みらい(新人医療事務)
院長から「うちはがんゲノム拠点病院加算の対象になるかもしれない」と言われたんですが、正直ピンときていません…どんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
がんゲノム拠点病院加算は、A232「がん拠点病院加算」の「注2」にあたる加算です。令和8年度の医科点数表では、施設基準を満たし、ゲノム情報を用いたがん医療を提供している保険医療機関が、がん拠点病院加算にさらに点数を上乗せできる仕組みになっています。まずは「うちが算定候補になりそうか」を一緒に整理していきましょう。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
「注2」ということは、単独では算定できないんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。がんゲノム拠点病院加算は、A232がん拠点病院加算を算定している患者について、追加でつける加算です。令和8年度の医科点数表本体には、次のように書かれています。「2 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関であって、ゲノム情報を用いたがん医療を提供する保険医療機関に入院している患者については、がんゲノム拠点病院加算として、250点を更に所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
つまり、がん拠点病院加算がベースにあって、そこにさらに乗せるイメージですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。留意事項通知では、この加算の趣旨がもう少し詳しく説明されています。「『注2』に規定する加算は、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、遺伝子パネル検査等の実施及び治療への活用、遺伝性腫瘍等の患者に対する専門的な遺伝カウンセリングの実施、がんゲノム情報に基づく臨床研究・治験の実施等の体制を評価したものであり、がんゲノム医療中核拠点病院又はがんゲノム医療拠点病院において算定する。」
みらい(新人医療事務)
検査そのものではなくて、体制を評価した加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。遺伝子パネル検査を実施しているだけでなく、その結果を治療に活かす体制や、遺伝カウンセリング、臨床研究・治験の体制まで含めて評価されている点がポイントです。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
「がんゲノム医療中核拠点病院」とか「がんゲノム医療拠点病院」って、うちみたいな一般的な病院でも当てはまるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
これは国が指定する限られた医療機関です。診療所は対象外で、対象になるのは入院患者に限られます。外来での算定はできません。まず、A232がん拠点病院加算そのものの対象がベースになります。がん拠点病院加算は、がん診療連携拠点病院・特定領域がん診療連携拠点病院・地域がん診療病院・小児がん拠点病院として指定を受けた病院が対象で、他の保険医療機関からの紹介により入院した悪性腫瘍の患者について、入院初日に限り算定するものでした。
みらい(新人医療事務)
そのうえで、がんゲノム拠点病院加算はさらに絞られる、と。
あおい(元・医療事務)
はい。がんゲノム医療中核拠点病院、またはがんゲノム医療拠点病院の指定を受けている必要があります。この2つの名称は似ているので混同しやすいのですが、条文上はどちらの指定を受けていても算定候補になる、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件はどうですか?
あおい(元・医療事務)
ベースのがん拠点病院加算と同じく、他の保険医療機関からの紹介により入院した悪性腫瘍の患者で、ゲノム情報を用いたがん医療を提供している場合が対象になります。外来の患者や、紹介なしで受診した患者は対象になりません。
点数の整理

みらい(新人医療事務)
点数も整理してほしいです。
あおい(元・医療事務)
表にすると分かりやすいと思います(令和8年度・医科点数表)。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| A232 がん拠点病院加算 1のイ(がん診療連携拠点病院) | 500点 |
| A232 がん拠点病院加算 1のロ(地域がん診療病院) | 300点 |
| A232 がん拠点病院加算 2(小児がん拠点病院加算) | 750点 |
| 注2 がんゲノム拠点病院加算(上乗せ分) | 250点 |
みらい(新人医療事務)
「更に加算する」ということは、ベースの点数にプラスして250点、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。がん拠点病院加算の該当区分の点数に、250点を上乗せする形になります。算定できるタイミングも、ベースのがん拠点病院加算と同じ「入院初日に限り」という考え方です。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準通知(令和8年3月5日 保医発0305第7号)には、こう書かれています。「5 がんゲノム拠点病院加算に関する施設基準 『がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について』(令和4年8月1日健発0801第18号厚生労働省健康局長通知)に基づき、がんゲノム医療中核拠点病院又はがんゲノム医療拠点病院の指定を受けていること。」
みらい(新人医療事務)
「整備について」の通知に基づく指定を受けていることが条件なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。この指定は厚生労働省が個別に行うものなので、自院がすでに指定を受けているかどうかは、まず院内で確認するところから始めてください。指定の有無が確認できないうちは、要確認の状態と考えたほうが安全です。
届出の要否
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たしていたら、地方厚生局への届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
ここは少し珍しいポイントで、届出は不要とされています。同じ施設基準通知に、こう明記されています。「6 届出に関する事項 がん拠点病院加算又はがんゲノム医療拠点病院の施設基準に係る取扱いについては、当該基準を満たしていればよく、特に地方厚生(支)局長に対して、届出を行う必要はないこと。」
みらい(新人医療事務)
届出なしで算定候補になる、ということですね。ただ、指定を受けているかどうかの確認は必要、と。
あおい(元・医療事務)
そういうことです。届出書類を提出する手間がなくても、「指定を受けているか」「ゲノム情報を用いたがん医療を実際に提供しているか」という実態面の確認は、自院で行っておく必要があります。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
算定候補の判断は自院での確認が前提です
がんゲノム拠点病院加算は、A232がん拠点病院加算を算定している入院患者が前提です。がん拠点病院加算を算定した場合は、がん治療連携管理料は算定できないとされています。あわせて確認しておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングにも決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
がんゲノム拠点病院加算は、ベースのがん拠点病院加算に上乗せする加算なので、算定できるタイミングもベースと同じ「入院初日に限り」という扱いになります。当該入院中に1回だけ算定するイメージです。悪性腫瘍の疑いがあるとされ、入院中に確定診断がついた患者については、確定診断を行った日に算定する扱いも、ベースのがん拠点病院加算と同様です。
みらい(新人医療事務)
併算定の制限もあるんですね。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には、「がん拠点病院加算を算定した場合は、『B005-6-3』がん治療連携管理料は算定できない」と明記されています。がんゲノム拠点病院加算はがん拠点病院加算に上乗せする形の加算なので、この制限もあわせて確認しておくとよいと思います。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料の範囲では、点数(250点)・施設基準(がんゲノム医療中核拠点病院又はがんゲノム医療拠点病院の指定)・届出不要という取り扱いのいずれも、令和8年3月5日付の施設基準通知に引き継がれており、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(2026年8月確認・厚労省一次情報ベース)。施設基準の根拠となる「がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について」の通知自体も、令和4年8月1日付のものが引き続き参照されています。
みらい(新人医療事務)
変わっていないなら、それはそれで安心材料ですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ただし、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院の指定医療機関のリストや運用の細部は、今後の疑義解釈で補足される可能性もあります。算定前には最新の通知を確認する習慣をつけておくと安心です。
自院で確認する順番

自院で確認する順番
- がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院の指定: 「がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について」に基づく指定を受けているか、院内で確認する
- A232がん拠点病院加算の算定状況: 対象患者にがん拠点病院加算(該当区分)を算定できているか確認する
- ゲノム情報を用いたがん医療の提供体制: 遺伝子パネル検査の実施・治療への活用、遺伝カウンセリング、臨床研究・治験の体制が実際に整っているか確認する
- 併算定の確認: がん治療連携管理料との重複算定がないか確認する
よくある取り漏れ
がん拠点病院加算だけで満足してしまう
A232がん拠点病院加算を算定していても、がんゲノム拠点病院加算(注2)の存在に気づかず、上乗せ分の250点を取り漏らしているケースがあります。指定医療機関であれば、算定候補として一度確認してみる価値があります。
名称が似た項目との混同
「がんゲノム拠点病院加算」と「がんゲノムプロファイリング評価提供料」「がんゲノムプロファイリング検査」は、名称は似ていますが全く別の項目です。がんゲノム拠点病院加算はA232の「注2」にあたる入院料加算であり、遺伝子パネル検査そのものの実施料・評価料とは算定の考え方が異なります。混同しないよう注意してください。
公式資料の根拠
あおい(元・医療事務)
この記事は、厚生労働省が公表している令和8年度の一次資料をもとに整理しています。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(点数表本体): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(留意事項通知・保医発0305第6号 掲載元。原本PDFは404のため index頁を掲載): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号・原本の厚労省本省PDFは404のため関東信越厚生局の同一通知ミラーを掲載): https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/kihon080305.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。