みらい(新人医療事務)
「医療観察精神科緊急訪問看護加算」って加算表で見つけたんですけど、これ、うちの精神科クリニックでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
名前を見ると精神科の在宅・訪問系の加算に見えますが、まず押さえておきたいのは、この加算が普通の医科点数表とは別枠の「医療観察法」という制度専用の点数だということです。結論から言うと、多くの一般クリニック・病院にとっては対象外の可能性が高い加算ですが、断定はせず、まず自院がどの立場かを確認するところから始めましょう。
みらい(新人医療事務)
医療観察法…名前は聞いたことがありますが詳しくは知らないです。
あおい(元・医療事務)
正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。法務省はこの制度についてこう説明しています。
制度の目的(法務省)
「心神喪失又は心神耗弱の状態で、殺人、放火等の重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的とした処遇制度」 (法務省「医療観察制度について」より)
あおい(元・医療事務)
通院決定を受けた人・退院を許可された人は「原則として3年間、厚生労働省所管の指定通院医療機関による医療が提供される」とも説明されています。つまりこの制度に基づく通院医療は、どの医療機関でも実施できるわけではなく、厚生労働大臣が指定した「指定通院医療機関」に限られます。
みらい(新人医療事務)
うちが指定を受けていなければ、そもそも関係ない加算ということですね。
あおい(元・医療事務)
その理解でおおむね合っています。ただし「関係ない」と決めつけず、まずは自院が指定通院医療機関にあたるかどうかから確認するのが安全です。指定を受けていない医療機関では、土台になる医療観察精神科訪問看護・指導自体を実施する場面がそもそも発生しません。なお、一般の精神科病棟で算定する加算(例: 精神科隔離室管理加算)は、この医療観察法の点数表とは別の一般の医科点数表に基づく加算です。同じ「精神科の加算」でも制度・点数表が異なる点は押さえておくとよいでしょう。
医療観察精神科緊急訪問看護加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも、この加算はどういう場面で使うものなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の算定告示の本文には、こう書かれています。
根拠となる告示の文言(原文)
「訪問看護・指導を実施した場合には、医療観察精神科緊急訪問看護加算として、1日につき所定点数に265点を加算する。」 (心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第83条第2項の規定による医療に要する費用の額の算定方法、平成17年厚生労働省告示第365号、最終改正: 令和8年3月31日厚生労働省告示第146号)
あおい(元・医療事務)
つまり、医療観察精神科訪問看護・指導という土台の訪問看護を、通常の計画どおりではなく「緊急」に行った場合の加算です。ここでの「緊急」の中身は、留意事項通知(令和8年障精発0331第3号)で具体的に定義されています。
みらい(新人医療事務)
留意事項通知にはどう書いてあるんですか?
あおい(元・医療事務)
実はこの留意事項通知を確認すると、同じ「医療観察精神科緊急訪問看護加算」という名前でも、適用条件が異なる2つのパターンが示されています。混同しやすいので、それぞれ主語(どの注に基づく加算か)を分けて見ていきます。
パターン1: 指定通院医療機関自身の保健師等による緊急訪問看護(注9)
みらい(新人医療事務)
まず1つ目のパターンを教えてください。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の該当箇所を、そのまま引用します。
留意事項(注9パターン)の原文
「(17)「注9」の医療観察精神科緊急訪問看護加算は、精神科訪問看護計画に基づき定期的に行う医療観察精神科訪問看護・指導以外であって、通院対象者又はその家族等の緊急の求めに応じて、指定通院医療機関の医師の指示により、保健師等が医療観察精神科訪問看護・指導を行った場合に1日につき1回に限り加算する。また、当該加算を算定する場合には、診療報酬明細書の摘要欄にその理由を詳細に記載すること。」 (医療観察 留意事項通知、令和8年障精発0331第3号)
あおい(元・医療事務)
このパターンは、指定通院医療機関そのものに所属する保健師等が、通院対象者や家族からの緊急の求めに応じて、自院の医師の指示のもとで緊急に訪問看護・指導を行った場合です。診療報酬明細書の摘要欄に理由を詳しく書く必要がある点も、算定要件の一部として明記されています。
みらい(新人医療事務)
「1日につき1回に限り」なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、算定の回数制限として明記されています。同じ日に複数回の緊急訪問があっても、この加算としては1日1回までという読み方になります。
パターン2: 連携する訪問看護事業型指定通院医療機関の看護師等による緊急訪問看護(注8)
みらい(新人医療事務)
もう1つのパターンはどう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
こちらも原文をそのまま引用します。
留意事項(注8パターン)の原文
「(11)「注8」の医療観察精神科緊急訪問看護加算は、訪問看護計画に基づき定期的に行う医療観察訪問看護以外であって、通院対象者又はその家族等の緊急の求めに応じて、主治医(診療所又は在宅療養支援病院の医師に限る。この項において同じ。)の指示により、連携する訪問看護事業型指定通院医療機関の看護師等が医療観察訪問看護を行った場合に1日につき1回に限り算定する。」 (医療観察 留意事項通知、令和8年障精発0331第3号)
あおい(元・医療事務)
こちらは、主治医が診療所または在宅療養支援病院の医師であるケースで、その主治医と連携する「訪問看護事業型」の指定通院医療機関(訪問看護ステーションに近い形態)の看護師等が、緊急に医療観察訪問看護を行った場合の加算です。パターン1が「指定通院医療機関の中の保健師等」であるのに対し、こちらは「連携先の訪問看護事業者の看護師等」が動く点が違います。
みらい(新人医療事務)
体制面での条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知では、次のような体制整備が条件として書かれています。
注8パターンの体制要件(原文)
「当該加算は、指定通院医療機関が、24時間往診及び医療観察訪問看護により対応できる体制を確保し、指定通院医療機関において、24時間連絡を受ける医師又は看護職員の氏名、連絡先電話番号等、担当日、緊急時の注意事項等並びに往診担当医及び医療観察訪問看護担当者の氏名等について、文書により提供している通院対象者に限り算定できる。」 (同通知)
あおい(元・医療事務)
つまり、24時間の往診体制・連絡体制を整えたうえで、担当医師や看護職員の氏名・連絡先などを文書で通院対象者に提供していることが前提です。さらに、記録面でも要件があります。
注8パターンの記録要件(原文)
「指示を行った指定通院医療機関の主治医は、指示内容を診療録に記載する。当該加算に関し、通院対象者又はその家族等からの電話等による緊急の求めに応じて、指定通院医療機関の主治医の指示により、緊急に医療観察訪問看護を実施したその日時、内容及び対応状況を訪問看護記録書に記録すること。(中略)当該加算を算定する場合にあっては、訪問看護療養費明細書に算定する理由を記載すること。」 (同通知)
みらい(新人医療事務)
パターン1は診療報酬明細書の摘要欄、パターン2は訪問看護療養費明細書に理由を書く、という違いもあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。土台になる請求様式が異なるため、記載先も変わります。どちらのパターンに該当するかで、確認すべき書類や記録の場所が変わる点は押さえておいてください。

点数・コードの整理(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
ここまでの内容を表にしてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
まとめるとこうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算名 | 医療観察精神科緊急訪問看護加算 |
| 点数 | 265点(1日につき) |
| 算定回数 | 1日につき1回に限る |
| 根拠告示 | 平成17年厚生労働省告示第365号(最終改正: 令和8年3月31日厚生労働省告示第146号) |
| マスターコード | 188008670(医科診療行為マスター・令和8年度) |
| 適用パターン | (1)指定通院医療機関の保健師等による緊急訪問看護・指導(注9) / (2)連携する訪問看護事業型指定通院医療機関の看護師等による緊急訪問看護(注8) |
みらい(新人医療事務)
点数はどちらのパターンでも265点で共通なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した算定告示の本文では、点数の記載は「訪問看護・指導を実施した場合には、医療観察精神科緊急訪問看護加算として、1日につき所定点数に265点を加算する」という一文にまとまっており、パターンごとに別の点数が明記されているわけではありません。ただし、算定要件(誰が・どんな指示で行うか、どの明細書に記載するか)はパターンごとに異なるため、自院がどちらの体制に該当するかは、留意事項通知の該当条文で確認することをおすすめします。
対象になりうる医療機関・対象者
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんはどんな方ですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法の通院処遇の決定を受けた方、または退院を許可された方が対象です。厚生労働省のページでは次のように説明されています。
制度の説明(厚生労働省)
「医療観察法の通院による医療の決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた人及び退院を許可された人については、保護観察所の社会復帰調整官が中心となって作成する処遇実施計画に基づいて、原則として3年間、地域において、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定通院医療機関)による医療を受けることとなります。」 (厚生労働省「心神喪失者等医療観察法」制度概要ページより)
みらい(新人医療事務)
つまり、一般の精神科の患者さんではなく、医療観察法の審判を経て通院処遇となった方に限られる、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そういうことになります。加えて、この加算自体を算定する場面が生じるのは、あくまで「医療観察精神科訪問看護・指導」または「医療観察訪問看護」という土台のサービスを、すでに提供している指定通院医療機関(またはその連携先)だけです。土台のサービスを提供していない医療機関では、緊急加算だけを単独で算定する場面は想定しにくいと考えられます。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
まず大前提として、医療観察法の通院医療全体が「指定通院医療機関」の指定を受けていることが必要です。この指定は、一般の保険医療機関の施設基準届出とは別の枠組みで、厚生労働大臣が個別に指定するものです。
みらい(新人医療事務)
一般の施設基準の届出とは仕組みが違うんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。そのため「施設基準を満たしたので地方厚生局に届出をすれば算定できる」という一般的な加算の流れとは異なります。パターン2(注8)については、上で見たとおり「24時間往診及び医療観察訪問看護により対応できる体制の確保」「担当者情報の文書提供」という体制要件が留意事項通知に明記されていますが、これは一般的な施設基準届出とは別に、指定通院医療機関としての運用体制の話です。当サイトが確認した資料の範囲では、この加算固有の届出様式についての詳細な記載までは確認できていません。実際の届出・体制整備の可否については、地方厚生局や算定方法通知・記載要領で確認することをおすすめします。
算定タイミング・注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることは何ですか?
あおい(元・医療事務)
大きく3点あります。
算定タイミングの注意点
1日につき1回に限る算定であり、精神科訪問看護計画(またはパターン2の場合は訪問看護計画)に基づき定期的に行う通常の訪問看護・指導とは別枠の「緊急」対応にのみ加算されます。定期訪問と同じ日に緊急対応があった場合の取り扱いなど、細かな運用は算定方法通知・記載要領も合わせて確認してください。
あおい(元・医療事務)
もう1点、パターン1とパターン2で記載する明細書が異なる(診療報酬明細書の摘要欄/訪問看護療養費明細書)ため、請求システム側での区分にも注意が必要です。さらに、パターン2では緊急対応の日時・内容・対応状況を訪問看護記録書に記録し、速やかに主治医へ病状等を報告することも留意事項通知に明記されています。
みらい(新人医療事務)
併算定の制限についても書いてありましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた留意事項通知・告示本文の範囲では、この加算自体について他加算との併算定を明示的に禁止する記載までは見当たりませんでした。見当たらないことをもって「併算定できる」と断定するのではなく、実際の請求前に算定方法通知や地方厚生局への確認をおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算は何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
医療観察法の診療報酬は、令和8年3月31日付の厚生労働省告示第146号によって一部改正されています。近畿厚生局が公表している令和8年度改定関係ページでも、この告示番号が令和8年度改定の算定方法告示として掲載されています。
改定の位置づけ(令和8年度・一次情報ベース)
「算定方法告示 令和8年3月31日 厚生労働省告示第146号」 (近畿厚生局「令和8年度 医療観察法の診療報酬等改定関係」ページより)
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した一次資料(告示本文・留意事項通知)の範囲では、医療観察精神科緊急訪問看護加算(265点)そのものの点数や、注9・注8それぞれの算定要件についての新設・変更の記載は確認されていません(確認日: 2026年8月)。また、当サイトのデータベース上には令和6年度以前の同名加算の記録がなく、改定前後の点数比較ができる一次資料も確認できていません。この点は「変更なし」と断定せず、「確認できた範囲では変更が見当たらない」という扱いにしています。
みらい(新人医療事務)
「変更がない」と「確認できていない」は、意味が違うんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。医療観察法の告示は令和8年度改定でも一部改正されていますので、条文の他の部分には変更が入っている可能性があります。この加算固有の変更有無を正確に知りたい場合は、算定方法通知の新旧対照表など、より詳細な一次資料を確認することをおすすめします。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 自院が医療観察法上の「指定通院医療機関」の指定を受けているか、または連携する訪問看護事業型指定通院医療機関があるかを確認する
- 医療観察精神科訪問看護・指導(または医療観察訪問看護)を通常の計画に基づいて実施しているかを確認する
- 緊急対応が、パターン1(自院の保健師等)とパターン2(連携先の看護師等・24時間体制)のどちらに該当するかを整理する
- 該当する記載要件(診療報酬明細書の摘要欄/訪問看護療養費明細書、訪問看護記録書、診療録)を満たしているかを確認する
- ここまで満たしていれば算定候補。実際の請求前に算定方法通知・記載要領も合わせて確認する
みらい(新人医療事務)
1番目の「指定を受けているか」の時点で、多くのクリニックは対象外になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。指定通院医療機関・訪問看護事業型指定通院医療機関は全国的にも数が限られています。精神科や訪問看護を行っているというだけでは対象になりません。まずこの前提を押さえることが、無駄な確認作業を減らすことにつながります。
よくある取り漏れ・勘違い
みらい(新人医療事務)
実際によくある勘違いってありますか?
よくある取り漏れ・勘違い
パターン1とパターン2の混同: 「指定通院医療機関自身の保健師等」による緊急訪問看護・指導(注9)と、「連携する訪問看護事業型指定通院医療機関の看護師等」による緊急訪問看護(注8)は、条件も記載先の明細書も異なる別のパターン。名前が同じだからと同一条件で扱ってしまうケース。 定期訪問との混同: 精神科訪問看護計画に基づき定期的に行う通常の医療観察精神科訪問看護・指導と、緊急の求めに応じた訪問看護・指導を区別せずに算定候補としてしまうケース。 指定の有無を確認せず検討してしまう: 指定通院医療機関でない、または連携する訪問看護事業型指定通院医療機関がないのに、加算の名称だけを見て算定を検討してしまうケース。
あおい(元・医療事務)
どれも「名称だけを見て、条文の主語(どの注に基づくか)を確認しないまま判断する」ことから起きやすい取り違えです。必ず自院がどのパターンに該当するのか、留意事項通知の原文で確認してください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
うちは精神科クリニックですが、医療観察法の指定は受けていません。この加算は関係ないと考えていいですか?
あおい(元・医療事務)
指定通院医療機関でなく、連携する訪問看護事業型指定通院医療機関でもなければ、土台となる医療観察精神科訪問看護・指導や医療観察訪問看護を実施する場面自体が発生しないため、この加算も対象外の可能性が高いです。ただし今後指定や連携の予定がある場合は、要件を押さえておく価値はあります。
みらい(新人医療事務)
注9パターンと注8パターンの両方を、同じ月に算定することはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した留意事項通知の範囲では、両パターンを併せて算定することを明示的に禁止する記載は見当たりませんでした。ただし、それぞれ別の指示医師・別の実施者・別の明細書が前提となる制度ですので、実際の運用で両方が同時に発生しうるかどうかは、自院の体制と算定方法通知を踏まえて確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
診療報酬明細書や訪問看護療養費明細書には、具体的にどう書けばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「その理由を詳細に記載すること」(注9パターン)「算定する理由を記載すること」(注8パターン)とされていますが、様式や記載例の詳細までは当サイトが確認した告示・通知本文の範囲では明記されていませんでした。記載要領など、より詳細な通知文書での確認をおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。