みらい(新人医療事務)
あおいさん、患者さんが入院するときに「入院ベースアップ評価料」って書かれた紙が貼ってあって、なんのことかわからなかったんですが、これって何ですか?
あおい(元・医療事務)
それは、令和8年度(2026年度)から算定される「入院ベースアップ評価料(区分O003・1日につき)」のことですね。簡単にいうと、入院患者に対して算定する評価料で、そこから得た収入を使って病院に勤務する職員の賃金改善(ベースアップ)を行うことを目的にした仕組みです。令和8年度改定の大きな柱のひとつですよ。
みらい(新人医療事務)
賃金改善のための評価料なんですね!それって、お金はどこから出るんですか?
あおい(元・医療事務)
入院患者の医療費から算定します。入院中の患者さんが1日ごとに算定対象になる評価料なので、入院費に含まれる形になります。だから、患者さんの入院診療費の中にこの評価料の点数が加わる形です。院内掲示でお知らせしている医療機関も多いですよ。
入院ベースアップ評価料とは何のための評価料か
みらい(新人医療事務)
「院内掲示」って義務なんですか?
あおい(元・医療事務)
届出を行った医療機関では、算定している評価料や診療報酬の内容を患者さんに分かりやすく掲示することが求められています。入院ベースアップ評価料を算定している場合は、その旨を院内の見やすい場所に掲示していることが適切な運用とされています。掲示内容や様式の詳細は、留意事項通知(保医発0305第8号)や届出関係資料で確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
なるほど。患者さんが「この評価料って何?」と思ったときに、掲示で確認できるようになっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。賃金改善に使われる評価料であることを明示するのが趣旨です。医科と歯科(入院ベースアップ評価料は医科・歯科双方に設けられています)の両方で同様の仕組みがあります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
入院ベースアップ評価料って、令和8年度から新しくできたんですか?
あおい(元・医療事務)
令和6年度(2024年度)改定で「外来・在宅ベースアップ評価料」「看護職員処遇改善評価料」が新設されましたが、入院患者に対応する「入院ベースアップ評価料(O003)」は令和8年度(2026年度)改定で新たに設けられた区分です。これは、令和8年度改定の個別改定項目に基づくものです。
令和6年度改定との比較(参考)
- 令和6年度(2024年度)改定: 外来・在宅ベースアップ評価料(O001・O002)、看護職員処遇改善評価料(O000)新設
- 令和8年度(2026年度)改定: 入院ベースアップ評価料(O003)新設。1点〜250点の区分(令和8年6月〜)、251点〜500点の区分(令和9年6月以降に算定可)
みらい(新人医療事務)
じゃあ令和8年度が初年度なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。令和8年6月1日から施行されています。ただし、告示の注2では「251から500までに規定する点数については、令和9年6月以降において算定する」とされているので、高い区分は令和9年6月以降から算定できるようになります。
対象医療機関と算定の仕組み
みらい(新人医療事務)
どんな病院が算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
大前提として、施設基準を満たし、地方厚生局長等への届出を完了した保険医療機関が算定候補です。告示の算定要件(令和8年厚生労働省告示第69号 区分O003 注1)には「当該保険医療機関において勤務する職員の賃金の改善を図る体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者であって、第1章第2部第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)、同部第3節の特定入院料又は同部第4節の短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く。)を算定しているものについて、当該基準に係る区分に従い、それぞれ所定点数を算定する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
つまり「入院基本料か特定入院料か短期滞在手術等基本料(基本料1を除く)を算定している患者が入院中」という条件がまずあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。外来患者や在宅患者は対象外で、あくまで「入院患者」に算定するのがこの評価料の特徴です。
みらい(新人医療事務)
うちのような病院(入院あり)なら対象になりそうですか?
あおい(元・医療事務)
入院基本料を算定している保険医療機関であれば、施設基準を満たして届出ができれば算定候補です。ただし「算定できる」と断定はできません。まず施設基準に適合しているか確認し、届出手続きが必要です。届出済みであれば算定候補になりえます。
区分一覧と点数(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数って1点から250点まであるんですか?多いですね!
あおい(元・医療事務)
そうなんです。区分O003の特徴は、1点から250点まで1点刻みで250区分あること。令和8年6月1日時点では1〜250まで算定でき、令和9年6月以降は251〜500まで算定可能になります。

| 区分 | 点数 | 算定単位 | 算定開始 |
|---|---|---|---|
| O003-1 | 1点 | 1日につき | 令和8年6月〜 |
| O003-2 | 2点 | 1日につき | 令和8年6月〜 |
| O003-3 | 3点 | 1日につき | 令和8年6月〜 |
| (中略) | |||
| O003-250 | 250点 | 1日につき | 令和8年6月〜 |
| O003-251 | 251点 | 1日につき | 令和9年6月〜 |
| (中略) | |||
| O003-500 | 500点 | 1日につき | 令和9年6月〜 |
あおい(元・医療事務)
出典: 令和8年厚生労働省告示第69号(令和8年6月1日施行)
みらい(新人医療事務)
どの区分になるかはどうやって決まるんですか?
あおい(元・医療事務)
届出時に「対象職員数と月額賃金の改善に必要な額から計算した区分」を申請します。医療機関ごとに職員の数・賃金水準が違うため、区分は各施設が試算・計算して届け出ます。具体的な計算方法は、「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)」に規定されています。
令和9年6月以降の区分(251〜500)について
告示の注2に「251から500までに規定する点数については、令和9年6月以降において算定する」と規定されています。令和8年6月時点では最大250点が上限です。令和9年6月以降に251点以上の区分に移行する場合は、改めて届出が必要かどうかを公式資料で確認してください。
施設基準と届出要件
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容ですか?
あおい(元・医療事務)
告示等に基づく主な施設基準としては、「継続的に賃上げを行っている保険医療機関であること」「職員の賃金の改善を実施するにつき必要な体制が整備されていること」「対象職員(当該保険医療機関に勤務する職員)がいること」「施設基準の条件を満たした上で地方厚生局長等への届出を行うこと」が確認できます。(出典: 特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件・令和8年厚生労働省告示第71号)
みらい(新人医療事務)
「継続的に賃上げを行っている」ってどのくらいの期間ですか?
あおい(元・医療事務)
告示では「継続的に賃上げを行っている保険医療機関」とされていますが、具体的な要件の詳細(対象期間・計算方法等)は届出に関する手続き通知(保医発0305第8号)で規定されています。令和8年3月31日時点での届出状況が施設基準の一部要件に影響する場合もありますので、届出前に公式資料を必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
派遣社員は対象に含まれますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年3月23日付の疑義解釈(その1)によると、所定の要件を満たせば派遣職員も対象に含められます。具体的には「当該派遣職員について、派遣元と相談・協力した上で、当該保険医療機関に勤務する職員と同程度以上の賃金改善を行う」「入院ベースアップ評価料における区分計算に当たって、当該派遣職員についても対象職員に含めて計算を行う」とされています(令和8年3月23日事務連絡・疑義解釈資料の送付について(その1))。ただし業務委託職員(請負業務を行う職員)は対象外です。詳細な条件は疑義解釈通知でご確認ください。
算定タイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
1日につき算定するということは、入院している日数分だけ算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。入院基本料等を算定している患者が入院している日については、1日につき届出区分の点数を算定する形です。
算定上の注意点
- 算定は「入院患者」のみ。外来・在宅患者には別途「外来・在宅ベースアップ評価料(O001・O002)」が設けられている
- 医科・歯科を併せて行う保険医療機関では、医科・歯科それぞれ別に算定する(ただし看護職員処遇改善評価料・入院ベースアップ評価料は除く)
- 区分251〜500は令和9年6月以降に算定可
- 届出を行っていない医療機関は算定不可
みらい(新人医療事務)
看護職員処遇改善評価料(O000)と入院ベースアップ評価料(O003)は一緒に算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
両者は別の評価料ですが、算定の組み合わせについては届出状況と施設基準を確認する必要があります。「医科・歯科を併せて行う保険医療機関において看護職員処遇改善評価料及び入院ベースアップ評価料を除く各区分に掲げるベースアップ評価料等を算定する」旨が告示に記載されていますが、自院での具体的な算定可否は公式資料・審査支払機関にご確認ください。
医療費控除における扱い
みらい(新人医療事務)
患者さんから「入院ベースアップ評価料って医療費控除の対象になりますか?」と聞かれたらどう答えますか?
あおい(元・医療事務)
入院ベースアップ評価料は診療報酬の一部として入院費に含まれます。医療費控除は「治療のために支払った医療費」が対象なので、診療報酬として算定された入院費は基本的に医療費控除の計算に含まれます。ただし個別の税務判断は税務署や税理士への確認が必要ですし、患者さんの具体的なケースによって異なる場合もあります。「一般論として入院費全体が医療費控除の対象になりえます」と案内し、詳細は税務署等に問い合わせるよう伝えるのが適切です。
自院で確認する順番(自院チェックリスト)

自院で確認する順番
- 自院は「入院基本料・特定入院料・短期滞在手術等基本料(基本料1を除く)」を算定しているか確認する
- 当該保険医療機関において勤務する職員の賃金改善体制が整備されているか確認する
- 「継続的に賃上げを行っている保険医療機関」の要件を満たしているか確認する(保医発0305第8号)
- 対象職員数・月額賃金をもとに届出区分(1〜250点)を計算する
- 地方厚生局長等への届出を完了する
- 届出完了後、入院患者への算定を開始する
- 院内掲示等で算定内容を患者に案内する
みらい(新人医療事務)
このフローを確認してから届出するということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。区分の計算では「対象職員の適切な賃金改善に必要な額」と「評価料により算定する見込み点数の合計×10円」を照らし合わせる計算が必要です。詳しい計算式は届出関係資料(保医発0305第8号別添)で確認を。
よくある取り漏れ・注意ポイント
取り漏れ・確認不足になりやすいポイント
- 区分の届出を先にしないと算定不可: 施設基準を満たしていても届出がなければ算定できない
- 令和9年6月以降の区分変更: 251〜500点の区分は令和9年6月以降なので、令和8年時点での算定区分(最大250)を確認する
- 医科・歯科の区分は別計算: 医科と歯科を一体で届け出ることはできず、それぞれ算定が異なる場合がある
- 対象職員の範囲: 派遣職員は要件を満たせば含められるが、業務委託は対象外
- 賃金改善実績報告書の提出: 賃金改善の状況について定期的に地方厚生局長等への報告が求められる
みらい(新人医療事務)
賃金改善の実績報告も必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。評価料で得た収入を実際に賃金改善に使ったかどうかを報告する義務があります。見込み額との乖離が大きい場合は翌年度以降の届出区分の見直しが必要になることもあるので、定期的な実績管理が重要です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
「入院ベースアップ評価料 いつから」って検索してる人が多いみたいですが、何年度から算定開始ですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)改定の施行日である令和8年6月1日から算定が始まっています。区分1〜250が令和8年6月1日から、区分251〜500は令和9年(2027年)6月以降から算定可能になります。
みらい(新人医療事務)
「いつまで」算定できるという期限はあるの?
あおい(元・医療事務)
現時点(令和8年度)の告示には算定期限の記載はありませんが、診療報酬は2年ごとに改定されます。次回の令和10年度(2028年度)改定で要件や区分が変わる可能性もあるため、改定のたびに公式資料を確認することが必要です。
みらい(新人医療事務)
「医科 歯科」と検索している方は両方の病院が気になってるんですかね?
あおい(元・医療事務)
そうだと思います。入院ベースアップ評価料は医科・歯科ともに設けられています。医科の場合は点数表第14部の「ベースアップ評価料等」(O章)に記載があります。医科と歯科の両方を行う保険医療機関では、それぞれの診療の患者ごとに別々の計算で届出・算定することになりますが、看護職員処遇改善評価料と入院ベースアップ評価料については歯科・医科を合算する特別の取り扱いがあります。詳細は告示・留意事項通知で確認を。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。