みらい(新人医療事務)
先生、心臓血管外科の手術のレセプトを確認していたら「逆行性冠灌流加算」という項目が出てきました。初めて見る名前なんですが、これはどんな加算ですか?
あおい(元・医療事務)
逆行性冠灌流加算は、K601人工心肺(1日につき)という手術区分の「注」に定められている加算の一つです。令和8年度の点数表では、人工心肺を使う心臓手術の初日に、逆行性冠灌流という心筋保護の手技をあわせて行った場合に、4,800点を所定点数に加算する候補になります。
みらい(新人医療事務)
逆行性冠灌流というのは、具体的にどんな処置なんですか?
あおい(元・医療事務)
心臓を止めて手術する際は、心筋(心臓の筋肉)を守るために保護液を送り込む「心筋保護」という処置が必要になります。厚生労働省の留意事項通知には、「「注1」の逆行性冠灌流を併せて行った場合の加算は、冠静脈洞にバルーンカテーテルを挿入し、心筋保護を行った場合に算定する。」と定められています。つまり、通常の冠動脈の入口からではなく、心臓の静脈側にあたる冠静脈洞からカテーテルを入れて、逆向きに保護液を流す方法のことです。
みらい(新人医療事務)
なるほど、心筋保護のやり方の違いで加算が分かれているんですね。うちの病院でも算定候補になるか、詳しく教えてください。
K601人工心肺と逆行性冠灌流加算の点数(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
点数は、どの資料を見れば確認できますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の告示にはこう書かれています。「K601 人工心肺(1日につき) 1 初日 30,150点 2 2日目以降 3,000点」「注1 初日に、補助循環、選択的冠灌流又は逆行性冠灌流を併せて行った場合には、4,800点を所定点数に加算する(主たるもののみを算定する。)。」ここに出てくる4,800点が、逆行性冠灌流加算の点数候補です。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| K601 人工心肺(1日につき)初日 | 30,150点 |
| K601 人工心肺(1日につき)2日目以降 | 3,000点 |
| 注1加算(補助循環・選択的冠灌流・逆行性冠灌流のいずれか、主たるもののみ) | 4,800点 |
| 参考:注2加算(選択的脳灌流) | 7,000点 |
みらい(新人医療事務)
表の一番下の「選択的脳灌流加算」は、逆行性冠灌流加算とは別物なんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、別の加算です。告示の同じ注のなかに「2 初日に選択的脳灌流を併せて行った場合は、7,000点を所定点数に加算する。」という条文があり、こちらは脳を保護するための別の技術に対する加算です。逆行性冠灌流加算とは独立して算定候補になる項目なので、混同しないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
点数の場所は分かりました。次は、どんな条件を満たせば算定候補になるのか知りたいです。
算定要件(何を確認すればいいか)
みらい(新人医療事務)
うちの病院がこの加算を算定候補にできるか、まず何を確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
一番大事なのは、実際に行った処置の内容です。留意事項通知の(5)にはこう書かれています。「「注1」の逆行性冠灌流を併せて行った場合の加算は、冠静脈洞にバルーンカテーテルを挿入し、心筋保護を行った場合に算定する。」つまり、手術記録に「冠静脈洞へのバルーンカテーテル挿入」「逆行性の心筋保護」の実施が明記されているかどうかが、算定候補かどうかを分ける確認ポイントです。
みらい(新人医療事務)
手術記録の記載が薄いと、算定候補にならない可能性もあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。記載が「心筋保護施行」とだけになっていて、逆行性か順行性か、カテーテルの挿入部位が分からない場合は、執刀医への確認が必要です。断定はできませんが、記載内容と一致していないまま算定候補として扱うのは避けたほうが安全です。
みらい(新人医療事務)
記録の書き方一つで、確認すべき手間が変わってくるんですね。
併算定の注意点(主たるもののみ算定)
主たるもののみ算定という決まり
告示には「(主たるもののみを算定する。)」という括弧書きがあります。補助循環・選択的冠灌流・逆行性冠灌流は、いずれも同じ「注1」に含まれる技術です。同じ手術の初日にこれらを複数実施したとしても、4,800点の加算は1回分しか算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
複数の技術を組み合わせて手術することもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、特に大きな心臓手術では、補助循環と逆行性冠灌流を組み合わせて行うケースもあります。ただ、点数表上は「主たるもの」だけが加算の対象になる決まりなので、実施した技術をすべて別々に加算して請求することはできません。どれが「主たるもの」かは、手術の中心的な処置内容から判断する必要があり、迷う場合は院内のレセプト担当者・執刀医と確認するのが安全です。
みらい(新人医療事務)
補助循環や選択的冠灌流にも、それぞれ条件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。留意事項通知には、参考としてこう書かれています。「(3) 「注1」の補助循環を併せて行った場合の加算は、人工心肺を用いた心大血管手術後の低心拍出量症候群に対して人工心肺を用いて循環を補助した場合に限り算定できる。」「(4) 「注1」の選択的冠灌流を併せて行った場合の加算は大動脈基部を切開し、左右冠動脈口に個別にカニューレを挿入し、心筋保護を行った場合に算定する。」逆行性冠灌流とはカテーテルの挿入部位も適応も異なるため、どの技術を実施したのかをカルテで区別して確認する必要があります。
対象となる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
この加算は、どんな医療機関で出てくるものですか?
あおい(元・医療事務)
人工心肺を使う心臓血管外科の手術、たとえば弁膜症手術や大血管手術を行っている病院が対象になります。人工心肺そのものが大掛かりな体外循環装置を使う手術のため、心臓血管外科・体外循環技術を持つ病院での算定候補になります。無床診療所や、人工心肺を使う手術を行っていない病院では、この加算そのものが発生する場面がありません。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
逆行性冠灌流加算そのものに専用の施設基準・届出が定められているかどうかは、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できていません。前提として、K601人工心肺自体の実施体制が必要になりますので、自院がK601人工心肺を算定できる体制にあるか、施設基準の届出状況とあわせて確認するのが安全です。届出が必要な項目かどうかは、地方厚生局への確認をおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、逆行性冠灌流加算(K601人工心肺 注1)について、前回改定(令和6年度)からの点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026年8月)。令和8年度の告示・留意事項通知に記載されている内容が、現時点で確認できる最新の取り扱いです。
改定情報は都度確認を
診療報酬改定は複数回にわたって告示・通知・訂正が発出されることがあります。手術を実施する前に、最新の告示・留意事項通知を厚生労働省のサイトで確認してください。
みらい(新人医療事務)
令和6年度から大きな変更がなくても、確認は毎回必要ということですね。
自院で確認する順番

自院で確認する順番
- 手術記録・麻酔記録に「冠静脈洞へのバルーンカテーテル挿入」「逆行性の心筋保護」の実施が明記されているか確認する
- 同じ手術の初日に、補助循環・選択的冠灌流・逆行性冠灌流のうち複数を実施していないか、実施していた場合は「主たるもの」がどれかを確認する
- K601人工心肺そのものの算定要件・施設基準を満たしているか確認する
- カニュレーション料など、所定点数に含まれる項目を別に請求していないか確認する
- 記載が曖昧な場合は、執刀医・レセプト担当者に確認したうえで算定候補とする
みらい(新人医療事務)
手術記録の中身を細かく見る作業になりそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。加算そのものは点数表の1行ですが、確認する側は「何が書かれているか」を丁寧に追う必要がある加算です。
よくある取り漏れ
取り漏れやすいポイント
手術記録の記載が曖昧: 「心筋保護施行」とだけ書かれていて、逆行性か順行性か分からないケースは、加算の算定候補から外れやすくなります。 主たるもの以外を重複請求: 補助循環と逆行性冠灌流を両方行った場合に、両方を加算しようとしてしまうケースは、告示の「主たるもののみ」という条文に反するため注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
逆に、見落とされやすいのはどんなケースですか?
あおい(元・医療事務)
手術記録には処置内容がきちんと書かれているのに、レセプト作成の担当者が「逆行性冠灌流加算」という項目自体を知らず、算定候補として拾い上げられずに終わってしまうケースがあります。人工心肺を使う手術は件数自体が多くないため、見慣れない加算として見落とされやすい項目です。
関連する加算
みらい(新人医療事務)
似たような「灌流」の名前がついた加算が、他にもあるんですね。
あおい(元・医療事務)
心臓血管外科の手術では、脳を保護する目的の術中脳灌流モニタリング加算という加算もあります。逆行性冠灌流加算とは対象となる臓器も算定区分も異なりますが、同じ心臓・大血管手術の周術期に関わる加算として、あわせて確認しておくとよいでしょう。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。手術記録の記載内容や算定要件を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の手術記録・診療内容・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。