みらい(新人医療事務)
先輩、心臓血管外科の手術のレセプトで「凍結保存同種組織加算」っていう見慣れない加算を見つけたんですけど、これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは区分K939-6の加算で、心臓・大血管・肝臓・胆道・膵臓の手術のときに、凍結保存された「同種組織」――他人由来の心臓弁や血管――を使った場合に算定候補になる加算です。令和8年度の点数は81,610点と、かなり高点数な加算なんですよ。
みらい(新人医療事務)
同種組織ってことは、患者さん本人の組織じゃなくて、他の人の組織を使うということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の告示では「K939-6 凍結保存同種組織加算 81,610点 注 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、心臓、大血管、肝臓、胆道又は膵臓の手術に当たって、凍結保存された同種組織である心臓弁又は血管を用いた場合に算定する。」(厚生労働省 告示・令和8年度)と定められています。自己の組織ではなく、あらかじめ凍結保存されていた第三者由来の心臓弁や血管を、手術の中で実際に使用した場合に算定候補となる加算です。
対象になる医療機関・手術は?
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関でも算定候補になるんですか?クリニックでも取れますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算は病院の入院手術が対象です。当サイトが確認した施設基準・届出フラグでも、クリニック(外来)は対象外に区分しています。手術そのものが心臓や大血管、肝臓・胆道・膵臓に関わる高度な手術であることが前提なので、外来で完結するものではないんですね。
みらい(新人医療事務)
具体的にどんな手術に当てはまるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知では、対象となる手術の区分番号が具体的に列挙されています。「(1)「K555」、「K555-3」、「K557」、「K557-4」、「K558」、「K560」、「K566」、「K567」、「K570」、「K580」から「K587」まで、「K614」、「K623」、「K642」、「K643」、「K675」の「2」から「5」まで、「K677-2」、「K695」、「K697-5」、「K697-7」、「K702」の「4」、「K703」の「4」及び「K704」に掲げる手術に当たって、凍結保存された同種組織である心臓弁又は血管を用いた場合に限り算定する。」(厚生労働省 留意事項通知・令和8年度)と定められていて、弁置換術(K555)や血管移植術・バイパス移植術(K614)など、心臓・大血管の手術を中心とした区分がかなり細かく指定されています。自院で行った手術の区分番号が、この列挙の中に含まれているかどうかをまず確認する必要がありますね。
みらい(新人医療事務)
逆に言うと、リストにない手術で同種組織を使っても、この加算の対象外ということですか?
あおい(元・医療事務)
資料の文言どおりに読む限りはそうなります。「これらの手術に当たって」と限定されているので、列挙されていない術式で同種組織を用いた場合にこの加算が算定候補になるかは、個別に確認が必要です。判断に迷う場合は、審査支払機関や厚生局に確認することをおすすめします。

点数はいくら?
みらい(新人医療事務)
点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。令和8年度の点数はこうなっています。
| 区分番号 | 加算名 | 点数(令和8年度) | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| K939-6 | 凍結保存同種組織加算 | 81,610点 | 手術1回につき(同種組織を使用した場合) |
みらい(新人医療事務)
すごく高い点数ですね……。それだけ同種組織を扱うことが大変ということでしょうか?
あおい(元・医療事務)
断定はできませんが、留意事項通知には「組織適合性試験及び同種組織を採取及び保存するために要する全ての費用は、所定点数に含まれ別に算定できない。」という記載があります。同種組織を安全に使うための検査・採取・保存にかかる費用が、この点数の中にまとめて含まれている、という位置づけのようです。
費用の重複算定に注意
組織適合性試験や、同種組織の採取・保存にかかる費用は、凍結保存同種組織加算の所定点数に含まれます。別立てで追加算定すると査定の対象になる可能性があるため、レセプト作成時は含まれる費用の範囲を必ず確認してください。
施設基準・届出は?
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出については、何を確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注書きに「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」算定する、と明記されています。つまり、地方厚生局への届出が前提になる加算です。
みらい(新人医療事務)
届出が済んでいれば、それだけで算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
届出は前提条件のひとつですが、それだけで完結するわけではありません。留意事項通知には「(2)日本組織移植学会が作成した「ヒト組織を利用する医療行為の安全性確保・保存・使用に関するガイドライン」を遵守した場合に限り算定する。」「(4)日本組織移植学会が認定した組織バンクにおいて適切に採取、加工及び保存された非生体の同種組織である、生体弁又は血管を使用した場合に限り算定できる。」(厚生労働省 留意事項通知・令和8年度)と、届出とは別に守るべき条件が示されています。つまり、①地方厚生局への届出、②日本組織移植学会のガイドライン遵守、③同学会が認定した組織バンクで扱われた組織を使用、という3つの条件がそろって初めて算定候補になる、という構造です。
施設基準の詳細様式は要確認
届出が必要であることと、上記のガイドライン遵守・組織バンク要件は一次資料で確認できていますが、届出に必要な人員配置・院内体制などの具体的な様式(届出チェックリスト等)については、当サイトが確認した範囲の資料では特定できていません。届出の詳細は、地方厚生局または厚生労働省の施設基準関連通知で必ずご確認ください。
算定のタイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングや、回数の制限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の文言では「手術に当たって、凍結保存された同種組織である心臓弁又は血管を用いた場合に算定する」とされていて、対象手術を実施し、実際に同種組織を使用したタイミングで算定する取り扱いです。月何回まで、といった回数の上限は、当サイトが確認した資料の中には明記されていません。
みらい(新人医療事務)
回数制限が「ない」とは言い切れないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。手術のたびに同種組織を使用すれば算定候補にはなり得ますが、資料に明記のない事項を「制限なし」と断定することはできません。回数の扱いに疑問がある場合は、審査支払機関に確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
他院と組織を融通し合うようなケースもあると聞きました。そのときの請求はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
良いところに気づきましたね。留意事項通知には「組織移植を行った保険医療機関と組織移植に用いた組織を採取等した保険医療機関とが異なる場合の診療報酬の請求については、組織移植を行った保険医療機関で行うものとし、当該診療報酬の分配は相互の合議に委ねる。」(厚生労働省 留意事項通知・令和8年度)と、組織移植を行った病院と、組織を採取・保存した病院が異なる場合の取り扱いも書かれています。請求自体は組織移植(手術)を行った病院がまとめて行い、組織を採取・保存した病院への分配は、両院の合議に委ねられる、という仕組みです。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定から何か変わったりしたんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが確認できた一次資料は令和8年度分が中心で、前回改定(令和6年度)時点の同加算の記載と直接照合することができていません。そのため、点数(81,610点)や算定要件が前回改定から変更されたかどうかは、この記事の時点では確認できていません。
みらい(新人医療事務)
「変わっていない」と決めつけずに、きちんと「わからない」って書くんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。確認できていないことを「変更なし」と言い切ってしまうほうが、読者にとって誤解のもとになります。正確な改定差分を知りたい場合は、厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定の告示・通知、または直近の官報を確認することをおすすめします。
自院チェックリスト
みらい(新人医療事務)
自院で確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、次の順番で確認するとわかりやすいです。
自院で確認する順番
- 実施した手術の区分番号が、留意事項通知に列挙された対象手術(K555、K614、K704など)に含まれているか確認する
- その手術で、凍結保存された同種組織である心臓弁または血管を実際に使用したか確認する
- 使用した組織が、日本組織移植学会が認定した組織バンクで採取・加工・保存されたものかを確認する
- 自院が地方厚生局へ必要な届出を行っているか、施設基準を満たしているかを確認する
- 組織適合性試験・採取・保存の費用を別立てで重複算定していないか確認する
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で見落としがちなポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
取り漏れが起きやすいポイント
対象手術リストの見落とし: 心臓・大血管の手術であれば何でも対象になると思い込み、留意事項通知の区分番号リストとの照合を省略してしまうケース。 組織バンクの確認漏れ: 使用した同種組織が、日本組織移植学会が認定した組織バンク由来のものかどうかを確認せずに算定してしまうケース。 費用の重複算定: 組織適合性試験や採取・保存費用を、加算点数とは別に算定してしまうケース(所定点数に含まれるため注意)。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をまとめてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
いいですね。いくつか挙げてみましょう。
みらい(新人医療事務)
Q. クリニック(診療所)でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
A. 対象となる手術(心臓・大血管・肝臓・胆道・膵臓の手術)は入院を伴う病院での実施が前提です。当サイトの整理でも、この加算はクリニックの外来は対象外としています。
みらい(新人医療事務)
Q. 組織を採取した病院と、移植した病院が違う場合、請求はどちらが行うんですか?
あおい(元・医療事務)
A. 留意事項通知では、組織移植を行った病院がまとめて請求し、組織を採取・保存した病院への費用分配は両院の合議に委ねる、とされています。実際の分配額の目安については、平成28年度の疑義解釈で「相互の合議の上で、所定点数と異なる金額を請求することも可能」との考え方が示されています。ただし、これは平成28年度時点の別の技術の点数(9,960点)を例にした回答であり、令和8年度の凍結保存同種組織加算の点数(81,610点)とは別の話として参考にとどめてください。
みらい(新人医療事務)
Q. 施設基準の届出をすれば、それだけで算定できますか?
あおい(元・医療事務)
A. 届出はあくまで前提条件のひとつです。日本組織移植学会のガイドライン遵守、認定組織バンクの組織を使用していること、対象手術に該当することなど、複数の条件を満たして初めて算定候補になります。届出さえあれば算定できると考えるのではなく、実際の手術内容と使用した組織の出所を都度確認してください。
関連する加算もあわせて確認
みらい(新人医療事務)
似たような「手術のときに使う加算」って他にもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。例えば副鼻腔手術用内視鏡加算も、特定の手術区分に当たって特定の機器・材料を使った場合に算定候補となる、同じ「手術に伴う加算」の一種です。対象になる手術や条件はまったく別物なので、こちらも個別に確認が必要ですが、加算全体の考え方を理解する参考になります。
参考にした公式資料
みらい(新人医療事務)
この記事の内容は、どんな資料をもとにしているんですか?
あおい(元・医療事務)
主に厚生労働省が公表している次の一次資料をもとにしています。
| 資料 | 発行 | 年度 |
|---|---|---|
| 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)区分K939-6 | 厚生労働省 | 令和8年度 |
| 疑義解釈資料の送付について(その1)医科 問177 | 厚生労働省 | 平成28年度(参考・歴史的経緯) |
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(令和8年3月5日付)の内容も参照していますが、確認時点でPDFへの直接リンクが404になっていたため、本文中では告示・疑義解釈のリンクのみを掲載しています。最新の通知は厚生労働省のウェブサイトで直接ご確認ください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施した手術の区分番号や、使用した組織の出所、届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。