みらい(新人医療事務)
あおいさん、うちの病院、精神科病棟があるんですけど「精神科地域移行実施加算」ってどんな加算なんですか?名前だけ聞いたことがあります。
あおい(元・医療事務)
精神科地域移行実施加算(区分A230-2)ですね。入院が長期化しやすい精神病棟の患者さんに対して、退院に向けた調整を計画的に進めている病院を評価する入院基本料等加算です。令和8年度(2026年度)の医科点数表では20点(1日につき)が設定されています。
みらい(新人医療事務)
「地域移行」って、具体的にはどういう取り組みのことなんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の告示では、精神病棟における入院期間が5年を超える患者さんに対して退院調整を実施し、計画的に地域への移行を進めた場合の加算、と定義されています。長期入院になりがちな患者さんの退院支援を、病院側の体制として評価する加算です。
どんな医療機関・患者が対象ですか?
みらい(新人医療事務)
これって、うちみたいな精神科病棟のある病院なら誰でも対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象は精神病棟に入院している患者さんに限られます。診療所や、精神病棟を持たない病院は対象外の可能性が高いです。外来や在宅診療の患者さんも対象には含まれません。
みらい(新人医療事務)
精神病棟に入院していれば、みんな対象になるということですか?
あおい(元・医療事務)
そこは限定があります。告示の注では「第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む)又は第3節の特定入院料のうち、精神科地域移行実施加算を算定できるものを現に算定している患者に限る」とされています。つまり、そもそも算定できる入院料の区分にいる患者さんが対象で、すべての精神科入院患者が自動的に対象になるわけではありません。ここは自院のレセプト担当と一緒に確認が必要です。
点数はいくらですか?

みらい(新人医療事務)
点数のところ、テーブルで整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
はい、令和8年度(2026年度)の医科点数表に基づく内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区分番号 | A230-2 |
| 加算名 | 精神科地域移行実施加算 |
| 点数 | 20点 |
| 算定単位 | 1日につき |
| 対象年度 | 令和8年度(2026年度) |
| 届出 | 必要 |
みらい(新人医療事務)
1日20点ということは、入院期間が長い患者さんほど積み重なっていくイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。ただし、加算できるのは施設基準を満たして届け出た病院で、かつ対象となる入院料を算定している患者さんに限られます。届出前の期間には遡って加算できませんので、その点は確認が必要です。
施設基準はどうなっていますか?
みらい(新人医療事務)
施設基準、詳しく知りたいです。何を満たせば届出できるんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の取扱いを定めた通知には、次のように書かれています。
施設基準の実績要件(原文)
「精神科地域移行実施加算は、精神障害者の地域移行支援に係る取組を計画的に進めることにより、当該保険医療機関における入院期間5年を超える入院患者のうち、1年間に5%以上の患者(退院後3月以内に再入院した患者を除く。)が退院した実績がある場合に、1年間算定する。」
みらい(新人医療事務)
「5%以上の患者が退院した実績」って、具体的にはどう数えるんですか?
あおい(元・医療事務)
分母は「入院期間5年を超える入院患者」です。そのうち直近1年間で退院した患者の割合が5%以上あることが実績として求められます。ただし、退院後3か月以内に再入院した患者さんは、この退院実績からは除かれます。つまり、退院してすぐ舞い戻ってしまったケースは実績にカウントされない、という条件です。
みらい(新人医療事務)
なるほど、単に退院させればいいわけじゃなく「地域に定着した退院」であることが前提なんですね。
あおい(元・医療事務)
そういう理解でよいと思います。そのうえで、告示の注にある算定要件も合わせて必要です。
算定要件(原文・告示の注)
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、精神病棟における入院期間が5年を超える患者に対して、退院調整を実施し、計画的に地域への移行を進めた場合に、当該保険医療機関の精神病棟に入院した患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を含む。)又は第3節の特定入院料のうち、精神科地域移行実施加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
実績要件と算定要件、2つセットで確認しないといけないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。実績(5%以上の退院率)と、対象患者の限定(算定できる入院料区分にいること)の両方を満たしているかどうかは、自院のレセプト担当や地方厚生局への確認が必要です。
届出は必要ですか?
みらい(新人医療事務)
届出は必ず出さないといけないんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、施設基準を満たしたうえで地方厚生局長等への届出が必要です。届出をしていない状態では、施設基準を満たしていても算定候補にはなりません。届出済みであれば算定候補になりますが、届出のタイミングや様式については自院の状況と公式資料をあわせて確認してください。
届出前の期間は注意
届出が受理される前の入院分については、施設基準を満たしていても加算の対象にならない可能性があります。届出時期は必ず地方厚生局への確認が必要です。
算定のタイミングや注意点はありますか?
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングとか、他の加算と一緒に取れるかどうかも気になります。
あおい(元・医療事務)
算定期間について、施設基準の実績が認められると「1年間算定する」という扱いになっています。つまり、実績確認のたびに単発で算定できるわけではなく、一定期間まとめて算定する仕組みです。実績の見直しタイミングや、更新の要否については地方厚生局への確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
併算定については何かルールがありますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注では対象患者を「精神科地域移行実施加算を算定できるものを現に算定している患者に限る」としていますが、他の退院支援関連の加算との組み合わせ可否まではこの原文だけでは確認できません。併算定の可否は、自院の届出内容と最新の疑義解釈・公式資料で個別に確認が必要です。
断定はできません
この記事の内容は令和8年度(2026年度)の告示・施設基準通知に基づく整理です。自院が実際に算定できるかどうかは、施設基準の充足状況・届出状況・患者ごとの算定区分によって異なるため、算定候補として捉え、最終判断は自院と公式資料でご確認ください。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)から、何か変わったところはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度(2026年度)の一次資料(告示・施設基準に関する取扱い通知)の範囲では、前回改定(令和6年度)からの点数・施設基準の記載に変更は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚生労働省公表の令和8年度診療報酬改定資料ベース)。20点(1日につき)という点数、入院期間5年超の患者のうち1年間に5%以上が退院した実績(退院後3か月以内の再入院者を除く)という施設基準の考え方は、令和8年度(2026年度)改定後もそのまま維持されています。
みらい(新人医療事務)
点数も要件も変わっていないなら、既に届出している病院はそのままでよさそうですね。
あおい(元・医療事務)
そう考えてよさそうですが、実績要件(5%以上の退院率)は毎年の実績を満たし続ける必要がある仕組みなので、点数や条文が変わっていなくても、自院の直近1年の退院実績は改めて確認しておくと安心です。
自院で確認する順番

みらい(新人医療事務)
順番に確認したいので、チェックする流れを教えてください。
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認していくとわかりやすいと思います。
自院で確認する順番
- 精神病棟があり、入院期間が5年を超える患者がいるかを確認する
- その患者に対して退院調整を計画的に実施しているかを確認する
- 直近1年間で、入院期間5年超の患者のうち5%以上が退院した実績があるかを確認する(退院後3か月以内に再入院した患者は実績から除く)
- 施設基準の届出を地方厚生局に提出しているかを確認する
- ここまで満たしていれば算定候補、いずれか未確認なら要確認として扱う
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある勘違いとか、見落としってありますか?
あおい(元・医療事務)
よくあるのが、名前の似ている別の加算との混同です。
名称が似た別の加算に注意
診療報酬には名称の似た加算が複数存在することがあります。自院が確認したいのがどの加算なのか、名称だけで判断せず区分番号(A230-2)まで確認することをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
名前だけ見て「これのことかな」って思い込むのは危ないですね。
あおい(元・医療事務)
もう一つよくあるのが、退院実績のカウント方法です。退院させた患者数だけを見て「5%は超えている」と判断してしまい、退院後3か月以内に再入院した患者を除く、という条件を見落とすケースです。
退院実績の集計は除外条件まで確認
5%以上という実績要件は、退院後3か月以内に再入院した患者を除いた人数で計算する必要があります。単純な退院件数だけで集計すると、実際の実績要件を満たしていないのに「満たしている」と誤認するおそれがあります。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
精神病棟がない病院や、診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象は精神病棟に入院している患者さんに限られるため、精神病棟を持たない病院や診療所は対象外の可能性が高いです。まず自院に精神病棟があるかどうかから確認してみてください。
みらい(新人医療事務)
退院実績が去年は5%を超えていたけど、今年はまだ集計できていない場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
実績の集計や更新の要否については、地方厚生局への確認が必要です。実績要件は継続的に満たす前提の仕組みなので、直近の実績を都度確認しておくことをおすすめします。
みらい(新人医療事務)
令和6年度から令和8年度の改定で、点数や施設基準は変わりましたか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している令和8年度(2026年度)の一次資料の範囲では、前回改定(令和6年度)からの変更は確認されていません。20点・5%以上の退院実績という基本的な枠組みは維持されています。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神科入退院支援加算 や 精神科地域密着多機能体制加算 も同じ精神科領域の加算として合わせて確認しておくと、届出や体制の確認漏れを見つけやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。