生物学的製剤注射加算とは?基本から確認ポイントまで

みらい(新人医療事務)
あおいさん、「生物学的製剤注射加算」という加算名を見たんですが、どんな注射に関係するものなんですか?
あおい(元・医療事務)
注射の点数を算定するときに追加でつく加算ですよ。令和8年度(2026年度)の医科点数表では、注射の「通則3」という位置に置かれていて、特定の注射薬を使ったときに15点を上乗せできる仕組みです。
みらい(新人医療事務)
「通則3」というのは、注射全体に関わるルールということですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。注射の「第6部 注射」には10個の通則があって、通則1・2が注射の基本的な費用の計算方法、通則3が今回の生物学的製剤注射加算です。「前2号により算定した点数に15点を加算する」という形になっています。
令和8年度(2026年度)点数まとめ
- 区分番号(マスターコード): 注射通則3(医科診療行為マスターで確認)
- 加算点数: 15点
- 届出: 不要
- 対象: 診療所・病院(外来・入院ともに算定候補)
みらい(新人医療事務)
届出が不要なんですね。じゃあ施設基準は関係ないんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算に限っていえば、施設基準の届出は不要です。ただし「生物学的製剤を使った注射を行ったこと」と「対象薬剤に該当すること」が算定の大前提になります。その点の確認が必要です。
対象薬剤: 何を注射すれば算定候補になるか
みらい(新人医療事務)
「生物学的製剤」というとどんな薬が当てはまるんですか?関節リウマチの注射薬も含まれますか?
あおい(元・医療事務)
少し誤解されやすいポイントですが、この加算でいう「生物学的製剤」とは、関節リウマチの生物学的製剤(抗体医薬品など)とは別の概念です。令和8年度の留意事項通知では、算定できる注射薬を「トキソイド、ワクチン及び抗毒素」と定義したうえで、具体的な薬剤名を列挙しています。
みらい(新人医療事務)
じゃあワクチン接種のときにつく加算なんですね!
あおい(元・医療事務)
ワクチン・トキソイド・抗毒素に絞られているので、そのとおりです。留意事項通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号)に具体的な対象薬剤として以下が示されています。
| 分類 | 対象薬剤(令和8年度留意事項通知に基づく) |
|---|---|
| ワクチン | 乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)、組換え沈降B型肝炎ワクチン(チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞由来)、肺炎球菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、乾燥ヘモフィルスb型ワクチン |
| トキソイド | 沈降破傷風トキソイド |
| 抗毒素 | ガスえそウマ抗毒素、乾燥ガスえそウマ抗毒素、乾燥ジフテリアウマ抗毒素、乾燥破傷風ウマ抗毒素、乾燥はぶウマ抗毒素、乾燥ボツリヌスウマ抗毒素、乾燥まむしウマ抗毒素 |
みらい(新人医療事務)
思ったより具体的に決まっているんですね。「乾燥破傷風ウマ抗毒素」というのは、破傷風にかかったときに使う抗毒素ですか?
あおい(元・医療事務)
そうです。破傷風抗毒素のほか、ガスえそ・ジフテリア・ボツリヌス・はぶ・まむしなど、希少ではありますが緊急処置が必要な場面で使われる薬剤が含まれています。定期接種ではなく緊急時や特定患者向けに使われるものが多いです。
関節リウマチ等の生物学的製剤との違い
「生物学的製剤注射加算(注射通則3)」の対象は「トキソイド・ワクチン・抗毒素」に限られます。インフリキシマブ、トシリズマブ等の抗体医薬品(生物学的製剤)を使った場合は、外来化学療法加算等の別の加算体系が関わります。混同しないよう注意が必要です。
注射の方法は問わない: どの注射区分でも算定候補
みらい(新人医療事務)
この加算は、皮下注射・静脈内注射・点滴注射など方法の違いで変わりますか?
あおい(元・医療事務)
注射の方法にかかわらず算定候補になれるのが特徴です。留意事項通知(保医発0305第6号)には「注射の方法にかかわらず、次に掲げる薬剤を注射した場合に算定できる」と明記されています。
みらい(新人医療事務)
ということは、G000(皮内・皮下・筋肉内注射)でも、G001(静脈内注射)でも、G004(点滴注射)でも、対象薬剤を使えば加算できるかもしれないということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。ただし後述の「特定入院料」を算定している患者には別の制約がありますので、その点は確認が必要です。中心静脈注射(G005)や植込型カテーテルによる中心静脈注射(G006)の回路から生物学的製剤を注入した場合も「通則3の加算を算定できる」と留意事項に記載があります。
| 注射区分 | 生物学的製剤注射加算の算定可否 |
|---|---|
| G000 皮内・皮下・筋肉内注射 | 算定候補(対象薬剤使用時) |
| G001 静脈内注射 | 算定候補(対象薬剤使用時) |
| G002 動脈注射(1日につき) | 算定候補(対象薬剤使用時) |
| G004 点滴注射(1日につき) | 算定候補(対象薬剤使用時) |
| G005 中心静脈注射・G006 植込型カテーテル | 算定候補(回路からの注入を含む) |
算定方法の考え方
注射の通則1・2で計算した注射実施料+薬剤料の合計点数に、さらに15点を上乗せする仕組みです。1回の注射に対して加算されます(1日単位ではなく1回単位)。
算定できない場合: 特定入院料等の注意点
みらい(新人医療事務)
「特定入院料を算定している患者」には算定できないというのは、どういうことですか?
あおい(元・医療事務)
特定入院料(ICU・NICU・SCU等の包括入院料)を算定している患者には、注射料が包括されており、通則3(生物学的製剤注射加算)・通則4・通則5の加算を別に算定できないというルールがあります。
みらい(新人医療事務)
集中治療室の患者さんには付けられないんですね。
あおい(元・医療事務)
原則として、特定入院料に注射手技料が含まれている場合は算定できません。ただし特定入院料の種類によって包括範囲が異なりますので、個別に確認が必要です。また「第1節に掲げられていない注射のうち簡単なもの」については薬剤料のみ算定で手技料がない場合があり、その場合にも通則3は算定できません。
算定できない主な場面(確認が必要)
- 特定入院料(ICU・NICU等)を算定している入院患者への注射
- 「簡単な注射」として第2節薬剤料のみで算定する注射
- 同一月に特定の管理料を算定しているケース(在宅自己注射指導管理料等との関係は、対象となる注射区分ごとに確認が必要)
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
今回の令和8年度(2026年度)改定で、この加算に変更はありましたか?
あおい(元・医療事務)
現在当サイトで確認できる一次情報(厚労省告示・通知)の範囲では、生物学的製剤注射加算の点数(15点)・対象薬剤・届出不要という基本要件について、前回改定(令和6年度)からの主な変更は確認されていません(確認日: 2026-06-23・厚労省告示第69号・留意事項通知保医発0305第6号ベース)。
みらい(新人医療事務)
ということは安定している加算なんですね。
あおい(元・医療事務)
点数・対象薬剤・届出不要という骨格が変わっていないのは確認できています。注射全体の通則については、厚労省の「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)」で最新の通則を直接ご確認ください。
令和8年度 生物学的製剤注射加算の確認状況
- 生物学的製剤注射加算(通則3): 一次資料(告示第69号・留意事項通知保医発0305第6号)の範囲で変更は確認されていません
- その他の注射通則の変更有無は、厚労省一次資料で直接ご確認ください
自院で確認する順番: 算定候補かどうかのチェック

みらい(新人医療事務)
自院でこの加算の算定候補かどうか確認するには、どんな手順で進めればいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番を整理するとこうなります。
自院で確認する順番
手順1: 当該注射で使用した薬剤が、対象薬剤リスト(トキソイド・ワクチン・抗毒素の14品目)に該当するか確認する
手順2: 使用した注射区分(G000・G001・G004等)で、注射実施料が算定できているか確認する(簡単な注射で薬剤料のみの算定では加算できない)
手順3: 患者が特定入院料を算定している入院患者でないことを確認する
手順4: 「注射の方法にかかわらず」15点を加算して算定する(届出は不要)
手順5: レセプトの摘要欄に必要な記載(使用薬剤名等)があるか確認する
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出がいらないのは助かりますね!でも「特定入院料の患者でないこと」の確認が意外と大事そうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。病院で入院中の患者を担当する方は、入院料の種別を必ず確認してください。診療所や一般病棟の入院・外来なら比較的シンプルですが、ICU等の患者への算定は慎重に確認する必要があります。
よくある取り漏れ・注意点
みらい(新人医療事務)
実務でミスが起きやすいところはどこですか?
あおい(元・医療事務)
代表的な取り漏れ・注意点を3つ挙げます。
取り漏れ・算定ミスのチェックポイント
対象薬剤の確認不足: 「生物学的製剤」という名称から、関節リウマチ等に使う抗体医薬品も含まれると誤解するケースがあります。この加算の対象はトキソイド・ワクチン・抗毒素に限られます。
特定入院料との確認漏れ: 集中治療室等で特定入院料を算定している患者への加算算定は認められない場合があります。入院区分をレセプト作成前に確認する手順があると安心です。
「注射実施料がない場合」の取り扱い: 簡単な注射として薬剤料のみで算定している場合、この加算は算定できません。通則3の計算式は「前2号(注射実施料・薬剤料)により算定した点数に加算」なので、前2号が算定されていることが前提です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
破傷風抗毒素を緊急投与したケースでも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
乾燥破傷風ウマ抗毒素は留意事項通知の対象薬剤リストに含まれていますので、算定候補になります。ただし注射区分(G000・G001等)に対応する注射実施料が算定できる状況であること、特定入院料を算定していないことの確認も必要です。
みらい(新人医療事務)
ワクチンは定期接種と任意接種で違いますか?
あおい(元・医療事務)
定期接種・任意接種の区別は、この加算の算定要件には直接関係しません。留意事項通知に列挙された薬剤を使用した注射であれば、接種の種別によらず算定候補になります。ただし、予防接種法に基づく定期接種と保険診療(医療保険)の算定が混在しないよう、自院のレセプト作業フローを確認してください。
みらい(新人医療事務)
同じ日に同じ患者に2回注射した場合は、加算も2回ですか?
あおい(元・医療事務)
生物学的製剤注射加算は1回の注射に対する加算です。対象薬剤を使った注射を同日に2回行った場合、それぞれの注射に対して算定候補になると考えられますが、注射区分によっては同一日の算定回数制限がある場合もありますので、点数表と留意事項を確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
自院の注射業務でこの加算が取れているか、もう少し詳しく確認したいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。使用薬剤や注射区分・患者の入院区分などを入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。