みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトを見ていたら「精密持続点滴注射加算」という項目がありました。これって何の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
注射料の通則4に基づく加算ですよ。厚生労働省の告示には「4 精密持続点滴注射を行った場合は、精密持続点滴注射加算として、前3号により算定した点数に1日につき80点を加算する。」とあり、自動輸液ポンプを使って1時間に30mL以下の速度でゆっくり薬剤を注入したときに、1日につき80点を加算できる区分です。令和8年度(2026年度)の医科点数表でも、この条文は同じ内容で記載されています。
みらい(新人医療事務)
「ゆっくり注入」というのがポイントなんですね。うちのクリニックでも輸液ポンプは使っているので、算定候補になりそうです。
あおい(元・医療事務)
そう単純でもないんです。速度条件だけでなく、対象になる患者さんや薬剤にも条件があります。順番に見ていきましょう。
精密持続点滴注射加算とはどんな加算か
みらい(新人医療事務)
「前3号により算定した点数に加算する」というのは、どういう意味ですか?
あおい(元・医療事務)
第6部 注射の通則1〜3をたどると分かります。告示には「第6部 注射 通則 1 注射の費用は、第1節及び第2節の各区分の所定点数を合算した点数により算定する。2 注射に当たって、別に厚生労働大臣が定める保険医療材料(以下この部において「特定保険医療材料」という。)を使用した場合は、前号により算定した点数及び第3節の所定点数を合算した点数により算定する。3 生物学的製剤注射を行った場合は、生物学的製剤注射加算として、前2号により算定した点数に15点を加算する。」と定められています。
あおい(元・医療事務)
つまり、注射の基本点数(材料があれば材料点数、生物学的製剤注射加算があればそれも)を合算した点数に対して、精密持続点滴注射加算80点を上乗せする、という積み上げ構造です。単独で80点だけを算定するものではありません。
みらい(新人医療事務)
なるほど、他の注射点数とセットになっているんですね。
対象になる注入の条件
みらい(新人医療事務)
「精密持続点滴注射」って、具体的にはどんな注射のことを指すんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に定義があります。「(1)『通則4』の精密持続点滴注射は、自動輸液ポンプを用いて1時間に 30mL 以下の速度で体内(皮下を含む。)又は注射回路に薬剤を注入することをいう。」とされていて、ポイントは2つです。自動輸液ポンプを使っていること、そして注入速度が1時間30mL以下であること。この両方を満たす注入が「精密持続点滴注射」にあたります。
みらい(新人医療事務)
皮下注射でも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
条文に「体内(皮下を含む。)又は注射回路に」とあるので、皮下への注入や、既存の注射回路への薬剤注入も対象に含まれる書き方です。ただし実際にどの投与経路が自院のケースに当てはまるかは、記録と合わせて確認したほうが確実です。
対象患者・対象薬剤の条件(見落としやすいポイント)
みらい(新人医療事務)
さっき「単純ではない」とおっしゃっていましたが、速度条件を満たせばいつでも算定候補になるわけではないんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知には、年齢と薬剤による条件分けが明記されています。「(2)1歳未満の乳児に対して精密持続点滴注射を行う場合は、注入する薬剤の種類にかかわらず算定できるが、それ以外の者に対して行う場合は、緩徐に注入する必要のあるカテコールアミン、βブロッカー等の薬剤を医学的必要性があって注入した場合に限り算定する。」という条件です。
あおい(元・医療事務)
つまり、1歳未満の乳児であれば薬剤の種類を問わず算定候補になり得ますが、1歳以上の患者さんの場合は「緩徐に注入する必要のある」カテコールアミンやβブロッカー等の薬剤を、医学的必要性があって使ったときに限られる、という条件です。
よくある取り漏れ・思い込み
輸液ポンプを使っていれば全部対象と思い込む: 速度が30mL/hを超えていたり、1歳以上の患者さんで対象薬剤に該当しない場合は、算定候補にならない可能性があります。 カルテに医学的必要性の記載がない: 1歳以上の患者さんでは緩徐に注入する必要のある薬剤を医学的必要性があって使ったことが条件になっているため、カルテ・指示簿に薬剤名と注入理由が残っているかを確認しておきたいところです。
みらい(新人医療事務)
カテコールアミンやβブロッカー以外の薬剤だと、対象外の可能性が高いということですね。
あおい(元・医療事務)
資料に明記されているのは「カテコールアミン、βブロッカー等」という書き方なので、それ以外の薬剤についても医学的必要性次第で該当し得る余地はありますが、断定はできません。個別のケースは自院で確認するか、審査支払機関に確認するのが確実です。
他の注射区分との組み合わせ(併算定)
みらい(新人医療事務)
精密持続点滴注射加算は、他の注射の点数と一緒に算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に、明示的に併算定できるケースが2つ書かれています。「(3)『G003』抗悪性腫瘍剤局所持続注入の実施時に精密持続点滴を行った場合は、『通則4』の加算を算定できる。(4)『G005』中心静脈注射又は『G006』植込型カテーテルによる中心静脈注射の回路より精密持続点滴注射を行った場合は、『通則4』の加算を算定できる。」という記載です。
あおい(元・医療事務)
つまり、抗悪性腫瘍剤局所持続注入(G003)や、中心静脈注射(G005)・植込型カテーテルによる中心静脈注射(G006)の回路を使って精密持続点滴注射を行った場合も、通則4の加算の対象になり得ると書かれています。
みらい(新人医療事務)
逆に、注意しておきたい組み合わせはありますか?
あおい(元・医療事務)
同じ第6部 注射の通則には、精密持続点滴注射加算(通則4)とは別に、生物学的製剤注射加算(通則3)や麻薬注射加算(通則5)という、名前が似ていて紛らわしい加算もあります。それぞれ対象になる場面が違うので、区別して整理しておきましょう。
| 区分 | 加算名 | 点数 | 対象になる場面(告示より) |
|---|---|---|---|
| 通則3 | 生物学的製剤注射加算 | 15点 | 生物学的製剤注射を行った場合 |
| 通則4 | 精密持続点滴注射加算 | 80点(1日につき) | 自動輸液ポンプで1時間30mL以下の速度で注入した場合 |
| 通則5 | 麻薬注射加算 | 5点 | 注射に当たって麻薬を使用した場合 |

あおい(元・医療事務)
この3つはどれも第6部 注射の通則に定められた加算ですが、対象となる行為はまったく別物です。「注射加算」という言葉だけでレセプトを見ると混同しやすいので、条文のどの号に基づく加算かを1つずつ確認する癖をつけておくと安心です。
似た名前の加算との混同に注意
生物学的製剤注射加算(通則3・15点)、精密持続点滴注射加算(通則4・80点)、麻薬注射加算(通則5・5点)は、いずれも第6部 注射の通則に基づく加算ですが、算定の対象になる行為はそれぞれ異なります。 レセプト上「注射加算」とだけ表示されるケースもあるため、どの通則番号に基づく加算かをカルテ・指示内容で必ず確認してください。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、事前に届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の条文を見る限り、精密持続点滴注射加算(通則4)には、外来化学療法加算(通則6)のような届出に関する記載は見当たりません。告示には外来化学療法加算について「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」という届出条項が明記されていますが、通則4にはそうした条項がない、という条文上の違いがあります。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出なしで自動的に算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
条文上は届出要件が明記されていない、というのが正確な言い方です。ただし、施設基準の届出状況は加算ごと・保険医療機関ごとに違いがあり得るため、「届出は不要」と決めつけず、自院の届出状況・レセプト担当者の認識と、公式資料を突き合わせて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
- カルテ・指示簿で、自動輸液ポンプを使用し1時間30mL以下の速度で注入した記録があるか確認する
- 患者さんが1歳未満の乳児か、それ以外であればカテコールアミン・βブロッカー等の対象薬剤を医学的必要性があって使用したかを確認する
- G003(抗悪性腫瘍剤局所持続注入)やG005・G006(中心静脈注射関連)の回路を使っている場合は、その旨をカルテに残す
- 同じレセプトに生物学的製剤注射加算(通則3)・麻薬注射加算(通則5)など似た名前の加算が混在していないか、通則番号ごとに区別する
- 自院の届出状況・算定実績を、公式資料や審査支払機関の案内と照らし合わせる
マスターコードの確認
みらい(新人医療事務)
レセプトコンピュータに登録するときのコードも知っておきたいです。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の施設基準届出関連の通知にも、精密持続点滴注射加算は医科診療行為マスターコード「130000210」として記載が確認できます。実際の入力・請求時は、お使いのレセプトコンピュータ・医科診療行為マスターの最新版で必ず突き合わせてください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収集している一次資料の範囲では、精密持続点滴注射加算(通則4・80点、自動輸液ポンプで1時間30mL以下の速度で注入)についての新設・廃止・点数変更・対象条件の変更は確認されていません。前回改定(令和6年度)から続く区分として、令和8年度(2026年度)の告示・留意事項にも同じ内容で記載されています。
改定差分の確認範囲
この「変更なし」は、当サイトが収集した告示・留意事項通知の範囲での確認結果です。 疑義解釈や訂正通知が別途出ている可能性もあるため、算定判断の最終確認は自院の届出状況・公式資料・審査支払機関で行ってください。
関連する注射加算もあわせて確認する
みらい(新人医療事務)
似た名前の加算があるとおっしゃっていましたが、生物学的製剤注射加算についても記事があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。生物学的製剤注射加算 は同じ第6部 注射の通則3に基づく別の加算です。あわせて確認しておくと、レセプト上の混同を防ぎやすくなります。
みらい(新人医療事務)
麻薬注射加算も気になります。
あおい(元・医療事務)
麻薬注射加算(通則5)は現在整備を進めている段階なので、公開され次第あらためて紹介しますね。今はまず、精密持続点滴注射加算の条件を自院のケースと照らし合わせることから始めましょう。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、事務でよく出てくる質問をまとめてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。順番に整理しましょう。
みらい(新人医療事務)
輸液ポンプを使っていれば、速度に関係なく算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
算定候補にならない可能性が高いです。留意事項通知の定義は「1時間に30mL以下の速度」となっているため、それを超える速度での注入は精密持続点滴注射に該当しない可能性があります。
みらい(新人医療事務)
1歳以上の患者さんに使うと、必ず対象外になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象外と決めつける必要はありません。カテコールアミンやβブロッカー等、緩徐に注入する必要のある薬剤を医学的必要性があって使った場合は、算定候補になり得ると資料に書かれています。薬剤名と使用理由の記録を確認してみてください。
みらい(新人医療事務)
中心静脈注射の回路から精密持続点滴を行った場合はどうですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に、G005(中心静脈注射)やG006(植込型カテーテルによる中心静脈注射)の回路から精密持続点滴注射を行った場合は、通則4の加算を算定できると明記されています。回路の種類もカルテに残しておくと確認がスムーズです。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。

最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。