HIV抗体陽性患者の観血的手術加算って、どんな加算ですか?
みらい(新人医療事務)
「HIV抗体陽性患者の観血的手術加算」という名前を初めて見ました。うちのクリニックでも算定候補になるものでしょうか?
あおい(元・医療事務)
これは医科点数表の手術料にある通則加算のひとつです。令和8年度の告示(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 手術料の通則10に、次のように定められています。
告示(令和8年厚生労働省告示第69号)手術料 通則10
「HIV抗体陽性の患者に対して、観血的手術を行った場合は、4,000点を当該手術の所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
「当該手術の所定点数に加算する」というのは、具体的にどういうことですか?
あおい(元・医療事務)
特定の手術だけに紐づく加算ではなく、実施した観血的手術(切開を伴う手術)の点数に、条件を満たせば4,000点を上乗せする、という仕組みです。つまり患者がHIV抗体陽性であることが確認されていて、かつ実施した処置が観血的手術に当たる場合に、その手術の所定点数へ加算候補として乗せる形になります。
みらい(新人医療事務)
特定の診療科や特定の手術に限られているわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。告示の文言上、対象となる手術を個別のK区分に限定する記載はありません。ただし「算定できます」と断定はできないので、まずは対象医療機関・対象患者・点数・届出の有無を順番に確認していきましょう。
対象になるのはどんな医療機関・患者ですか?
みらい(新人医療事務)
うちは診療所なんですが、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の情報整理では、この加算は診療所・病院のいずれも、外来・入院のいずれでも対象になり得るとされています。一方、在宅医療は対象に含まれていません。
| 医療機関・場面 | 対象になり得るか(令和8年度) |
|---|---|
| 診療所 | 対象になり得ます |
| 病院 | 対象になり得ます |
| 外来 | 対象になり得ます |
| 入院 | 対象になり得ます |
| 在宅医療 | 対象外(観血的手術に伴う加算のため) |
みらい(新人医療事務)
「観血的手術」というのがよくわからないのですが、どういう手術のことですか?
あおい(元・医療事務)
同じ告示の中には「骨折非観血的整復術」「関節脱臼非観血的整復術」のように、切開を伴わない処置に「非観血的」という名称が付けられています。ここから、「観血的」は皮膚等の切開を伴う手術を指す言葉として使われていると読み取れます。つまり、切開を伴わない整復・固定のような処置は、この加算の対象にならない可能性があります。実施する処置が観血的手術に当たるかどうかは、個別に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
対象になる患者は「HIV抗体陽性」の方、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。告示の文言は「HIV抗体陽性の患者に対して」観血的手術を行った場合、となっています。ただし、その陽性であることをどのように確認・記録するかという具体的な手続きは、今回確認した一次資料の範囲には記載がありませんでした。この点は要確認事項として扱ってください。
点数はいくらですか?(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどのくらいですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示では、4,000点を当該手術の所定点数に加算する、とされています。これは対象手術そのものの点数とは別に上乗せされる加算点数です。
| 区分(手術料 通則) | 加算点数(令和8年度) | 対象になる条件 |
|---|---|---|
| 通則10(本加算) | 4,000点 | HIV抗体陽性の患者に観血的手術を行った場合 |
| 通則11(別の加算) | 1,000点 | MRSA・B型肝炎・C型肝炎・結核の患者に特定の麻酔(閉鎖循環式全身麻酔・硬膜外麻酔・脊椎麻酔)を伴う手術を行った場合 |

みらい(新人医療事務)
通則11というのも似たような名前ですが、別の加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、条文上まったく別の項目です。取り違えやすいので、注意点として整理しておきますね。
似た加算との取り違え注意
- 本加算(通則10)は「HIV抗体陽性の患者」に「観血的手術」を行った場合の4,000点加算です
- 通則11は「MRSA感染症患者・B型肝炎感染患者(HBs又はHBe抗原陽性)・C型肝炎感染患者・結核患者」に「声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔・硬膜外麻酔・脊椎麻酔を伴う手術」を行った場合の1,000点加算で、対象患者も条件も異なります
- 両方の加算を同一手術で併せて算定できるかどうかは、今回確認した一次資料の中に明記が見当たらなかったため、算定時は個別に確認が必要です
施設基準・届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
この加算、届出とか施設基準は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の情報整理では、この加算は施設基準の届出は不要とされています。実際、告示の通則10の条文には、他の一部の加算(たとえば同じ通則の中にある頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算)で見られるような「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」という文言が含まれていません。
みらい(新人医療事務)
つまり、事前の届出をしていなくても算定候補になり得る、ということですか?
あおい(元・医療事務)
条文の書きぶりからはそう読み取れます。ただし、これは告示の文言に基づく整理であり、レセプト上の運用や個々の審査支払機関の取り扱いまで保証するものではありません。届出の要否について不安がある場合は、地方厚生局や審査支払機関に確認することをおすすめします。
算定するタイミング・注意しておきたい点は?
みらい(新人医療事務)
実務で気をつけたほうがいいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まとめておきますね。
算定上の注意点
- 対象は「観血的手術」に限られます。切開を伴わない非観血的な処置には、この加算は対象にならない可能性があります
- 患者がHIV抗体陽性であることの確認方法・記録方法について、今回確認した一次資料には具体的な記載がありませんでした。院内での確認手順は自院の運用として整理しておく必要があります
- 通則11(MRSA・肝炎・結核患者への麻酔関連加算)とは対象患者も条件も異なる、別の加算です
- 他の手術加算・麻酔加算との併算定の可否は、今回確認した資料の範囲では明記が見当たりませんでした。個別のケースでは審査支払機関への確認をおすすめします
前回改定(令和6年度)からの変更点は?
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが今回参照した令和8年度の一次資料の範囲では、通則10(本加算)について前回改定(令和6年度)からの点数や要件の変更は確認されていません。4,000点という点数、および施設基準・届出が不要という整理についても、今回確認した令和8年度の告示の記載に基づくものです。
確認範囲(令和8年度)
確認日: 本記事作成時点。確認した資料: 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 手術料 通則10。この範囲で変更点は見当たりませんでしたが、詳細な経緯を確認したい場合は厚生労働省の改定関連資料もあわせてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックで確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
こんな順番で確認すると整理しやすいです。
自院で確認する順番
-
手術の内容を確認 — 実施した(または予定している)処置が「観血的手術」に当たるか、切開を伴う手術かどうかを確認します
-
患者のHIV抗体検査結果を確認 — 対象患者がHIV抗体陽性であることが確認・記録されているかを確認します
-
施設基準・届出の要否を確認 — 現時点の整理では届出は不要とされていますが、念のため自院が該当するかを確認します
-
他の手術加算・麻酔加算との関係を確認 — 通則11(MRSA・肝炎・結核患者への麻酔関連加算)など、類似の加算と混同していないか、また併算定の可否を確認します
-
レセプトへの記載を確認 — 対象手術の所定点数に4,000点を加算する形で記載できているかを確認します

みらい(新人医療事務)
意外とシンプルな流れなんですね。
あおい(元・医療事務)
届出が不要な分、確認する項目自体は少なめです。ただし「観血的手術に当たるか」「HIV抗体陽性がどう確認されているか」の2点は、資料に詳細な定義がないぶん、自院での判断が必要になるところです。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れが起きやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか挙げておきますね。
よくある取り漏れポイント
- 患者がHIV抗体陽性であることを把握していても、加算そのものの存在を知らず算定漏れになっているケース
- 観血的手術に当たるかどうかの判断があいまいなまま、加算の要否を検討せず終わっているケース
- 通則11(MRSA・肝炎・結核患者への麻酔関連加算)と混同し、対象患者や条件を取り違えているケース
- 届出不要の加算であることを知らず、施設基準の届出を探して確認作業が止まってしまうケース
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に気になっていることを聞いてもいいですか?病院とクリニックで扱いは違いますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の情報整理では、診療所・病院のどちらでも対象になり得るとされています。病床数による限定も特に設けられていません。ただし在宅医療は対象外です。
みらい(新人医療事務)
HIV抗体陽性かどうかは、いつの検査結果を使えばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
その具体的な取り扱い(検査時期・確認方法)については、今回確認した一次資料の中に明記が見当たりませんでした。院内でのHIV抗体検査の実施・確認のタイミングをどう扱うかは、自院の運用ルールとして整理しておくか、審査支払機関に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
通則11の加算(MRSA等の1,000点加算)と、この加算を同じ手術で両方算定できることはありますか?
あおい(元・医療事務)
患者によっては複数の感染症の診断を受けているケースも考えられますが、両方を同一手術で併せて算定できるかどうかを明記した記載は、今回確認した資料の範囲では見つかりませんでした。断定はできませんので、該当するケースがあれば個別に確認してください。
関連する加算
みらい(新人医療事務)
同じ「手術加算」のカテゴリには、他にどんな加算がありますか?
あおい(元・医療事務)
例えば、届出を行った対象診療科の医師が長時間かつ高難度な手術を実施した場合に加算される外科医療確保特別加算があります。こちらは所定点数の100分の15に相当する点数を加算するもので、本加算とは対象・条件がまったく異なりますが、同じ「手術加算」カテゴリに位置づけられています。自院で複数の手術関連加算の算定候補がないか、あわせて確認しておくと取り漏れを防ぎやすくなります。
| 加算名 | 区分(令和8年度) | 加算点数の目安 |
|---|---|---|
| HIV抗体陽性患者の観血的手術加算(本加算) | 手術料 通則10 | 4,000点 |
| 通則11の加算(MRSA・肝炎・結核患者への麻酔関連) | 手術料 通則11 | 1,000点 |
| 外科医療確保特別加算 | 手術料の加算(届出制) | 所定点数の100分の15 |
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。詳細な要件は必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 手術料 通則10・通則11 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 同告示 別表第一 手術料(骨折非観血的整復術等の名称記載箇所。「観血的」と「非観血的」の区別の参考) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。実施した手術の内容や患者の状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。