みらい(新人医療事務)
先生、「悪性腫瘍病理組織標本加算」という加算名を見つけたんですが、これはどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
病理診断料(N006)に含まれる注加算のひとつで、悪性腫瘍の手術で摘出した検体を病理組織診断した場合に、届出済みの医療機関で150点が上乗せされる加算です。令和8年度(2026年度)時点でも設けられている区分ですよ。
みらい(新人医療事務)
「上乗せ」ということは、単独では算定できないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。まず病理診断料の組織診断料を算定していることが前提で、そのうえで一定の条件を満たすと150点が加算される、という2段構えの仕組みです。1つずつ整理していきましょう。
この加算は何のための加算か
みらい(新人医療事務)
そもそも病理診断料ってどういうものでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
病理診断を専ら担当する医師が、摘出された組織や細胞を顕微鏡で観察して診断する行為に対する点数です。当サイトが収録している一次資料(令和8年厚生労働省告示第69号)では、次のように定められています。
病理診断料(N006)の根拠(告示)
N006 病理診断料 1 組織診断料 520点 2 細胞診断料 200点
みらい(新人医療事務)
なるほど、ここが土台なんですね。「悪性腫瘍病理組織標本加算」はどこに上乗せされるんですか?
あおい(元・医療事務)
組織診断料(1)に対する加算です。告示の注5には、次のように書かれています。
悪性腫瘍病理組織標本加算の根拠(告示・注5)
1については、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、悪性腫瘍に係る手術の検体から区分番号N000に掲げる病理組織標本作製の1又は区分番号N002に掲げる免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製により作製された組織標本に基づく診断を行った場合は、悪性腫瘍病理組織標本加算として、150点を所定点数に加算する。
みらい(新人医療事務)
検体の作り方まで指定されているんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。「N000 病理組織標本作製の1(組織切片によるもの)」または「N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製」で作られた組織標本に基づく診断であることが条件です。組織診断料を算定しているだけでは対象になりません。
対象医療機関・対象患者や場面
みらい(新人医療事務)
どんな医療機関が対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している範囲では、診療所・病院のいずれも対象で、外来・入院どちらの場面でも算定候補になり得ます。ただし在宅医療の場面は対象になっていません。前提として、病理診断を専ら担当する医師が院内に勤務し、病理診断料そのものを算定していることが必要です。
みらい(新人医療事務)
患者さんの疾患は限定されていますか?
あおい(元・医療事務)
はい、ここが重要なポイントです。厚生労働省の留意事項通知では、対象となる手術がかなり具体的に列挙されています。
対象となる手術の範囲(留意事項通知・抜粋)
「注5」に規定する悪性腫瘍病理組織標本加算については、原発性悪性腫瘍に対して「K007の1」、「K031」、「K053」、「K162」、「K394」、「K394-2」、「K439」、「K442」、「K476」、「K484-2」、「K514」、「K514-2」、「K529」、「K529-2」、「K529-3」、「K529-5」、「K653の2」、「K653の3」、「K655の2」……(留意事項通知にはさらに手術コードの列挙が続きます)
みらい(新人医療事務)
すごい数の手術コードが並んでいますね……。
あおい(元・医療事務)
はい。この一覧で「原発性悪性腫瘍」に対する手術として挙げられたコードが対象で、転移性の腫瘍や一覧に無い術式の検体は対象外の可能性があります。全リストはかなり長いので、自院で扱う手術がこの一覧に含まれるかどうかは、必ず留意事項通知の原文で確認してください。
点数・コード

みらい(新人医療事務)
関連する点数を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
いいですよ。土台になる病理診断料と、検体作製にかかる点数を並べてみます。
| 区分 | 点数 | 備考(令和8年度) |
|---|---|---|
| N006病理診断料 組織診断料 | 520点 | 悪性腫瘍病理組織標本加算の土台 |
| N006病理診断料 細胞診断料 | 200点 | 本加算の対象外(組織診断料のみが対象) |
| 悪性腫瘍病理組織標本加算 | +150点 | 注5・要届出・組織診断料に上乗せ |
| N000病理組織標本作製 | 860点 | 組織切片によるもの(1)・セルブロック法によるもの(2)いずれも860点 |
| N002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製 | 項目により異なる | 対象抗体の種類ごとに点数が分かれる |
みらい(新人医療事務)
150点だけ見ると小さく感じますけど、組織診断料520点にさらに上乗せされるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。単独の点数だけでなく、「土台の組織診断料をすでに算定しているか」「対象の手術・作製方法にあたるか」の2点をあわせて確認することが大切です。
施設基準
みらい(新人医療事務)
施設基準が気になります。何を満たせばいいんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注5では「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが条件とされています。具体的な人員配置などの詳細要件は、特掲診療料の施設基準の告示・通知に定められていますので、届出前に必ず原文を確認してください。当サイトが収録している範囲では、施設基準の細目まではすべて確認できていません。
施設基準の詳細は必ず原文を確認
本加算の施設基準は特掲診療料の施設基準(告示)に定められています。当サイトの一次資料の範囲では詳細な人員配置基準までは確認できていないため、届出にあたっては地方厚生局への確認、または特掲診療料の施設基準通知の原文確認をおすすめします。
届出要否
みらい(新人医療事務)
届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
必要です。施設基準に適合しているだけでは足りず、地方厚生局長等への届出が受理されて初めて算定候補になります。届出済みであれば算定候補になりますが、未届出の期間は、実態として要件を満たしていても対象外の可能性があります。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングや、他の点数との関係で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず、悪性腫瘍病理組織標本加算は病理診断料(N006)の内側の加算なので、N006を算定しない月は対象になりません。関連して、病理判断料(N007)との関係にも注意が必要です。
病理診断料と病理判断料は選択関係
N007病理判断料の注2では「区分番号N006に掲げる病理診断料を算定した場合には、算定しない」とされています。悪性腫瘍病理組織標本加算はN006の注加算のため、N007のみを算定する月には対象になりません。
みらい(新人医療事務)
レセプトを書くときに気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
はい。当サイトが収録している一次資料の範囲では、レセプトの摘要欄に検体を摘出した手術の名称を記載することとされています。どの手術の検体かが分かるように記録しておくことが大切です。
記録・レセプト記載の確認ポイント
手術名の記載: 検体を摘出した手術の名称をレセプト摘要欄に記載する 組織標本作製の方法: N000の1(組織切片)またはN002(免疫染色)のどちらで作製したかを記録に残す 原発性かどうかの確認: 対象手術の一覧に照らして原発性悪性腫瘍の手術であることを確認する
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、令和6年度のときと比べてどうなんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト」には、悪性腫瘍病理組織標本加算が「84の8」として掲載されています。
施設基準届出チェックリストの記載(令和8年度)
施設基準届出チェックリストの一覧では、悪性腫瘍病理組織標本加算は「84の8 悪性腫瘍病理組織標本加算」として掲載されています。同じ行にある「80の2」という数字は、チェックリストの凡例(今回届出欄にチェックした場合に添付する様式を示す番号)に基づく様式番号であり、当サイトの一次資料からは前回改定(令和6年度)との整理番号の対応関係は確認できていません。
みらい(新人医療事務)
番号の対応関係はわからないとして、点数や算定要件の中身自体はどうなんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、150点という点数や、注5の算定要件そのものの変更は確認されていません。前回改定(令和6年度)との整理番号の対応関係については、当サイトの一次資料からは確認できていないため、番号面での異同は判断を保留しています。施設基準の細目の改定まですべてを確認できているわけではないため、届出内容を見直す際は最新の告示・通知の原文であらためて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
うちの病院で確認するなら、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと整理しやすいと思います。
自院で確認する順番
- 病理診断料(N006)の組織診断料を算定しているか確認する
- 対象になる手術が、留意事項通知に列挙された原発性悪性腫瘍の手術コードに該当するか確認する
- 検体がN000病理組織標本作製の1またはN002免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製で作製されているか確認する
- 特掲診療料の施設基準に適合しているか、届出書類をそろえて確認する
- 地方厚生局長等への届出が受理された日以降の分から、算定候補として扱う
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
取り漏れやすいポイントを教えてください。
あおい(元・医療事務)
いくつか整理してみます。
取り漏れやすいポイント
細胞診断料への適用の勘違い: 悪性腫瘍病理組織標本加算は組織診断料(1)に対する加算で、細胞診断料(2)には適用されません。 対象手術の確認不足: 原発性悪性腫瘍に対する特定の手術コードに限定されているため、転移性腫瘍や一覧に無い術式の検体は対象外の可能性があります。 作製方法の確認不足: N000の1またはN002で作製した組織標本であることが条件で、それ以外の方法による標本は対象外の可能性があります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
Q. 細胞診断料を算定した場合でも、この加算は上乗せできますか?
あおい(元・医療事務)
A. 当サイトが収録している一次資料の範囲では、悪性腫瘍病理組織標本加算は組織診断料(1)に対する加算とされており、細胞診断料(2)には適用されないと整理されています。
みらい(新人医療事務)
Q. 転移性の腫瘍でもこの加算の対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
A. 留意事項通知では「原発性悪性腫瘍」に対する特定の手術コードが列挙されています。当サイトが収録している範囲では、転移性腫瘍の手術検体がこの一覧に含まれるかどうかは確認できていないため、個別に一次資料と照らして確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
Q. 前回改定(令和6年度)と比べて、対象や点数に変化はありますか?
あおい(元・医療事務)
A. 当サイトが収録している一次資料の範囲では、150点という点数や算定要件そのものの変更は確認されていません。なお、前回改定(令和6年度)との整理番号の対応関係は、当サイトの一次資料からは確認できていません。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や対象手術の該当状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。また、病理診断料まわりの他の加算については、国際標準病理診断管理加算 の記事もあわせてご覧ください。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。