みらい(新人医療事務)
あおいさん、「リンパ浮腫複合的治療料」という名前をレセプトで見かけたんですけど、どんな加算なんですか?名前が長くて何をする加算なのかピンと来なくて。
あおい(元・医療事務)
リンパ浮腫複合的治療料は、リンパ浮腫のある患者さんに対して、圧迫療法や用手的リンパドレナージなどを組み合わせた「複合的治療」を行った場合に算定できる項目です。区分番号はH007-4で、令和8年度(2026年度)の医科点数表ではリハビリテーション料の中に位置づけられています。乳がんなどの手術でリンパ節を切除した後に腕や脚がむくんでしまう患者さんへの専門的なケアを評価する項目、とイメージしてもらうとわかりやすいです。
みらい(新人医療事務)
「複合的治療」というのは、具体的に何をするんですか?
あおい(元・医療事務)
弾性着衣や弾性包帯による圧迫、圧迫した状態での運動、用手的リンパドレナージ(手技によるリンパの誘導)、患肢のスキンケア、体重管理などのセルフケア指導、こうしたものを組み合わせて実施する治療です。単発の処置ではなく、複数の要素を組み合わせて継続的に行うのがポイントです。
対象になる患者はどんな人ですか
みらい(新人医療事務)
どんな患者さんに対して算定候補になるんですか?
あおい(元・医療事務)
大きく2つのパターンがあります。1つは、鼠径部・骨盤部・腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍の手術を受けた患者さん。もう1つは、原発性リンパ浮腫と診断された患者さんです。どちらも国際リンパ学会による病期分類でⅠ期以降であることが前提になります。
みらい(新人医療事務)
「重症の場合」という区分もあるみたいですが、これは何が違うんですか?
あおい(元・医療事務)
病期分類でⅡ期以降になった患者さんが「重症の場合」の対象患者になります。むくみが進行しているほど治療の負担も大きくなるので、点数区分もそこに合わせて設計されているということです。
対象患者の確認ポイント
術後リンパ浮腫: 鼠径部・骨盤部・腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍手術を行った患者であること 原発性リンパ浮腫: 生まれつき・原因不明のリンパ浮腫と診断されていること 病期分類: 国際リンパ学会の病期分類でⅠ期以降(Ⅱ期以降は重症の場合の対象)であること
点数の区分を確認する
みらい(新人医療事務)
肝心の点数はどうなっていますか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の医科点数表では、実施時間に応じて3つの区分に分かれています。重症の場合は1回60分以上実施すると500点、40分以上60分未満だと350点です。重症以外の場合は1回20分以上実施すると150点になります。いずれも患者1人1日につき1回算定するのが基本です。

| 区分 | 実施時間 | 点数(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 重症の場合 イ | 60分以上 | 500点 |
| 1 重症の場合 ロ | 40分以上60分未満 | 350点 |
| 2 1以外の場合 | 20分以上 | 150点 |
みらい(新人医療事務)
この点数って、施設基準の届出をしていれば自動的に算定候補になるものなんですか?
あおい(元・医療事務)
届出は前提条件のひとつであって、それだけで算定候補が決まるわけではありません。対象患者に該当していること、実施時間の要件を満たしていること、複合的治療の内容(圧迫・ドレナージ・セルフケア指導)を適切に組み合わせていることなど、複数の条件が重なって初めて算定候補になります。ですので「届出をしているから算定候補が確定する」と言い切ることは私にもできません。
誰が治療を行うと算定候補になりますか
みらい(新人医療事務)
治療は医師が直接やらないといけないんですか?
あおい(元・医療事務)
専任の医師が直接行う場合、または専任の医師の指導監督のもとで専任の看護師・理学療法士・作業療法士が行う場合が対象です。加えて一定の要件を満たしたあん摩マッサージ指圧師が行うことも認められていますが、この場合は専任の医師・看護師・理学療法士・作業療法士が事前に指示し、事後に報告を受けることが条件になります。いずれのパターンでも、患者1名に対して従事者1名以上の割合で実施することが必要です。
みらい(新人医療事務)
あん摩マッサージ指圧師さんが担当する場合の条件はもう少し詳しく知りたいです。
あおい(元・医療事務)
当該保険医療機関に勤務していて、資格取得後2年以上業務に従事し、そのうち6か月以上は当該医療機関で従事していること、さらに施設基準に定める適切な研修を修了していることが条件です。単に資格を持っているだけでは対象になりません。
実施者の要件は思ったより細かい
複合的治療は誰が担当しても算定候補になるわけではありません。専任性・研修修了・指導監督の有無まで含めて、担当者ごとに要件を満たしているか確認が必要です。
算定できる回数とタイミングの注意
みらい(新人医療事務)
何回でも算定していいわけではないですよね?
あおい(元・医療事務)
そうです。「重症の場合」は原則として月1回に限られますが、治療を開始した日の属する月から起算して2か月以内は、計11回までを上限に算定候補になります。導入期に集中的に治療を行い、その後は月1回のペースに落ち着いていくイメージです。一方「1以外の場合」は6か月に1回に限られています。
みらい(新人医療事務)
重症とそれ以外で、回数の考え方がかなり違うんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。重症の場合は初期に頻回の介入が必要になりやすい一方、1以外の場合は経過観察的な位置づけに近いので、算定間隔にも差が設けられていると理解しておくとよいと思います。回数の解釈を誤ると過誤請求につながりかねないので、レセプト担当者は特に注意して確認してください。
自院で基準を満たしていない場合はどうなりますか
みらい(新人医療事務)
うちの医療機関がリンパ浮腫指導管理料をあまり算定していない場合は、この加算は対象外になってしまうんですか?
あおい(元・医療事務)
直近1年間にリンパ浮腫指導管理料を50回以上算定していない場合でも、算定できる可能性は残っています。ただし条件があって、リンパ浮腫の診断等に係る連携先として届け出た保険医療機関(そちらは直近1年間に50回以上算定している必要があります)でリンパ浮腫と診断され、複合的治療を依頼する旨とともに紹介された患者に限られます。しかもこの紹介は「B009」診療情報提供料(Ⅰ) を算定するものであることが条件です。
みらい(新人医療事務)
つまり、自院だけで完結する制度ではなくて、連携先とのやり取りも記録として残しておく必要があるということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。紹介状の記載内容や診療情報提供料の算定履歴も、後から確認できる状態にしておくことをおすすめします。
施設基準: 人員と研修要件
みらい(新人医療事務)
施設基準はどんな内容になっていますか?
あおい(元・医療事務)
まず人員体制です。専任の常勤医師1名以上、そして専任の常勤看護師・常勤理学療法士・常勤作業療法士のうちいずれか1名以上が勤務していることが必要です。常勤者の確保が難しい場合は、週3日以上かつ週22時間以上勤務する非常勤者を、常勤者と同じ時間帯に配置する形でそれぞれ2名以上組み合わせることで、常勤扱いとみなせる特例もあります。
みらい(新人医療事務)
研修の要件も細かそうですね。
あおい(元・医療事務)
はい。担当する医師・看護師・理学療法士・作業療法士・非常勤者のいずれも、次の3つを満たす必要があります。1つ目は資格を取得してから2年以上経過していること、2つ目は直近2年以内にリンパ浮腫の患者を5例以上経験していること、3つ目は座学と実技を含む所定の研修(「専門的なリンパ浮腫研修に関する教育要綱」に沿ったもの)を修了していることです。研修は原則として試験を伴うもので、理解が不十分な場合は再受講が求められる形になっています。
みらい(新人医療事務)
医師は少し違う扱いがあるんでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
専らリンパ浮腫複合的治療に携わる他の従事者の監督だけを行い、自分では直接治療を行わない医師については、座学の研修のみで足りるとされています。実技研修まで必須なのは、実際に手技を行う担当者、という整理です。
人員要件を確認する順番
- 専任の常勤医師が1名以上いるか確認する
- 専任の常勤看護師・理学療法士・作業療法士のいずれか1名以上がいるか確認する
- 常勤が難しい場合は、非常勤者を要件どおりに組み合わせられるか検討する
- 担当予定者が研修(座学+実技、原則試験あり)を修了しているか確認する
- 直近2年以内のリンパ浮腫の経験症例数が5例以上あるか確認する
施設基準: 連携・設備・記録の要件
みらい(新人医療事務)
人員以外にも条件があるんですね。
あおい(元・医療事務)
あります。まず、直近1年間にリンパ浮腫指導管理料を50回以上算定していること、または連携先として届け出た保険医療機関がその基準を満たしていることが必要です。次に、蜂窩織炎などのリンパ浮腫に伴う合併症に対応できる体制として、入院施設を有し内科・外科・皮膚科のいずれかを標榜する医療機関(自院または連携先)が確保されている必要があります。
みらい(新人医療事務)
設備面の要件もありますか?
あおい(元・医療事務)
歩行補助具、治療台、巻尺などの各種測定用器具を備えていることが求められます。加えて、治療に関する記録(医師の指示・実施時間・実施内容・担当者など)を患者ごとに一元的に保管し、常に医療従事者が閲覧できる状態にしておくことも施設基準の一部です。
設備・記録の確認ポイント
器械・器具: 歩行補助具・治療台・巻尺等の測定用器具が揃っているか 合併症対応: 蜂窩織炎等への対応体制が自院または連携先で確保されているか 記録の一元管理: 医師の指示・実施時間・実施内容・担当者の記録が患者ごとに保管され、常に閲覧可能か
届出はどうすればよいですか
みらい(新人医療事務)
実際に届出をする場合は、どんな手続きになりますか?
あおい(元・医療事務)
リンパ浮腫複合的治療料の施設基準に係る届出は、所定の様式(様式43の7)を用いて地方厚生局長等に提出する形になります。人員体制や研修修了の証明、設備の状況などをあわせて確認されることになりますので、届出前に自院の体制を一通り棚卸ししておくと手続きがスムーズです。届出が受理される前に算定してしまうと過誤請求につながる可能性があるため、受理の時期については必ず地方厚生局に確認してください。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前の改定から何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
変わっています。厚生労働省の資料では「リンパ浮腫複合的治療料について、より実態に即した評価を行う観点から、リンパ浮腫複合的治療料の評価を見直す」とされています。令和6年度以前は「1 重症の場合 200点」「2 1以外の場合 100点」という2区分でしたが、令和8年度(2026年度)改定で「1 重症の場合」が実施時間に応じて2段階(60分以上500点、40分以上60分未満350点)に細分化され、「2 1以外の場合」も150点に見直されました。
みらい(新人医療事務)
つまり点数が上がっただけじゃなくて、区分の分け方自体が変わったんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。以前は重症かどうかだけで点数が決まっていましたが、令和8年度からは実施時間の長さも点数に反映される仕組みになりました。点数の変化だけでなく、区分の考え方が変わった点も踏まえて自院の運用を見直しておくとよいと思います。
改定前後の比較(令和6年度→令和8年度)
令和6年度(2024年度)改定まで: 重症の場合200点/1以外の場合100点の2区分 令和8年度(2026年度)改定後: 重症の場合は60分以上500点・40分以上60分未満350点の2段階、1以外の場合は150点
自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
ここまで聞いてきて、確認することがたくさんあると感じました。順番を整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
確認する順番を並べてみますね。
自院で確認する順番(令和8年度)
- 対象患者に該当するか(悪性腫瘍術後のリンパ節郭清、または原発性リンパ浮腫で病期分類Ⅰ期以降か)を確認する
- 施設基準の届出をしているか(専任常勤医師と専任常勤看護師等の配置、所定の研修修了)を確認する
- リンパ浮腫指導管理料 を自院で年間50回以上算定しているか、または連携先が満たしているかを確認する
- 治療内容(圧迫・ドレナージ・セルフケア指導)と実施時間が区分の要件を満たしているかを確認する
- 算定回数・間隔(重症の場合は月1回、1以外の場合は6か月に1回)のルールを確認する

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
算定できるはずなのに取りこぼしてしまうパターンってありますか?
あおい(元・医療事務)
よくあるのは、実施時間の記録が不十分なケースです。重症の場合の500点と350点は実施時間で分かれるので、開始・終了時刻や実施内容が記録に残っていないと、どちらの区分で算定すべきか後から説明できなくなってしまいます。
みらい(新人医療事務)
ほかにはどんなパターンがありますか?
あおい(元・医療事務)
セルフケア指導の記録漏れです。スキンケアや体重管理等のセルフケア指導は毎回の治療で必ず行うこととされていますが、圧迫やドレナージの記録だけを残してセルフケア指導の内容を書き漏らしてしまう例が見られます。
よくある取り漏れ
実施時間の記録漏れ: 60分以上/40〜60分未満/20分以上のどの区分に該当するか、開始・終了時刻が記録されているか セルフケア指導の記録漏れ: スキンケア・体重管理等の指導内容が毎回記録されているか 連携先の算定実績の未確認: 自院の実績が50回未満の場合、連携先の実績と紹介経路(診療情報提供料の算定)が確認できているか
公式情報・参考資料
あおい(元・医療事務)
この記事の内容は、以下の厚生労働省の公式資料を根拠にしています。詳細な施設基準・届出手続きは、必ず一次資料でご確認ください。
参考資料(厚労省公式・令和8年度)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示、医科点数表 区分H007-4) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号、0730訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第8号、0730訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf
- 令和8年度診療報酬改定の概要(個別改定項目、質の高いリハビリテーションの推進) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666318.pdf
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。