みらい(新人医療事務)
乳がんの手術で「センチネルリンパ節生検加算」ってレセプトに出てくるんですけど、これってどういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表にある「乳癌センチネルリンパ節生検加算」ですね。乳腺悪性腫瘍手術(K476)や乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(K476-5)を行うときに、腋窩(わきの下)のリンパ節に転移が広がっていないかを確認するための「センチネルリンパ節生検」という検査手技を併せて行った場合に、その手術の所定点数に上乗せする加算です。
みらい(新人医療事務)
「センチネルリンパ節」ってどんなリンパ節なんですか?
あおい(元・医療事務)
がん細胞が最初に流れ着くとされる、いわば「見張り役」のリンパ節のことです。ここに転移がなければ、その先のリンパ節郭清(広い範囲を切除すること)を省略できる可能性がある、という考え方に基づいた検査手技です。腕のむくみなど郭清に伴う合併症を避けられる可能性がある一方で、算定できるかどうかは個々の患者さんの状態や自院の体制によって変わってきます。まずは点数から確認していきましょう。
乳癌センチネルリンパ節生検加算の点数(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はいくらなんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、方法によって2区分に分かれています。まとめると次のとおりです。
| 加算名 | 点数 | 方法 | 対象となる手術 |
|---|---|---|---|
| 乳癌センチネルリンパ節生検加算1(併用法) | 5,000点 | 放射性同位元素及び色素の併用、またはインドシアニングリーンを用いたリンパ節生検 | K476 乳腺悪性腫瘍手術/K476-5 乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法 |
| 乳癌センチネルリンパ節生検加算2(単独法) | 3,000点 | 放射性同位元素または色素のいずれか単独を用いたセンチネルリンパ節生検 | K476 乳腺悪性腫瘍手術/K476-5 乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法 |

みらい(新人医療事務)
併用法と単独法で点数が違うんですね。「併用法」「単独法」という呼び方も公式に使われている名前なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、施設基準の届出書(様式56の2)でも「乳癌センチネルリンパ節生検加算1(併用法)」「乳癌センチネルリンパ節生検加算2(単独法)」という表記が使われています。使う薬剤の組み合わせで加算1(5,000点)か加算2(3,000点)かが変わる、という理解でよいと思います。
別コード「センチネルリンパ節生検(片側)」との混同に注意
医科点数表には、乳癌の患者さんを対象に、手術とは別に検査料として算定する「D409-2 センチネルリンパ節生検(片側)」というコードも存在します。こちらは第3部検査に区分される別のコードで、この記事で扱う「乳癌センチネルリンパ節生検加算(K476・K476-5の注加算)」とは算定区分が異なります。レセプトを見るときはどちらの区分の話をしているか、必ず確認してください。
対象となる手術・算定要件
みらい(新人医療事務)
どんな手術のときに対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の留意事項では、対象を次のように整理しています。
算定要件(留意事項通知より)
「注1」に規定する乳癌センチネルリンパ節生検加算1及び「注2」に規定する乳癌センチネルリンパ節生検加算2については、以下の要件に留意し算定することとされています。 ア: 触診及び画像診断の結果、腋窩リンパ節への転移が認められない乳癌に係る手術の場合のみ算定する。 イ: センチネルリンパ節生検に伴う放射性同位元素の薬剤料は、「K940」薬剤により算定する。 ウ: 放射性同位元素の検出に要する費用は、「E100」シンチグラム(画像を伴うもの)の「1」部分(静態)(一連につき)により算定する。 エ: 摘出したセンチネルリンパ節の病理診断に係る費用は、第13部病理診断の所定点数により算定する。
みらい(新人医療事務)
つまり、事前の検査でリンパ節転移がなさそうだと判断された患者さんが対象なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。逆に言うと、触診や画像診断の時点で腋窩リンパ節への転移が疑われる場合は、この加算の対象とは考えにくいということになります。ただし個々の患者さんの状態の評価は主治医の判断によるものなので、この記事では「対象になりそうか・確認が必要か」という整理にとどめますね。
施設基準と届出
みらい(新人医療事務)
この加算、届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚労省の施設基準通知(別添2)に、乳腺悪性腫瘍手術(乳癌センチネルリンパ節生検加算1または2を算定する場合に限る)に関する施設基準が定められていて、届出一覧表にも「乳腺悪性腫瘍手術(乳癌センチネルリンパ節生検加算1又は乳癌センチネルリンパ節生検加算2を算定する場合に限る。)」という届出項目が挙がっています。届出をしていない医療機関では、この加算そのものを算定できない可能性があります。
みらい(新人医療事務)
施設基準の中身はどんな内容ですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料で確認できる範囲では、次のような体制が求められています。
施設基準(確認できた範囲)
麻酔科標榜医が配置されていること。病理部門が設置され、病理医が配置されていること。ただし、保険医療機関間の連携による病理診断に関する施設基準を届け出ている保険医療機関にあっては、病理医が配置されていなくても差し支えないとされています。
あおい(元・医療事務)
さらに、届出の際に提出する様式56の2(届出書添付書類)には、「乳腺外科又は外科の経験を5年以上有するとともに乳腺悪性腫瘍手術において乳癌センチネルリンパ節生検を5例以上実施した経験を有する医師の氏名等」を記載する欄があります。担当医の経験年数・症例数についても、届出時に確認されるということですね。
みらい(新人医療事務)
麻酔科の先生や病理の体制が整っていない診療所だと、ちょっとハードルが高そうですね。
あおい(元・医療事務)
断定はできませんが、乳腺悪性腫瘍手術自体が全身麻酔下で行う手術であることが多く、施設基準でも麻酔科標榜医・病理部門の配置が求められています。無床診療所や外来中心の施設では、体制を自院で満たせているか確認が必要な可能性があります。病院・手術対応の診療所であっても、届出の有無は個別に確認してください。
併算定・算定タイミングの注意点
みらい(新人医療事務)
検査に使う薬剤の費用とかは、別に請求できるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知のイ〜エに整理があります。
関連費用の算定区分(要件イ〜エ)
センチネルリンパ節生検に伴う放射性同位元素の薬剤料は「K940」薬剤で、放射性同位元素の検出に要する費用は「E100」シンチグラム(画像を伴うもの)の「1」部分(静態)(一連につき)で、摘出したセンチネルリンパ節の病理診断に係る費用は第13部病理診断の所定点数で、それぞれ別に算定することとされています。当該検査に用いた色素の費用は、加算1・加算2のいずれも算定しないとされています。
みらい(新人医療事務)
色素の費用だけは加算に含まれていて、別に請求できないということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。色素そのものの費用は所定点数に含まれる扱いですが、放射性同位元素の薬剤料・検出費用・病理診断費用はそれぞれ別区分のコードで算定する、という整理です。この切り分けを取り違えると査定の対象になりかねないので、レセプト入力時は要注意ですね。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた一次資料の範囲では、乳癌センチネルリンパ節生検加算1・2の点数(5,000点・3,000点)や算定要件について、明確な変更点は確認されていません(2026年8月時点・厚労省一次資料ベース)。改定のたびに点数表・留意事項・施設基準は見直されるため、算定前には必ず最新の告示・通知を確認してください。
前回改定(令和6年度)との比較
乳癌センチネルリンパ節生検加算1(5,000点)・加算2(3,000点)という点数区分は、令和8年度(2026年度)改定時点の一次資料で確認できるものです。前回改定(令和6年度)時点からの変更の有無については、当サイトが保有する一次資料の範囲では確認できていません。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちの場合、何から確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番に並べると、こんな流れになります。
自院で確認する順番
- 乳腺悪性腫瘍手術(K476)または乳腺悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(K476-5)を実施しているか確認する
- 触診・画像診断で腋窩リンパ節への転移が認められない患者に対する手術かどうかを確認する
- 放射性同位元素・色素・インドシアニングリーンのどの組み合わせでセンチネルリンパ節生検を行うか(併用法=加算1か、単独法=加算2か)を確認する
- 麻酔科標榜医・病理部門(病理医)の配置など、施設基準を満たしているか確認する
- 乳癌センチネルリンパ節生検加算に関する届出(様式56の2)を地方厚生局に提出しているかを確認する
- K940薬剤料・E100シンチグラム・病理診断料の算定区分が正しく分かれているかレセプトで確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある取り漏れって、どんなパターンがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
いくつか一次資料から確認できる注意点があります。
取り漏れ・査定リスクになりやすいポイント
・センチネルリンパ節生検に用いた色素の費用を、誤って別に請求してしまうケース(色素費用は加算に含まれ、別算定はしないとされています)。 ・放射性同位元素の薬剤料(K940)やシンチグラムの検出費用(E100)、病理診断料を、加算の点数に含めてしまい、別区分での算定を漏らすケース。 ・乳癌センチネルリンパ節生検加算1(併用法)と加算2(単独法)を、実施した方法と異なる区分で算定してしまうケース。
みらい(新人医療事務)
併用法と単独法の取り違えは、うっかりやってしまいそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。カルテに「放射性同位元素と色素を併用した」のか「どちらか単独で行った」のかがはっきり記載されているか、レセプト入力の前に確認する習慣をつけると防ぎやすくなります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する加算として、同じセンチネルリンパ節生検の仕組みを使う皮膚悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算や、乳がん領域の遺伝性乳癌卵巣癌症候群乳房切除加算もあわせて確認してみてください。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。