みらい(新人医療事務)
「定位放射線治療呼吸性移動対策加算」って名前が長くて、正直どんな加算なのか一発で分からないです……。うちのクリニックでも算定候補になるか、教えてもらえますか?
あおい(元・医療事務)
大丈夫です、ひとつずつ確認していきましょう。これは定位放射線治療(体幹部にピンポイントで放射線を照射する治療)を行うときに、呼吸で腫瘍が動いてしまう影響を抑える対策をした場合に算定候補になる加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では、区分番号M001-3「直線加速器による放射線治療(一連につき)」の注2に定められています。
みらい(新人医療事務)
「呼吸で腫瘍が動く」って、そんなに問題になるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。肺や肝臓、腎臓は呼吸のたびに数ミリ単位で動きます。定位放射線治療は極小の照射野に線量を集中させる治療なので、腫瘍が動いた分だけ正常組織に当たったり、逆に腫瘍を外してしまうリスクが出てきます。そこで、呼吸による動きを計測・追尾する装置を使って照射範囲の拡大を抑える対策をした場合に、追加の点数が設定されているんです。
どんな患者・治療が対象になるの?
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんって、具体的にはどんな人ですか?
あおい(元・医療事務)
まず土台になるのが、区分番号M001-3「直線加速器による放射線治療」のうち体幹部に対する定位放射線治療です。当サイトが収録している一次資料(留意事項通知)の範囲では、体幹部の定位放射線治療は「原発病巣が直径5センチメートル以下であり転移病巣のない原発性肺癌、原発性肝癌又は原発性腎癌、3個以内で他病巣のない転移性肺癌又は転移性肝癌、転移病巣のない限局性の前立腺癌又は膵癌、直径5センチメートル以下の転移性脊椎腫瘍、5個以内のオリゴ転移及び脊髄動静脈奇形」に対して行った場合にのみ算定するとされています。
みらい(新人医療事務)
その中でも、呼吸性移動対策加算はさらに条件が絞られるんですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。留意事項通知では、この加算でいう呼吸性移動対策とは「呼吸による移動長が10ミリメートルを超える肺がん、肝がん又は腎がんに対し、治療計画時及び毎回の照射時に呼吸運動(量)を計測する装置又は実時間位置画像装置等を用いて、呼吸性移動による照射範囲の拡大を低減する対策」と定義されています。つまり対象疾患は肺がん・肝がん・腎がんに限られ、かつ呼吸による移動が10ミリメートルを超えるケースが前提になります。
みらい(新人医療事務)
頭頸部の定位放射線治療やガンマナイフは対象外ということですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この加算はM001-3「直線加速器による放射線治療」の体幹部治療に付く注2の加算です。区分番号M001-2「ガンマナイフによる定位放射線治療」や、頭頸部に対する定位放射線治療には、この加算の規定は確認できません。自院の治療がどちらに当たるかは、まず区分番号を確認することが出発点になります。
点数はどうなっている?
みらい(新人医療事務)
肝心の点数を教えてください!
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、土台になるM001-3の「定位放射線治療の場合」が63,000点、そこに呼吸性移動対策を行った場合の加算が上乗せされます。加算は方法によって2区分あります。
| 項目 | 点数 | 備考 |
|---|---|---|
| M001-3 直線加速器による放射線治療(定位放射線治療の場合) | 63,000点 | 一連につき |
| 定位放射線治療呼吸性移動対策加算(動体追尾法) | 10,000点 | 所定点数に加算 |
| 定位放射線治療呼吸性移動対策加算(その他) | 5,000点 | 所定点数に加算 |

みらい(新人医療事務)
「動体追尾法」と「その他」、どう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、動体追尾法は「自由呼吸の下で、呼吸運動と腫瘍位置との関係を分析し、呼吸運動に合わせて照射野を移動して照射する方法、又は呼吸運動に合わせて腫瘍の近傍のマーカー等をエックス線透視し、決められた位置を通過する時に照射する方法のいずれかの場合に算定する」とされています。腫瘍の動きにリアルタイムで照射野を追従させる、あるいは透視で腫瘍位置を確認しながら照射するタイプが動体追尾法で、それ以外の呼吸性移動対策が「その他」の区分になります。
みらい(新人医療事務)
マスターコードのようなものもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の施設基準届出関係の資料では、動体追尾法が「180035470」、その他が「180035570」という診療行為コードで整理されています。レセプトコンピュータの設定を確認するときの参考にしてください。
施設基準は何が必要?
みらい(新人医療事務)
施設基準はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
告示では「定位放射線治療について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、呼吸性移動対策を行った場合」に加算するとされています。つまり、①体幹部の定位放射線治療そのものの施設基準に適合していること、②呼吸性移動対策加算独自の施設基準にも適合していること、の両方の届出が前提です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の中身まで具体的に分かりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している疑義解釈では、施設基準に掲げられている「その他の技術者」について「医学物理士等を指す」という回答が示されています。人員配置の細かい要件(常勤医師の人数や経験年数など)まで含めた施設基準の全文は、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できていないため、断定はできません。正確な人員・設備要件は、届出済みの施設基準通知の原文または地方厚生局への確認が必要です。
施設基準は自己判断しない
施設基準の充足可否はAIやこの記事だけで判断できるものではありません。放射線治療の実施体制・人員配置・機器要件は、必ず告示および施設基準通知の原文、または届出済みの内容と照らして確認してください。
届出はどうすればいい?
みらい(新人医療事務)
うちがこの加算を算定したい場合、届出はどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
定位放射線治療呼吸性移動対策加算は届出が必要な加算です。地方厚生局長等へ、施設基準に係る届出書(動体追尾法・その他のいずれかを明記した様式)を提出し、受理されて初めて算定候補になります。既にM001-3の体幹部定位放射線治療の届出をしている医療機関でも、呼吸性移動対策加算は別区分の届出が必要になる点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
「届出さえ出せば安心」というわけではないんですよね?
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出は施設基準を満たしていることの表明であって、その後も基準を満たし続けていることが前提です。人員の異動や機器の更新があった場合は、施設基準を引き続き満たしているか、自院で定期的に確認する運用にしておくと安心です。
算定のタイミング・回数・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定できる回数に制限はありますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、定位放射線治療そのものについて「数か月間の一連の治療過程に複数回の治療を行った場合であっても、所定点数は1回のみ算定する」とされています。呼吸性移動対策加算もこの「一連につき」の枠組みに含まれる加算として整理されており、一連の治療の中で重複して繰り返し算定するものではないと考えられます。
みらい(新人医療事務)
他の加算と一緒に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
併算定の可否は、加算ごとの告示・通知の規定によります。たとえば体幹部以外の放射線治療で使う体外照射用固定器具加算のように、対象となる治療法自体が異なる加算もあります。関連する加算との併算定を検討する場合は、体外照射用固定器具加算のページや告示原文もあわせて確認することをおすすめします。
よくある取り漏れ①
呼吸移動が10ミリメートルを超える肺がん・肝がん・腎がんであっても、治療計画時と毎回の照射時の呼吸運動計測・記録が伴っていないと、呼吸性移動対策の定義を満たさない可能性があります。記録の有無を確認しましょう。
よくある取り漏れ②
M001-2「ガンマナイフによる定位放射線治療」を実施している場合、この加算の対象になるかは当サイトが収録している一次資料の範囲では確認できません。区分番号の取り違えに注意してください。
定位放射線治療呼吸性移動対策加算の変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から何か変わったところはありますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、定位放射線治療呼吸性移動対策加算(動体追尾法10,000点・その他5,000点)について、令和6年度(2024年度)改定から令和8年度(2026年度)改定にかけての点数・算定要件の変更は確認されていません(確認日: 2026年7月)。この加算は令和6年度以前から医科点数表に設けられている加算で、対象疾患(肺がん・肝がん・腎がん)や呼吸移動10ミリメートル超という定義も、当サイトが収録している範囲では同様の内容で整理されています。
みらい(新人医療事務)
「変わっていない」と分かっているだけでも安心できますね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし施設基準の細かい運用や様式が変更されている可能性はゼロではないので、届出前には必ず最新の告示・通知原文を確認してください。
改定差分の確認ポイント
前回改定(令和6年度)→ 今回改定(令和8年度)で、点数・対象疾患の定義に変更は確認されていません。人員要件など施設基準の細部は、届出前に最新の一次資料で個別に確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちはどこから確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
順番に並べてみますね。
自院で確認する順番
- M001-3「直線加速器による放射線治療」の体幹部定位放射線治療を実施しているか確認する
- 対象疾患(肺がん・肝がん・腎がん等)で、呼吸による移動長が10ミリメートルを超えるか確認する
- 動体追尾法か、その他の呼吸性移動対策のいずれかを実際に実施し、計測・記録を行っているか確認する
- 体幹部定位放射線治療と呼吸性移動対策加算、両方の施設基準の届出状況を確認する
- ここまで確認できれば算定候補です。最終判断は自院の届出内容と公式資料で確認してください

よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。順番に答えていきますね。
みらい(新人医療事務)
動体追尾法とその他、点数の差が大きいのはなぜですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、点数差の理由そのものは明記されていません。動体追尾法はリアルタイムで照射野を腫瘍の動きに追従させる、あるいは透視で腫瘍位置を確認しながら照射する方法で、その他の呼吸性移動対策より高度な装置・手技を要する点が背景にあると考えられますが、断定はできません。
みらい(新人医療事務)
呼吸移動が10ミリメートルちょうどの場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知の文言は「10ミリメートルを超える」となっているため、ちょうど10ミリメートルの場合に該当するかどうかは、計測方法や記録の解釈によって変わる可能性があります。判断に迷う場合は、届出先の地方厚生局や審査支払機関に確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
この加算だけ届出して、体幹部定位放射線治療の届出はまだ、ということはできますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注2は「定位放射線治療について……施設基準に適合しているものとして……届け出た保険医療機関において、呼吸性移動対策を行った場合」に加算するという構造になっています。体幹部定位放射線治療の届出が前提になっていると読めますので、両方の届出状況をあわせて確認する必要があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。