料の初回算定時に限る |
算定タイミング・回数の注意点
みらい(新人医療事務)
この加算、うっかり毎回つけてしまいそうな気もするんですが、大丈夫でしょうか?
あおい(元・医療事務)
そこは特に注意が必要です。条文にはっきりと「初回算定時に限り」と書かれています。つまり、対象となる通院対象者について、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料を初めて算定するとき、その1回だけが加算の候補になります。2回目以降の月次算定(500点)には、この加算は重ねて算定できない構造です。
算定回数の注意
治療抵抗性統合失調症対象者受入促進加算は、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料の「初回算定時に限り」加算できるとされています。同一の通院対象者について、2回目以降の管理料算定時にこの加算を重ねて算定することは、資料の範囲では想定されていません。算定履歴の確認は自院のレセプト担当と改めて行うことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
基礎点数の500点自体も、毎回自由に算定できるわけではないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。基礎点数の500点は「月1回に限り、当該薬剤を投与したとき」に算定するとされています。つまり、クロザピンを実際に投与した月に限って、月1回だけ算定できるという整理です。加算の2,220点は、この月次算定のうち「最初の1回」にだけ乗る、という関係になります。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院がこの加算の候補になるか、どういう順番で確認すればいいでしょうか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するとわかりやすいと思います。
自院で確認する順番
自院が医療観察法にもとづく指定通院医療機関としての指定を受けているかを確認する 受け入れた(または受け入れを検討している)通院対象者が、クロザピンによる治療をすでに受けているかを確認する その通院対象者について、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料を初めて算定するタイミングかどうかを確認する 施設基準の届出内容と、地方厚生局・審査支払機関への確認を行い、加算候補として整理する
みらい(新人医療事務)
4つ目のステップまで来ると、もう自分たちだけでは判断しきれない部分も出てきそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に医療観察法にもとづく指定の有無や、施設基準の細かい要件は、通常の医科点数表の届出とは別のルートで確認する必要があるので、地方厚生局の担当窓口に直接問い合わせるのが確実です。
よくある取り漏れ
取り漏れやすいポイント
基礎点数の算定タイミングとのズレ: 加算は基礎点数(医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料)の「初回算定時」にしか乗りません。基礎点数を算定していないと、この加算単体では算定候補になりません。「受け入れた場合」の記録: クロザピン治療を受けている通院対象者を新たに受け入れた経緯(転院・紹介など)の記録が、算定の根拠として重要になります。施設基準の届出状況: 指定通院医療機関としての指定と、医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料に関する施設基準の届出の両方が前提になっている可能性があります。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定(令和6年度)から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが確認できた一次資料の範囲では、この加算が過去の版からどのように推移してきたか(新設時期や点数の変遷)を裏付ける資料までは確認できていません。今回の記事は、令和8年3月31日厚生労働省告示第146号による改正版(令和8年6月1日適用)の医療観察診療報酬点数表にもとづいて整理しています。前回改定(令和6年度)からの変更点については、確認され次第この記事を更新します。沿革の詳細を知りたい場合は、地方厚生局または厚生労働省の医療観察法担当窓口への確認をおすすめします。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある疑問をまとめておきたいです。まず、この加算はどんな医療機関でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、医療観察法にもとづく指定通院医療機関であることが前提です。通常の精神科クリニックが、指定を受けずにこの加算を算定候補にできる制度ではない可能性が高いです。
みらい(新人医療事務)
点数はいくらですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医療観察診療報酬点数表では2,220点です。基礎点数である医療観察治療抵抗性統合失調症治療指導管理料(500点)への上乗せという位置づけです。
みらい(新人医療事務)
何回でも算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、「初回算定時に限り」と定められています。対象となる通院対象者について、基礎点数を初めて算定するときの1回だけが候補になります。
みらい(新人医療事務)
クロザピン以外の薬でも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
条文では「クロザピンによる治療を受けている対象者」と明記されています。他の薬剤については、資料の範囲では言及がありません。
みらい(新人医療事務)
詳しい要件が分からないときは、どうすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の細かい内容や、医療観察法上の指定の手続きについては、地方厚生局が窓口になります。自院の状況を踏まえて、直接確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
医療観察診療報酬点数表には、他にどんな加算があるんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ医療観察診療報酬点数表の中には、指定入院医療機関の変更にともなう調整を評価する転院調整加算など、この加算とは別の場面を対象にした加算もあります。医療観察法の点数表全体を確認したい場合は、あわせて見ておくと制度の全体像がつかみやすいと思います。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。