みらい(新人医療事務)
先輩、レセプトを見ていたら「2以上の手術の50%併施加算」という項目が目に留まりました。これって、手術を2件やったら自動的につく加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そう単純ではないんです。名前だけ見ると「2つ手術をすれば50%上乗せ」と思いがちですが、実際は同一手術野または同一病巣で2つの手術を同時に行った場合の算定ルールに関わるものです。まずは令和8年度の一次資料に沿って、原則と例外を整理していきましょう。
みらい(新人医療事務)
原則と例外があるんですね。原則はどうなっているんですか?
あおい(元・医療事務)
医科点数表の考え方では、同一手術野又は同一病巣につき2以上の手術を同時に行った場合、費用の算定は主たる手術の所定点数のみで行うのが原則です。つまり、従たる手術の点数は別立てで算定できません。
この加算はどんな時に関わってくるのか
みらい(新人医療事務)
え、原則だと従たる手術は点数がつかないんですか。それだと「2以上の手術の50%併施加算」って、いつ出てくるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが例外の出番です。同一手術野又は同一病巣であっても、「複数手術に係る費用の特例(平成30年厚生労働省告示第72号)」に規定する組み合わせに該当する場合は、主たる手術の所定点数に、従たる手術(1つに限る)の所定点数の100分の50に相当する額を加えた点数により算定します。この「50%加算」の部分が、今回の加算概念にあたります。
みらい(新人医療事務)
つまり、原則は「主たる手術だけ」、例外的に告示で決められた組み合わせだけ「主たる手術+従たる手術の50%」になる、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。この加算は自院が独自に判断して算定するものではなく、実施した2つの手術の組み合わせが告示の別表第一に列挙されているかどうかで機械的に決まる算定ルールです。届出も不要ですが、その分「組み合わせに該当するか」の確認がとても重要になります。
対象になる医療機関・場面
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関は限定されているんですか?
あおい(元・医療事務)
この算定ルール自体は、診療所・病院を問わず、外来・入院いずれの手術にも関わりうるものです。手術料の通則に基づく算定方法の一つなので、施設の規模や種別で対象外になるという性質のものではありません。なお、在宅医療における適用については、当サイトが収録している資料の範囲では確認されていません。
みらい(新人医療事務)
施設基準は必要ないんですか?
あおい(元・医療事務)
この加算に関しては、施設基準の届出は求められていません。届出不要という点は、多くの施設基準系加算と違うところですね。ただし届出が不要だからといって「誰でも自動的に算定できる」わけではなく、あくまで実施した手術の組み合わせが告示に定める要件に当てはまるかどうかで決まります。
押さえておきたいポイント
- 施設基準の届出は不要
- 診療所・病院、外来・入院いずれの手術にも関わりうる算定ルール
- 「同一手術野又は同一病巣」であることが前提
- 該当するかどうかは、実施した2手術の組み合わせが告示別表第一に列挙されているかで判断する
点数の考え方(原則と特例)
みらい(新人医療事務)
実際の点数計算のイメージを教えてください。
あおい(元・医療事務)
一次資料の記載を表にまとめると、次のようになります。
| ケース | 算定の考え方 |
|---|---|
| 原則(同一手術野・同一病巣で複数手術) | 主たる手術の所定点数のみで算定(従たる手術は別立てで算定しない) |
| 特例(告示別表第一に規定する組み合わせに該当) | 主たる手術の所定点数 + 従たる手術(1つに限る)の所定点数×100分の50 |
みらい(新人医療事務)
「従たる手術(1つに限る)」というのが気になります。3つ手術をしたらどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では「従たる手術(1つに限る。)」と明記されていますので、50%加算の対象になる従たる手術は1つだけという理解になります。3つ以上の手術を行った場合にどの手術が主たる手術・従たる手術に整理されるかは、個別のレセプト状況によって変わってきますので、判断に迷う場合は具体的な組み合わせを確認しながら進める必要があります。

みらい(新人医療事務)
なるほど、「50%」というのは従たる手術の点数に対してかかる割合なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。主たる手術は100%そのまま、従たる手術は所定点数の50%相当額を上乗せする、という考え方です。誤って「2つの手術の合計点数の50%」と読んでしまうと計算を間違えるので注意してください。
対象となる手術の組み合わせ
みらい(新人医療事務)
告示の別表第一というのは、具体的にどんな組み合わせが載っているんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の疑義解釈資料(令和8年度)で示されている例では、区分番号「K154-2」胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術と区分番号「K504-2」胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術の組み合わせ、また「K154-2」と「K513-2」胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術の組み合わせが、告示別表第一に掲げる複数手術に係る費用の特例の対象として挙げられています。
みらい(新人医療事務)
これらの組み合わせなら、必ず50%加算になるということですか?
あおい(元・医療事務)
厚労省の疑義解釈では、内視鏡手術用支援機器加算(いわゆる手術支援ロボット)を用いた場合についても、この特例が適用されると回答されています。ただし、これはあくまで疑義解釈で示された例の一つであり、実際に自院が行った手術の組み合わせが告示の別表第一に掲げられているかどうかは、個別に確認する必要があります。資料に載っていない組み合わせについて「対象になる」と断定することはできません。
組み合わせの確認は個別に必要
「複数手術に係る費用の特例(平成30年厚生労働省告示第72号)」の別表第一には多数の手術の組み合わせが列挙されています。この記事で紹介した組み合わせはあくまで一部の例であり、自院が実施した手術の組み合わせが該当するかどうかは、告示本文とレセプトコンピュータの設定を必ず確認してください。該当しない組み合わせに誤って50%加算を適用すると、過誤請求につながる可能性があります。
届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算、届出は本当にいらないんですか?
あおい(元・医療事務)
この記事の対象である「2以上の手術の50%併施加算」については、施設基準の届出は求められていません。多くの加算では「施設基準を満たして届け出ているか」が算定候補かどうかの分かれ目になりますが、この算定ルールでは届出の有無よりも「実施した手術の組み合わせが告示の規定に当てはまるかどうか」が判断のポイントになります。
みらい(新人医療事務)
届出がいらない分、確認するポイントが変わってくるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出書類のチェックではなく、レセプト作成時に手術コードの組み合わせを丁寧に照合する作業が中心になります。レセプトコンピュータの自動判定に頼りきりにせず、疑わしい組み合わせは告示の原文で確認する運用が安全です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、この算定ルールに変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、「複数手術に係る費用の特例(平成30年厚生労働省告示第72号)」に基づく主たる手術+従たる手術50%という算定の考え方そのものについて、令和8年度(2026年度)改定での変更は確認されていません。令和8年度の訂正通知でも、手術の通則の中で「複数手術に係る費用の特例を定める件(平成30年厚生労働省告示第72号)に規定する複数手術を同時に行った場合(併施)」という記載が引き続き整理されています。
みらい(新人医療事務)
告示自体は平成30年からずっと同じ内容ということですか?
あおい(元・医療事務)
告示の名称・年(平成30年厚生労働省告示第72号)自体は当サイトが収録している資料の範囲では変わっていませんが、別表第一に列挙される手術の組み合わせは、改定のたびに新設された手術コードなどに応じて更新されている可能性があります。「告示のタイトルが同じだから中身も同じ」と思い込まず、該当する組み合わせは常に最新の告示本文で確認することをおすすめします。
前回→今回の整理
- 令和6年度(2024年度)改定以前から、主たる手術+従たる手術50%という算定の骨格自体は継続
- 令和8年度(2026年度)時点でも、複数手術に係る費用の特例(平成30年厚生労働省告示第72号)が根拠として維持されている
- 別表第一に列挙される具体的な組み合わせの追加・変更は、告示本文で都度確認が必要
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にレセプトを作るとき、どんな順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
一次資料の考え方に沿うと、次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 実施した手術を確認 — 同一の患者に対して、同一日に2つ以上の手術を行ったかどうかを確認する
- 同一手術野・同一病巣かを確認 — 2つの手術が同一手術野又は同一病巣にあたるかどうかを確認する
- 告示別表第一の組み合わせに該当するか確認 — 「複数手術に係る費用の特例(平成30年厚生労働省告示第72号)」別表第一に、実施した手術の組み合わせが列挙されているかを確認する
- 主たる手術・従たる手術を整理 — 該当する場合、どちらが主たる手術でどちらが従たる手術(1つに限る)にあたるかを整理する
- 算定候補かどうかを確認 — 該当すれば主たる手術の所定点数+従たる手術の所定点数×100分の50が算定候補になる。該当しなければ、原則どおり主たる手術の所定点数のみで算定候補になる

みらい(新人医療事務)
レセプトコンピュータが自動で計算してくれる場合でも、この確認は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
レセプトコンピュータのマスター更新にタイムラグがあったり、個別の症例で判断が分かれたりすることもありますので、機械的な自動計算に完全に任せきりにせず、迷った組み合わせは告示本文と照らし合わせて確認する運用をおすすめします。
よくある取り漏れ・誤解
よくある誤解
- 「2つ手術をすれば自動的に50%加算がつく」と誤解しているケース — 実際は告示別表第一に列挙された組み合わせに限られる
- 「従たる手術も100%算定できる」と誤解しているケース — 従たる手術は所定点数の100分の50に相当する額のみが加算対象
- 「3つ以上の手術も全部50%ずつ加算できる」と誤解しているケース — 一次資料では「従たる手術(1つに限る。)」と明記されている
- 「届出が必要な加算」と勘違いしているケース — この算定ルールは施設基準の届出を前提としていない
みらい(新人医療事務)
逆に、取り漏れが起きやすいのはどんな場面ですか?
あおい(元・医療事務)
該当する組み合わせを実施しているのに、レセプトコンピュータのマスターが未対応で主たる手術の点数だけで請求してしまっているケースが考えられます。特に手術支援ロボットを用いた術式など、比較的新しい術式の組み合わせでは、マスターの整備状況を含めて確認しておくと安心です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある疑問をいくつか聞いておきたいです。この加算は病院でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
はい。この算定ルールは診療所・病院いずれの手術にも関わりうるものです。特定の医療機関種別に限定する規定は、当サイトが収録している資料の範囲では確認されていません。
みらい(新人医療事務)
従たる手術が2つある場合、両方とも50%加算されますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料には「従たる手術(1つに限る。)」と明記されていますので、50%加算の対象になるのは従たる手術のうち1つだけという理解になります。複数の従たる手術がある場合の具体的な整理は、個別のレセプト状況を踏まえて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
この算定ルールは施設基準の届出を前提としていません。ただし、実施した手術の組み合わせが告示別表第一に該当するかどうかは必ず確認が必要ですので、「届出不要だから確認しなくていい」ということにはなりません。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省公式資料を根拠としています。実際に算定を検討する際は、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 疑義解釈資料の送付について(その2)医科 問103(令和8年度) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21053.html
- 医科点数表の訂正通知(令和8年度)J062-2 同種死体移植腎機械灌流保存 該当頁 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001707506.pdf
- 複数手術に係る費用の特例を定める件(平成30年厚生労働省告示第72号)に基づく算定ルール(当サイトの整理・令和8年度時点)
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。加算の算定に際しては、実施した手術の組み合わせが告示別表第一に該当するかどうかを必ず自院で確認してください。