みらい(新人医療事務)
あおいさん、股関節の骨折の手術をした患者さんのレセプトを見てたら「緊急挿入加算」っていう項目があったんです。これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
「緊急挿入加算」は、区分番号「K081」人工骨頭挿入術の「注」に規定されている加算ですよ。大腿骨近位部の骨折に対して、骨折後48時間以内に人工骨頭の挿入を行った場合に、4,000点を所定点数に加算するというものです。令和8年度(2026年度)時点の医科点数表に基づく整理なので、まずそこを押さえておきましょう。
みらい(新人医療事務)
「K081人工骨頭挿入術」って、肩とか肘の手術でも出てくる番号ですよね?緊急挿入加算はどれでも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこ、とても大事な確認ポイントです。留意事項通知では「骨折後48時間以内に『2』股関節人工骨頭挿入術を行った場合」と明記されていて、対象は股関節の人工骨頭挿入術に限られます。肩関節・肘関節の人工骨頭挿入術には、この緊急挿入加算は付きません。
似た名前の加算と混同しない
「緊急挿入加算」(K081人工骨頭挿入術の注加算)と、「緊急整復固定加算」(K046骨折観血的手術の注加算)は別の加算です。どちらも大腿骨近位部骨折・48時間以内という共通点がありますが、対応する手術の区分番号が異なります。レセプト確認や記事検索の際は、対象手術(K081かK046か)を必ず条文で確認してください。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関の、どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、対象は病院での入院診療が中心です。診療所や外来、在宅医療は対象外の可能性が高い区分になっています。対象患者は、留意事項通知に「75歳以上の大腿骨近位部骨折患者」と明記されています。年齢と骨折部位、どちらも条文どおりに確認することが必要です。
みらい(新人医療事務)
75歳未満の患者さんだったら、同じ手術をしても対象外なんですね。
あおい(元・医療事務)
条文の文言どおりに読む限り、そうなります。年齢要件を満たすかどうかは、まず診療録・レセプトで確認してください。ここは断定ではなく、自院のカルテで実際の年齢を確認するところから始めるのが確実です。
点数とコードの整理
みらい(新人医療事務)
点数の全体像も整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい。K081人工骨頭挿入術には術式ごとに点数があり、そのうち股関節の術式に緊急挿入加算が上乗せされる形です。

| 区分 | 点数(令和8年度) |
|---|---|
| K081「1」肩関節人工骨頭挿入術 | 19,500点 |
| K081「2」股関節人工骨頭挿入術 | 19,500点 |
| K081「3」肘関節人工骨頭挿入術 | 18,810点 |
| 緊急挿入加算(「2」股関節に限る) | 4,000点(加算) |
みらい(新人医療事務)
緊急挿入加算の4,000点は、股関節人工骨頭挿入術19,500点に上乗せされるイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。ただし単純に「股関節の手術をすれば必ず加算できる」わけではなく、この後お話しする年齢・期間・併算定の条件をすべて満たした場合の話になります。マスターコードの数字までは当サイトの一次資料の範囲で確認できていないので、実際の請求時は院内の医科診療行為マスターで区分番号と対応させて確認してください。
算定要件を確認する
みらい(新人医療事務)
具体的にどんな条件を満たせば、算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に書かれている要件を、順番に見ていきましょう。まず大前提として「75歳以上の大腿骨近位部骨折患者」であること、そして「適切な周術期の管理」を行っていることが条件です。
みらい(新人医療事務)
「適切な周術期の管理」って、具体的に何をすればいいのか気になります。
あおい(元・医療事務)
そこは条文上「適切な周術期の管理を行い」という表現にとどまっていて、具体的な内容までは当サイトが確認できた一次資料の範囲には書かれていません。ここは自院の診療内容が「周術期管理」として説明できる状態かどうかを、自院の医師・看護部門で確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
期間の条件はどうですか?
あおい(元・医療事務)
「骨折後48時間以内に『2』股関節人工骨頭挿入術を行った場合」という条件です。骨折した日時と、手術を開始した日時の両方を記録しておく必要があります。留意事項通知には「診療報酬明細書の摘要欄に骨折した日時及び手術を開始した日時を記載すること」ともありますので、レセプトの摘要欄記載も算定要件の一部として押さえておいてください。
みらい(新人医療事務)
回数の制限はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。「1回に限り所定点数に加算する」と明記されています。同一患者・同一入院で複数回算定するものではない、という理解になります。
二次性骨折予防継続管理料1との関係
みらい(新人医療事務)
さっき「併算定の条件」っておっしゃっていましたが、それは何ですか?
あおい(元・医療事務)
ここがこの加算でいちばん見落としやすいポイントです。留意事項通知には「一連の入院期間において『B001』の『34』の『イ』二次性骨折予防継続管理料1を算定する場合に限る」と明記されています。つまり、同じ入院期間中に二次性骨折予防継続管理料1を算定していることが、緊急挿入加算の算定条件そのものになっています。
見落としやすい併算定条件
緊急挿入加算は、手術そのものの内容だけでなく「同一入院期間中に二次性骨折予防継続管理料1(B001の34のイ)を算定しているか」も条件に含まれます。手術部門とレセプト部門で情報が分かれていると、この条件の確認が漏れやすいポイントです。二次性骨折予防継続管理料側の届出状況・算定状況とあわせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
手術後に何かしないといけないこともあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。「当該手術後は、早期離床に努めるとともに、関係学会が示しているガイドラインを踏まえて適切な二次性骨折の予防を行うこと」という記載があります。手術をして終わりではなく、術後の早期離床や、二次性骨折予防の取り組みまで含めて要件になっている加算です。
施設基準・体制面の確認ポイント
みらい(新人医療事務)
届出とか施設基準は必要ないんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトの整理では、緊急挿入加算そのものは届出・施設基準の区分としては「不要」に分類されています。ただし、確認しておきたい資料があります。厚生労働省の疑義解釈(令和4年度公表分)には「緊急整復固定加算及び緊急挿入加算の施設基準における『関係学会等と連携』とは、具体的にはどのようなことを指すのか」という質問への回答として、「日本脆弱性骨折ネットワークのレジストリに症例を登録することを指す」という記載があります。
施設基準の記載は要確認
この疑義解釈は緊急挿入加算と緊急整復固定加算をまとめて扱っており、「施設基準における関係学会等と連携」という表現が使われています。当サイトの分類では緊急挿入加算自体の届出・施設基準は「不要」としていますが、実務上は二次性骨折予防継続管理料側の体制要件(多職種連携等)と関わっている可能性があります。この点は当サイトの一次資料の範囲では断定できないため、算定候補と考える場合は自院の届出状況・地方厚生局への確認をおすすめします。
みらい(新人医療事務)
「多職種連携」って、具体的にはどんなことをするんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ疑義解釈のもう一つの問答に手がかりがあります。「多職種連携を目的とした、大腿骨近位部骨折患者に対する院内ガイドライン及びマニュアル」の内容として、整形外科以外の診療科医師との連携、薬剤師との連携(骨粗鬆症の薬物治療)、理学療法士との連携(早期リハビリ)、看護師との連携(誤嚥防止)、管理栄養士との連携(栄養指導)、社会福祉士との連携(退院・転院支援)などが例示されています。
記録・レセプト記載のポイント
みらい(新人医療事務)
記録として残しておくべきものを整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
条文で明記されているのは次の3点です。骨折した日時、手術を開始した日時、そしてこれらをレセプトの摘要欄に記載すること。加えて、二次性骨折予防継続管理料1を同一入院で算定している事実がわかる記録も、あわせて確認できる状態にしておくと安心です。
自院で確認する順番
自院で確認する順番(令和8年度)
- 患者が75歳以上の大腿骨近位部骨折であるかをカルテで確認する
- 骨折日時と手術開始日時を記録し、48時間以内かどうかを確認する
- 行った手術がK081「2」股関節人工骨頭挿入術であるかを確認する
- 同一入院期間中に二次性骨折予防継続管理料1を算定しているかを確認する
- レセプト摘要欄に骨折日時・手術開始日時を記載する

令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前の改定と比べて、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収集している一次資料の範囲では、令和6年度時点の緊急挿入加算に関する条文そのものを確認できていません。今回確認できたのは令和8年3月5日付の留意事項通知(保医発0305第6号)に基づく令和8年度時点の内容です。前回改定(令和6年度)からの変更の有無については、一次資料の範囲で断定できる材料がないため、変更履歴を厳密に確認したい場合は厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページで改定前後の通知を突き合わせることをおすすめします。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場で取り漏れやすいポイントを教えてください。
あおい(元・医療事務)
大きく3つあります。
よくある取り漏れ
- 手術がK081「2」股関節人工骨頭挿入術であることは確認したが、二次性骨折予防継続管理料1の同一入院期間中の算定状況を確認していなかった
- 骨折した日時・手術開始日時をカルテには残していたが、レセプトの摘要欄への転記が漏れていた
- 年齢が75歳未満の患者に、股関節の緊急手術というだけで加算を検討してしまった
関連加算との切り分け
K046骨折観血的手術の注加算である「緊急整復固定加算」は、今回ご紹介した緊急挿入加算とは異なる区分番号の加算です。院内で骨折観血的手術と人工骨頭挿入術のどちらを行ったかによって、確認すべき加算が変わります。似た名称・似た条件のため、対象手術のコードを条文で確認してから請求内容を判断してください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よく聞かれそうな質問をいくつか確認させてください。76歳未満の患者でも、緊急の状態なら算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の文言どおりに読む限り、対象は「75歳以上」と明記されています。年齢を満たさない場合は、緊急挿入加算の対象外の可能性が高いという理解になります。実際の判断は自院で年齢を確認したうえで行ってください。
みらい(新人医療事務)
二次性骨折予防継続管理料1を算定していない場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「二次性骨折予防継続管理料1を算定する場合に限る」とされているため、算定していない場合は緊急挿入加算の算定要件を満たさない可能性があります。二次性骨折予防継続管理料側の届出・算定状況とあわせて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
骨折後48時間を少しでも過ぎてしまったら、もう対象外なんですか?
あおい(元・医療事務)
条文は「骨折後48時間以内」と時間を区切っています。それを超えている場合は、この加算の算定候補としては要確認、というより対象外の可能性が高くなります。骨折日時・手術開始日時の記録をもとに、自院で正確に確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。