みらい(新人医療事務)
院長から「採取精子調整管理料っていう加算があるらしいけど、これって算定候補になるのかな」って聞かれたんですけど、正直はじめて聞く名前で戸惑っています…。
あおい(元・医療事務)
K917-4 採取精子調整管理料ですね。生殖補助医療(体外受精・顕微授精)の一連の流れの中でも、かなり専門性の高い項目です。令和8年度(2026年度)の医科点数表に基づいて、一緒に確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
「専門性が高い」というと、どういう場面で出てくる加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
男性不妊の治療で「精巣内精子採取術(K838-2)」という手術を行い、精巣の組織から精子を採取したケースが対象です。採取した組織をそのまま体外受精・顕微授精に使えるわけではなく、組織を細かく砕いたり、その中から使える精子を探し出したりする調整作業が必要になります。この技術そのものを評価しているのが採取精子調整管理料です。
採取精子調整管理料とは(対象医療機関・対象患者)
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関や患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した厚生労働省の留意事項通知には、次のように定められています。
算定要件の原文(厚生労働省・令和8年度医科点数表 留意事項通知)
「採取精子調整管理料は、不妊症の患者又はそのパートナーから「K838-2」精巣内精子採取術によって採取された精子を用いて、体外受精・顕微授精を実施するために採取した組織の細断又は精子の探索若しくは採取等を実施することを評価したものであり、当該手術後初めて「K917-5」精子凍結保存管理料の「1」の「イ」を算定する場合に算定する。この場合には精巣内精子採取術を実施した保険医療機関名及び日付を診療録等及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。」
みらい(新人医療事務)
「初めて算定する場合」というのがポイントっぽいですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。精巣内精子採取術のあと、初めて精子凍結保存管理料の「1」の「イ」(精巣内精子採取術で採取された精子を凍結する場合の区分)を算定するタイミングで、セットのように算定する構造になっています。対象は不妊症の患者さんとそのパートナーで、対象医療機関はデータ上、診療所・病院のいずれも含まれます。ただし、実際にこの技術を行うのは精巣内精子採取術や体外受精・顕微授精管理料(K917)を扱う生殖補助医療の診療体制がある医療機関に限られますので、自院の診療体制と照らし合わせて確認してもらえればと思います。
みらい(新人医療事務)
精巣内精子採取術を行った医療機関と、体外受精をする医療機関が違う場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
それも厚生労働省の疑義解釈で扱いが示されています。採取精子調整管理料は、精巣内精子採取術を算定する医療機関、または体外受精・顕微授精管理料を算定する医療機関のどちらでも、要件を満たせば算定候補になります。ただし患者1人につき、どちらか一方の医療機関に限られるとされています。精子を凍結せずに他院へ移送した場合は、移送先で算定候補になり得ますが、採取側の医療機関ですでに算定していた場合、移送先では算定候補になりません。この点は複数医療機関が関わるケースで見落としやすいので、注意が必要です。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
採取精子調整管理料は個数による区分がなく、1回の算定で一律の点数です。厚生労働省の告示ではこう定められています。
| 項目 | 点数(令和8年度) |
|---|---|
| 採取精子調整管理料(K917-4) | 5,000点 |
点数の原文(厚生労働省・令和8年厚生労働省告示第69号)
「K917-4 採取精子調整管理料 5,000点」

みらい(新人医療事務)
区分ごとに点数が変わる加算も見たことがあるので、一律なのは少し意外でした。
あおい(元・医療事務)
そうですね。近い項目である精子凍結保存管理料(K917-5)は、精巣内精子採取術で採取された精子を凍結する場合とそれ以外の場合とで点数が分かれています。採取精子調整管理料はその手前の「調整作業」そのものへの評価なので、個数による段階は設けられていません。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは慎重に確認したい部分です。厚生労働省の告示には、届出に関する規定として次のような文言があります。
届出に関する原文(厚生労働省・令和8年厚生労働省告示第69号)
「K879-2(注1又は注2に規定する加算を算定する場合に限る。)、K884-2、K884-3、K890-4及びK917からK917-5までに掲げる手術等については、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす場合に限り、地方厚生局長等に届け出ることを要しない。」
みらい(新人医療事務)
「K917からK917-5まで」の中に、採取精子調整管理料も入っているってことですか?
あおい(元・医療事務)
はい、区分番号K917-4はこの範囲に含まれます。つまり、厚生労働大臣が別に定める施設基準を満たしている場合は、地方厚生局長等への届出そのものは不要という整理です。ただし、これは「施設基準を満たさなくてよい」という意味ではありません。施設基準自体は存在し、それを満たしているかどうかは自院で確認が必要です。当サイトが確認した資料の範囲では、採取精子調整管理料単体に固有の施設基準の詳細(人員配置など)までは明記されておらず、体外受精・顕微授精管理料など関連する加算の施設基準と合わせて確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
届出が不要だからといって、何も確認しなくていいわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。届出書類の提出こそ不要とされていますが、施設基準を満たしているかどうかの実態確認は自院の責任で行う必要があります。判断に迷う場合は、地方厚生局や審査支払機関に相談するのが確実です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、他の加算と一緒に算定できるかどうかも知りたいです。
あおい(元・医療事務)
まずタイミングですが、繰り返しになりますが「精巣内精子採取術後、初めて精子凍結保存管理料の1のイを算定する場合」に限られます。厚生労働省の疑義解釈では、細かいケースについても回答が示されています。
算定タイミングに関する疑義解釈の要点(断定ではなく確認事項として整理)
・精巣内精子採取術で採取した組織のうち、一部の組織についてのみ調整技術を実施した場合でも、採取精子調整管理料は算定候補になり得るとされています。 ・調整技術を実施した結果、受精卵の作成が見込めない精子のみ採取された場合であっても、算定候補になり得るとされています。 ・一方で、調整技術を実施せずに残った組織を一度凍結し、別の日にあらためて調整技術を実施した場合は、算定不可とされています。 ・調整技術を実施せずに凍結保存のみを行った場合、精子凍結保存管理料自体も算定不可とされています。 いずれも個別の状況によって判断が分かれるため、自院のケースが当てはまるかどうかは、記録内容を突き合わせたうえでの確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
併算定については何か注意点がありますか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の留意事項通知には、次のように明記されています。
併算定に関する原文(厚生労働省・令和8年度医科点数表 留意事項通知)
「採取精子調整管理料について、「通則8」及び「通則10」から「通則12」までの加算は適用できない。」
あおい(元・医療事務)
つまり、手術の通則で定められている時間外・休日・深夜等の加算区分は、採取精子調整管理料には適用できないという整理です。これは断定できる範囲の事実として押さえておいてよいポイントです。回数については、精巣内精子採取術1回に対して、初めて精子凍結保存管理料の1のイを算定するタイミングで1回算定する構造のため、同一の手術に対して複数回算定するものではないと読み取れます。ただし、複数回の手術が行われた場合の取り扱いなど、細かなケースは自院の状況に応じて審査支払機関に確認することをおすすめします。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
採取精子調整管理料は、算定要件の運用に関する疑義解釈が過去に発出されている項目です。今回、令和8年度改定に向けて当サイトが確認した一次資料(告示・留意事項通知)の範囲では、点数(5,000点)・算定要件・届出の扱いのいずれについても、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません。
改定対比の整理(前回改定との比較)
点数: 前回改定(令和6年度)5,000点 → 今回(令和8年度)5,000点(変更なし、当サイトが確認した資料の範囲) 算定要件: 前回改定(令和6年度)から今回(令和8年度)にかけて、確認できた資料の範囲では実質的な変更は確認されていません。
みらい(新人医療事務)
点数がずっと同じだからといって、内容も何も変わっていないとは限らないですよね。
あおい(元・医療事務)
おっしゃるとおりです。今回、当サイトでは点数だけでなく、施設基準・届出の扱い、算定要件の文言についても一次資料を照合しましたが、いずれも実質的な変更点は見当たりませんでした。とはいえ、これは当サイトが確認できた資料の範囲での整理です。最新の疑義解釈が別途発出されている可能性もあるため、実際の算定前には最新の公式資料もあわせて確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちで算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
自院で確認する順番
- 精巣内精子採取術(K838-2)を実施したかどうかを確認する
- 採取した組織の細断、または精子の探索・採取等の調整技術を実施したかどうかを確認する
- その手術後、初めて精子凍結保存管理料の「1」の「イ」を算定するタイミングかどうかを確認する
- 精巣内精子採取術を実施した保険医療機関名と実施日を、診療録等・診療報酬明細書の摘要欄に記載したかどうかを確認する
- 時間外・休日・深夜加算等(通則8・通則10~12)を誤って合算していないかを確認する
- 判断に迷う場合は、地方厚生局または審査支払機関に確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れとか誤って算定してしまうケースって、どんなものがあるんですか?
取り漏れ・誤算定になりやすいケース
摘要欄への記載漏れ: 精巣内精子採取術を実施した保険医療機関名及び日付を診療録等・診療報酬明細書の摘要欄に記載していないと、算定要件を満たしていないとみなされる可能性があります。 複数医療機関間での重複算定: 精巣内精子採取術を行った医療機関と体外受精・顕微授精管理料を算定する医療機関が異なる場合、患者1人につきどちらか一方でしか算定できない点を見落とすケースがあります。
算定できないと整理されているケース(疑義解釈ベース)
調整技術を実施せずに一度組織を凍結し、後日あらためて調整技術を実施した場合は、採取精子調整管理料は算定不可とされています。同様に、調整技術を実施せずに精子の凍結保存のみを行った場合、精子凍結保存管理料自体も算定不可とされています。「後でまとめて処理すればよい」という運用は要件と合わない可能性があるため注意が必要です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
採取精子調整管理料について、他にも確認しておきたいことがあります。
あおい(元・医療事務)
どうぞ、聞いてください。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は不要と考えて問題ないんですか?
あおい(元・医療事務)
断定はできません。厚生労働省の告示上、届出書類の提出自体は不要とされていますが、施設基準そのものを満たしている必要はあります。自院が体外受精・顕微授精管理料などの関連加算をすでに届け出て運用しているかどうかも含めて、確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
この加算だけを単独で算定することはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
資料の範囲では、精巣内精子採取術の実施と、精子凍結保存管理料の「1」の「イ」の初回算定がセットになった構造として整理されています。単独での算定というより、この一連の流れの中で算定候補になるかどうかを確認する加算と考えるのが実務的です。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から今回の改定にかけて、注意すべき変更はありましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)からの実質的な変更は確認されていません。ただし疑義解釈が別途追加されている可能性もあるため、算定前に最新の公式資料も確認しておくと安心です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。精巣内精子採取術の実施状況や、精子凍結保存管理料との算定タイミングを入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。