みらい(新人医療事務)
先輩、感染症病棟の患者さんの入院費で「特定感染症患者療養環境特別加算」っていう名前を見かけたんですけど、これはどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の区分A220-2ですね。感染症法上、特に注意が必要とされる感染症の患者さんや疑似症患者さんを、個室または陰圧室に入院させる必要性が特に高いと判断した場合に算定候補になる加算です。「特定感染症入院医療管理加算(A209)」とは別の区分なので、混同しないように注意してください。
みらい(新人医療事務)
似たような名前の加算がいくつもあって、正直こんがらがってきました…。
あおい(元・医療事務)
そうですよね。A209は「感染対策そのもの」を評価する加算、A220-2は「個室・陰圧室という療養環境」を評価する加算、とイメージすると整理しやすいです。この記事ではA220-2に絞って、点数・対象疾患・確認すべき記録要件を見ていきましょう。
対象医療機関と対象患者
みらい(新人医療事務)
うちみたいな診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算は入院基本料等加算(A章)の一つで、病院に入院している患者が対象です。当サイトのデータでも、対象医療機関は「病院」、対象は「入院」に限定されており、外来・在宅は対象外です。
みらい(新人医療事務)
病院の中でも、対象になる患者さんの条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示(区分A220-2の注書き)には、次のように記載されています。
基本となる対象患者の要件(告示の注・原文)
「保険医療機関に入院している次に掲げる感染症の患者及びそれらの疑似症患者であって個室又は陰圧室に入院させる必要性が特に高い患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、特定感染症患者療養環境特別加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、必要を認めて個室又は陰圧室に入院させた場合に、個室加算又は陰圧室加算として、それぞれ所定点数に加算する。ただし、疑似症患者については、初日に限り所定点数に加算する。」(対象は感染症法第6条第3項〜第8項に規定する二類・三類・四類・五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症)
みらい(新人医療事務)
つまり、感染症の病名がついているだけでは足りないんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。「個室又は陰圧室に入院させる必要性が特に高い」という医師の判断があり、かつその入院基本料・特定入院料が本加算を算定できる区分であることが前提です。加えて、個室加算と陰圧室加算では対象となる感染症の具体的なリストが別々に定められています。次の点数区分と合わせて見ていきましょう。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年厚生労働省告示第69号(区分A220-2)では、次の2区分(いずれも1日につき)です。
| 区分 | 点数(1日につき) |
|---|---|
| 個室加算 | 300点 |
| 陰圧室加算 | 200点 |

みらい(新人医療事務)
個室と陰圧室、両方の環境が必要な患者さんもいそうですが、その場合はどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
その点は留意事項通知に明記されています。「個室かつ陰圧室である場合には、個室加算及び陰圧室加算を併算定できる。」とされているので、要件を満たしていれば両方が算定候補になります。
対象疾患(個室加算・陰圧室加算で異なる点に注意)
みらい(新人医療事務)
対象になる感染症は、個室加算と陰圧室加算で同じリストなんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、そこが一番間違えやすいポイントです。陰圧室加算の対象疾患は、個室加算よりもかなり絞られたリストになっています。
個室加算の対象疾患(留意事項通知より抜粋)
狂犬病 / 鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く) / エムポックス / 重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る) / 腎症候性出血熱 / ニパウイルス感染症 / ハンタウイルス肺症候群 / ヘンドラウイルス感染症 / インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く) / 麻しん / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 / RSウイルス感染症 / カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症 / 感染性胃腸炎(病原体がノロウイルスであるものに限る) / 急性弛緩性麻痺(急性灰白髄炎を除く。病原体がエンテロウイルスによるものに限る) / 新型コロナウイルス感染症 / 侵襲性髄膜炎菌感染症 / 水痘 / 先天性風しん症候群 / バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 / バンコマイシン耐性腸球菌感染症 / 百日咳 / 風しん / ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 / 無菌性髄膜炎(病原体がパルボウイルスB19によるものに限る) / 薬剤耐性アシネトバクター感染症 / 薬剤耐性緑膿菌感染症 / 流行性耳下腺炎 / 感染症法第6条第3項の二類感染症 / 同条第7項の新型インフルエンザ等感染症 / 同条第8項の指定感染症 / クロストリジオイデス・ディフィシル感染症 / 基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症
これらは令和8年度の留意事項通知に列挙された対象疾患です。完全な原文は一次資料でご確認ください。
陰圧室加算の対象疾患(個室加算より絞られたリスト)
鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く) / 麻しん / 新型コロナウイルス感染症 / 水痘 / 感染症法第6条第3項の二類感染症 / 同条第7項の新型インフルエンザ等感染症 / 同条第8項の指定感染症
みらい(新人医療事務)
個室加算の方はかなり長いリストですね。MRSAやCREみたいな薬剤耐性菌も入っていますが、これは保菌しているだけでも対象になるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは注意が必要です。留意事項通知には、MRSA・CRE・VRSA・VRE・PRSP・薬剤耐性アシネトバクター感染症・薬剤耐性緑膿菌感染症・クロストリジオイデス・ディフィシル感染症・基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症について、「症状や所見から当該感染症が疑われ、分離・同定による当該細菌の検出及び薬剤耐性の確認を行い当該感染症と診断した場合に対象となり、単なる保菌者は対象とならない。」と明記されています。検査での確認前の「保菌の疑い」段階では対象外になる可能性がある、ということですね。
施設基準・届出、そして記録要件
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトのデータでは、この加算は施設基準の届出が求められていない区分として整理されています。ただし、「届出不要」であっても、記録や摘要欄記載などの運用上の要件はあるので、その点は別に確認しておく必要があります。
届出不要でも確認しておきたい運用要件
個室加算・陰圧室加算のいずれも、個室管理・陰圧室管理を必要とした原因の感染症名を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められています。また、陰圧室加算を算定する場合、結核患者等を収容している日は、病室及び特定区域の陰圧状態を煙管(代用可)または差圧計等で点検し、記録をつける必要があります。差圧計を使う場合は、動作確認・点検を定期的に実施することも求められています。
みらい(新人医療事務)
個室に入院してもらう場合、差額ベッド代のような特別料金は別途もらえるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは明確にNGです。留意事項通知には「当該加算を算定する場合、当該患者の管理に係る個室が特別の療養環境の提供に係る病室であっても差し支えないが、患者から特別の料金の徴収を行うことはできない。」とあります。つまり、この加算を算定する個室では特別の料金(差額ベッド代)を別途徴収することはできない、という整理です。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
疑似症患者さんの場合、いつまで算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
疑似症患者については「初日に限り所定点数に加算する」とされています。継続的に算定できるわけではない点に注意してください。
併算定・排他関係の注意
留意事項通知には「個室加算は、HIV感染者療養環境特別加算、重症者等療養環境特別加算、小児療養環…」で始まる記載があり、個室加算は他の療養環境特別加算等と原則として併算定できないと整理されています(原文の続きは一次資料でご確認ください)。また、区分A220-3(特定薬剤治療環境特別加算)側の留意事項には「特定薬剤治療環境特別加算は、HIV感染者療養環境特別加算、特定感染症患者療養環境特別加算、重症者等療養環境特別加算、小児療養環境特別加算及び無菌治療室管理加算と併せて算定できない。」と明記されており、本加算(特定感染症患者療養環境特別加算)と特定薬剤治療環境特別加算は併算定できないことが確認できます。
みらい(新人医療事務)
個室加算と陰圧室加算はどちらも同時に算定候補になる、という理解で合っていますか?
あおい(元・医療事務)
はい。すでに触れたとおり「個室かつ陰圧室である場合には、個室加算及び陰圧室加算を併算定できる。」と明記されているので、要件を満たせば両方が算定候補になります。ただし他の療養環境特別加算等との関係は上記の注意のとおりなので、自院の算定状況を突き合わせて確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
個室加算の対象疾患リストには、エムポックスや新型コロナウイルス感染症のように、比較的新しく指定された感染症も含まれています。ただ、当サイトが参照している一次資料(令和8年度の告示・留意事項通知)の範囲では、令和6年度からの点数・対象疾患・記録要件の変更点を直接比較できる「個別改定項目について」等の差分資料までは確認できていません(確認日: 2026年7月)。
みらい(新人医療事務)
つまり、変わったかどうかはまだ分からない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい、正確に言うとそうなります。前回改定(令和6年度)との比較が必要な場合は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページで、個別改定項目の資料を直接確認することをおすすめします。当サイトでも確認でき次第、この記事に反映します。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
自院でこの加算が算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
だいたいこの順番で見ていくとスムーズです。
自院で確認する順番
- 入院患者が個室加算・陰圧室加算それぞれの対象疾患リストに該当する感染症・疑似症患者かを確認する
- 医師が「個室又は陰圧室に入院させる必要性が特に高い」と判断しているかをカルテで確認する
- 現に算定している入院基本料・特定入院料が本加算を算定できる区分かを確認する
- MRSA・CRE等の薬剤耐性菌については、分離・同定検査での確認済みか(単なる保菌者でないか)を確認する
- 診療報酬明細書の摘要欄に、個室・陰圧室管理を必要とした感染症名を記載する
- 陰圧室加算を算定する場合は、陰圧状態の点検・記録(結核患者等収容日)を行っているかを確認する
- HIV感染者療養環境特別加算等の他の療養環境特別加算・特定薬剤治療環境特別加算との重複がないかを確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でありがちな取り漏れって、どんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
よく聞くのはこのあたりです。
取り漏れが起きやすいポイント
陰圧室加算の対象疾患の思い込み: 個室加算の対象疾患リストがかなり長いため、陰圧室加算も同じリストだと思い込んでしまうケースです。陰圧室加算は感染症法上の二類感染症・新型インフルエンザ等感染症・指定感染症のほか、鳥インフルエンザ・麻しん・新型コロナウイルス感染症・水痘に限られています。
保菌者との混同: MRSA・CRE等について、検査確認前の保菌の疑いだけで個室加算の対象と判断してしまうケースです。
摘要欄の記載漏れ: 個室・陰圧室管理を必要とした感染症名の記載を忘れると、算定要件を満たしていても審査で疑義が生じることがあります。
陰圧室の点検記録の未整備: 結核患者等を収容している日の陰圧状態の点検・記録が抜けているケースです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をまとめてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
いいですね。順番に答えていきます。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトのデータでは、この加算固有の施設基準届出は求められていない区分として整理されています。ただし、摘要欄記載や陰圧室の点検記録など、届出とは別の運用要件があるので、そこは自院で確認してください。
みらい(新人医療事務)
個室加算と陰圧室加算を同じ患者さんで両方算定候補にできますか?
あおい(元・医療事務)
はい。「個室かつ陰圧室である場合には、個室加算及び陰圧室加算を併算定できる。」と留意事項通知に明記されています。ただし、それぞれの対象疾患リストを満たしているかは別々に確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
疑似症患者でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
はい、疑似症患者も対象に含まれていますが、初日に限り所定点数に加算する、という取り扱いです。継続的な算定にはならない点に注意してください。
みらい(新人医療事務)
前回改定(令和6年度)から点数は変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが確認できている一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)時点との点数比較資料までは確認できていません。正確な比較が必要な場合は、厚生労働省の公式資料で確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する感染対策系の加算として、特定感染症入院医療管理加算やHIV感染者療養環境特別加算もあわせて確認しておくと理解が深まります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。