みらい(新人医療事務)
先輩、術後の患者さんに使う陰圧の創傷ケア機器、うちの病棟でも導入を検討しているんです。「切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算」っていう名前を聞いたんですけど、これって普通の手術後の患者さんなら誰でも算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
結論から言うと、対象になる病棟と患者さんの条件がかなり絞られている加算なんです。名前だけ見ると縫合創全般に使えそうに感じますが、令和8年度の点数表を見る限り、算定できるのは特定の病棟に入院していて、かつ感染リスクが高いと判断できる患者さんに限られています。今日は一緒に一次資料で確認していきましょうね。
みらい(新人医療事務)
お願いします!まず、そもそもどういう目的の加算なんですか?
この加算は何のための加算か
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示・留意事項通知によると、切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算は「滲出液を持続的に除去し、切開創手術部位感染のリスクを低減させる目的のみで薬事承認を得ている医療機器」を、手術後の縫合創に対して使用した場合に算定する手術医療機器等加算です。手術そのものの点数に上乗せする形の加算、という位置づけになります。
みらい(新人医療事務)
「薬事承認を得ている医療機器」というのがポイントなんですね。普通の陰圧閉鎖処置(J003など)とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。J003の局所陰圧閉鎖処置は開放創・褥瘡などに対する処置そのものの点数ですが、この加算は手術で縫合したあとの創(閉鎖創)に対して、感染予防目的で薬事承認された専用機器を使った場合に手術の点数へ加算するものです。区分番号はK939-9、対象は病院・入院に限られていて、外来では算定対象になりません。
みらい(新人医療事務)
診療所は関係ない加算ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。当サイトが収集している一次資料の範囲では、対象は病院・入院のみで、外来や在宅では算定対象になっていません。
対象となる病棟・患者(ここが一番の確認ポイント)
みらい(新人医療事務)
どの病棟の患者さんでも対象になるわけじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知では、算定対象となる患者は次の入院料を算定している患者に限定されています。
| 対象となる入院料区分 |
|---|
| A300 救命救急入院料(救命救急入院料1に限る) |
| A301 特定集中治療室管理料 |
| A301-3 脳卒中ケアユニット入院医療管理料 |
| A301-4 小児特定集中治療室管理料 |
| A302 新生児特定集中治療室管理料 |
| A302-2 新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料 |
| A303 総合周産期特定集中治療室管理料 |
みらい(新人医療事務)
一般病棟の術後患者さんは対象外ということですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に明記されている範囲では、上記の入院料を算定していない患者は対象に含まれていません。ICUや救命救急、周産期母子医療センターなど、より重症度の高い病棟に限定された加算という理解になります。自院がこれらの入院料の届出病棟を持っているかどうかが、まず最初の確認ポイントです。特定集中治療室管理料や新生児特定集中治療室管理料の届出状況は、この加算を検討する前提として確認しておく必要がありますね。
みらい(新人医療事務)
病棟の条件をクリアしたら、あとは自由に使っていいんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこがもう一段階あります。留意事項通知では、上記の入院料を算定する患者のうち、次のいずれかに該当する患者に対して使用した場合に限り算定できるとされています。
| 区分 | 対象患者の条件 |
|---|---|
| ア | BMIが30以上の肥満症の患者 |
| イ | 糖尿病患者のうち、ヘモグロビンA1c(HbA1c)がJDS値で6.6%以上(NGSP値で7.0%以上)の者 |
| ウ | ステロイド療法を受けている患者 |
| エ | 慢性維持透析患者 |
| オ | 免疫不全状態にある患者 |
| カ | 低栄養状態にある患者 |
| キ | 創傷治癒遅延をもたらす皮膚疾患又は皮膚の血流障害を有する患者 |
| ク | 手術の既往がある者に対して、同一部位に再手術を行う患者 |
みらい(新人医療事務)
けっこう細かく決まっているんですね。この条件に当てはまらない患者さんに使ったらどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には、「(2)以外の患者に対して当該機器を使用した場合は、当該機器に係る費用はそれぞれの手術の所定点数に含まれ、本加算は算定できない」と明記されています。つまり対象患者の条件を満たさない場合は、機器を使っても加算は算定候補にならず、機器の費用は手術の所定点数に含まれる扱いになるということですね。
みらい(新人医療事務)
しかも、なお書きで「診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記載すること」ともありましたよね。
あおい(元・医療事務)
よく気づきましたね。ア〜クのどれに該当するかをレセプトの摘要欄に具体的に記載する必要があります。「該当あり」とだけ書くのではなく、どの区分に当てはまるかを明確にする運用が必要になる、ということです。
点数(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(告示)では、K939-9 切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算は5,190点です。手術の所定点数に上乗せする加算として算定します。
| 区分番号 | 加算名 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K939-9 | 切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算 | 5,190点 |

みらい(新人医療事務)
手術1回につき1回だけ算定できるイメージですか?
あおい(元・医療事務)
回数の上限について、留意事項通知に明示的な「1入院に1回」「1手術に1回」といった記載は、当サイトが収集している一次資料の範囲では確認できていません。あくまで「術後縫合創に対して使用した場合」に算定する加算のため、算定単位や回数の考え方は自院のレセプト担当者・審査支払機関に確認したうえで運用するのが安全です。ここは断定せず、要確認として扱ってください。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、施設基準の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは正直にお伝えしますね。留意事項通知を確認する限り、切開創局所陰圧閉鎖処置機器加算そのものに固有の施設基準や届出を求める記載は見当たりません。算定要件として書かれているのは、あくまで対象病棟(特定集中治療室管理料など)を算定している患者であること、そして対象患者の条件(ア〜ク)を満たすことの2点です。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出は何もいらないということですか?
あおい(元・医療事務)
そう言い切るのは早いです。この加算の対象病棟である特定集中治療室管理料や救命救急入院料などは、それ自体が施設基準の届出を必要とする入院料です。つまり、この加算単独の届出はなくても、前提となる病棟側の届出が済んでいるかどうかが実質的な条件になります。「届出不要」と単純に判断せず、自院の病棟区分の届出状況を確認したうえで、最終的な要否は地方厚生局・審査支払機関に確認することをおすすめします。
届出・施設基準は自院で必ず確認
本加算そのものへの固有の届出要件は一次資料上で確認できていませんが、対象病棟(特定集中治療室管理料等)の届出状況によって算定可否が左右されます。届出の要否・施設基準の充足は、必ず自院の届出状況と地方厚生局・審査支払機関への確認をもって判断してください。
算定のタイミング・注意点(併算定・対象外になるケース)
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
まず前提として、対象になるのは「術後縫合創」、つまり手術で縫合した後の閉鎖創です。開放創や褥瘡に使う場合はJ003の局所陰圧閉鎖処置など別の区分になりますので、混同しないようにしてください。
みらい(新人医療事務)
併算定については何かありますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の範囲では、他の処置・加算との併算定を明示的に禁止する記載は確認できていません。ただし、対象患者の条件(2)を満たさない場合は「当該機器に係る費用はそれぞれの手術の所定点数に含まれ、本加算は算定できない」とされているため、対象外の患者に使用した機器費用を別建てで請求することはできません。この点は誤りやすいポイントです。
よくある取り漏れ・誤り
対象患者の記載漏れ: ア〜クのどの条件に該当するかを摘要欄に記載していないと、算定要件を満たしているかどうかの確認ができなくなります。 病棟条件の見落とし: 一般病棟の術後患者に使用した場合は、留意事項通知に明記された対象病棟に該当しないため、算定候補にはなりません。 機器の適応の混同: 感染リスク低減の目的のみで薬事承認を得た機器であることが前提です。用途の異なる陰圧閉鎖機器を使った場合は対象外になる可能性があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度に新しくできたものなんですか? それとも前からあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知)の範囲では、この加算の新設や算定要件の変更を示す記載は確認されていません(確認日: 2026年7月)。前回改定(令和6年度)時点の告示・留意事項通知は当サイトにまだ収録されていないため、対象病棟の範囲や対象患者の条件(ア〜ク)が前回改定からどう変わったか、詳細な差分までは確認できていない状態です。
みらい(新人医療事務)
「たぶん変わっていないはず」ではなく、「確認できていない」ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。断定はできません。もし前回改定からの変更点を正確に把握したい場合は、令和6年度の告示・留意事項通知(官報または厚生労働省の該当ページ)と、今回ご紹介した令和8年度の一次資料を突き合わせて確認するか、地方厚生局・審査支払機関に確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多かったので、確認する順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。次のステップで確認していくと整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 自院の病棟が、A300救命救急入院料(救命救急入院料1)・A301特定集中治療室管理料・A301-3脳卒中ケアユニット入院医療管理料・A301-4小児特定集中治療室管理料・A302新生児特定集中治療室管理料・A302-2新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料・A303総合周産期特定集中治療室管理料のいずれかを届出・算定しているか確認する
- 使用を検討している機器が、感染リスク低減の目的のみで薬事承認を得ている医療機器かどうかをメーカー資料等で確認する
- 対象となる患者が、ア〜クの条件(肥満症・糖尿病・ステロイド療法中・慢性維持透析・免疫不全・低栄養・創傷治癒遅延・再手術など)のいずれかに該当するか、術前に確認する
- 該当する条件をレセプトの摘要欄に具体的に記載する体制を整える
- 届出・算定単位・回数の考え方について、地方厚生局または審査支払機関に確認する

みらい(新人医療事務)
こうやって順番に見ていくと、思ったより確認することが多いですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。特に対象病棟と対象患者の条件は両方満たす必要があるので、どちらか一方だけ確認して終わりにしないことが大切です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか気になる点を聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
一般病棟に入院している術後患者さんには、まったく算定候補にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に明記された対象病棟(特定集中治療室管理料等)に該当しない場合、当サイトが確認している一次資料の範囲では算定候補にはなりません。ただし、転棟・転室の経緯によって状況が変わることもあるため、個別のケースは審査支払機関に確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は本当に不要と考えていいんですか?
あおい(元・医療事務)
本加算固有の届出要件は一次資料上で確認できていませんが、前提となる病棟側(特定集中治療室管理料など)の届出が必要です。「届出不要」と単純に判断せず、病棟側の届出状況を必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から点数や対象が変わった可能性はありますか?
あおい(元・医療事務)
可能性はゼロとは言えませんが、当サイトが収集している令和8年度の一次資料の範囲では変更を示す記載は確認されていません。前回改定時点の一次資料との突き合わせがまだできていないため、気になる場合は厚生労働省の公表資料や地方厚生局に確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。