肺血栓塞栓症予防管理料ってどんな管理料ですか?
みらい(新人医療事務)
あおいさん、「肺血栓塞栓症予防管理料」ってレセプトでたまに見かけるんですが、どういう場面で算定する管理料なんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度(2026年度)の診療報酬では、区分B001-6として設定されている入院患者向けの管理料です。入院中の患者さんのうち、肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群のような血栓の合併症)を発症する危険性が高い方に対して、予防を目的とした計画的な医学管理を行った場合に評価されるものです。
みらい(新人医療事務)
「発症する危険性が高い患者」というのがポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。厚生労働省の告示では「病院(療養病棟を除く。)又は診療所(療養病床に係るものを除く。)に入院中の患者であって肺血栓塞栓症を発症する危険性が高いもの(結核病棟に入院中の患者においては手術を伴うもの、精神病棟に入院中の患者においては治療上必要があって身体拘束が行われているものに限る。)に対して、肺血栓塞栓症の予防を目的として、必要な機器又は材料を用いて計画的な医学管理を行った場合に、当該入院中1回に限り算定する」と定められています。
みらい(新人医療事務)
結核病棟や精神病棟でも算定候補になることがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。ただし条件つきです。結核病棟に入院中の患者さんは「手術を伴うもの」に限られますし、精神病棟に入院中の患者さんは「治療上必要があって身体拘束が行われているもの」に限られます。この条文の言い回しをそのまま覚えておくと、対象範囲を取り違えにくいと思います。
対象になる医療機関・対象患者を確認したい
みらい(新人医療事務)
うちの施設が対象になるか気になります。対象医療機関の条件を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
対象になるのは「病院(療養病棟を除く。)」または「診療所(療養病床に係るものを除く。)」です。療養病棟に入院中の患者、あるいは療養病床に入院中の患者はこの管理料の対象から外れます。まずはここが最初の分かれ道になります。
みらい(新人医療事務)
対象患者の条件はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
対象は「肺血栓塞栓症を発症する危険性が高いもの」です。そのうえで、病棟の種類によって次のような限定がかかります。
対象患者の条件(告示の文言そのまま)
- 一般の病棟・病床: 肺血栓塞栓症を発症する危険性が高い患者であること
- 結核病棟に入院中の患者: 手術を伴うものに限る
- 精神病棟に入院中の患者: 治療上必要があって身体拘束が行われているものに限る
- 病院は療養病棟を除く、診療所は療養病床に係るものを除く
みらい(新人医療事務)
つまり「危険性が高いかどうか」の医学的な判断は、現場の医師が行うということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。危険性の程度をどう判定するかは個別の診療内容に関わる部分なので、この管理料の対象になるかどうかは主治医の判断と、実際に行った予防管理の内容とをあわせて確認する必要があります。
点数を確認したい(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
具体的に何点になるのか教えてください。
あおい(元・医療事務)
令和8年度時点の点数は次のとおりです。
| 区分番号 | 名称 | 点数 | 算定単位 |
|---|---|---|---|
| B001-6 | 肺血栓塞栓症予防管理料 | 305点 | 当該入院中1回に限り |

みらい(新人医療事務)
「入院につき1回」ではなく「当該入院中1回」なんですね。何か違いがあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい、この違いは算定回数の考え方に直結するので大事なポイントです。同じ入院期間中に予防管理を複数回行ったとしても、算定できるのは1回だけです。その一方で、退院してから改めて入院した場合は、別の入院として新たに1回算定できる余地があります。この点は後ほど回数制限のところで詳しく確認しましょう。
どんな方法で予防管理を行う必要がありますか
みらい(新人医療事務)
「計画的な医学管理」って、具体的にはどんなことをするんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の留意事項通知(訂正後のもの)では「肺血栓塞栓症予防管理料は、病院(療養病棟を除く。)又は診療所(療養病床に係るものを除く。)に入院中の患者であって、肺血栓塞栓症を発症する危険性の高いもの(結核病棟においては手術を伴う患者、精神病棟においては治療上の必要から身体拘束が行われている患者に限る。)に対して、肺血栓塞栓症の予防を目的として、弾性ストッキング(患者の症状により弾性ストッキングが使用できないなどやむを得ない理由により使用する弾性包帯を含む。)又は間歇的空気圧迫装置を用いて計画的な医学管理を行った場合に、入院中1回に限り算定する」と説明されています。
みらい(新人医療事務)
弾性ストッキングか、間歇的空気圧迫装置のどちらかを使う、ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。さらに同じ通知には「なお、当該管理料は、肺血栓塞栓症の予防を目的として弾性ストッキング又は間歇的空気圧迫装置を用いた場合に算定できるものであり、薬剤のみで予防管理を行った場合には算定できない」と明記されています。抗凝固薬などの薬剤だけで予防を行っている場合は、この管理料の対象にはなりません。
みらい(新人医療事務)
これは見落としやすい注意点ですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。「予防管理をしている」という事実だけでなく、「弾性ストッキングまたは間歇的空気圧迫装置を使っているか」まで確認する必要があります。カルテや看護記録で、使用した器具・材料が具体的に記載されているかを見るとよいと思います。
算定候補にならないケースの注意
- 薬剤(抗凝固薬等)のみで予防管理を行った場合は、この管理料の対象になりません
- 弾性ストッキングまたは間歇的空気圧迫装置を「用いて」計画的な医学管理を行ったことがカルテ等で確認できる必要があります
- 療養病棟・療養病床に入院中の患者は、そもそも対象から外れます
施設基準・届出は必要ですか
みらい(新人医療事務)
この管理料、施設基準の届出は必要なんでしょうか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、肺血栓塞栓症予防管理料について、施設基準の届出を求める規定は確認されていません。届出を行っていなくても、対象患者に対して要件どおりの予防管理を実施していれば算定候補になり得る、という位置づけの管理料です。
みらい(新人医療事務)
届出が不要というのは、他の加算と比べると珍しいパターンですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準の届出が必要な加算も多いなかで、この管理料は届出そのものが不要という点は特徴的です。ただし、届出が不要だからといって要件確認が不要というわけではありません。対象患者の範囲や、使用した器具・材料の記録は、届出の有無にかかわらず必ず確認しておく必要があります。
届出まわりのよくある誤解
- 「施設基準の届出が不要」=「無条件で誰にでも算定できる」ではありません
- 対象患者の条件(発症の危険性が高いこと、病棟ごとの限定)は届出の有無と関係なく必ず満たす必要があります
- 弾性ストッキング・間歇的空気圧迫装置を用いた計画的な医学管理の実施記録は必須です
算定タイミング・回数制限・費用の取り扱いを確認したい
みらい(新人医療事務)
算定できるタイミングや回数について、もう少し詳しく教えてください。
あおい(元・医療事務)
告示の注1には「当該入院中1回に限り算定する」とあります。同じ入院期間のなかで、予防管理を複数回行ったとしても、算定できるのは1回だけです。
みらい(新人医療事務)
再入院した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では「第1章第2部通則に規定する入院期間が通算される再入院の場合においても、各々の入院において入院中1回算定できるものであること」と説明されています。入院期間が通算される再入院であっても、それぞれの入院ごとに1回算定できる、という考え方です。
みらい(新人医療事務)
費用の面ではどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
告示の注2には「肺血栓塞栓症の予防を目的として行った処置に用いた機器及び材料の費用は、所定点数に含まれるものとする」とあります。弾性ストッキングや間歇的空気圧迫装置そのものの費用や、それを用いた処置の費用は、この305点に含まれていて、別途算定することはできません。
みらい(新人医療事務)
他の処置と重複して算定してしまうリスクもありそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。留意事項通知には「肺血栓塞栓症の予防を目的として使用される弾性ストッキング及び間歇的空気圧迫装置を用いた処置に要する費用は所定点数に含まれており、別に消炎鎮痛等処置の点数は算定できない」という趣旨の説明があります。また「肺血栓塞栓症の予防を目的として弾性ストッキングが複数回使用される場合であっても、当該費用は所定点数に含まれる」こと、「同一の弾性ストッキングを複数の患者に使用しないこと」も述べられています。衛生管理の観点からも、使い回しをしないという点は確認しておきたいポイントです。
みらい(新人医療事務)
予防管理の進め方そのものについても、何か目安はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。留意事項通知では「肺血栓塞栓症の予防に係る計画的な医学管理を行うに当たっては、関係学会より標準的な管理方法が示されているので、患者管理が適切になされるよう十分留意されたい」とされています。関係学会が示す標準的な管理方法を参考にしながら、患者ごとの計画的な管理を行い、その内容をカルテに残しておくことが大切です。
回数・費用まわりの注意
- 算定できるのは当該入院中1回のみです。同じ入院中に予防管理を複数回行っても、算定は1回に限られます
- 入院期間が通算される再入院の場合は、各々の入院で入院中1回算定できるとされています
- 弾性ストッキング・間歇的空気圧迫装置を用いた処置の費用は所定点数(305点)に含まれ、別途算定できません
- 同一の弾性ストッキングを複数の患者に使い回さないよう注意してください
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、何か変わった点はあるんですか?
あおい(元・医療事務)
正直にお伝えすると、当サイトが収録している一次資料の範囲では、肺血栓塞栓症予防管理料について前回改定(令和6年度)の告示・留意事項通知との直接の比較資料が確認できておらず、点数・算定要件の変更有無を明確にお伝えすることができません(2026年7月時点の確認)。
みらい(新人医療事務)
「変更ありません」と言い切れるわけではない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。今回確認できた令和8年度の告示・留意事項通知では、点数は305点、算定要件は先ほどご紹介したとおりの内容になっています。なお、この留意事項通知は「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」という訂正通知の中に含まれる形で確認できたものです。ただし、この訂正通知はこの資料(実施上の留意事項について)の訂正後の内容をまとめて示すもので、肺血栓塞栓症予防管理料の条文について具体的にどの語句がどう変わったのかを示す対比表は、当サイトが収録している範囲では確認できていません。そのため、条文中の引用番号などが今回の訂正で実際に変更されたものかどうかまでは断定できず、あくまで令和8年5月時点で確認できた最新の条文内容としてご案内しています。
みらい(新人医療事務)
つまり、この訂正で管理料の要件自体が変わったのかどうかは、はっきり分からない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。少なくとも今回確認できた条文の内容(点数305点、対象患者の範囲、算定回数の考え方など)自体は、告示・留意事項通知に明記されているとおりです。ただし、前回改定(令和6年度)時点の内容との比較や、この訂正通知で具体的に何が変更されたのかについては、当サイトの収録資料の範囲では確認できていないため、断定はできません。気になる方は、厚生労働省が公開している改定資料や、審査支払機関の案内もあわせてご確認ください。
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
実際にうちの施設で算定候補になるか、どんな順番で確認していけばいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のような順番で確認していくと整理しやすいと思います。
自院で確認する順番
- 患者が入院している場所が、病院(療養病棟を除く)または診療所(療養病床を除く)に該当するかを確認する
- 患者が肺血栓塞栓症を発症する危険性が高いと判断されているかを確認する(結核病棟は手術を伴う患者、精神病棟は身体拘束が行われている患者に限られる点に注意)
- 予防管理として、弾性ストッキング(またはやむを得ない理由による弾性包帯)または間歇的空気圧迫装置を用いているかをカルテ等で確認する
- 薬剤のみでの予防管理になっていないかを確認する
- 当該入院中に、この管理料をすでに算定していないかを確認する
- 弾性ストッキング等の費用を、別の処置料として重複算定していないかを確認する

みらい(新人医療事務)
順番に見ていけば、抜け漏れが少なくなりそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。特に「弾性ストッキングまたは間歇的空気圧迫装置を用いているか」と「薬剤のみになっていないか」の2点は、算定候補かどうかを左右する重要な分かれ目なので、優先的に確認することをおすすめします。
よくある取り漏れ・誤りやすいポイント
みらい(新人医療事務)
現場でよくある取り漏れや、逆に算定しすぎてしまうケースってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつか代表的なパターンがあります。
よくある取り漏れ・誤算定のパターン
- 抗凝固薬などの薬剤のみで予防管理を行っており、弾性ストッキング・間歇的空気圧迫装置を使用していないのに算定してしまう
- 療養病棟・療養病床に入院中の患者に誤って算定してしまう
- 結核病棟・精神病棟の患者について、限定条件(手術を伴う、身体拘束が行われている)を満たしていないのに算定してしまう
- 同じ入院期間中にすでに1回算定しているにもかかわらず、重ねて算定してしまう
- 弾性ストッキング等の費用を、消炎鎮痛等処置など別の処置料として重複して算定してしまう
- 危険性が高いという医学的判断や実施記録がカルテに残っておらず、後から根拠を示せない
みらい(新人医療事務)
記録に残しておくことがやっぱり大事なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。「危険性が高いと判断した理由」「使用した器具・材料」「実施した日」がカルテに残っていれば、後から確認する際にもスムーズです。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後に、みんなが気になりそうな質問をいくつか聞いてもいいですか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。
みらい(新人医療事務)
薬だけで血栓予防をしている患者は算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
なりません。厚生労働省の留意事項通知で「薬剤のみで予防管理を行った場合には算定できない」と明記されています。弾性ストッキングまたは間歇的空気圧迫装置を用いていることが条件です。
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出は必要ですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、この管理料について施設基準の届出を求める規定は確認されていません。ただし対象患者の条件や実施記録の確認は届出の有無にかかわらず必要です。
みらい(新人医療事務)
同じ入院中に2回予防管理をしたら2回算定できますか?
あおい(元・医療事務)
できません。告示に「当該入院中1回に限り算定する」と明記されています。同じ入院期間中は何回予防管理を行っても算定は1回までです。
みらい(新人医療事務)
一度退院してまた入院した場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知では、入院期間が通算される再入院の場合でも、各々の入院において入院中1回算定できるとされています。ただし対象患者の条件などをその都度満たしているかの確認は必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。