みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトを見ていたら「粘膜点墨法加算」という項目が出てきたんですが、これって内視鏡の加算ですよね? うちは消化器内視鏡をよくやっているので、算定候補になるか知りたいです。
あおい(元・医療事務)
はい、内視鏡検査の「注」に規定されている加算のひとつです。令和8年度の医科点数表では、食道ファイバースコピーや胃・十二指腸ファイバースコピーなど、いくつかの内視鏡検査に付随する形で規定されています。まずはどんな検査に付くものか、条文を確認しながら整理していきましょう。
この加算は何のためのもの?
みらい(新人医療事務)
そもそも「粘膜点墨法」ってどういう処置なんですか? 名前だけだと想像がつかなくて。
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の実施上の留意事項通知では、「治療範囲の決定、治療後の部位の追跡等を目的として、内視鏡直視下に無菌の墨汁を消化管壁に極少量注射して点状の目印を入れるもの」と定義されています。つまり、病変の位置を後で見失わないように、内視鏡で見ながら墨汁を少量だけ注射してマーキングする手技のことです。
みらい(新人医療事務)
なるほど、墨で印をつけるからマーキングって呼ばれてるんですね。それを実施したときに60点が加算されるということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。対象となる内視鏡検査の所定点数に、粘膜点墨法加算として60点を上乗せする形の加算です。ただし、どの内視鏡検査に付くか、そして検査ごとの「注」の番号が違う点は確認しておく必要があります。
対象になる内視鏡検査(区分番号・点数)
みらい(新人医療事務)
具体的にどの検査に付くのか、一覧で見てみたいです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表(別表第一)で確認できる範囲では、次の5つの区分番号に粘膜点墨法加算の規定があります。
| 対象の内視鏡検査(区分番号) | 検査自体の所定点数 | 粘膜点墨法加算 | 年度 |
|---|---|---|---|
| D306 食道ファイバースコピー | 800点 | +60点(注1) | 令和8年度 |
| D308 胃・十二指腸ファイバースコピー | 1,140点 | +60点(注2) | 令和8年度 |
| D310 小腸内視鏡検査(4 その他のもの) | 1,700点 | +60点(注3・「4」のみ対象) | 令和8年度 |
| D312 直腸ファイバースコピー | 550点 | +60点(注) | 令和8年度 |
| D313 大腸内視鏡検査(1 ファイバースコピー・2 カプセル型内視鏡) | 900〜1,550点 | +60点(注1) | 令和8年度 |

みらい(新人医療事務)
D313の大腸内視鏡検査だけ点数の幅がありますね。
あおい(元・医療事務)
D313は「1 ファイバースコピーによるもの」の中でさらに「イ S状結腸900点」「ロ 下行結腸及び横行結腸1,350点」「ハ 上行結腸及び盲腸1,550点」に分かれていて、「2 カプセル型内視鏡によるもの」は1,550点です。どの区分で実施しても、粘膜点墨法を行えば注1の60点が加算されます。
みらい(新人医療事務)
D310の小腸内視鏡検査は「その他のもの」だけが対象、というのが気になりました。バルーン内視鏡やカプセル内視鏡のときは付かないんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは条文をそのまま確認する必要がある大事なポイントです。D310は「1 バルーン内視鏡によるもの」「2 スパイラル内視鏡によるもの」「3 カプセル型内視鏡によるもの」「4 その他のもの」の4区分があり、粘膜点墨法加算の規定は「注3 4について、粘膜点墨法を行った場合は、粘膜点墨法加算として、60点を所定点数に加算する」となっています。つまり条文上、対象は「4 その他のもの」に限定されていて、1〜3のバルーン・スパイラル・カプセルには粘膜点墨法加算の規定がありません。
D310は区分を要確認
小腸内視鏡検査(D310)で粘膜点墨法加算が算定候補になるのは、条文上「4 その他のもの」を実施した場合に限られます。バルーン内視鏡・スパイラル内視鏡・カプセル型内視鏡(1〜3)で実施した場合は、同じ検査名でも区分が異なるため、加算の対象になるかどうかを個別に確認してください。
施設基準・届出は必要?
みらい(新人医療事務)
この加算、施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した範囲では、粘膜点墨法加算そのものに個別の施設基準や届出は定められていません。実施した事実と、対象となる区分番号の検査を保険診療として算定していることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出なしでいつでも算定候補になる、と考えていいですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。加算そのものに届出は不要ですが、土台となる内視鏡検査(D306・D308・D310・D312・D313)自体を保険診療として算定できているかどうかは別問題です。次の「算定タイミング」で説明する健診の扱いなど、確認すべき条件が別にあります。届出が不要だからといって、常に算定候補になると断定はできません。
算定タイミング・注意したいポイント(併算定の考え方)
みらい(新人医療事務)
健診で内視鏡をやったときも、この加算は算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
そこが一番注意してほしいところです。厚生労働省の疑義解釈資料(平成28年度・その1・問124)では、「健康診断において、胃・十二指腸ファイバースコピー又は大腸ファイバースコピーを実施し、病変を認めた場合、引き続いて実施される狭帯域光による観察又は粘膜点墨法について、狭帯域光強調加算又は粘膜点墨法に係る加算の項目のみを算定できるか」という質問に対して、「算定できない」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
つまり、健診の中で墨汁マーキングをしても、加算だけを保険請求することはできないということですか?
あおい(元・医療事務)
はい。さらに平成26年度の疑義解釈資料(その14・問6)では、「『D308』を算定しない場合において、『注』に規定する加算のみの算定はできない」こと、そして「健康診断の費用として支払われる額と保険請求する額が重複することのないよう」に取り扱う必要があることが示されています。つまり、粘膜点墨法加算は、対象となる内視鏡検査自体を保険診療として算定している場合の上乗せ加算であって、検査本体を保険請求していない(健診として扱っている)場合に加算だけを単独で保険請求することはできない、という位置づけです。
健診由来のケースは要確認
健康診断で内視鏡検査を実施し、その場で病変が見つかって粘膜点墨法を行った場合でも、検査自体を保険診療として算定していなければ、加算だけを保険請求することはできません。健診との費用の重複がないかを含めて、事務局で必ず確認してください。
みらい(新人医療事務)
もう一つ聞きたいんですが、これは1回の検査で何回でも算定できるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
条文上は「粘膜点墨法を行った場合」に所定点数へ加算するという規定で、回数の上限を定めた記述は今回確認した資料の範囲では見当たりません。ただし、同一検査内で複数回マーキングした場合の取り扱いなど、細かな運用は審査支払機関への確認をおすすめします。資料に明記されていない回数の上限について、当サイトの側で断定した言い方はしません。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この加算の内容は変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、粘膜点墨法加算そのものの点数(60点)や対象区分について、前回改定(令和6年度)からの変更を示す個別改定項目の記載は確認されていません(確認日: 2026年7月)。点数・対象区分ともに、今回確認できた令和8年度の医科点数表の記載と同じ内容です。改定差分を示す一次資料が新たに見つかった場合は、内容を更新します。
紛らわしい加算との違い
みらい(新人医療事務)
内視鏡の加算って、名前が似ているものが多くて混乱しそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね、同じD306やD308の「注」に規定されている加算でも、方法が違うものがいくつかあります。混同しないよう、条文で主語を確認しておきましょう。まず狭帯域光強調加算は、拡大内視鏡を用いて、狭い波長帯(NBI)による観察を行った場合の加算です。粘膜点墨法(墨汁によるマーキング)とは手技自体が異なる、別の区分番号(例えばD306なら注2)の加算です。この加算は当サイトで別に整理していますので、狭帯域光強調加算 もあわせて確認してみてください。
みらい(新人医療事務)
ほかにも似た名前のものはありますか?
あおい(元・医療事務)
はい、色素内視鏡法加算というものもあります。これはインジゴカルミンやメチレンブルーなどの色素を使った観察を行った場合に、粘膜点墨法加算と同じ60点の基準に「準じて」算定する加算です。使う手段が墨汁ではなく色素である点で、粘膜点墨法とは別の加算として扱われています。もうひとつ、食道ヨード染色法加算というものもあり、これは食道ファイバースコピー(D306)で、表在性食道がんの診断のためにヨード染色を行った場合に、同じく粘膜点墨法に準じて算定する加算です。こちらも対象手技が異なります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、点数が同じ60点でも、実際にやっていることが墨汁なのか色素なのかで加算の名前が変わるんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。レセプトの記載や院内での確認の際は、「何を使って」「どの検査に対して」行ったかを条文で確認し、加算名を取り違えないようにしてください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院で確認するときは、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認すると整理しやすいです。
自院で確認する順番
- 対象の内視鏡検査(D306食道・D308胃十二指腸・D310小腸内視鏡検査「4 その他のもの」・D312直腸・D313大腸)を実施したかを確認する
- その検査を、健診としてではなく保険診療として算定しているかを確認する
- 内視鏡直視下に無菌の墨汁を消化管壁に極少量注射して点状の目印を入れる「粘膜点墨法」を実際に行ったかを確認する
- 色素内視鏡法や狭帯域光観察など、別の手技と取り違えていないかをカルテ記載で確認する
- 上記が確認できれば、粘膜点墨法加算60点の算定候補として院内で最終確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか挙げてみます。
よくある取り漏れ・思い込み
D310の区分違い: 小腸内視鏡検査で粘膜点墨法を行っても、実施した区分が「1 バルーン内視鏡」「2 スパイラル内視鏡」「3 カプセル型内視鏡」だった場合、条文上の対象は「4 その他のもの」に限られるため、区分を確認せずに算定候補としてしまうケースがあります。 健診由来の見落とし: 健診の内視鏡検査で病変が見つかり、その場で粘膜点墨法を行った場合、検査自体を保険診療として算定していなければ加算だけを保険請求できません。健診との重複請求にならないか、事務局での確認が必要です。 加算名の取り違え: カルテに「色素散布」や「ヨード染色」とだけ記載されているケースで、粘膜点墨法加算として計上してしまう取り違えです。実施した手技が墨汁によるものか、色素・ヨード染色によるものかをカルテで必ず確認してください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、ほかの医療事務さんが疑問に思いそうなことを聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
粘膜点墨法加算は届出が必要な加算ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認した範囲では、粘膜点墨法加算そのものに個別の届出は定められていません。ただし、対象となる内視鏡検査自体を保険診療として算定できる状態にあるかは別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
健診の内視鏡でマーキングした場合は、加算だけ保険請求できますか?
あおい(元・医療事務)
疑義解釈資料(平成28年度・その1・問124、平成26年度・その14・問6)では、検査自体を保険診療として算定していない場合、加算だけを算定することはできないとされています。健診との費用の重複がないかも含めて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
狭帯域光強調加算や色素内視鏡法加算と一緒に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
それぞれ別の区分番号・別の手技に基づく加算のため、実施した内容ごとに条文を確認する必要があります。同じ検査に複数の「注」加算が規定されている場合でも、実際に行った手技に対応する加算だけを算定候補として確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施した検査の区分や、健診か保険診療かといった条件を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。