みらい(新人医療事務)
「多椎弓形成(内視鏡下)加算」って名前だけ見ると何のことかさっぱりです……。うちの病院、脊椎の手術もやってるんですけど、これって算定候補になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
順番に整理していきましょう。これは単独で算定する加算ではなくて、内視鏡を使った椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ)という手術を、複数の椎弓に対して行ったときに追加でつく点数のことなんです。まずは「そもそもどの手術に関係する加算なのか」から見ていきますね。
みらい(新人医療事務)
椎弓形成術……背骨の手術ですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。脊柱管が狭くなって神経を圧迫している患者さんに対して、椎弓(背骨の後ろ側にある骨の部分)の形を作り替えて神経の通り道を広げる手術です。内視鏡下椎弓形成術はその内視鏡バージョン、つまり傷を小さくして行うタイプの術式にあたります。
この加算は何のためのものか
みらい(新人医療事務)
なんとなくイメージはつかめました。この加算自体は、具体的にどういうときに関係してくるんですか?
あおい(元・医療事務)
内視鏡下椎弓形成術は、頸椎・胸椎・腰椎・仙椎のどこか1か所に対して行うのが基本の点数設計です。ただ、患者さんによっては1か所だけでなく、隣り合う複数の椎弓に対して同時に手術が必要になることがあります。そのときに、2椎弓目以降の追加分として発生するのがこの加算というわけです。
みらい(新人医療事務)
つまり「1椎弓だけならこの加算はつかない」ってことですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。1椎弓のみの手術であれば、この加算は関係しません。あくまで「多椎弓」、つまり2つ以上の椎弓に手術を行った場合に候補になる点数です。まずはここを取り違えないことが大事ですね。
どんな手術のときに関係するか
みらい(新人医療事務)
具体的にはどの区分番号の手術に紐づいているんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している厚生労働省の令和8年度医科点数表では、「K142-5 椎弓形成術(内視鏡下)」という区分に、頸椎・胸椎・腰椎・仙椎それぞれの椎弓形成術が定められています。この加算は、その区分の「注」に規定されている多椎弓加算に対応する概念として、当サイトが医科診療行為マスターをもとに整理したものです。
みらい(新人医療事務)
マスターをもとに整理、というのはどういう意味ですか?
あおい(元・医療事務)
加算そのものに個別の名称がついているわけではなく、K142-5の「注」に書かれた計算ルールに対応するレセプト電算コードとして扱われている、という意味です。なので、この加算を語るときは必ずK142-5本体の点数表と一緒に確認する必要があります。単独では意味を持たない加算、と考えるとわかりやすいと思います。
みらい(新人医療事務)
なるほど、セットで見る加算なんですね。対象になる患者さんの疾患は何か決まってるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこまで具体的な対象疾患の記載は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できていません。一般的には脊柱管狭窄症など、椎弓の形成が必要になる脊椎疾患で内視鏡下手術が選択された患者さんが対象になりますが、個別の適応は術者の判断と診療録での記録によります。
対象になりやすいケース(確認ポイント)
手術範囲: 頸椎・胸椎・腰椎・仙椎のいずれかで、椎弓形成が2椎弓以上に及ぶ場合に確認対象になります。 術式の一致: 通常の椎弓形成術ではなく、内視鏡下で行われたK142-5に該当する術式かどうかを診療録で確認します。 1椎弓のみは対象外の可能性: 1椎弓のみの手術では、この加算の対象外の可能性があります。
点数はいくらか(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数を教えてください!
あおい(元・医療事務)
まず土台になるK142-5本体の点数から見てみましょう。
| 区分 | 内容 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| K142-5「1」 | 頸椎椎弓形成術(内視鏡下) | 30,390点 |
| K142-5「2」 | 胸椎椎弓形成術(内視鏡下) | 30,390点 |
| K142-5「3」 | 腰椎椎弓形成術(内視鏡下) | 30,390点 |
| K142-5「4」 | 仙椎椎弓形成術(内視鏡下) | 30,390点 |
| 多椎弓形成(内視鏡下)加算 | 2椎弓目以降、1椎弓を増すごとに加算 | 15,195点 |
みらい(新人医療事務)
15,195点って、30,390点のちょうど半分ですね?
あおい(元・医療事務)
よく気づきましたね。厚生労働省の点数表では「椎弓が2以上の場合は、1椎弓を増すごとに所定点数に所定点数の100分の50に相当する点数を加算する」と定められています。30,390点の100分の50、つまり半分が15,195点になる、という計算です。
みらい(新人医療事務)
じゃあ3椎弓、4椎弓とやればやるほど点数が増えていくんですか?
あおい(元・医療事務)
増えていきますが、上限があります。同じ注に「加算は4椎弓を超えないものとする」と定められているので、この加算がつくのは最大でも2椎弓目・3椎弓目・4椎弓目の3回まで、ということになります。5椎弓目以降を実施しても、この加算はそれ以上増えない計算です。

みらい(新人医療事務)
図を見ると分かりやすいです。1椎弓目は本体の点数だけで、2椎弓目からこの加算が乗ってくる、というイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。この加算だけを単独で算定することはなく、必ずK142-5本体の算定とセットになる点、算定候補を考えるときの前提として押さえておいてください。
施設基準・届出について
みらい(新人医療事務)
この加算を算定するには、届出とか施設基準が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは慎重に確認が必要なところです。当サイトが収録している一次資料の範囲では、K142-5本体の「注」に、届出や施設基準についての個別の記載は確認できていません。つまり、この区分そのものについて「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」といった文言は、当サイトが確認した資料には見当たらない状況です。
みらい(新人医療事務)
じゃあ届出はいらないってことですか?
あおい(元・医療事務)
そこまで断定はできません。資料に記載が無いことと、実務上まったく確認事項が無いことはイコールではないんです。脊椎の内視鏡下手術は高度な技術と体制を要する手術ですから、麻酔管理や術中モニタリングの体制、手術室の設備なども含めて、自院の実施体制が算定要件を満たしているかどうかは、地方厚生局や審査支払機関に確認しておくのが安全です。
届出・施設基準は個別に確認を
この加算そのものについて、当サイトが収録する一次資料の範囲では届出義務の明記は確認できていません。ただし、内視鏡下の脊椎手術という性質上、実施体制の確認は必要になる場合があります。断定はできませんので、自院の届出状況は地方厚生局への確認をおすすめします。
算定タイミング・回数制限の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いちばん大事なのは、椎弓の数を診療録・手術記録で正確にカウントすることです。「1椎弓を増すごとに」という計算方式なので、実施した椎弓の数を1つずつ数え間違えないようにする必要があります。
みらい(新人医療事務)
数え間違えると、点数がずれちゃいますもんね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。それと、上限の「4椎弓を超えない」という制限も忘れやすいポイントです。5椎弓分手術をしても、この加算が発生するのは最大3回分まで、という計算になります。レセプト作成時にここを見落として過剰に加算してしまうケースは、確認が必要な典型的な注意点です。
併算定・回数のダブルチェック
この加算は椎弓ごとの追加点数であり、上限は4椎弓までと定められています。実施した椎弓数のカウントと、上限を超えていないかの確認を、レセプト提出前に必ず行ってください。併算定できない項目の有無については、当サイトが収録する資料だけでは断定できないため、個別に確認が必要です。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前の改定と比べて、何か変わったところってあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度の一次資料の範囲では、K142-5本体の点数(30,390点)と、多椎弓の加算ルール(100分の50・4椎弓が上限)について、変更を示す記載は確認されていません(確認日: 2026年8月)。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、そんなに気にしなくても大丈夫そうですか?
あおい(元・医療事務)
「変更が確認されていない」というのは、あくまで当サイトが収録している資料の範囲での話です。改定のたびに点数や施設基準が見直される可能性はゼロではないので、算定の都度、最新の点数表・通知を確認する習慣は続けてくださいね。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちの病院で確認するとしたら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
順を追って見ていきましょう。
自院で確認する順番
- 実施した手術がK142-5「椎弓形成術(内視鏡下)」に該当するかを手術記録で確認する
- 手術を行った椎弓の数を数え、2椎弓以上かどうかを確認する
- 2椎弓以上であれば、2椎弓目以降の分について15,195点を1椎弓ごとに加算候補として計算する
- 加算回数が4椎弓分(3回)を超えていないかを確認する
- 届出・施設基準に関する疑問点があれば、地方厚生局または審査支払機関に確認する

みらい(新人医療事務)
これなら順番に確認できそうです。
あおい(元・医療事務)
レセプト担当の方だけでなく、手術記録を書く医師側とも「何椎弓に手術したか」の情報共有をしておくと、確認の手間が減ると思いますよ。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
逆に、取り漏れとか算定ミスであるあるなパターンってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかありますね。
よくある取り漏れ・算定ミス
椎弓数の数え忘れ: 手術記録に椎弓数が明記されておらず、加算の候補漏れに気づかないケース。 上限超えの過剰算定: 4椎弓を超える分まで加算してしまい、上限を見落としているケース。 本体との紐づけ忘れ: この加算だけを単独でチェックし、K142-5本体の算定区分(頸椎・胸椎・腰椎・仙椎のどれか)との対応が曖昧なまま処理されるケース。
みらい(新人医療事務)
どれも「数え方」に関わることが多いんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。この加算は仕組み自体はシンプルなので、椎弓数の記録と計算のダブルチェックを徹底することが、いちばんの対策になります。
関連する加算
みらい(新人医療事務)
一緒に確認しておいたほうがいい加算とかってありますか?
あおい(元・医療事務)
脊椎の手術では、神経の状態をモニタリングしながら手術を行うことがあり、その場合は脊髄誘発電位測定等加算が算定候補になる可能性があります。当サイトが収録している厚生労働省の留意事項では、「K142-5」から「K142-7」までに掲げる手術も、脊髄誘発電位測定等加算の対象となる脳・脊椎・脊髄等の手術に含まれる、とされています。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、内視鏡下椎弓形成術でモニタリングをしていたら、そっちも確認したほうがいいんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。ただしこちらも、実際に神経モニタリングを実施したかどうかや、施設基準の充足状況によって算定候補かどうかが変わってきますので、手術記録と合わせて個別に確認してください。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、素朴な疑問をいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
椎弓形成術を1椎弓だけ行った場合は、この加算はまったく関係ないんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、1椎弓のみの手術であれば、この加算の対象外の可能性が高いです。K142-5本体の所定点数(30,390点)のみが算定の中心になります。
みらい(新人医療事務)
内視鏡を使わない通常の椎弓形成術の場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
それは別の区分(K142「椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)」)の話になります。通常の椎弓形成術にも、それぞれ多椎間・多椎弓に対応する別コードの加算が用意されています。点数はK142-5(内視鏡下)とは異なりますので、当該区分の点数表で個別に確認が必要です。内視鏡下かどうかで区分が異なるので、混同しないよう注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
加算の点数、15,195点は今後変わることもありますか?
あおい(元・医療事務)
診療報酬は改定のたびに見直される可能性があります。この記事は令和8年度の点数表・通知にもとづいていますので、次回以降の改定内容は、その時点の公式資料で必ず確認するようにしてください。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。手術記録の内容や椎弓数を整理しながら、確認すべきポイントを一緒に整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。