みらい(新人医療事務)
「肝エラストグラフィ加算」という名前を初めて見たんですけど、これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
区分番号E202「磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)」の注加算の一つですよ。慢性肝疾患や肝硬変の患者さんに対して、肝臓の線維化の程度をMRIで診断した場合に、年1回に限り600点を所定点数に加算できる項目です(令和8年度診療報酬点数表)。
みらい(新人医療事務)
「線維化」って、肝臓が硬くなっていく変化のことですよね。今までは針を刺して調べていたイメージがあります。
あおい(元・医療事務)
そうです。肝生検(針生検)は体への負担が大きいので、その代わりにMRIで肝臓の硬さ・線維化の程度を画像から評価する検査として位置づけられています。ただし、算定候補になるかどうかは対象患者・施設基準・届出の3点をそれぞれ確認する必要があって、名前だけで判断はできません。
対象になる患者・医療機関
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんが対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料(厚生労働省の留意事項通知)では、対象を次のように定めています。
対象患者(留意事項通知の要件)
「慢性肝疾患又は肝硬変の患者(疑われる患者を含む。)に対して、肝臓の線維化の診断を目的とし」た場合に限られると明記されています。単なる肝機能検査や、肝疾患の疑いがない患者への実施は対象になりません。
みらい(新人医療事務)
「疑われる患者を含む」とあるので、確定診断が出ていなくても対象になり得るんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、その点は通知の文言どおりです。ただし「診断を目的として」いることが前提なので、目的が明確でない撮影は算定候補にならない可能性があります。医療機関の種別については、診療所・病院、外来・入院のいずれも対象になり得ますが、在宅療養時の取扱いは今回参照した資料には明記がなく、要確認です。自院の診療形態に当てはまるかは、まずカルテ・オーダーの目的欄で確認するのがおすすめです。
点数はいくらですか
みらい(新人医療事務)
気になる点数を教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では次のとおりです。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 加算名 | 肝エラストグラフィ加算 |
| 点数 | 600点 |
| 算定回数 | 年1回に限り |
| 根拠区分 | E202 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)注10 |
| 届出 | 必要 |
| 施設基準 | あり |

みらい(新人医療事務)
年1回だけなんですね。同じ患者さんに繰り返し必要になったらどうするんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の範囲では「年1回に限り」としか明記されておらず、複数回実施した場合の扱いまでは今回参照した通知には記載がありません。年度内に複数回のMRIエラストグラフィが必要になったケースがある場合は、審査支払機関に確認したほうが確実です。ここは断定せず「要確認」として扱ってください。
施設基準・届出はどう確認しますか
みらい(新人医療事務)
届出が必要とのことですが、具体的に何を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、装置とその使い方についてかなり具体的に定められています。
施設基準・実施要件(留意事項通知の要件)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において、関連学会の定める指針に従って、(中略)1.5テスラ以上のMRI装置及び薬事承認を得た専用装置を使用して肝臓を描出した場合」に限り算定するとされています。
みらい(新人医療事務)
「1.5テスラ以上のMRI装置」と「薬事承認を得た専用装置」の両方が必要なんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。汎用の低磁場MRI装置だけでは施設基準を満たさない可能性があります。また「関連学会の定める指針」については、厚生労働省の疑義解釈(令和4年度・その12・問6)で「日本医学放射線学会及び日本磁気共鳴医学会が作成した『肝MRエラストグラフィ撮像・管理指針』を指す」と回答されており、前回改定(令和6年度)を経た現在の令和8年度の留意事項通知でも同じ内容が維持されています。指針に沿った撮像・管理体制になっているかも、届出前に確認しておきたいポイントです。
みらい(新人医療事務)
読影の体制についても何か決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和6年度の疑義解釈(その1・問193)では、画像診断管理加算3・4、頭部MRI撮影加算とあわせて、肝エラストグラフィ加算の施設基準にも「関係学会の定める指針に基づく夜間及び休日の読影体制が整備されていること」が含まれると回答されており、前回改定にあたるこの令和6年度の回答内容は、令和8年度の施設基準でも同じ扱いが維持されています。ただし、夜間・休日に読影する医師が必ず「画像診断を専ら担当する医師」である必要はなく、医学的判断に基づき適切な体制が整っていれば足りる、という運用面の回答もあわせて示されています。自院の読影体制がこの指針に沿っているかどうかは、届出の実務担当者と一度確認しておくと安心です。
算定タイミング・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
他の検査と一緒に行った場合、両方とも算定できるんですか?
あおい(元・医療事務)
ここは特に慎重に確認してほしいところです。留意事項通知には併算定に関する明確な記載があります。
併算定の制限(留意事項通知の要件)
「肝エラストグラフィ加算と肝臓の線維化の診断を目的として『D412』経皮的針生検法(透視、心電図検査及び超音波検査を含む。)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する。また、当該画像診断を実施した同一月内に肝臓の線維化の診断を目的として『D215-2』肝硬度測定、『D215-3』超音波エラストグラフィ又は『D215-4』超音波減衰法検査を実施した場合には、主たるもののみを算定する。」と定められています。
みらい(新人医療事務)
つまり、同じ月に他の肝線維化の検査もあわせて行うと、どちらか一方しか算定できないということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。D412経皮的針生検法、D215-2肝硬度測定、D215-3超音波エラストグラフィ、D215-4超音波減衰法検査のいずれかを同一月内に実施している場合は、レセプトを起こす前に「主たるもの」がどちらかを整理しておく必要があります。この判断を機械的に決めつけることはできないので、迷う場合は院内の算定ルールや審査支払機関への確認をおすすめします。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した一次資料(令和8年度点数表・留意事項通知)の範囲では、肝エラストグラフィ加算そのものの点数(600点)・算定回数(年1回)・対象患者の定義・施設基準の骨格に、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません。
改定の経緯(疑義解釈からわかる範囲)
この加算自体は令和4年度時点の疑義解釈(その12・問6)にも登場しており、施設基準の運用が段階的に明確化されてきた経緯があります。令和6年度の疑義解釈(その1・問193)では、夜間・休日の読影体制に関する要件が他の画像診断系加算とあわせて確認されました。令和8年度の点数表・留意事項通知では、これらの内容から点数・対象患者・主要な施設基準の変更は確認されていません。
みらい(新人医療事務)
変わっていないからといって、確認しなくていいわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。「変更なし」というのはあくまで今回参照した一次資料の範囲での確認結果です。届出内容や運用の細部は、自院の状況にあわせて都度確認してください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちで算定候補になるかを確かめるには、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するとわかりやすいですよ。
自院で確認する順番
- MRI撮影について、肝エラストグラフィ加算の施設基準を地方厚生(支)局長に届け出ているか確認する
- 対象の患者が慢性肝疾患又は肝硬変(疑われる患者を含む)で、肝臓の線維化の診断を目的としているか確認する
- 使用する装置が1.5テスラ以上のMRI装置かつ薬事承認を得た専用装置か確認する
- 関連学会の指針(肝MRエラストグラフィ撮像・管理指針)に沿った撮像・管理体制になっているか確認する
- 同一月内にD412経皮的針生検法・D215-2肝硬度測定・D215-3超音波エラストグラフィ・D215-4超音波減衰法検査を実施していないか確認する
- 当該患者について年1回の算定枠をすでに使っていないか確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
実際に取りこぼしやすいポイントってどこですか?
あおい(元・医療事務)
現場でよく見落とされやすいのは次のような点です。
よくある取り漏れ
- 施設基準は届け出ているのに、対象患者の目的(線維化の診断目的か)をカルテに明記しておらず、算定根拠があいまいになるケース
- 同一月に肝硬度測定や超音波エラストグラフィも実施していて、両方を算定してしまい査定対象になるケース
- 使用しているMRI装置が1.5テスラ未満、または薬事承認を得た専用装置でないまま算定してしまうケース
みらい(新人医療事務)
どれも「施設基準を満たしているか」よりも、運用の記録が甘くなりがちな部分ですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。届出そのものよりも、日々の記録・併算定のチェックのほうが漏れやすいので、レセプト担当者と読影医の間で確認フローを共有しておくと安心です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
うちは診療所なんですが、それでも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
診療所・病院のどちらでも対象になり得ます。ただし在宅療養時の取扱いについては今回参照した資料には明記がなく、要確認です。外来・入院での実施であれば、届出と装置要件を満たしていることが条件になります。
みらい(新人医療事務)
肝硬変の疑いだけで、まだ確定診断が出ていない患者さんでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知には「疑われる患者を含む」と明記されているため、確定診断前でも対象になり得ます。ただし線維化の診断を目的としていることが前提なので、目的をカルテに残しておくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
超音波エラストグラフィと同じ月に実施した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
その場合は主たるもののみの算定になります。どちらを主たるものとするかは個別の診療内容によるため、院内でルールを決めておくか、審査支払機関に確認してください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。なお、同じ画像診断系の加算として時間外緊急院内画像診断加算もあわせて確認すると、画像診断まわりの届出・算定ルールを整理しやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。