みらい(新人医療事務)
「精神科地域密着多機能体制加算」という名前を初めて見たんですが、どんな加算なんですか? うちの病院でも関係あるか気になります。
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)改定で新設された、精神科の入院基本料等加算のひとつです。区分番号は「A255」ですよ。精神病床を持つ小規模な医療機関や、病床数を削減する取り組みを行っている保険医療機関が、多職種の配置による質の高い入院医療と、地域定着に向けた外来医療・障害福祉サービス等の提供を一体的に行う体制を評価するものです。
みらい(新人医療事務)
「多機能体制」というくらいだから、入院だけじゃなくて地域とのつながりも見られるんですね。うちは診療所なんですけど、対象になりますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、この加算は入院基本料等加算(A章)に位置づけられていて、精神科を標榜する「病院」に入院している患者が対象です。診療所や外来だけの医療機関は対象外になります。まずはそこが最初の分かれ目ですね。
精神科地域密着多機能体制加算とは
みらい(新人医療事務)
あらためて、どういう患者さんに対して算定するものなんですか?
あおい(元・医療事務)
対象は、精神科を標榜する保険医療機関に入院している患者のうち、入院基本料(特別入院基本料等を除く)または特定入院料のうち、この加算を算定できるものを現に算定している患者です。告示の注にはこう書かれています。
告示の算定要件(原文)
注: 精神科を標榜する保険医療機関であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、精神科地域密着多機能体制加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、当該基準に係る区分に従い、それぞれ所定点数に加算する。
みらい(新人医療事務)
「現に算定している患者に限る」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。この加算だけを単独で算定するのではなく、対象となる入院基本料・特定入院料を算定している患者にのみ上乗せされる加算、という位置づけです。自院がどの入院料を算定しているかで、そもそも対象になり得るかどうかが決まります。
点数区分(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
区分1・2・3の3段階があり、1日につき算定します。区分によって点数も施設基準の厳しさもかなり違います。
| 区分 | 点数(1日につき) | 施設基準のおおまかな傾向 |
|---|---|---|
| 精神科地域密着多機能体制加算1 | 800点 | 病床規模が最も小さい区分向け |
| 精神科地域密着多機能体制加算2 | 250点 | 中規模の病床数・在院日数要件 |
| 精神科地域密着多機能体制加算3 | 50点 | 病床規模がより大きい区分向け |

みらい(新人医療事務)
点数の差がかなり大きいですね。区分が上がるほど点数が下がる、という理解でいいんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
はい、区分1が最も高く、区分3が最も低い点数です。ただ点数の高さと施設基準の厳しさは表裏一体で、区分1は精神病床数が少なく在院日数が短いなど、より地域密着型の体制を求められます。
施設基準(共通の要件・通則)
みらい(新人医療事務)
施設基準はどこから確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
まず区分1・2・3のすべてに共通する「通則」があります。厚生労働省の施設基準通知(保医発0305第7号)に定められている主な項目を挙げますね。
通則(区分共通)の主な要件
許可病床数: 当該保険医療機関における許可病床数が350床以下であること。 精神病床の割合: 当該保険医療機関における許可病床数に占める精神病床の割合が、6割5分以上であること。 精神保健指定医: 当該保険医療機関に常勤の精神保健指定医が2名以上配置されていること。 指定医の実績要件: 常勤の精神保健指定医のうち2名以上が、都道府県の措置診察等への協力や保健所の精神科嘱託医などの実績要件のいずれかを満たすこと。 救急対応の実績: 精神科救急医療確保事業での常時対応型・病院群輪番型の指定、または一定件数以上の時間外・休日対応実績のいずれかを満たすこと。 入退院支援加算の届出: 「A246-2」精神科入退院支援加算に係る届出を行っている保険医療機関であること。 療養生活継続支援加算の実績: 「I002」注8の療養生活継続支援加算を過去3か月間で月平均3回以上算定していること。 近隣新規開設の制限: 開設者が令和8年4月1日以降、半径10キロメートル以内に別の精神病床を有する病院を新たに開設していない等の要件。
みらい(新人医療事務)
これだけでもかなりの数ですね……。この上に区分ごとの基準が追加されるんですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。通則をすべて満たしたうえで、区分1・2・3それぞれの追加基準を満たす必要があります。
加算1・2・3で何が変わるのか
みらい(新人医療事務)
区分ごとの違いを教えてください。
あおい(元・医療事務)
大きな違いは「精神病床の許可病床数」「平均在院日数」「病床削減の実績」「多職種の配置人数」です。原文を要約すると次のようになります。
精神科地域密着多機能体制加算1の主な追加基準
病床規模: 精神病床の許可病床数が100床以下であること。 平均在院日数: 精神病床の入院患者の平均在院日数が150日以内であること。 病棟割合の上限: 精神療養病棟入院料または認知症治療病棟入院料を算定する病床数の割合が3割以下であること。 在宅移行の実績: 令和8年1月1日以降に新たに入院となった患者のうち6割以上が、入院日から6か月以内に自宅等へ退院していること。 多職種配置: 常勤の精神保健福祉士2名以上、常勤の作業療法士1名以上、常勤の公認心理師1名以上の配置。
精神科地域密着多機能体制加算2・3の主な追加基準(要旨)
加算2: 平均在院日数150日以内。精神病床の許可病床数が101床以上150床以下、または151床以上250床以下で病床数を計画的に削減している実績(届出前後の許可病床数を入院料算定患者数等で除した値が0.95以下等)を満たすこと。 加算3: 平均在院日数250日以内。精神病床の許可病床数が250床以下で、病床削減の実績(届出前月末時点の値が0.97以下であること〈初回〉、届出から1年経過するごとの継続監査では0.95以下であること〈継続〉)を満たすこと。常勤の精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師が合計2名以上配置されていること。
みらい(新人医療事務)
病床を減らす取り組みをしている病院ほど、算定しやすい設計になっているんですね。
あおい(元・医療事務)
そう読めますね。ただし数値要件が細かく、按分の計算式も含まれるので、この記事だけで自院が該当するかを判断せず、施設基準通知の原文と自院のデータを照合することが欠かせません。
届出の確認
みらい(新人医療事務)
届出はどうすればいいんですか?
あおい(元・医療事務)
精神科地域密着多機能体制加算の施設基準に係る届出は、別添7の様式40の20を用いることになっています。地方厚生(支)局長等への届出が必要で、届出済みでなければ、たとえ体制が整っていても算定候補にはなりません。
届出前提の加算です
体制が整っていても、届出が受理されるまでは算定できません。「届出済みであれば候補になる」加算であって、体制要件を満たしただけでは算定候補とは言えない点に注意してください。
算定タイミングの注意点
みらい(新人医療事務)
算定のタイミングで気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
前提として、この加算は入院基本料(特別入院基本料等を除く)または特定入院料のうち、この加算を算定できるものを現に算定している患者にしか上乗せできません。自院がどの入院料を算定しているかを、まず確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
病床の状況が変わったときはどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
病床数や平均在院日数、多職種の配置人数などは、届出後も継続して要件を満たしている必要があります。年度途中で許可病床数が変わったり、常勤職員が退職したりすると、基準を満たさなくなる可能性がある点も確認が必要です。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算は令和6年度のときからあったんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、精神科地域密着多機能体制加算は令和8年度診療報酬改定で新設された加算です。厚生労働省の施設基準届出チェックリストでも「令和8年6月1日 基本診療料 新設」として、加算1・2・3すべてが新設項目として掲載されています。前回改定(令和6年度)には存在しなかった加算なので、既存の届出内容と混同しないよう注意してください。
新設の時系列
令和8年度(2026年度)改定: 精神科地域密着多機能体制加算1・2・3が新設(適用開始は令和8年6月1日)。 令和6年度(2024年度)以前: 当サイトが収集している一次資料の範囲では、同名の加算は確認されていません。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多いので、確認する順番を整理してほしいです。
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
自院が精神科を標榜する病院であり、対象となる入院基本料または特定入院料を算定しているか確認する。 通則(許可病床数350床以下、精神病床割合6割5分以上、精神保健指定医2名以上等)を満たしているか確認する。 自院の精神病床数・平均在院日数・多職種の配置人数から、区分1・2・3のどれに該当し得るかを整理する。 病床削減の実績や在宅移行の実績など、区分固有の数値要件を自院のデータで計算する。 様式40の20(別添7)による届出の準備状況を確認する。

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としがちなポイントはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
取り漏れやすいポイント
入院料の対象外: 対象となる入院基本料・特定入院料を算定していない患者には、そもそも上乗せできません。 医療観察法病床の扱い: 通則の病床数要件(350床以下・精神病床割合6割5分以上)では医療観察法病床を含めますが、区分1・2・3の精神病床数要件では医療観察法病床を含めない、という取り扱いの違いがあります。 常勤の定義: 精神保健指定医などの「常勤」は、週4日以上の勤務かつ所定労働時間が週31時間以上であることが目安とされています(育児・介護休業法に基づく時短勤務の場合は週30時間以上)。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
疑義解釈で気になる質問があったので聞いてもいいですか?「障害福祉サービス事業所等」の「等」って何が含まれるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の疑義解釈(令和8年4月1日事務連絡)によると、相談支援事業所および地域活動支援センターが含まれるとされています。
みらい(新人医療事務)
医療観察法の病床がある病院だと、病床数のカウントはどうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
同じ疑義解釈で整理されていて、通則の「許可病床数350床以下」「精神病床の割合6割5分以上」の判定では医療観察法病床を含めますが、区分1・2・3それぞれの精神病床数の要件(100床以下、101〜150床、151〜250床、250床以下など)では医療観察法病床を含めない、とされています。
みらい(新人医療事務)
精神保健指定医の「常勤」の基準も気になります。
あおい(元・医療事務)
週4日以上常態として勤務し、所定労働時間が週31時間以上であることが常勤の目安です。ただし正職員として勤務する者について、育児・介護休業法に基づく時短措置が講じられている場合は週30時間以上とされています。細かい適用は個々の勤務実態によって変わるので、疑問があれば審査支払機関や厚生局に確認するのが確実です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。関連する 精神科地域移行実施加算 や 精神科入退院支援加算 も同じ精神科領域の加算として合わせて確認しておくと、届出や体制の確認漏れを見つけやすくなります。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。