みらい(新人医療事務)
あおいさん、「精神疾患診断治療初回加算」っていう名前を初めて見たんですけど、これってどんな場面で出てくる加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは区分番号A300「救命救急入院料」の注2に規定されている加算ですよ。救命救急入院料そのものとは別に、精神疾患にかかわる診断治療を行った場合に上乗せする形の加算です。
みらい(新人医療事務)
救命救急入院料の中に入っているんですね。うちみたいな一般の診療所でも関係ありますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、これは入院料の注加算なので、診療所ではなく病院、それも救命救急入院料を算定している病院が対象です。入院の場面に限られる加算で、外来では算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
なるほど。じゃあどんな患者さんのときに算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の文言を見てみましょう。「当該保険医療機関において、自殺企図等による重篤な患者であって精神疾患を有するもの又はその家族等からの情報等に基づいて、当該保険医療機関の精神保健指定医又は精神科の医師が、当該患者の精神疾患にかかわる診断治療等を行った場合は、精神疾患診断治療初回加算として、当該精神保健指定医等による最初の診療時に限り、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する」とされています。自殺企図等で救命救急入院となった重篤な患者さんで、精神疾患を有する方(またはその家族等からの情報)を対象にした加算です。
対象になる医療機関・患者は?
みらい(新人医療事務)
「重篤な患者」というのは、具体的にどんな状態の人なんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知ではもう少し詳しく書かれています。「自殺企図及び自傷又はそれが疑われる行為により医師が救命救急入院が必要であると認めた重篤な患者であって、統合失調症、躁うつ病、神経症、中毒性精神障害(アルコール依存症等をいう。)、心因反応、児童・思春期精神疾患、パーソナリティ障害又は精神症状を伴う脳器質性障害等(以下この節において「精神疾患」という。)を有する患者又はその家族等」が対象とされています。
みらい(新人医療事務)
結構幅広い疾患が挙がっているんですね。誰が診療すれば算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ通知に「精神保健指定医又は当該保険医療機関の精神科の常勤医師が、患者又は家族等からの情報を得て、精神疾患に対する診断治療等を行った場合」と書かれています。精神保健指定医は精神保健福祉法上の資格を持つ医師で、この場合「当該保険医療機関を主たる勤務先とする精神保健指定医以外の者であっても算定できる」ともされています。つまり、自院所属の常勤医師でなくても、精神保健指定医であれば診療した実績として認められる余地があるということですね。ただし個別の運用は自院の届出・体制と合わせて確認が必要です。

点数はいくらですか?(届出の有無で変わります)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では2区分に分かれています。表にまとめますね。
| 区分 | 点数 | 条件 |
|---|---|---|
| イ | 7,000点 | 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行った場合 |
| ロ | 3,000点 | イ以外の場合 |
みらい(新人医療事務)
届出をしていれば必ず7,000点というわけじゃなくて、届出の有無で区分自体が変わるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。届出をしていなくても3,000点の区分(ロ)で算定候補になり得ますが、どちらの区分に該当するかは自院の届出状況の確認が必要です。この加算固有の施設基準の詳細な要件については、当サイトが収録している一次資料の範囲では区分番号までは特定できていないので、実際に7,000点区分での届出を検討する場合は地方厚生局への確認をおすすめします。
点数を煽らずに確認したいポイント
点数の高さだけで判断しない: イ(7,000点)とロ(3,000点)のどちらに該当するかは、加算そのものの届出ではなく救命救急入院料側の施設基準の届出状況で決まります。まず自院の救命救急入院料の届出区分を確認しましょう。 対象疾患の範囲は幅広い: 統合失調症・躁うつ病・神経症・中毒性精神障害・心因反応・児童思春期精神疾患・パーソナリティ障害・精神症状を伴う脳器質性障害等が含まれます。個別の患者が該当するかは診療録での確認が必要です。
施設基準・届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出は必須なんですか?
あおい(元・医療事務)
加算そのものを算定するために必須の届出はありません。届出をしていなくてもロの3,000点区分で算定候補になり得ます。ただし、より高い点数区分(イの7,000点)を目指す場合は、別に厚生労働大臣が定める施設基準への適合と地方厚生局長等への届出が前提になります。
みらい(新人医療事務)
じゃあ「届出なしでも大丈夫」って考えていいんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。届出の有無で問題ないと言い切れるのは点数区分の話であって、算定できるかどうかの判断は診療した医師が精神保健指定医または精神科の医師(留意事項通知では常勤医師)であること、対象患者の状態、算定タイミングなど複数の条件をすべて満たす必要があります。届出状況だけを見て判断せず、自院の体制全体を確認してください。
算定のタイミングと注意点(併算定の制限)
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングにも決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。「精神保健指定医等による最初の診療時に限り」算定します。留意事項通知でも「救命救急入院料の算定期間中における当該精神保健指定医又は当該精神科の常勤医師の最初の診察時に算定する」とされていて、同じ入院で複数回算定できる加算ではありません。
みらい(新人医療事務)
他の加算と一緒に算定してもいいんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは特に注意が必要なポイントです。条文にはっきり書かれています。「この場合において、区分番号A248に掲げる精神疾患診療体制加算は別に算定できない」。つまり精神疾患診療体制加算とは併算定できません。どちらの加算が自院の状況に合うかは、両方の要件を見比べて確認する必要があります。
併算定・算定範囲の確認ポイント
精神疾患診断治療初回加算を算定する場合、区分番号A248「精神疾患診療体制加算」は別に算定できません。どちらか一方の算定候補になるかは、自院の届出状況と診療内容をもとに個別に確認してください。算定できる・できないを自己判断で断定せず、疑わしい場合は審査支払機関にも確認しましょう。

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度診療報酬改定に関する厚生労働省の一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号、保医発0305第6号)を確認した範囲では、精神疾患診断治療初回加算そのものについて、前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。この点は当サイトが確認できた一次資料の範囲での結果であり、より詳細な改定経緯を知りたい場合は厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページも合わせてご確認ください。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」と分かるだけでも安心材料になりますね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし点数据え置きに見えても、周辺の施設基準や様式が変わっている改定もあります。今回この加算について確認できたのは点数・算定要件・併算定制限の範囲までなので、届出様式などの細部は自院で最新の通知を確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で確認するとしたら何から見ればいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番に並べるとこうなります。
自院で確認する順番
自院が救命救急入院料を算定しているか、対象病棟の届出区分を確認する 自殺企図等による重篤な患者で、精神疾患(統合失調症・躁うつ病・神経症・中毒性精神障害・心因反応・児童思春期精神疾患・パーソナリティ障害・精神症状を伴う脳器質性障害等)を有するかを診療録で確認する 診療した医師が精神保健指定医、または当該保険医療機関の精神科の常勤医師にあたるかを確認する 救命救急入院料の算定期間中における最初の診察であることを確認する 区分番号A248精神疾患診療体制加算を同時算定していないかを確認する 届出の有無に応じて、イ(7,000点)かロ(3,000点)のどちらの区分に該当するかを確認する
みらい(新人医療事務)
一つずつ見ていけば整理できそうです。
あおい(元・医療事務)
はい。特に併算定の制限と「最初の診療時に限り」という回数の制約は見落としやすいので、レセプト担当と診療現場の両方で共有しておくと安心です。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな見落としってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まとめますね。
よくある取り漏れ
精神疾患診療体制加算との併算定制限を見落とす: A248精神疾患診療体制加算を算定している患者について、精神疾患診断治療初回加算も合わせて算定してしまうケースです。条文上、両者は別に算定できません。 「最初の診療時」以外での算定: 救命救急入院料の算定期間中に2回目以降の診察でも算定してしまうケースです。この加算は最初の診療時に限られます。 届出区分の確認漏れ: イ(7,000点)とロ(3,000点)のどちらに該当するかを確認せずに、一律の点数で請求してしまうケースです。自院の届出状況を都度確認する必要があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか? まず、診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算はA300救命救急入院料の注加算なので、救命救急入院料を算定する病院が対象です。診療所では算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
精神保健指定医が非常勤でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「この場合の精神保健指定医は当該保険医療機関を主たる勤務先とする精神保健指定医以外の者であっても算定できる」とあります。ただし、精神保健指定医以外の「精神科の医師」については留意事項通知で常勤医師との記載があるため、非常勤の精神科医師が診療した場合に該当するかは自院の体制に照らした確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
家族からの情報だけで診断治療した場合も対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
条文では「精神疾患を有するもの又はその家族等からの情報等に基づいて」診断治療等を行った場合と規定されているので、家族等からの情報を踏まえた診断治療も対象になり得ます。ただし個別のケースが要件を満たすかどうかは、診療録の記載内容とあわせて確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。