みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトの摘要欄チェックをしていたら「看護師等遠隔診療補助加算」という項目を見つけたんですけど、これって何のための加算ですか?名前だけだとちょっとイメージが湧かなくて。
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。これは、へき地の患者さんが看護師さんと一緒にいる状態で、医師がオンラインで診療する場合に算定できる加算です。令和8年度(2026年度)の診療報酬でも引き続き設定されている加算区分ですよ。
みらい(新人医療事務)
「看護師さんと一緒にいる患者さん」というのがポイントなんですね。普通のオンライン診療とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。医師が単独で患者さんとオンラインで話すのではなく、患者さんのそばに看護師等がいる状態で行う情報通信機器を用いた診療、いわゆる「D to P with N」と呼ばれる形の診療を評価する加算です。対象や要件を一つずつ確認していきましょう。
看護師等遠隔診療補助加算とは
みらい(新人医療事務)
まず、この加算はどんな場面を想定しているんですか?
あおい(元・医療事務)
へき地の医療を確保するための仕組みです。へき地医療拠点病院やへき地診療所の医師が、看護師等といる患者さんに対して情報通信機器を用いた診療を行った場合に算定候補になる加算、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
「へき地」というのが前提条件になっているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。この加算は再診料・外来診療料の「注」として規定されている加算区分で、初診の場面ではなく再診の場面を想定しています。しかも、いつでも算定できるわけではなく、前回の対面診療からの期間にも制限があります。この後の「算定タイミング」で詳しく説明しますね。

対象になる医療機関・診療の場面
みらい(新人医療事務)
うちの診療所が対象になるかどうか、どうやって判断すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
まず大前提として、「へき地保健医療対策事業について」に規定するへき地医療拠点病院、またはへき地診療所の指定を受けていることが必要です。この指定がなければ、そもそも算定の土台に乗りません。
対象医療機関の考え方(一次資料に基づく整理)
- へき地医療拠点病院の指定を受けている病院
- へき地診療所の指定を受けている診療所
- 上記いずれの指定も受けていない医療機関は、施設基準の(1)を満たさないため対象外の可能性が高い
みらい(新人医療事務)
病院でも診療所でも対象になりうるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。病院か診療所かという区分そのものよりも、「へき地医療拠点病院」または「へき地診療所」の指定を受けているかどうかが分かれ目になります。この指定の有無は自院で確認できますが、指定の申請・更新状況は都道府県の担当窓口で確認するのが確実です。
点数と算定区分
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
50点です。令和8年度の医科点数表では、再診料の注20、外来診療料の注11として、それぞれ次のように規定されています。
| 項目 | 内容 | 年度 |
|---|---|---|
| 加算名 | 看護師等遠隔診療補助加算 | 令和8年度 |
| 点数 | 50点 | 令和8年度 |
| 規定される基本診療料 | A001 再診料(注20)/A002 外来診療料(注11) | 令和8年度 |
| 算定単位 | 情報通信機器を用いた診療を行った場合に加算 | 令和8年度 |
みらい(新人医療事務)
「注20」とか「注11」というのは、点数表のどこに書いてあるかを示す番号ってことですよね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。厚生労働省の告示ではこう規定されています。
告示の文言(令和8年度・引用)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行った場合は、看護師等遠隔診療補助加算として、50点を所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
「届け出た保険医療機関において」とあるので、届出をしていないと算定候補にすらならない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。点数だけ見て「50点算定できる」と判断するのは早計で、届出と施設基準の充足が前提になります。次にその中身を見ていきましょう。
施設基準を満たしているか確認する
みらい(新人医療事務)
施設基準は具体的にどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第7号)に、次のいずれにも該当することと規定されています。
施設基準(一次資料の引用)
「1 看護師等遠隔診療補助加算に関する施設基準 次のいずれにも該当すること。(1) 「へき地保健医療対策事業について」(平成13年5月16日医政発第529号)に規定するへき地医療拠点病院又はへき地診療所の指定を受けていること。(2) 当該保険医療機関に、へき地における患者が看護師等といる場合の情報通信機器を用いた診療に係る研修を修了した医師を配置していること。(3) 別添1の第1に掲げる情報通信機器を用いた診療の届出を行っていること。」
みらい(新人医療事務)
3つとも満たさないといけないんですね。(2)の「研修を修了した医師」というのは、具体的にどんな研修なんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは厚生労働省の疑義解釈でも質問が出ています。前回改定(令和6年度)の疑義解釈資料(その1・問22)では、厚生労働省「オンライン診療研修・調査事業」として実施される「へき地における患者が看護師等といる場合のオンライン診療に関する研修」が該当する、と回答されています。ただし「現時点では」という留保つきの回答なので、最新の該当研修は厚生労働省の公式情報で確認するのが確実です。
みらい(新人医療事務)
(3)の「情報通信機器を用いた診療の届出」というのは、この加算専用の届出とは別物ですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別物です。オンライン診療そのものを行うための基礎的な届出(情報通信機器を用いた診療の届出)がまず必要で、そのうえでこの加算専用の届出も追加で行う、という2段階の構造になっています。次の届出のセクションで説明しますね。
届出の手続き
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するための届出は、どんな様式を使うんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の通知には次のように規定されています。
届出様式(一次資料の引用)
「2 届出に関する事項 看護師等遠隔診療補助加算に関する届出は別添7の様式1の7を用いること。」
みらい(新人医療事務)
様式1の7ですね。これは地方厚生(支)局に提出するものですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。届出の具体的な提出先・提出方法・添付書類の詳細は、地方厚生局の窓口や公式の届出手続き案内で必ず確認してください。届出が受理されていない状態では、施設基準を実質的に満たしていても算定候補にはなりません。
算定タイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
施設基準を満たして届出もしていれば、いつでも算定していいんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこに大事な制限があります。厚生労働省の留意事項通知にはこう書かれています。
算定できる期間の制限(一次資料の引用)
「「注20」に規定する看護師等遠隔診療補助加算は、「へき地保健医療対策事業について」(平成13年5月16日医政発第529号)に規定されるへき地診療所の医師又はへき地医療拠点病院の医師が、看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を実施した場合に、前回の対面診療を実施した日から起算して、3月以内に限り算定する。」
みらい(新人医療事務)
「3月以内に限り」なんですね。ということは、対面診療から期間が空きすぎると算定候補にならない、ということですか?
あおい(元・医療事務)
資料の文言どおりに読むと、前回の対面診療日から起算して3か月を超えている場合は、この加算の算定要件を満たさない可能性があります。実際の運用では、直近の対面診療日をカルテで確認したうえで判断する必要があります。同じ規定が外来診療料の注11にも設けられているので、再診料と外来診療料のどちらで算定する場面でも、この期間制限は共通です。
みらい(新人医療事務)
併算定については何か注意点がありますか?
あおい(元・医療事務)
現時点で当サイトが収録している一次資料の範囲では、この加算と他の特定の加算との併算定を明示的に禁止する記載は確認できていません。ただし、再診料・外来診療料そのものの算定ルール(同一日の重複算定禁止など)は当然適用されるため、レセプト作成時には基本診療料側の一般的な算定ルールと合わせて確認することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和8年度に新しくできたものなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和8年度が初出ではなさそうです。令和6年度(2024年度)の時点で、この加算の施設基準(研修要件)に関する疑義解釈が既に発出されていて、その施設基準の文言は令和8年度の通知にある内容と一致しています。
改定の経緯(前回改定との対比)
- 令和6年度(2024年度): 施設基準(研修を修了した医師の配置要件など)に関する疑義解釈が発出されている(令和6年度・その1・問22)
- 令和8年度(2026年度): 同様の施設基準(へき地医療拠点病院/へき地診療所の指定、研修修了医師の配置、情報通信機器を用いた診療の届出)が維持されている
みらい(新人医療事務)
つまり、点数や施設基準が大きく変わったわけではなさそうということですね。
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、令和8年度改定における点数・施設基準の大きな変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。ただし、これは限られた一次資料の突き合わせによる確認であり、今後の疑義解釈や訂正通知で内容が補足される可能性はあります。最新の状況は厚生労働省の公式情報で確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
ここまでの内容を踏まえて、自院で確認するときはどんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認するとスムーズです。
自院で確認する順番
-
へき地医療拠点病院・へき地診療所の指定を確認 — 自院がどちらかの指定を受けているか、都道府県の担当窓口の記録で確認する
-
研修修了医師の在籍を確認 — 情報通信機器を用いた診療に係る研修を修了した医師が配置されているか確認する
-
情報通信機器を用いた診療の届出状況を確認 — この加算の前提となる基礎的な届出(別添1の第1)を行っているか確認する
-
加算専用の届出(様式1の7)の提出・受理状況を確認 — 届出が地方厚生(支)局に受理されているか確認する
-
対象患者の直近の対面診療日を確認 — 前回の対面診療日から起算して3か月以内であるかをカルテで確認する
-
算定する基本診療料(再診料・外来診療料)の区分を確認 — どちらの注で算定するかをレセプト上で確認する

みらい(新人医療事務)
6段階もあるんですね。1つでも欠けていると算定候補から外れてしまう、ということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。施設基準は「次のいずれにも該当すること」という書き方をされているので、3つの要件すべてを満たしたうえで、さらに届出と期間制限もクリアしている必要があります。順番に確認していけば、抜け漏れは防ぎやすくなります。
よくある取り漏れ・誤解しやすいポイント
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな勘違いってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますね。整理してみましょう。
よくある取り漏れ・誤解
- 指定の有無を確認せずに検討してしまう: へき地医療拠点病院・へき地診療所の指定がなければ、施設基準の(1)を満たさない
- 加算専用の届出だけで足りると思い込む: 情報通信機器を用いた診療そのものの基礎的な届出と、加算専用の届出(様式1の7)は別物
- 3か月の期間制限を見落とす: 前回の対面診療日からの経過期間を確認せずに算定してしまう
- 初診の場面で算定できると誤解する: この加算は再診料・外来診療料の注として規定されており、初診料には規定されていない
みらい(新人医療事務)
「初診では算定できない」というのは見落としやすそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。名前だけを見ると「遠隔診療全般に使える加算」のように思えるかもしれませんが、規定されている条文上は再診料・外来診療料の注に限られています。この点は算定前に必ず確認してください。
公式資料・参考情報
あおい(元・医療事務)
この記事でご紹介した点数・施設基準・算定タイミングは、以下の厚生労働省公式資料に基づいています。詳細や最新の疑義解釈は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 疑義解釈資料の送付について(その1)医科 問22(前回改定・令和6年度) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
みらい(新人医療事務)
医療DX関連で似たような届出制の加算、他にもありましたよね。
あおい(元・医療事務)
はい、たとえば電子的診療情報連携体制整備加算も、施設基準の届出を前提にした再診料・外来診療料の加算区分です。届出制の加算をまとめて確認しておくと、算定漏れの点検がしやすくなりますよ。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある疑問もいくつか聞いておきたいです。「うちは病院だから対象外では」と思っている職員がいるんですが。
あおい(元・医療事務)
病院か診療所かという区分自体は問題になりません。へき地医療拠点病院の指定を受けている病院であれば、他の施設基準と届出を満たすことで算定候補になりえます。「病院だから対象外」と決めつけず、指定の有無を確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
「情報通信機器を用いた診療」というのは、いわゆるオンライン診療と同じ意味ですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の文脈では、看護師等といる患者に対して行う情報通信機器を用いた診療、という形で規定されています。厳密な定義や運用の詳細(使用機器の要件など)は、オンライン診療に関する指針や関連通知もあわせて確認するのが確実です。この記事だけで判断せず、公式資料での確認をおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも一度きちんと確認してみたいです。
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。へき地医療拠点病院・へき地診療所の指定状況や届出状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。施設基準の充足状況や届出の有効性は、必ず自院で最新の一次資料と照らし合わせてご確認ください。