みらい(新人医療事務)
「急性期入院対象者入院医学管理料」という名前、初めて見ました。これも診療報酬の管理料の一つですか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度(2026年度)の診療報酬に含まれる管理料の一つです。ただ、いわゆる一般的な診療所や病院が施設基準を届出して算定する加算とは、対象の仕組みがかなり違います。
みらい(新人医療事務)
どう違うんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)に基づいて、国から指定された「指定入院医療機関」に限られています。一般の保険医療機関が通常の届出だけで算定できるものではありません。
この管理料は何のためのものですか
みらい(新人医療事務)
そもそも、どんな場面で使われる管理料なんですか?
あおい(元・医療事務)
資料には、指定入院医療機関が入院対象者ごとに個別の治療プログラムを策定し、多職種チームで連携しながら医療を提供する管理料だと説明されています。原文では次のように書かれています。
この管理料の趣旨(一次資料 原文)
入院対象者入院医学管理料については、多職種チームにより、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号。以下「法」という。)第42条第1項第1号又は第61条第1項第1号の決定により入院している者(以下「入院対象者」という。)ごとに個別の治療プログラムを策定し、各職種が連携を図りながら医療を提供するとともに、入院対象者の治療段階をそれぞれ「急性期」、「回復期」、「社会復帰期」の3期に分け評価することにより、早期退院(概ね18ヶ月以内)を目指すものである、とされています。
みらい(新人医療事務)
治療段階を3つに分けて、それぞれに管理料があるということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。急性期・回復期・社会復帰期のそれぞれに管理料が設定されていて、この記事で扱う「急性期入院対象者入院医学管理料」はそのうちの急性期の段階に対応するものです。回復期については、回復期入院対象者入院医学管理料として別の記事で整理しています。
対象医療機関について
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックや一般の病院は対象になり得ますか?
あおい(元・医療事務)
資料を確認できた範囲では、対象外の可能性が高いです。この管理料は医療観察法上の指定入院医療機関を前提に組み立てられていて、原文でも「当該指定入院医療機関の管理者により」といった表現が繰り返し使われています。一般の保険医療機関向けの施設基準届出の枠組みとは別の制度なので、まずは自院が指定入院医療機関に該当するかどうかから確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
「対象外です」と言い切ってしまってもいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこは断定を避けたいところです。当サイトが確認できた一次資料の範囲では対象外の可能性が高いという整理にとどめて、最終的な該当有無は自院の指定状況で確認してください。
対象患者(入院対象者)の考え方
みらい(新人医療事務)
患者さんの側の対象条件はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
どの治療段階にあるかは、多職種チームによる治療評価会議での評価結果をもとに、最終的に指定入院医療機関の管理者が判断する仕組みです。急性期の対象者については、資料に次のように定義されています。
急性期入院対象者入院医学管理料の対象者(一次資料 原文)
(1) 急性期入院対象者入院医学管理料の入院対象者 医観法施行通知の別紙2「入院処遇ガイドライン」(以下「処遇ガイドライン」という。)に示される、「急性期の到達目標」の各項目を満たした又はそれに準ずる状態であると指定入院医療機関の運営会議において判断されたことがなく、かつ、入院後間もない期間であって、当該医療機関の管理者により、急性期における医療を提供する必要性があると認められた入院対象者であること。
あおい(元・医療事務)
「入院後間もない期間」で「急性期の到達目標を満たしていない、又はそれに準ずる状態」と判断された入院対象者が急性期の対象になる、という整理です。自院で任意に急性期・回復期・社会復帰期を選べるものではなく、運営会議・管理者の判断が前提になっています。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
気になっていた点数について教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度の資料では、届出ている病棟の区分によって、点数が2パターンに分かれています。「医療観察一般病棟入院料」を算定する病棟か、「医療観察地域移行支援病棟入院料」を算定する病棟かで異なります。
| 病棟区分 | 急性期入院対象者入院医学管理料 | 回復期入院対象者入院医学管理料 | 社会復帰期入院対象者入院医学管理料 |
|---|---|---|---|
| 医療観察一般病棟入院料を算定する病棟 | 3,100点 | 1,200点 | 2,200点 |
| 医療観察地域移行支援病棟入院料を算定する病棟 | 2,800点 | 1,000点 | 3,000点 |

みらい(新人医療事務)
病棟の区分によって点数が違うんですね。しかも数字が結構複雑です。いずれも令和8年度改定後の、1日につきの点数ということでいいですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。加えて、この管理料とは別に「医療観察法病棟入院料」という基本部分の入院料が令和8年度から新設されていて、この管理料はその上に積み重なる形になります。
医療観察法病棟入院料(基本部分・令和8年度新設)
(新) 医療観察一般病棟入院料(1日につき) 3,900点 (新) 医療観察地域移行支援病棟入院料(1日につき) 3,500点、と資料に記載されています。
あおい(元・医療事務)
つまり実際の1日あたりの請求は、この基本部分(3,900点または3,500点)に、急性期入院対象者入院医学管理料などの管理料が加わる構造です。管理料単独の点数だけを見て負担の増減を判断しない方がよいと考えられます。
医療観察一般病棟と医療観察地域移行支援病棟の違い
みらい(新人医療事務)
「医療観察一般病棟」と「医療観察地域移行支援病棟」って、何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
資料では、それぞれの役割が次のように説明されています。
病棟区分ごとの位置づけ(一次資料 原文)
医療観察一般病棟入院料を算定する病棟は、入院対象者のうち、主として集中的な治療を要するものに対して医療を提供する病棟であり、症状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進するものである。医療観察地域移行支援病棟入院料を算定する病棟は、入院対象者のうち、主として地域移行支援を要するものに対して医療を提供する病棟であり、社会生活能力の回復と社会参加の準備、退院後の適切な支援体制の確立を図り、社会復帰を促進するものである、とされています。
あおい(元・医療事務)
集中的な治療が中心の病棟か、地域移行に向けた支援が中心の病棟かで区分されていて、それぞれに応じて急性期入院対象者入院医学管理料の点数も変わる、という関係になっています。
施設基準・届出(指定)について
みらい(新人医療事務)
施設基準として確認すべきことは何ですか?
あおい(元・医療事務)
大前提として、自院が医療観察法上の指定入院医療機関であるかどうかです。そのうえで、算定する病棟が医療観察一般病棟入院料と医療観察地域移行支援病棟入院料のどちらの区分で届出されているかによって、算定できる点数が変わります。関連する施設基準として、資料には次のような減算に関する定めもあります。
施設基準を満たさない場合の扱い(一次資料 原文)
急性期入院対象者入院医学管理料に係る施設基準「注2」の「別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たさない場合」とは、次の①及び②の条件の全てを満たさなければ、施設基準を満たさない場合である。①隔離又は身体拘束が行われている状況下で当該医療機関内に設置された行動制限最小化委員会による評価を受けてから7日以内であること。②入院対象者の同意によらない医療行為が行われている状況下で当該医療機関に設置された倫理会議による評価を受けてから7日以内であること、とされています。
みらい(新人医療事務)
行動制限最小化委員会や倫理会議の評価から7日以内かどうかも関わってくるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。隔離・身体拘束や、同意によらない医療行為が行われている状況下では、こうした会議体による評価のタイミングが施設基準の充足に関わってきます。この部分は院内の運用記録を確認しないと判断できないため、要確認としておきたいところです。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するときに気をつけたいポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
まず、算定できる期間には上限があります。資料には次のように明記されています。
算定期間の上限(令和8年度改定後)
急性期入院対象者入院医学管理料、回復期入院対象者入院医学管理料及び社会復帰期入院対象者入院医学管理料を算定した日から起算して、2年を超える期間にあっては、算定しない、とされています。
あおい(元・医療事務)
また、転院した直後の扱いについても定めがあります。他の指定入院医療機関から起算して90日を経過していない場合は、減算しない、とされていますので、転院後まもない入院対象者については、減算の対象にならないケースがあります。
みらい(新人医療事務)
社会復帰期については、何か特別な扱いがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。社会復帰期入院対象者入院医学管理料については、法第49条第1項に基づく退院の許可の申立てを行ってから90日を限度として、1日につき300点を加算する、という規定があります。退院に向けた手続きが具体的に進んでいる入院対象者を評価する仕組みと考えられます。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定と比べて、何が変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の説明資料によると、令和6年度(2024年度)改定時点の点数は、病棟区分の違いに関係なく、急性期6,798点、回復期5,012点、社会復帰期5,926点という単一の体系でした。令和8年度(2026年度)改定では、指定入院医療機関の機能分化を進める観点から評価体系が見直され、病棟区分(医療観察一般病棟入院料・医療観察地域移行支援病棟入院料)ごとに異なる点数が設定される形に変わっています。
改定前後の変化(事実のみ)
令和6年度(2024年度)改定時点: 病棟区分なし。急性期6,798点・回復期5,012点・社会復帰期5,926点という単一体系。 令和8年度(2026年度)改定後: 病棟区分ごとに点数が分かれ、あわせて医療観察法病棟入院料(基本部分・3,900点または3,500点)が新設。算定期間2年の上限や、退院許可申立て後90日を限度とした加算なども新設されています。
あおい(元・医療事務)
改定の趣旨について、資料には次のように書かれています。
改定の趣旨(一次資料 原文)
入院処遇における各治療段階の目標期間を超えている対象者が相当数いる現状等を踏まえ、入院対象者の更なる社会復帰の取組を推進する観点から、指定入院医療機関の機能分化等を図るため、評価体系を見直す、とされています。
あおい(元・医療事務)
点数だけを単純に比較すると管理料部分は下がって見えますが、別枠で医療観察法病棟入院料という基本部分が新設されているため、単純な比較で負担が増えた・減ったと判断できる変更ではありません。両方の点数をあわせて確認することをおすすめします。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院に関係があるかどうか、どういう順番で確認していけばいいですか?
自院で確認する順番
指定の有無を確認する: 自院が医療観察法上の指定入院医療機関であるかを確認します。 病棟区分を確認する: 医療観察一般病棟入院料と医療観察地域移行支援病棟入院料のどちらを算定する病棟として届出しているかを確認します。 治療段階の認定を確認する: 入院対象者ごとに急性期・回復期・社会復帰期のどの段階にあるか、運営会議・管理者による判断が行われているかを確認します。 算定期間・減算規定を確認する: 2年の算定上限や、転院直後の90日ルール、施設基準を満たさない場合の会議体評価のタイミングなど、細かい要件に該当していないかを確認します。

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としやすいポイントはありますか?
取り漏れやすいポイント
病棟区分の混同: 医療観察一般病棟入院料の病棟なのか、医療観察地域移行支援病棟入院料の病棟なのかで点数が異なるため、混同すると点数を誤りやすい点です。 治療段階の混同: 急性期・回復期・社会復帰期はそれぞれ別の管理料として整理されているため、回復期入院対象者入院医学管理料など別の段階の点数を参照してしまわないよう注意が必要です。 基本部分との合算漏れ: 令和8年度からは、この管理料に加えて医療観察法病棟入院料(基本部分)が別途算定される構造になっているため、管理料単独の点数だけで請求額を見積もらないようにする必要があります。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。