みらい(新人医療事務)
「非定型抗精神病薬加算」って、精神科病棟のレセプトでちらっと見た覚えがあるんですけど、正直よくわかっていません。これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科の入院料に組み込まれている加算の一つですよ。統合失調症の入院患者さんに対して、非定型抗精神病薬を使いながら計画的に治療管理を行い、療養上必要な指導もしている場合に、1日につき15点が所定点数に上乗せされる仕組みです。令和8年度(2026年度)の医科点数表でもこの内容で規定されています。
みらい(新人医療事務)
「非定型」ってわざわざ付いているのが気になります。普通の抗精神病薬とは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
非定型抗精神病薬は、従来型(定型)の抗精神病薬に比べて錐体外路症状などの副作用が出にくいとされているタイプの薬剤です。ただ、この加算の要件を読み解くうえで大事なのは薬の分類そのものより、「1日あたりの抗精神病薬が2種類以下であること」という使用実態の条件なんです。ここは後でくわしく確認しましょう。
非定型抗精神病薬加算とは
みらい(新人医療事務)
まず、この加算がどこに位置づけられているのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
単独の点数表項目ではなく、いくつかの精神病棟の入院料の「注」に規定されている加算です。当サイトが収録している令和8年度の医科点数表(厚生労働省告示・A311 精神科救急急性期医療入院料 注3)の条文では、「当該病棟に入院している統合失調症の患者に対して、計画的な医学管理の下に非定型抗精神病薬による治療を行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合には、当該患者が使用した1日当たりの抗精神病薬が2種類以下の場合に限り、非定型抗精神病薬加算として、1日につき15点を所定点数に加算する。」と書かれています。
みらい(新人医療事務)
同じ文言が、ほかの入院料にも出てくるんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。当サイトが確認できた範囲では、精神科救急急性期医療入院料(A311)、精神科急性期治療病棟入院料(A311-2)、精神科救急・合併症入院料(A311-3)、精神療養病棟入院料(A312)、地域移行機能強化病棟入院料(A318)の5つの入院料に、ほぼ同一の文言で規定されています。いずれも「1日につき15点」「抗精神病薬2種類以下」という条件は共通です。
この加算のポイント
加算対象: 精神病棟の複数の入院料(A311・A311-2・A311-3・A312・A318)に共通する加算です。 対象患者: 当該病棟に入院している統合失調症の患者。 点数: 1日につき15点。 数量条件: 使用している抗精神病薬が1日あたり2種類以下の場合に限られます。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どういう医療機関、どういう患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
対象になる医療機関は、いま挙げた入院料のいずれかについて施設基準の届出を行っている精神病棟を持つ保険医療機関です。医科点数表の条文では、各入院料の注1で「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た精神病棟を有する保険医療機関において、当該届出に係る精神病棟に入院している患者について算定する」と定められています。つまり非定型抗精神病薬加算そのものではなく、土台となる入院料の届出が前提になります。
みらい(新人医療事務)
患者さん側の条件は「統合失調症」の一言だけですか?
あおい(元・医療事務)
条文上はそうですが、留意事項通知でもう少し具体的に説明されています。当サイトが収録している令和8年度の留意事項通知(A311関連)には、「『注3』に規定する加算は、非定型抗精神病薬を投与している統合失調症患者に対して、計画的な治療管理を継続して行い、かつ、当該薬剤の効果及び副作用に関する説明を含め、療養上必要な指導を行った場合に算定する。」と書かれています。
みらい(新人医療事務)
「計画的な治療管理」とか「療養上必要な指導」って、具体的に何をすればいいのかまだピンとこないです。
あおい(元・医療事務)
次の点数とコードのセクションのあとに、算定要件として詳しく整理しますね。まずは「対象患者=統合失調症で入院中」「対象医療機関=対象入院料の届出をしている精神病棟」という骨格を押さえておきましょう。

点数とコード
みらい(新人医療事務)
点数は先ほど「15点」と聞きましたが、入院料によって違ったりしませんか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できた5つの入院料はすべて「1日につき15点」で共通していますよ。表にまとめますね。
| 入院料(区分番号) | 加算点数 | 対象患者の条件 |
|---|---|---|
| A311 精神科救急急性期医療入院料 | 15点/日 | 統合失調症・抗精神病薬2種類以下 |
| A311-2 精神科急性期治療病棟入院料 | 15点/日 | 統合失調症・抗精神病薬2種類以下 |
| A311-3 精神科救急・合併症入院料 | 15点/日 | 統合失調症・抗精神病薬2種類以下 |
| A312 精神療養病棟入院料 | 15点/日 | 統合失調症・抗精神病薬2種類以下 |
| A318 地域移行機能強化病棟入院料 | 15点/日 | 統合失調症・抗精神病薬2種類以下 |
みらい(新人医療事務)
点数表のコード番号も知りたいです。レセプト上で個別の診療行為コードが振られているんですよね?
あおい(元・医療事務)
非定型抗精神病薬加算は、それぞれの入院料ごとに医科診療行為マスター上で個別のコードが割り当てられています。ただし具体的なコード番号は入院料の種類によって異なり、マスターの版によって変わることもあるので、この記事では個別の数字は載せません。自院のレセプトコンピュータや医科診療行為マスターの最新版で、算定する入院料に対応するコードを確認するのが確実です。
コードは入院料ごとに別
非定型抗精神病薬加算は、入院料(A311・A311-2・A311-3・A312・A318)ごとにマスター上のコードが分かれています。どの入院料で算定するかによってコードが変わるため、レセプト作成時は自院が算定している入院料に対応するコードかどうかを必ず確認してください。
算定要件(何を満たせば算定候補になるか)
みらい(新人医療事務)
ここが一番知りたいところです。具体的に何をしていれば算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している留意事項通知を確認すると、大きく3つの条件があります。順番に見ていきましょう。
みらい(新人医療事務)
お願いします。
あおい(元・医療事務)
1つ目は薬剤の種類数です。留意事項通知には「『注3』に規定する非定型抗精神病薬及び抗精神病薬の種類数は一般名で計算する。また、非定型抗精神病薬及び抗精神病薬の種類については、別紙様式36を参考にすること。ただし、クロザピンはこれに含めない。」と書かれています。商品名ではなく一般名で数え、クロザピンは種類数のカウントから除外される点が特徴です。
みらい(新人医療事務)
2つ目は何ですか?
あおい(元・医療事務)
治療管理と指導の実施です。「計画的な治療管理を継続して行い、かつ、当該薬剤の効果及び副作用に関する説明を含め、療養上必要な指導を行った場合に算定する」とされています。単に薬を出しているだけでなく、効果・副作用の説明を含む療養指導が伴っていることが条件です。
みらい(新人医療事務)
3つ目は?
あおい(元・医療事務)
記録要件です。「『注3』に規定する加算を算定する場合には、1月に1度、治療計画及び指導内容の要点を診療録に記載し、投与している薬剤名を診療報酬明細書に記載する。」とあります。月1回、診療録に治療計画と指導内容の要点を記載し、レセプトの摘要欄には投与している薬剤名を書く必要があります。
算定要件の3本柱
種類数: 一般名換算で1日あたり2種類以下(クロザピンは種類数に含めない)。 治療管理・指導: 計画的な治療管理+効果・副作用の説明を含む療養上の指導。 記録: 月1回、診療録に治療計画・指導内容の要点を記載し、レセプト摘要欄に薬剤名を記載。
みらい(新人医療事務)
レセルピンとか、頓用の薬はカウントされるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこはよくある疑問のようで、疑義解釈でも取り上げられています。平成22年度に示された疑義解釈では、「非定型抗精神病薬加算について、レセルピンを降圧剤として投与している場合も、抗精神病薬としてカウントするのか」という問いに対して「カウントしない」と回答されています。また「頓用で使用した抗精神病薬もカウントするのか」という問いに対しては「カウントしない。ただし、臨時に使用した薬剤をそのまま継続して投与する場合は、臨時で使用した時点からカウントする」と回答されています(令和8年度時点でこの取扱いを変更する公式資料は、当サイトが収録している範囲では確認されていません)。
みらい(新人医療事務)
レセルピンを降圧剤として使っている場合や、頓用だけの薬は種類数に入らないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。ただしこれは平成22年度時点の疑義解釈なので、自院での適用にあたっては最新の疑義解釈や地方厚生局の案内も確認しておくと安心です。
施設基準・届出
みらい(新人医療事務)
非定型抗精神病薬加算そのものについて、別に施設基準の届出が必要になったりしますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している条文の範囲では、非定型抗精神病薬加算に専用の届出様式は見当たりません。届出が必要なのは、加算の土台になっている入院料(A311・A311-2・A311-3・A312・A318のいずれか)のほうです。各入院料の注1に「地方厚生局長等に届け出た精神病棟を有する保険医療機関において算定する」とあるため、その入院料の施設基準届出がすでに受理されていることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
逆に言うと、対象の入院料を算定できていれば、条件を満たした患者さんについて自動的に非定型抗精神病薬加算も算定候補になるということですか?
あおい(元・医療事務)
条件(種類数・治療管理・記録)を満たしていれば算定候補になり得ます。ただし「対象の入院料を届け出ているかどうか」「その入院料で実際に算定している患者かどうか」は自院で必ず確認が必要です。届出済みであれば候補になる、という言い方がいちばん実態に近いですね。
断定はできません
非定型抗精神病薬加算は、対象入院料の届出・患者の状態・薬剤の種類数・記録の有無など複数の条件がそろって初めて算定候補になります。この記事の内容だけで算定可否を断定せず、自院の届出状況や診療録の記載内容を確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングや回数の制限はありますか?
あおい(元・医療事務)
「1日につき15点」という定めなので、条件を満たしている入院日について1日単位で算定する加算です。月単位や回数の上限を定めた条文は、当サイトが収録している範囲では確認されていません。ただし記録要件として「1月に1度、治療計画及び指導内容の要点を診療録に記載する」という頻度の定めがあるので、算定の有無にかかわらず月1回の記録更新は欠かせません。
みらい(新人医療事務)
ほかの加算と一緒に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
各入院料の注2では、この入院料に含まれる診療の費用の範囲(除外される加算・診療行為)が細かく列挙されています。非定型抗精神病薬加算自体が除外されるという記載は見当たりませんが、同じ入院料に含まれる他の診療報酬項目との関係は入院料ごとに条文が異なります。併算定の可否は、自院が算定している入院料の注2以下を個別に確認することをおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、今回の改定で内容が変わったりしたんですか?
あおい(元・医療事務)
非定型抗精神病薬加算は、平成22年度時点の疑義解釈ですでに取り上げられているくらい以前から存在する加算です。当サイトが収録している一次資料(令和8年度医科点数表・留意事項通知)の範囲では、令和8年度(2026年度)改定における点数・算定要件の変更は確認されていません。1日15点、抗精神病薬2種類以下という条件は、収録資料の範囲で継続している内容です。
改定差分の確認結果
点数(15点/日)・対象患者(統合失調症)・数量条件(2種類以下)のいずれについても、当サイトが収録している一次資料の範囲では令和8年度改定での変更点は確認されていません。今後の官報告示・通知の追補で変更が判明した場合は随時更新します。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院で確認するなら、どの順番でチェックすればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認するとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- 対象になり得る入院料(A311・A311-2・A311-3・A312・A318のいずれか)の施設基準を届け出ているか確認する。
- 該当する入院患者が統合失調症の診断で入院しているか確認する。
- 使用している抗精神病薬を一般名で数え、1日あたり2種類以下か確認する(クロザピンは種類数に含めない)。
- 計画的な治療管理と、効果・副作用の説明を含む療養上の指導を行っているか確認する。
- 月1回、診療録に治療計画・指導内容の要点を記載し、レセプト摘要欄に薬剤名を記載しているか確認する。

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で取り漏れやすいポイントってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますよ。
取り漏れやすいポイント
種類数の数え方: 商品名ベースで数えてしまい、実際は一般名換算で2種類以下なのに算定を見送ってしまうケース。 クロザピンの扱い: クロザピンを種類数に含めて数えてしまい、本来算定候補になる患者を対象外と誤判断してしまうケース。 記録の抜け: 治療管理・指導は行っているのに、診療録への月1回の記載やレセプト摘要欄の薬剤名記載が抜けてしまうケース。
みらい(新人医療事務)
記録の抜けは、算定要件を満たしていても後から指摘されそうで怖いですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。実施していることと、記録に残っていることは別物として扱われることが多いので、月1回の診療録記載は忘れずに運用に組み込んでおきたいところです。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠としています。詳細な要件や個別の届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 医科点数表(令和8年度診療報酬改定): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 疑義解釈資料の送付について(その1)医科 問88・問89(平成22年度): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
- 留意事項通知(A311等の算定要件詳細)は当サイトが収録している一次資料に基づき本文で引用しています。原文は厚生労働省の改定関連ページで確認できます。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する入院料のページも参考になるので、あわせて見ておくと理解が深まると思います。精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料のページも公開しています。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。