みらい(新人医療事務)
先輩、「移植臓器提供加算」って項目、初めて見ました。これって普通の手術の加算とは違うものなんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、少し特殊な加算です。区分番号K780「同種死体腎移植術」やK709-3「同種死体膵移植術」など、死体からの臓器移植の手術に対して、条件を満たした場合に所定点数へ55,000点を加算するものです。令和8年度の医科点数表に基づく整理として、まず全体像から確認していきましょう。
みらい(新人医療事務)
55,000点って結構大きいですね。うちの診療所でも算定候補になることはあるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
対象になる手術自体が高度な移植手術なので、実施できる医療機関はかなり限られます。ただ、届出は不要な加算なので、対象手術を実施していれば診療所・病院どちらでも算定候補にはなり得ます。まずは対象になる手術を整理しますね。
対象になる手術と加算の位置づけ
みらい(新人医療事務)
具体的にはどの手術が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、以下の区分番号に「注」として同じ55,000点の加算が設けられています。
| 区分番号 | 手術名 | 所定点数 | 移植臓器提供加算 |
|---|---|---|---|
| K780 | 同種死体腎移植術 | 98,770点 | 55,000点 |
| K709-3 | 同種死体膵移植術 | 112,570点 | 55,000点 |
| K709-5 | 同種死体膵腎移植術 | 140,420点 | 55,000点 |
| K709-6 | 同種死体膵島移植術 | 56,490点 | 55,000点 |
あおい(元・医療事務)
いずれも「令和8年度診療報酬改定」の医科点数表に基づく点数です。加算額はどの手術でも一律55,000点で、所定点数に上乗せする形になっています。
みらい(新人医療事務)
手術によって所定点数はバラバラなのに、加算だけは共通なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。加算の対象になるかどうかは、手術の種類そのものよりも「ドナーがどういう状態だったか」で決まります。ここが一番大事なポイントなので、次に説明しますね。
算定要件: ポイントは「脳死判定を受けたかどうか」
みらい(新人医療事務)
どういう条件だと加算の対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録しているK780の一次資料には、こう書かれています。
K780の算定要件(一次資料の記載)
「臓器の移植に関する法律第6条第2項に規定する脳死した者の身体から採取された腎を除く死体腎を移植した場合は、移植臓器提供加算として、55,000点を所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
「脳死した者の身体から採取された腎を"除く"」ってことは……。
あおい(元・医療事務)
はい、逆に言うと、法的な脳死判定を受けたドナー(いわゆる脳死下臓器提供)からの腎臓を移植した場合は、この加算の対象には含まれません。加算の対象になり得るのは、脳死判定を受けていない死体(心停止後の臓器提供など)からの腎・膵・膵腎・膵島を移植したケースです。K709-3(同種死体膵移植術)・K709-5(同種死体膵腎移植術)・K709-6(同種死体膵島移植術)も、それぞれ同じ考え方の条文になっています。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、脳死下での移植手術だったら、この加算は算定候補にならないってことですね。
あおい(元・医療事務)
資料の文言どおりに読めばそうなります。ただ、実際のドナー区分の判断は移植コーディネーターや臓器あっせん機関からの情報、診療記録の内容によって確定するものなので、個々のケースでどちらに当たるかは自院の記録と一次資料に照らして確認が必要です。ここは断定せず、必ず確認する前提で進めてください。
加算に含まれる費用の範囲
みらい(新人医療事務)
55,000点の中には何の費用が入っているんですか? 別に請求できる費用もあるのか気になります。
あおい(元・医療事務)
K780の留意事項通知には、加算に含まれる費用の範囲がかなり具体的に書かれています。
留意事項通知(K780)の記載
「『注1』の加算は、死体(脳死体を除く。)から移植のための腎採取を行う際の採取前の採取対象腎の灌流、腎採取、採取腎の灌流及び保存並びにリンパ節の保存に要する人件費、薬品・容器等の材料費等の費用が全て含まれる。ただし、腎採取を行う医師を派遣した場合における医師の派遣に要した費用及び採取腎を搬送した場合における搬送に要した費用については療養費として支給し、それらの額は移送費の算定方法により算定する。」
あおい(元・医療事務)
つまり、採取前の灌流から腎採取、採取後の灌流・保存、リンパ節の保存にかかる人件費や材料費は、基本的にこの55,000点にすべて含まれるという整理です。一方で、医師を派遣した場合の派遣費用や、採取した臓器を搬送した費用については、加算とは別枠で療養費(移送費の算定方法)として扱われる、と一次資料に明記されています。
みらい(新人医療事務)
加算の中に含まれる費用と、別枠になる費用がはっきり分かれているんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。同種死体腎移植術の所定点数そのものには灌流の費用も含まれる、という記載もあるので、「手術の所定点数」「移植臓器提供加算」「派遣・搬送の療養費」が別々の枠であることを整理して確認するのがポイントです。
施設基準・届出は不要
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するのに、施設基準の届出とか必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している範囲の情報では、この加算自体に施設基準の届出は求められていません。対象になる同種死体腎移植術・同種死体膵移植術などの手術を実施し、条件を満たす死体臓器の移植であれば、届出なしで算定候補になる整理です。
届出不要でも確認は必要
届出が不要な加算であっても、対象になる手術を実際に算定できる体制にあるか、レセプトの記載内容がドナー区分の条件を満たしているかは、自院で個別に確認する必要があります。「届出がいらないから確認しなくてよい」という意味ではありません。
みらい(新人医療事務)
届出がないからこそ、逆に自分たちでしっかり確認しないといけないってことですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。対象は入院での手術になるので、外来では算定対象になりません。診療所・病院いずれでも、対象手術を実施した入院患者に対する加算として位置づけられています。
関連する加算・管理料との違い
みらい(新人医療事務)
似たような名前の項目、他にもある気がします。混同しないように整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、整理しますね。移植臓器提供加算も脳死臓器提供管理料も、どちらも移植を行った保険医療機関が算定する点数です。施設のどちら側で算定するかという違いではなく、ドナーが脳死判定を受けたかどうかで使い分けます。脳死判定を受けたドナーからの臓器提供であれば脳死臓器提供管理料、脳死判定を受けていないドナー(心停止後提供など)からの臓器提供であれば移植臓器提供加算というように、移植を行った同じ保険医療機関が状況に応じて選んで算定する点数です。名前が似ていますが、判断のポイントが違うので取り違えないよう注意してください。
みらい(新人医療事務)
「提供加算」と「提供管理料」、確かに紛らわしいです……。
あおい(元・医療事務)
あわせて、K780などの区分番号には抗HLA抗体検査加算(注3・4,000点)という別の加算も同じ手術の中に定められています。移植臓器提供加算とは算定要件が異なる別項目なので、こちらも一緒くたにせず、それぞれの条文で確認するようにしてください。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料(令和8年度の医科点数表・留意事項通知)の範囲では、移植臓器提供加算そのものについて、点数・対象手術・算定要件のいずれにも変更があったことを示す記載は確認されていません(確認日: 2026年7月)。今回ご案内した55,000点、対象となるK780・K709-3・K709-5・K709-6の各手術、脳死判定を受けたドナーを除くという要件は、令和8年度時点の一次資料に基づく内容です。
変更点確認の考え方
点数が変わっていないように見えても、対象範囲や含まれる費用の範囲(灌流・採取・保存の人件費等)が改定で見直されることもあります。「点数据え置き=完全に変更なし」と決めつけず、告示・留意事項通知の本文を都度確認することが大切です。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの病院でこの加算に該当しそうなケースがあったら、どう確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくとよいですよ。
自院で確認する順番
- K780・K709-3・K709-5・K709-6のいずれかの手術を実際に実施したか確認する
- 移植した死体臓器のドナーが、臓器の移植に関する法律第6条第2項の脳死判定を受けた者かどうか、診療記録・移植コーディネーターからの情報で確認する
- 脳死判定を受けていない死体からの臓器移植であることが確認できれば、移植臓器提供加算55,000点の算定候補として整理する
- 採取前後の灌流・採取・保存にかかる人件費や材料費が加算に含まれる範囲か、医師派遣・搬送のように療養費として別扱いになる費用かを区分する
- 抗HLA抗体検査加算など同じ区分番号内の他の加算と混同していないか、条文を個別に確認する

みらい(新人医療事務)
一つずつ確認すれば、判断を誤りにくくなりそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特にドナー区分の確認は、レセプトの適否に直結する重要なポイントです。迷ったときは自己判断せず、必ず一次資料と自院の記録を突き合わせてください。

よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よく聞かれそうな疑問をまとめて確認させてください。脳死下での移植手術だったら、この加算はまったく算定候補にならないんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の文言は「脳死した者の身体から採取された臓器を除く」となっているので、法的な脳死判定を経たドナーからの臓器移植は、この加算の対象からは外れる整理です。ただし個々のケースの該当有無は、自院の記録と一次資料を照らし合わせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
外来で移植手術後のフォローをした場合も対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
移植臓器提供加算は入院での手術に伴う加算という位置づけで、外来は対象に含まれていません。フォローアップの外来診療について別途算定できる項目があるかは、当該診療の内容ごとに確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていないと算定できない可能性はありますか?
あおい(元・医療事務)
この加算自体には施設基準の届出要件は確認されていません。ただし、対象となる手術(同種死体腎移植術など)の実施体制や記録が整っていることが前提になるので、届出の有無とは別に、実施体制の確認は必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。