みらい(新人医療事務)
「精神科慢性身体合併症管理加算」という名前を初めて聞きました。精神科の加算なのに「身体合併症」ってどういうことなんですか?
あおい(元・医療事務)
いい質問ですね。これは精神病床に入院している患者さんが、糖尿病などの身体の病気(身体合併症)も抱えているときに、精神科の医師と内科の医師が協力して計画的に治療を行った場合を評価する加算です。区分番号はA230-5で、令和8年度(2026年度)診療報酬改定で新設された加算になります。
みらい(新人医療事務)
新設ということは、今回の改定で初めて出てきた加算なんですね。点数はどれくらいですか?
あおい(元・医療事務)
700点です。1月に1回に限り、所定点数に加算できます。まずは基本情報を整理しますね。
対象医療機関・対象患者
みらい(新人医療事務)
うちのクリニックでも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象は病院に限られます。診療所(クリニック)は対象外で、外来ではなく入院患者が対象です。具体的には、精神科を標榜する病院で、精神病床に入院している身体合併症を有する精神疾患患者が対象になります。留意事項通知には次のように記載されています。
制度の趣旨(留意事項通知より)
精神科慢性身体合併症管理加算は、精神科を標榜する保険医療機関であって、精神科以外の診療科の医療提供体制を有する病棟又は当該体制との連携が取られている病棟において、精神病床に入院している身体合併症を有する精神疾患患者に対して、精神疾患及び身体疾患のいずれもについて精神科を担当する医師と内科を担当する医師が協力し、治療が計画的に提供されることを評価したものである。
みらい(新人医療事務)
なるほど、精神科と内科の連携がポイントなんですね。
点数・コード
あおい(元・医療事務)
点数はこの表のとおりです。
| 区分番号 | 名称 | 点数 | 算定回数 |
|---|---|---|---|
| A230-5 | 精神科慢性身体合併症管理加算 | 700点 | 1月に1回 |
みらい(新人医療事務)
似た名前の「精神科身体合併症管理加算」というのもある気がします。別物ですか?
あおい(元・医療事務)
はい、区分番号A230-3の精神科身体合併症管理加算とは別の加算です。対象にしている疾患の性質や算定できる期間が違います。比較すると分かりやすいと思います。
| 項目 | A230-3 精神科身体合併症管理加算 | A230-5 精神科慢性身体合併症管理加算 |
|---|---|---|
| 想定する病状 | 急性の身体合併症(厚生労働大臣が定める身体合併症) | 糖尿病または特定疾患療養管理料の対象疾患(胃炎・十二指腸炎を除く)など慢性疾患 |
| 算定期間 | 治療開始日から15日を限度(同一月内は20日間まで) | 1月に1回 |
| 併算定 | 精神科慢性身体合併症管理加算とは同時算定不可 | 精神科身体合併症管理加算とは同時算定不可 |
みらい(新人医療事務)
同時に算定できないんですね、混同しないよう気をつけないと。
施設基準
あおい(元・医療事務)
施設基準は「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号)に定められています。ポイントは5つです。まず、精神科を標榜する病院の精神病棟であって、当該病棟に内科の医師が1名以上配置されていることが必要です。次に、算定する病棟が特定の入院料を算定していることが条件になります。具体的には、精神病棟入院基本料(10対1、13対1、15対1に限る)、特定機能病院入院基本料(精神病棟である7対1、10対1、13対1、15対1に限る)、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料のいずれかを算定している病棟であることが求められます。
みらい(新人医療事務)
病棟の種類までしっかり決まっているんですね。他にも条件はありますか?
あおい(元・医療事務)
あと3つあります。必要に応じて患者の受入れが可能な精神科以外の診療科を有する医療提供体制との連携(他の保険医療機関を含む)が確保されていること、当該保険医療機関で一般血液検査が常時行える体制を有していること、そして糖尿病患者について眼科・歯科等への紹介を行う体制を有していることです。
施設基準チェック(保医発0305第7号より要約)
| No | 施設基準の項目 |
|---|---|
| 1 | 精神病棟に内科医師1名以上配置 |
| 2 | 指定の入院基本料・入院料を算定する病棟であること |
| 3 | 精神科以外の診療科との連携体制(他院含む)確保 |
| 4 | 一般血液検査が常時行える体制 |
| 5 | 糖尿病患者の眼科・歯科等への紹介体制 |
届出要否
みらい(新人医療事務)
この加算も届出が必要なんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい、必要です。精神科慢性身体合併症管理加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式32の2を用いて地方厚生局長等に届け出ることになっています。届出済みであれば算定候補になりますが、届出をしていない段階では算定できませんので、まずは届出状況を確認してください。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
何点かあります。まず、糖尿病または特定疾患療養管理料の対象疾患(胃炎及び十二指腸炎を除く)に対して内科を担当する医師の診察が行われた場合に、1月に1回を限度に算定候補になります。ただし、その内科担当医師が同一の保険医療機関で、1回以上「I001」入院精神療法または「I002」通院・在宅精神療法を行った場合は、この加算は別に算定できません。
併算定・回数制限の注意
区分番号A230-3に掲げる精神科身体合併症管理加算は別に算定できません(告示)。また、内科担当医師が同一保険医療機関でI001入院精神療法またはI002通院・在宅精神療法を行った場合も、この加算は別に算定できないとされています。算定前に、対象患者・算定回数・併算定関係のすべてを確認してください。
みらい(新人医療事務)
検査や指導についても決まりがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。算定する場合は、ガイドライン等に基づき、医学的必要性に応じて血液検査等の検査を実施して身体合併症の病状を把握しながら、適切な診療を実施することとされています。また、精神科の医師と協力して、患者に対して食事・運動療法等に関する必要な指導を行うことも求められています。糖尿病の患者については、必要に応じて眼科・歯科等への紹介を行うこととされています。

令和8年度改定での変更点(新設加算)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の改定にはなかったんですよね?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。精神科慢性身体合併症管理加算は、令和8年度診療報酬改定で新設された加算です。厚生労働省が公表した「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト」でも、基本診療料の新設項目として精神科慢性身体合併症管理加算が挙げられています。前回改定(令和6年度)の時点では、この区分番号A230-5という加算そのものが存在していませんでした。
みらい(新人医療事務)
つまり令和6年度までは、慢性疾患を対象にしたこの加算では算定できなかったということですね。
あおい(元・医療事務)
そういうことになります。令和8年度改定より前は、身体合併症関連の加算としては精神科身体合併症管理加算(区分番号A230-3、急性期の身体合併症を対象・15日を限度)のみが存在していました。今回の改定で、糖尿病などの慢性疾患を対象にした精神科慢性身体合併症管理加算が新たに設けられ、月1回・700点という形で評価されるようになった、という位置づけです。今回確認した一次資料の範囲では、新設という事実以上の評価(負担軽減・負担増など)を厚生労働省が明示している記載は見当たりませんでしたので、ここでは新設の事実のみをお伝えします。
自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 自院が精神科を標榜する病院かどうかを確認する
- 該当する病棟が対象となる入院基本料・入院料(精神病棟入院基本料10対1・13対1・15対1、特定機能病院入院基本料の精神病棟該当区分、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料のいずれか)を算定しているか確認する
- 当該病棟に内科の医師が1名以上配置されているか確認する
- 一般血液検査が常時行える体制、糖尿病患者への眼科・歯科等紹介体制が整っているかを確認する
- 様式32の2で地方厚生局長等への届出状況を確認する
- 対象患者(糖尿病または特定疾患療養管理料の対象疾患、胃炎・十二指腸炎を除く)に該当するか、A230-3やI001・I002との併算定関係を確認する
よくある取り漏れ
取り漏れが起きやすいポイント
- A230-3(精神科身体合併症管理加算)と混同し、急性期の身体合併症以外は算定できないと誤解してしまうケース
- 内科担当医師が同月にI001入院精神療法またはI002通院・在宅精神療法を行っている場合の算定除外を見落とすケース
- 対象疾患が「糖尿病または特定疾患療養管理料の対象疾患(胃炎及び十二指腸炎を除く)」に限定されている点を確認せずに算定候補と判断してしまうケース
みらい(新人医療事務)
どれも一次資料をよく見ないと分からない内容ですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。マスターの名称や点数だけを見て「対象になりそうだ」と判断せず、留意事項通知の条文を必ず確認することをおすすめします。

よくある質問
みらい(新人医療事務)
診療所でも算定できる可能性はありますか?
あおい(元・医療事務)
精神科慢性身体合併症管理加算は入院基本料等加算(A章)の一つで、病院に入院している患者が対象です。診療所は対象外になります。
みらい(新人医療事務)
精神科身体合併症管理加算(A230-3)と両方の届出をしていれば、同じ月に両方算定できますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、告示では、精神科慢性身体合併症管理加算を算定する場合、区分番号A230-3に掲げる精神科身体合併症管理加算は別に算定できないとされています。どちらか一方の算定になりますので、対象となる病状や算定期間を踏まえて確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
前回の改定(令和6年度)のときに、似たような加算はありましたか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)の時点では、区分番号A230-5は存在していませんでした。当時、身体合併症に関する加算としては精神科身体合併症管理加算(A230-3、急性期の身体合併症を対象・15日を限度)のみが設けられていました。令和8年度改定で、慢性疾患を対象にした精神科慢性身体合併症管理加算が新設されています。
みらい(新人医療事務)
内科の医師は非常勤でも配置していることになりますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の条文は「当該病棟に内科の医師が1名以上配置されていること」とされていますが、常勤・非常勤の区分など詳細な運用は自院の届出内容や地方厚生局への確認が必要な部分です。この記事では確認できる一次資料の範囲でお伝えしていますので、具体的な配置形態については公式資料や届出窓口でご確認ください。
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事は、以下の厚生労働省の公式資料をもとに整理しています。届出手続きの詳細や施設基準の充足状況は、必ず一次資料で確認してください。
参考資料(厚生労働省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号、点数区分) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号、算定要件)
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第7号、施設基準・届出様式)
- 令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト(新設項目の確認) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697773.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や病棟の種類、内科医師の配置状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神科身体合併症管理加算 や 精神科リエゾンチーム加算 と合わせて確認しておくと、精神病棟の加算体制を見落としにくくなります。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の診療報酬に基づいた解説です。最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。