みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトのチェック中に「多椎間又は多椎弓実施加算」っていう見慣れない加算名が出てきたんですけど、これって何のための加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
これは脊椎の手術に関わる加算ですよ。医科点数表の「K142 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)」という手術区分に含まれる注のルールで、令和8年度(2026年度)の点数表でも同じ枠組みで整理されています。1回の手術で椎間や椎弓を複数まとめて処置したときに、追加分の点数をどう積み上げるかを決めているものなんです。
みらい(新人医療事務)
「椎間」とか「椎弓」って、そもそも何を指しているんですか?
あおい(元・医療事務)
椎間は背骨の骨と骨のあいだ(椎体と椎体のあいだ)のことで、固定術(金属などで骨を安定させる手術)の対象になります。椎弓は背骨の後ろ側にある弓状の骨の部分で、神経の通り道を広げる椎弓切除術や椎弓形成術の対象です。K142にはこの両方が含まれていて、1〜24の区分に分かれています。
K142区分の点数(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
区分がたくさんあるんですね。どんな内訳になっているんですか?
あおい(元・医療事務)
大きく分けると、前方椎体固定術・後方又は後側方固定術・後方椎体固定術・前方後方同時固定術・椎弓切除術・椎弓形成術の6種類があって、それぞれ頸椎・胸椎・腰椎・仙椎の4部位に分かれるので、6×4で24区分になります。令和8年度の点数の一例を表にまとめると、こんな感じです。
| 手術の種類 | 点数の目安(令和8年度) |
|---|---|
| 前方椎体固定術(頸・胸・腰・仙椎) | 41,710点 |
| 後方又は後側方固定術(頸・胸・腰・仙椎) | 32,890点 |
| 後方椎体固定術(頸・胸・腰・仙椎) | 41,160点 |
| 前方後方同時固定術(頸・胸・腰・仙椎) | 74,580点 |
| 椎弓切除術(頸・胸・腰・仙椎) | 13,310点 |
| 椎弓形成術(頸・胸・腰・仙椎) | 24,260点 |
みらい(新人医療事務)
この点数がそのまま「多椎間又は多椎弓実施加算」になるわけじゃないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。これは主たる手術1件分の点数の一覧で、加算はここから計算する「追加分」にあたります。1回の手術で椎間・椎弓を1つだけ扱った場合はこの表の点数をそのまま算定しますが、2つ以上を同時に扱った場合に、追加した分をどう積み上げるかが加算のルールになります。
加算の計算ルール(注1)
みらい(新人医療事務)
具体的にはどう計算するんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料である医科点数表の注に、次のように書かれています。
医科点数表 K142の注(令和8年度)
注1: 椎間又は椎弓が併せて2以上の場合は、1椎間又は1椎弓を追加するごとに、追加した当該椎間又は当該椎弓に実施した手術のうち主たる手術の所定点数の100分の50に相当する点数を加算する。ただし、加算は椎間又は椎弓を併せて4を超えないものとする。
みらい(新人医療事務)
つまり、2つ目以降の椎間・椎弓ごとに、その手術の点数の半分(100分の50)を追加していくということですね。
あおい(元・医療事務)
その理解で合っています。例えば胸椎後方又は後側方固定術(32,890点)を主たる手術として実施し、隣の胸椎にもう1椎間、後方固定を追加した場合は、追加した椎間の手術点数32,890点の50%にあたる16,445点を加算する、という計算になります。この「追加した椎間・椎弓ごとの50%相当分」が、この加算でまとめている点数です。この加算の点数目安が6,655点〜37,290点という幅になっているのも、24区分それぞれの点数の50%を計算した結果の最小値・最大値にあたります。
みらい(新人医療事務)
上限もあるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。「加算は椎間又は椎弓を併せて4を超えないものとする」とあるので、主たる手術1つ+追加3つ、合計4椎間・椎弓までが対象です。5つ目以降を実施しても、5つ目以降の追加加算は算定できない可能性が高いという整理になります。ここも自院で必ず確認してほしいポイントです。
隣接する椎弓との重複に注意(注2)
みらい(新人医療事務)
固定術をした椎間の隣にある椎弓も一緒に処置することってありそうですが、それも別途1つとしてカウントするんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが実務でつまずきやすいところなんです。同じ注に、こう書かれています。
注2の重複算定に関する注意(令和8年度)
5から16までに掲げる手術の所定点数には、注1の規定にかかわらず、当該手術を実施した椎間に隣接する椎弓に係る17から24までに掲げる手術の所定点数が含まれる。
あおい(元・医療事務)
区分5〜16は後方又は後側方固定術・後方椎体固定術・前方後方同時固定術です。これらの手術を行った椎間に隣接する椎弓の切除・形成(区分17〜24)は、主たる手術の点数にすでに含まれている扱いになります。ですので、その隣接椎弓分を別枠でもう一度「多椎間又は多椎弓実施加算」として積み上げてしまうと、二重算定になってしまう可能性があります。
みらい(新人医療事務)
なるほど、隣接する椎弓かどうかの見極めが重要なんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の留意事項では、たとえば第10胸椎から第12胸椎までの後方固定を行い、あわせて第11胸椎の椎弓切除を実施したケースが算定例として示されています(隣接する椎弓に該当)。一方で、固定の範囲に含まれない第9胸椎の椎弓切除を追加した場合は、隣接椎弓の扱いにならず、椎弓切除術の点数の50%を別途加算する例が示されています。同じ「椎弓切除の追加」でも、固定した椎間に隣接しているかどうかで扱いが変わるため、症例ごとに丁寧な確認が必要です。
自院で確認する順番
- 実施した手術がK142(脊椎固定術・椎弓切除術・椎弓形成術)に該当するか確認する
- 椎間・椎弓を2つ以上実施しているか確認する
- 主たる手術(最も点数の高いもの、または術式上の主たる区分)を特定する
- 追加した椎間・椎弓が、主たる手術を行った椎間に隣接する椎弓(注2の対象)に当たらないか確認する
- 隣接椎弓に当たらない追加分について、区分ごとの点数の50%を計算する
- 合計が椎間・椎弓4つを超えていないか確認する
この加算はどんな場面で発生するか
みらい(新人医療事務)
この加算って、クリニックの外来でも出てくるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
K142自体が脊椎固定術・椎弓切除術・椎弓形成術という入院を伴う手術のため、基本的には脊椎外科・整形外科を持つ病院での算定が中心になると考えられます。外来診療所で日常的に発生する加算ではありません。レセプトを担当されている病院・診療科であれば、手術記録に複数椎間・複数椎弓の記載があるかどうかをまず確認することになります。
みらい(新人医療事務)
施設基準や届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認した一次資料(医科点数表のK142区分と注1・注2)の範囲では、この加算に特有の施設基準・届出についての記載は見当たりませんでした。K142本体の手術を実施する保険医療機関としての体制が前提になりますが、加算固有の届出が必要かどうかは、確認が必要な点として扱ってください。断定はできませんので、算定候補として扱いつつ、自院の実施体制と照らし合わせて確認することをおすすめします。

よくある取り漏れ・見落とし
レセプトチェックでの見落としポイント
追加分の起点区分の取り違え: 主たる手術の区分(1〜24のどれか)を誤ると、加算のもとになる点数自体が変わってしまいます。 隣接椎弓の見落とし: 注2の対象となる隣接椎弓分を、誤って別加算として二重に計上してしまうケースがあります。 上限4椎間・椎弓の超過: 5つ目以降の椎間・椎弓分まで加算し続けてしまうケースがあります。
みらい(新人医療事務)
どれも手術記録をしっかり読み込まないと分からなそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。手術記録に「第◯胸椎から第◯胸椎まで固定」「第◯胸椎に椎弓切除を追加」のように具体的に書かれているはずなので、その範囲と隣接関係を照合しながら確認するのが基本になります。判断に迷う場合は、院内の手術担当医や、審査支払機関への確認も選択肢に入れてください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、このルール自体は変わっていないんですか?
あおい(元・医療事務)
今回確認できた一次資料(K142区分の点数表・注1・注2)の範囲では、「1椎間又は1椎弓の追加ごとに主たる手術の所定点数の100分の50を加算し、椎間又は椎弓を併せて4を超えない」という計算の枠組みや、隣接椎弓の扱い(注2)についての変更は確認されていません。点数そのものは改定のたびに見直される可能性がありますので、実際の算定にあたっては必ず令和8年度の最新の点数表でご確認ください。
時系列での整理
令和6年度(2024年度)改定時点: 同様の枠組み(追加椎間・椎弓ごとに50%加算、上限4)で運用されていました。 令和8年度(2026年度)改定: 今回確認した資料の範囲では、計算方法・上限に関する変更は見当たりません。

似ている加算との違いに注意
みらい(新人医療事務)
「2つ以上の手術で50%を加える」というルール、他にも似たような加算を見た気がします。
あおい(元・医療事務)
2以上の手術の50%併施加算のことですね。こちらは手術の通則に基づく「複数手術に係る費用の特例」で、同一手術野・同一病巣で異なる手術を組み合わせた場合に、従たる手術の点数の50%を加える仕組みです。今回ご紹介した多椎間又は多椎弓実施加算は、K142という1つの手術区分の中で椎間・椎弓の数が増えたときの加算であり、根拠になる規定も計算の起点も異なります。名前や「50%」という数字が似ているため混同しやすいのですが、別のルールとして扱う必要がある点は覚えておいてください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある疑問をいくつか確認したいです。まず、椎間と椎弓を両方追加した場合はどう計算するんですか?
あおい(元・医療事務)
注1は「椎間又は椎弓が併せて2以上の場合」という書き方になっているので、椎間・椎弓を合わせた数で数える整理と考えられます。ただし、どの組み合わせが主たる手術になるかなど、具体的な計算の当てはめは症例ごとに確認が必要な部分ですので、判断に迷う場合は院内の手術記録と照らし合わせたうえで、審査支払機関にも確認しておくと安心です。
みらい(新人医療事務)
4椎間・椎弓を超えて手術した場合、超えた分は請求してはいけないんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「加算は椎間又は椎弓を併せて4を超えないものとする」と明記されているため、5つ目以降の追加分については、この加算のルールでは加算対象外の可能性が高いと考えられます。実際の算定にあたっては、超過分の扱いについても院内の算定担当者や審査支払機関に確認しておくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
クリニックでこの加算が発生することはありますか?
あおい(元・医療事務)
K142は脊椎の固定術・椎弓切除術・椎弓形成術という入院手術に関わる区分のため、外来クリニックで日常的に発生することは想定しにくいです。ただし、実際に該当する手術を実施する医療機関であれば、確認が必要な項目として扱ってください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。手術の内容や椎間・椎弓の数を整理して入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。