手術前医学管理料とは何か—手術前の検査がまとめて評価される加算
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「手術前医学管理料」という管理料を見つけたんですが、これってどんな加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の診療報酬で区分番号B001-4にあたる管理料です。硬膜外麻酔・脊椎麻酔・全身麻酔のもとで手術を行うときに、その手術前に行う定型的な検査や画像診断をまとめて評価する仕組みになっています。1回の算定で1,192点です。
みらい(新人医療事務)
「まとめて評価」というのは、個別の検査を1つずつ算定しなくていいということですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知には「手術前医学管理料は硬膜外麻酔、脊椎麻酔又は全身麻酔下で行われる手術の前に行われる定型的な検査・画像診断について、請求の簡素化等の観点から包括して評価したものであり」と記載されています。個別の検査項目を都度算定する代わりに、手術前医学管理料として一括で算定する形になります。
みらい(新人医療事務)
「請求の簡素化」がポイントなんですね。麻酔の種類は何でもいいわけではないんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、対象になる麻酔は限定されています。区分番号L002の硬膜外麻酔、L004の脊椎麻酔、そしてL008の声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔の3つです。単純な局所麻酔や、気道確保を伴わない全身麻酔などは対象外になりますので、麻酔の種類は必ず確認が必要です。
対象医療機関・対象患者を確認する
みらい(新人医療事務)
この管理料、うちの診療所でも対象になるんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
対象医療機関を個別に明記した一次資料の文言は確認できていませんが、この管理料は手術に係る手術料の算定に付随するものであるため、手術を行う診療所・病院で算定候補になり得ると考えられます。外来・入院のどちらの手術でも対象になり得ますが、在宅医療のみの場面では手術料の算定自体が発生しないため、対象にならないと考えられます。
みらい(新人医療事務)
対象患者はどう整理すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
対象患者は「手術の実施に際し硬膜外麻酔・脊椎麻酔・全身麻酔等を行った患者」です。ただし前のセクションで確認した通り、麻酔の種類はL002・L004・L008に限られますので、「等」という言葉に惑わされず、告示の3種類に該当するかどうかを個別に確認してください。
対象になるかの一次チェック
対象医療機関(推定): 手術料の算定に付随するため、手術を行う診療所・病院と考えられます(外来・入院とも) 対象外と考えられる場面: 在宅医療のみの場面、上記3種類以外の麻酔 キーになる確認事項: 手術に使った麻酔がL002/L004/L008のいずれかに該当するか
点数・算定コードの確認(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
点数とコードを表で確認したいです。
あおい(元・医療事務)
令和8年度時点の点数はこちらです。
| 区分番号 | 加算名 | 点数 | 算定回数 |
|---|---|---|---|
| B001-4 | 手術前医学管理料 | 1,192点 | 手術料算定日に1回(月1回限度) |

みらい(新人医療事務)
「手術料算定日に算定」というのは、手術当日の会計にまとめて計上するイメージですか?
あおい(元・医療事務)
そのイメージで合っています。告示の注1には「当該手術に係る手術料を算定した日に算定する」と明記されています。手術前に行った検査・画像診断が終わったあと、実際の手術料を算定する日にあわせて手術前医学管理料も計上する流れです。
みらい(新人医療事務)
同じ月に何度も手術がある患者さんの場合は、どうなるんですか?
あおい(元・医療事務)
注2に「同一の患者につき1月以内に手術前医学管理料を算定すべき医学管理を2回以上行った場合は、第1回目の手術前医学管理に係る手術料を算定した日に1回に限り、手術前医学管理料を算定する」とあります。つまり1か月以内であれば1回のみで、2回目以降は算定できません。留意事項通知でも「月1回に限り、疾病名を問わず全て本管理料を算定する」と重ねて示されています。
施設基準・届出はどうなっている?
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
この点については、当サイトが収録している一次資料(告示の注1〜注7、留意事項通知の(1)〜(8))の範囲では、施設基準の届出を求める規定は確認されていません(令和8年度時点)。専任者の配置や地方厚生局への事前届出についての記載も見当たりませんでした。
みらい(新人医療事務)
確認できないというのは、届出がいらないということとは違うんですか?
あおい(元・医療事務)
そうなんです。確認できないことと、不要であると確定していることは同じではありません。届出の要否そのものは、最新の届出様式一覧など地方厚生局の公式資料でご自身でも確認していただくのが確実です。そのうえで実務では、算定要件そのものを1件ずつ丁寧に満たしているかどうかが確認ポイントになります。麻酔の種類・検査の実施状況・算定タイミングという実務要件を都度満たす必要がある管理料ですので、次のセクションで詳しく見ていきましょう。
施設基準の届出規定は一次資料で未確認
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この管理料に関する施設基準の届出規定は確認されていません。ただし確認できないことと不要であることは同じではないため、届出の要否は最新の公式資料・地方厚生局への確認をおすすめします。また届出の要否にかかわらず、算定要件(対象麻酔・手術前1週間の検査実施・算定タイミング)を満たしていなければ算定候補にはなりません。
算定タイミング・回数制限・併算定の注意(実務の核心)
みらい(新人医療事務)
ここが一番複雑そうです。順番に教えてください。
あおい(元・医療事務)
まず手術前1週間の検査実施についてです。留意事項通知には「手術前1週間に本管理料に包括されている検査及び画像診断項目(中略)のいずれも行わなかった場合は、本管理料は算定しない」とあります。つまり、対象の検査・画像診断を1つも行っていなければ、そもそも算定できません。
みらい(新人医療事務)
「手術前1週間」の数え方も決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知に定義があります。「『手術を行う前1週間以内に行ったもの』とは、手術を行う日の前日を起算日として1週間前の日から当該手術を実施した当日の手術実施前までに行ったものをいう」とされています。手術当日の前日を起算日に、1週間前の日から手術実施前までがカウント対象です。
みらい(新人医療事務)
包括される検査には具体的にどんなものがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
告示の注5に列挙された特定の検査・画像診断項目(詳細は告示別表をご確認ください)が含まれます。これは手術を行う前1週間以内に行ったものが対象です。これらを手術前1週間以内に行った場合、その分の点数は手術前医学管理料に含まれ、個別には算定できません。ただし「当該期間において同一の検査又は画像診断を2回以上行った場合の第2回目以降のものについては、別に算定することができる」とされているので、2回目以降は別途算定の扱いになります。
みらい(新人医療事務)
心電図検査については、また別のルールがあると聞きました。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。注3に「手術前医学管理料を算定した同一月に区分番号D208に掲げる心電図検査を算定した場合には、算定の期日にかかわらず、所定点数の100分の90に相当する点数を算定する」とあります。同月に心電図検査(D208)を別途算定する場合は、その心電図検査の点数が90%相当に減額される仕組みです。満額で請求してしまうと誤りになるので注意が必要です。
みらい(新人医療事務)
フィルムの扱いはどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
注4に規定があります。同一部位でE001写真診断・E002撮影と同時に2枚以上のフィルムを使って同一方法で撮影した場合、2枚目から5枚目までの写真診断・撮影費用は、それぞれの所定点数の100分の50相当で別算定の扱いになります。ただし「第6枚目以後の写真診断及び撮影の費用については算定できない」ので、6枚目以降は算定不可です。フィルム費用自体はE400フィルムの所定点数で算定します。
併算定でつまずきやすいポイント
- 同月の心電図検査(D208)は所定点数の90%相当に減額
- フィルムは2〜5枚目まで50%相当で別算定可、6枚目以降は算定不可
- 手術前1週間以内の対象検査・画像診断の1回目分は本管理料に包括(2回目以降は別算定可)
みらい(新人医療事務)
他の点数と重ねて算定できないケースもあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。注6には「区分番号D026に掲げる血液学的検査判断料、生化学的検査(Ⅰ)判断料又は免疫学的検査判断料を算定している患者については算定しない」とあります。また注7では「第1章第2部第3節に掲げる特定入院料又は区分番号D027に掲げる基本的検体検査判断料を算定している患者については算定しない」とも定められています。これらの判断料や特定入院料を算定している患者には、手術前医学管理料自体を算定できません。
みらい(新人医療事務)
入院と外来をまたぐケースはどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(5)に「本管理料を算定する手術前1週間において、入院と入院外が混在する場合においても、本管理料に包括されている検査項目等の1回目の所定点数については別に算定できない」とあります。また(6)には「本管理料を月初めに算定し、手術前1週間が月をまたがる場合においても」同様に1回目の所定点数は別算定できないと示されています。月をまたぐケースでも、包括ルールは変わらないということですね。
みらい(新人医療事務)
月をまたいで2回手術する患者さんの場合の具体例もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、留意事項通知(7)に具体例つきで説明されています。「同一の患者について、月をまたがって1週間以内に硬膜外麻酔、脊椎麻酔又は全身麻酔下の手術を2回以上行った場合には、最初に行った手術の際に手術前医学管理料を算定し、2回目の手術の際には手術前医学管理料を算定せず、それぞれの検査項目等の所定点数により算定する」とされ、「当該月の29日に硬膜外麻酔、脊椎麻酔、全身麻酔下の手術を行い、翌月の3日に再び硬膜外麻酔、脊椎麻酔、全身麻酔下の手術を行った場合」は、29日に手術前医学管理料を算定し、翌月3日の手術では算定せず、個別の検査項目等の所定点数で算定する例が示されています。
みらい(新人医療事務)
肝炎ウイルス検査についても何か決まりがあるんですね。
あおい(元・医療事務)
これは算定要件というより患者説明の義務なのですが、留意事項通知(8)に「本管理料に包括されている肝炎ウイルス関連検査を行った場合には、当該検査の結果が陰性であった場合も含め、当該検査の結果について患者に適切な説明を行い、文書により提供すること」とあります。検査結果が陰性であっても、必ず文書で患者に説明・提供する必要があります。
改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこは正直にお伝えしておきたいのですが、前回改定(令和6年度)からの手術前医学管理料の変更点については、当サイトが収録している一次資料の範囲では確認されていません(2026年7月時点の確認)。令和8年度の告示・留意事項通知にもとづく現行の点数・算定要件は本記事で示した通りですが、令和6年度時点の一次資料との突き合わせができていない状態です。
みらい(新人医療事務)
変更があったかどうか分からないまま使うのは、ちょっと不安です。
あおい(元・医療事務)
おっしゃる通りです。改定の有無にかかわらず、レセプト作成時には最新の告示・留意事項通知の該当箇所を必ずご自身でも確認することをおすすめします。差分の有無が確定次第、この記事も更新していきます。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちで確認するときは、どんな順番で見ていけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次の順番で確認するのがおすすめです。
自院で確認する順番
- 手術に使った麻酔がL002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔・L008(気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)のいずれかに該当するか確認する
- 手術前1週間以内(手術前日を起算日に1週間前の日から手術実施前まで)に、包括対象の検査・画像診断を1つ以上行っているか確認する
- 同一患者について同月内に手術前医学管理料をすでに算定していないか確認する
- D026の各種判断料、D027基本的検体検査判断料、特定入院料を算定していないか確認する
- 同月に心電図検査(D208)を算定する場合は90%相当への減額を反映する
- 肝炎ウイルス関連検査を行った場合は、結果を文書で患者に説明・提供する

よくある取り漏れ・算定ミス
みらい(新人医療事務)
実務でつまずきやすいポイントも教えてください。
あおい(元・医療事務)
よくあるのは次のようなケースです。
よくある取り漏れ・算定ミス
検査を1つも行っていないのに算定してしまう: 手術前1週間以内に包括対象の検査・画像診断を1つも実施していない場合は算定できません 心電図検査を満額で別算定してしまう: 同月に手術前医学管理料と心電図検査(D208)を算定する場合、心電図検査は90%相当に減額されます フィルム6枚目以降を算定してしまう: フィルムは2〜5枚目まで50%相当で別算定可ですが、6枚目以降は算定できません 判断料・特定入院料との重複: D026の各種判断料、D027基本的検体検査判断料、特定入院料を算定している患者には本管理料自体を算定できません 月をまたぐ手術での重複算定: 月をまたいで1週間以内に2回以上手術を行った場合、2回目には手術前医学管理料を算定できません
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、よくある疑問をまとめて聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。順番に答えますね。
みらい(新人医療事務)
麻酔管理料と手術前医学管理料は一緒に算定できますか?
あおい(元・医療事務)
両者は評価している対象が異なるため、要件を個別に満たせば算定候補になり得ます。ただし麻酔管理料側にも別の施設基準・届出要件がありますので、麻酔管理料の記事もあわせてご確認ください。
みらい(新人医療事務)
局所麻酔だけの手術でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
対象となる麻酔はL002硬膜外麻酔・L004脊椎麻酔・L008(気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)に限られているため、これら以外の局所麻酔のみの手術は算定候補にはなりません。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出をしていなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この管理料について施設基準の届出を求める規定は確認されていません。ただし確認できないことと不要であることは同じではないため、届出の要否は最新の公式資料・地方厚生局の情報でご確認ください。そのうえで、算定要件(対象麻酔・手術前1週間の検査実施・算定タイミング)を満たしていることは別問題ですので、要件は個別に確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。手術に使った麻酔の種類や手術前の検査実施状況を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。