院内感染防止措置加算って、どんな加算ですか?
みらい(新人医療事務)
「院内感染防止措置加算」という名前をレセプトの中で見つけたんですが、これってどういう加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは医科点数表の手術料にある通則加算のひとつです。令和8年度の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 医科点数表 手術料 通則11に、次のように定められています。
告示(令和8年厚生労働省告示第69号)手術料 通則11
「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症患者(感染症法の規定に基づき都道府県知事に対して医師の届出が義務づけられるものに限る。)、B型肝炎感染患者(HBs又はHBe抗原陽性の者に限る。)若しくはC型肝炎感染患者又は結核患者に対して、区分番号L008に掲げる声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔、区分番号L002に掲げる硬膜外麻酔又は区分番号L004に掲げる脊椎麻酔を伴う手術を行った場合は、1,000点を所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
文章が長くて、一度読んだだけでは頭に入ってきません……。
あおい(元・医療事務)
大丈夫です、順番に分解して整理しましょう。この加算は「特定の感染症を持つ患者」に「特定の麻酔を伴う手術」を行ったときに、その手術の点数へ1,000点を上乗せする仕組みです。対象になる感染症も麻酔の種類も条文で決まっているので、まずはこの2つの条件を確認するところから始めます。
みらい(新人医療事務)
特定の診療科だけの加算というわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。条文の書きぶりを見る限り、対象となる手術を個別のK区分(手術の種類)で限定してはいません。条件を満たす麻酔を伴う手術であれば、診療科を問わず加算候補になり得ます。ただし「算定できます」と断定はできませんので、対象患者・対象手術・点数・届出の有無を順番に確認していきましょう。
対象になる患者はどんな方ですか?
みらい(新人医療事務)
「対象になる患者」のところ、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
条文に挙げられているのは、次の4つのグループです。
| 対象患者 | 条文上の限定条件 |
|---|---|
| メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症患者 | 感染症法の規定に基づき、都道府県知事への医師の届出が義務づけられるものに限る |
| B型肝炎感染患者 | HBs抗原又はHBe抗原が陽性の者に限る |
| C型肝炎感染患者 | 条文上は限定条件の明記なし(後述の支払基金の取扱いを参照) |
| 結核患者 | 条文上は限定条件の明記なし |
みらい(新人医療事務)
「B型肝炎」とか「C型肝炎」って、カルテの傷病名に書いてあれば対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが実務で注意したいポイントです。社会保険診療報酬支払基金が公表している統一事例(令和6年3月29日公表、第10部手術通則11加算に関するもの)では、次のように整理されています。
支払基金統一事例【手術】103 院内感染防止措置加算の算定について
「①HBVキャリア又はHCVキャリアに対する第10部手術通則11加算(院内感染防止措置加算)の算定は、原則として認められる。②慢性肝炎又は肝硬変に対する第10部手術通則11加算(院内感染防止措置加算)の算定は、原則として認められない。」
あおい(元・医療事務)
同じ資料には、その理由も書かれています。「HBs又はHBe抗原によって抗原が陽性と認められたB型肝炎患者」「HCV抗体定性・定量によってHCV抗体が陽性と認められたC型肝炎患者」が対象患者である旨が厚生労働省の通知で示されているためで、「慢性肝炎」「肝硬変」という傷病名だけでは、この条件に合致するかどうかを判断できない、という考え方です。
みらい(新人医療事務)
つまり、傷病名だけでなく、検査結果(抗原・抗体が陽性かどうか)で確認する必要がある、ということですね。
あおい(元・医療事務)
その通りです。MRSAについても「感染症法の規定に基づき都道府県知事に対して医師の届出が義務づけられるものに限る」という限定が付いていますので、院内で「MRSAが検出された」という事実だけでなく、感染症法上の届出対象に当たる状態かどうかを確認しておく必要があります。

対象になる手術(麻酔の種類)はどれですか?
みらい(新人医療事務)
「手術」ならなんでも対象になるわけじゃないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。条文では、対象になる手術を「麻酔の種類」で限定しています。具体的には次の3つです。
| 区分番号 | 麻酔の種類 |
|---|---|
| L008 | 声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔 |
| L002 | 硬膜外麻酔 |
| L004 | 脊椎麻酔 |
みらい(新人医療事務)
局所麻酔だけの処置は対象外、ということですか?
あおい(元・医療事務)
条文に挙げられている麻酔はこの3種類のみですので、局所麻酔のみで行う処置がこの3区分のいずれかに該当しない場合は、条文上の対象には当たらないと読み取れます。実施した麻酔がどの区分に当たるかは、麻酔記録・手術記録で個別に確認してください。
点数はいくらですか?(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
加算される点数はどのくらいですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示では、条件を満たした場合に「1,000点を所定点数に加算する」とされています。これは対象になった手術そのものの点数とは別に、上乗せされる加算点数です。
| 加算名 | 点数(令和8年度) | 対象になる条件 |
|---|---|---|
| 院内感染防止措置加算(通則11) | 1,000点 | MRSA・B型肝炎・C型肝炎・結核の患者に、L008全身麻酔・L002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔のいずれかを伴う手術を行った場合 |
みらい(新人医療事務)
似たような名前の加算で、点数が違うものもあるって聞いたことがあるんですが……。
あおい(元・医療事務)
良いところに気づきましたね。ここは実務でも混同しやすい箇所なので、次のセクションで整理しましょう。
似た加算との取り違えに注意
みらい(新人医療事務)
混同しやすい加算って、具体的にどれですか?
あおい(元・医療事務)
同じ手術料の通則の中に「HIV抗体陽性患者の観血的手術加算」(通則10)という別の加算があります。名前も条文の位置も近いので、取り違えないよう整理しておきますね。
似た加算との取り違え注意
- 院内感染防止措置加算(通則11・本記事)は「MRSA感染症患者・B型肝炎感染患者(HBs又はHBe抗原陽性)・C型肝炎感染患者・結核患者」に「L008全身麻酔・L002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔のいずれかを伴う手術」を行った場合の1,000点加算です
- HIV抗体陽性患者の観血的手術加算(通則10)は「HIV抗体陽性の患者」に「観血的手術」を行った場合の4,000点加算で、対象患者・対象手術の条件も点数も異なります
- 両方の加算を同一手術で併せて算定できるかどうかは、今回確認した一次資料の中に明記が見当たらなかったため、算定時は個別に確認が必要です
みらい(新人医療事務)
対象になる感染症も、点数も、全然違うんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。名前だけで判断せず、条文の対象患者・対象手術を1つずつ照らし合わせることをおすすめします。
施設基準・届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
この加算、施設基準の届出とか必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した告示の通則11の条文そのものには、施設基準の届出を求める文言は見当たりませんでした。参考までに、同じ資料の中には「地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」という届出を明記した加算(頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算など)もあるのですが、通則11にはそうした文言が付いていません。
みらい(新人医療事務)
つまり、事前の届出をしていなくても算定候補になり得る、ということですか?
あおい(元・医療事務)
条文の書きぶりからはそう読み取れます。ただし、これはあくまで告示の文言に基づく整理であり、レセプト上の運用や個々の審査支払機関の取り扱いまで保証するものではありません。届出の要否について不安がある場合は、地方厚生局や審査支払機関に確認することをおすすめします。
届出についての確認事項
条文上は届出を求める文言が見当たりませんが、最終的な取扱いは自院の届出状況や審査支払機関の判断によって変わり得ます。「届出不要と決まっている」と断定せず、不安があれば事前に確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで整理してみてください。
自院で確認する順番
- 患者がMRSA感染症(感染症法上の届出義務対象)・B型肝炎(HBs又はHBe抗原陽性)・C型肝炎(HCV抗体陽性)・結核のいずれかに該当するか、検査結果や診断記録で確認する
- 実施した手術がL008全身麻酔・L002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔のいずれかを伴うか、麻酔記録・手術記録で確認する
- 上記の条件を満たしていれば、院内感染防止措置加算(1,000点)の算定候補として整理する
- HIV抗体陽性患者の観血的手術加算(通則10)など、似た加算と混同していないか名称・条文を再確認する
- レセプトの摘要欄への記載など、実際の請求手続きについて自院のレセプト担当・審査支払機関へ確認する

算定するタイミング・注意しておきたい点は?
みらい(新人医療事務)
他にも気をつけたほうがいいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかまとめておきますね。
算定上の注意点
- 対象患者は傷病名だけでなく、検査結果(HBs抗原・HBe抗原・HCV抗体等が陽性かどうか、感染症法上の届出義務対象かどうか)で確認することが望ましいとされています(支払基金統一事例より)
- 対象手術はL008全身麻酔・L002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔を伴う手術に限られ、これら以外の麻酔・局所麻酔のみの処置は条文上の対象に当たらない可能性があります
- 同一手術野又は同一病巣について2以上の手術を同時に行った場合、手術料自体は主たる手術の所定点数のみで算定するという一般ルール(通則14)があります。本加算に同様の取扱いが適用されるかどうかは、今回確認した資料の範囲では本加算固有の記載を確認できなかったため、審査支払機関に個別に確認することをおすすめします
- HIV抗体陽性患者の観血的手術加算(通則10・4,000点)とは対象患者も条件も異なる、別の加算です
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した一次資料(令和8年度の告示、および令和6年3月29日公表の支払基金統一事例)の範囲では、対象患者・対象手術・点数のいずれについても、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。支払基金統一事例が「第10部手術通則11加算」という同じ条番号を参照していることからも、条文の位置づけ自体に変更はないと考えられます。
前回改定(令和6年度)との対比
支払基金統一事例(令和6年3月29日公表)と令和8年度の告示は、いずれも「第10部手術通則11加算(院内感染防止措置加算)」という同じ名称・条番号を用いています。一次資料の範囲では、点数(1,000点)・対象患者・対象手術の枠組みに変更は確認されていません。
あおい(元・医療事務)
ただし、これは今回確認できた資料の範囲での整理です。細かい運用の変更(摘要欄の記載方法など)まで完全に把握できているわけではないため、最終的には自院で最新の告示・通知をご確認ください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象患者の検査結果や実施した麻酔の種類を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。