みらい(新人医療事務)
院長から「うちも体外受精・顕微授精管理料を算定できないか調べてほしい」って言われたんですけど、正直まだよくわかっていなくて…。これって不妊治療の保険適用に関わる加算ですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね。体外受精・顕微授精管理料(K917)は、不妊症の患者さんとそのパートナーから採取した卵子・精子を使って受精卵を作る一連の医学管理を評価する管理料です。令和8年度の医科点数表では、体外受精が3,200点、顕微授精は実施した卵子の個数に応じて3,800点から11,800点まで区分されています。まずは点数の構造から一緒に確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
体外受精と顕微授精で点数が別なんですね。個数で変わるのはどうしてなんですか?
あおい(元・医療事務)
顕微授精は卵子1個ごとに培養士が手技を行うため、実施した個数に応じて評価される仕組みになっています。告示では次のように定められています。
K917 体外受精・顕微授精管理料の点数区分(令和8年度)
体外受精: 3,200点 顕微授精(1個の場合): 3,800点 顕微授精(2個から5個までの場合): 5,800点 顕微授精(6個から9個までの場合): 9,000点 顕微授精(10個以上の場合): 11,800点
点数表と加算の仕組み
みらい(新人医療事務)
体外受精と顕微授精を同じ日に両方やることもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。その場合の合算ルールも告示に明記されています。「体外受精及び顕微授精を同時に実施した場合は、1の所定点数の100分の50に相当する点数及び2の所定点数を合算した点数により算定する」とされていて、体外受精分は半額、顕微授精分は通常どおりという計算になります。
みらい(新人医療事務)
加算もあるって聞きました。
あおい(元・医療事務)
はい。2つあります。1つは卵子調整加算(1,000点)で、受精卵作成の成功率を向上させる目的で卵子活性化処理を行った場合に加算します。留意事項通知では「顕微授精における受精障害の既往があること等により、医師が必要と認めた場合」と条件が示されていて、実施した医学的理由を診療録と摘要欄の両方に記載する必要があります。もう1つは新鮮精子加算(1,000点)で、当日採精した精子を凍結せずに使用した場合に算定します。この加算は、精子凍結保存管理料(K917-5)とは併算定できないとされています。
| 点数区分 | 点数 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 体外受精 | 3,200点 | 令和8年度 |
| 顕微授精(1個) | 3,800点 | 令和8年度 |
| 顕微授精(2〜5個) | 5,800点 | 令和8年度 |
| 顕微授精(6〜9個) | 9,000点 | 令和8年度 |
| 顕微授精(10個以上) | 11,800点 | 令和8年度 |
| 卵子調整加算 | +1,000点 | 令和8年度 |
| 新鮮精子加算 | +1,000点 | 令和8年度 |

対象患者はどう判断するのか
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか? 不妊治療といっても幅がありそうです。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、不妊症の患者又はそのパートナーが次のいずれかに該当する場合とされています。「ア 卵管性不妊」「イ 男性不妊(閉塞性無精子症等)」「ウ 機能性不妊」「エ 人工授精等の一般不妊治療が無効であった場合」の4区分です。そして、いずれの状態に該当するかを診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められています。
みらい(新人医療事務)
該当区分の記載を忘れると、どうなりますか?
あおい(元・医療事務)
摘要欄への記載は算定要件そのものなので、記載漏れは査定・返戻の原因になり得ます。ただ、個々のカルテでどの区分に該当するかは医師の医学的判断が必要な領域なので、当サイトとしてはその判定を代行できません。必ず主治医と一緒に確認してください。
対象患者の該当区分はAIが判定しません
卵管性不妊・男性不妊・機能性不妊・一般不妊治療無効のいずれに該当するかは、個々の患者の病態に関する医学的判断です。当サイトの整理はあくまで一次資料の要件を紹介するものであり、算定可否の最終判断は主治医・医事担当者が公式資料と照らして行ってください。
施設基準と届出の考え方
みらい(新人医療事務)
施設基準は必要なんですよね。届出はどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは少し独特な扱いです。厚生労働省告示では「K879-2(注1又は注2に規定する加算を算定する場合に限る。)、K884-2、K884-3、K890-4及びK917からK917-5までに掲げる手術等については、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす場合に限り、地方厚生局長等に届け出ることを要しない」と定められています。つまり、施設基準を満たすことは前提条件として必要ですが、地方厚生局への個別の届出手続きは不要という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
届出がいらないなら、施設基準を確認しなくてもいいということですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは逆です。届出の手続きが不要なだけで、施設基準そのものを満たしている必要はあります。どのような基準が定められているかの詳細な項目は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できていません。具体的な基準の内容は自院で公式資料と地方厚生局の案内をご確認ください。
施設基準の充足はAIが判定しません
体外受精・顕微授精管理料は施設基準が必要な項目です。届出そのものは不要とされていますが、施設基準を満たしているかどうかの判断は医療機関側で行う必要があります。当サイトは施設基準の充足を保証・判定するものではありません。
算定にあたっての留意点
みらい(新人医療事務)
ほかに気をつけることはありますか? 併算定できないものとか。
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、体外受精・顕微授精の実施にあたって行う精子の前処置(密度勾配遠心法、連続密度勾配法、スイムアップ法等)や、未成熟卵子を成熟させるための前処置は、いずれも所定点数に含まれていて別に算定できません。また、実施前の卵子の凍結保存に係る費用も所定点数に含まれます。
みらい(新人医療事務)
同意書についてはどうですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「治療に当たっては、関係学会から示されているガイドライン等を踏まえ、治療方針について適切に検討し、当該患者から文書による同意を得た上で実施すること。また、同意を得た文書を診療録に添付すること」と明記されています。文書同意と診療録への添付は必須の手順です。
みらい(新人医療事務)
加算のルールについても、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
通則の加算についての制限もあります。留意事項通知には「体外受精・顕微授精管理料について、『通則8』及び『通則10』から『通則12』までの加算は適用できない」と明記されています。通則加算を一緒に算定できると思い込んで請求してしまうと差し戻しの原因になるので、注意が必要です。
算定時に見落としやすいポイント
前処置の費用: 精子・卵子の前処置費用は所定点数に含まれ別算定不可 新鮮精子加算と精子凍結保存管理料: 同日の併算定はできない 摘要欄記載: 該当する不妊区分、管理開始年月日、実施個数の記載が必要 通則加算: 通則8・通則10〜12の加算は適用できない
関連する管理料との関係
みらい(新人医療事務)
体外受精・顕微授精管理料だけで一連の不妊治療が完結するわけではないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。一連の生殖補助医療は複数の管理料・手術の組み合わせで構成されています。体外受精・顕微授精管理料(K917)の前後には、採卵術(K890-4、3,200点+採取卵子数に応じた加算)、受精卵・胚培養管理料(K917-2、個数に応じ4,500点から10,500点)、胚凍結保存管理料(K917-3)、採取精子調整管理料(K917-4)、精子凍結保存管理料(K917-5)、そして胚移植術(K884-3、新鮮胚移植7,500点・凍結融解胚移植12,000点)といった項目が続きます。これらは診療の流れの中でどこまで実施したかによって組み合わせが変わります。
みらい(新人医療事務)
それぞれ別に確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。今回はK917そのものの解説が中心なので、関連項目は概要だけお伝えしています。それぞれの算定要件・施設基準は個別に一次資料で確認する必要があります。
| 関連する項目 | 区分番号 | 令和8年度の点数(概要) |
|---|---|---|
| 採卵術 | K890-4 | 3,200点(+卵子数に応じ2,400〜7,200点加算) |
| 受精卵・胚培養管理料 | K917-2 | 4,500点〜10,500点(個数に応じる) |
| 胚凍結保存管理料 | K917-3 | 5,000点〜13,000点(導入時)、3,500点(維持) |
| 採取精子調整管理料 | K917-4 | 5,000点 |
| 精子凍結保存管理料 | K917-5 | 1,000点〜1,500点(導入時)、700点(維持) |
| 胚移植術 | K884-3 | 7,500点(新鮮胚)、12,000点(凍結・融解胚) |
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定と比べて、何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
大事な質問ですね。ただ正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和6年度(2024年度)改定時点の体外受精・顕微授精管理料の点数や算定要件との比較資料をまだ確認できていません(確認日: 2026年7月)。点数や算定要件が前回改定から変更されたかどうかは、この記事の時点では確認できていない状態です。
みらい(新人医療事務)
確認できていない、と正直に言ってもらえると助かります。
あおい(元・医療事務)
断定できないことを断定してしまう方が危険ですからね。前回改定からの変更点が判明した場合は、この記事を更新してお伝えします。今回一次資料から確認できているのは、令和8年度の医科点数表(告示・留意事項通知)に基づく点数構造と算定要件が、ここまでにご紹介した内容だということです。
改定差分の確認状況(令和8年度)
確認できていること: 令和8年度の点数区分・算定要件・届出不要の位置づけ(一次資料で確認済み) 確認できていないこと: 令和6年度時点との点数・要件の比較(当サイト未収録・確認日2026年7月)
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの医院で確認するとしたら、どういう順番で進めればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくとスムーズです。
自院で確認する順番
対象患者への該当を確認する: 卵管性不妊・男性不妊(閉塞性無精子症等)・機能性不妊・一般不妊治療無効のいずれに該当するか、主治医の医学的判断で確認する 治療計画と文書同意を確認する: 関係学会のガイドラインを踏まえた治療方針を検討し、患者から文書による同意を得て診療録に添付する 実施内容と個数を確認する: 体外受精と顕微授精のどちらを実施したか、顕微授精の場合は卵子の個数を確認する 加算の該当有無を確認する: 卵子調整加算・新鮮精子加算の算定要件(医学的理由・併算定制限)に該当するか確認する 施設基準の充足を確認する: 届出は不要だが施設基準を満たしているかを自院と地方厚生局の案内で確認する 摘要欄の記載事項を確認する: 該当区分、管理開始年月日、実施個数などの記載漏れがないか確認する
みらい(新人医療事務)
順番に見ていけば、抜け漏れが減りそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に摘要欄の記載事項は算定要件そのものになっているので、レセプト提出前の最終チェックとして必ず確認してください。

よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
届出が不要なら、施設基準を満たしていなくても算定できてしまうんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。届出の手続きが不要とされているだけで、施設基準そのものを満たしている必要はあります。満たしていない状態での算定は認められません。
みらい(新人医療事務)
体外受精と顕微授精を同じ日に両方実施したら、両方の点数をそのまま合算していいんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。告示の注1により、体外受精分は所定点数の100分の50に相当する点数、顕微授精分は所定点数どおりを合算する計算になります。単純な足し算ではない点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
新鮮精子加算と精子凍結保存管理料は同時に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
できません。留意事項通知に「新鮮精子加算は…精子凍結保存管理料と併算定できない」と明記されています。
参考にした公式資料
みらい(新人医療事務)
この記事の内容って、どこの資料をもとにしているんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省が公表している令和8年度の告示・留意事項通知が根拠です。点数や届出の位置づけは告示、算定要件の詳細は留意事項通知で確認しています。
| 資料 | 発行 | 参照URL |
|---|---|---|
| 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) | 厚生労働省 | https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf |
| 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号、医科点数表) | 厚生労働省 | https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713882.pdf |
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。