みらい(新人医療事務)
先輩、「後天性免疫不全症候群療養指導加算」ってレセプトに出てきたんですけど、これって何の加算なんですか?名前が長くて全然イメージがわかなくて…。
あおい(元・医療事務)
実はこれ、単独の項目ではなくて「ウイルス疾患指導料」という指導料の中の「注2加算」なんです。ウイルス疾患指導料には「イ」と「ロ」があって、後天性免疫不全症候群(いわゆるAIDS)に罹患している患者さんやHIVの感染者に対して指導を行う「ロ」を算定した場合に、施設基準の届出をしていれば上乗せできる加算、というイメージですね。
みらい(新人医療事務)
上乗せ加算なんですね!じゃあまずベースになっている「ウイルス疾患指導料」から教えてください。
ウイルス疾患指導料とこの加算の関係
みらい(新人医療事務)
「ロ」って具体的にはどういう指導料なんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の医科点数表ではこう定められています。
医科点数表(令和8年度)の条文
B001 特定疾患治療管理料 1 ウイルス疾患指導料: イ ウイルス疾患指導料1 240点/ロ ウイルス疾患指導料2 330点。注1 イについては、肝炎ウイルス疾患又は成人T細胞白血病に罹患している患者に対して、ロについては、後天性免疫不全症候群に罹患している患者に対して、それぞれ療養上必要な指導及び感染予防に関する指導を行った場合に、イについては患者1人につき1回に限り、ロについては患者1人につき月1回に限り算定する。
みらい(新人医療事務)
なるほど、「ロ」=330点で、これが後天性免疫不全症候群の患者さん向けの指導料なんですね。それで、今回の加算はこの「ロ」に上乗せされるということですか?
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。同じ条文の「注2」にこう続きます。
注2の条文(加算の根拠)
注2: 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、ロの指導が行われる場合は、220点を所定点数に加算する。
みらい(新人医療事務)
220点の加算…!つまり「ロ」の330点+施設基準を満たしていれば加算の220点、ということですね。
あおい(元・医療事務)
はい、そのイメージで合っています。ただし「施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関」であることが前提なので、届出をしていない医療機関では「ロ」の330点は算定できても、この220点の加算は算定候補になりません。

対象患者・対象医療機関を確認する
みらい(新人医療事務)
対象になる患者さんはどう決まっているんですか?「HIV感染者」という言葉も出てきましたが、AIDS患者さんと同じ扱いなんでしょうか。
あおい(元・医療事務)
留意事項通知(保医発通知)に、その区別が書かれています。
留意事項通知の該当部分
(3): HIVの感染者に対して指導を行った場合には、「ロ」を算定する。 (5): 「注2」に掲げる加算は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において、後天性免疫不全症候群に罹患している患者又はHIVの感染者に対して療養上必要な指導及び感染予防に関する指導を行った場合に算定する。
みらい(新人医療事務)
つまり「ロ」の対象は、後天性免疫不全症候群を発症している患者さんだけじゃなくて、まだ発症していないHIV感染者も含まれる、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。そしてこの注2の加算も、対象患者は「ロ」と同じく、後天性免疫不全症候群に罹患している患者又はHIVの感染者、となっています。対象医療機関については、診療所・病院どちらも算定候補になり得ますが、外来・入院いずれで行った指導かは条文上区別されていません。当サイトが収録している一次資料の範囲では、算定の場面(外来・入院)による除外は確認されていません。
みらい(新人医療事務)
在宅の患者さんへの指導はどうですか?
あおい(元・医療事務)
在宅療養指導管理料のような在宅専用の項目とは別区分なので、在宅の場面まで対象になるかどうかは、条文上明記が確認できていません。この点は自院での算定場面に照らして、確認が必要な部分と考えてください。
点数・施設基準・届出をまとめて確認する
みらい(新人医療事務)
ここまでの内容を表で整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
もちろんです。令和8年度の内容を表にまとめました。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 加算名 | 後天性免疫不全症候群療養指導加算(ウイルス疾患指導料「注2」加算) |
| 点数 | 220点(ロ=ウイルス疾患指導料2330点に上乗せ) |
| 算定回数 | ロと同じく患者1人につき月1回限り |
| 対象患者 | 後天性免疫不全症候群に罹患している患者又はHIVの感染者 |
| 施設基準届出 | 必要(地方厚生(支)局長への届出) |
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出が必要、ということはわかりましたが、具体的にどんな体制を整えれば届出できるんですか?
あおい(元・医療事務)
そこが正直に伝えないといけないところで、当サイトが収録している一次資料の範囲では、この施設基準の具体的な人員配置や設備要件までは確認できていません。条文上確認できているのは「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」という届出要件そのものだけです。具体的な基準の中身は、地方厚生(支)局への届出書類や個別の施設基準告示で確認する必要があります。
みらい(新人医療事務)
憶測で「こういう体制が必要」とは書けない、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。届出済みかどうか分からない状態で確定的な言い方をするのは避けたいので、まずは自院が届出済みかどうかを確認するところから始めてください。
算定タイミング・併算定の注意点
みらい(新人医療事務)
併算定で気をつけることはありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。まず「ロ」自体の算定除外規定です。
特定疾患療養管理料との関係
医科点数表の注1ただし書きに「ただし、区分番号B000に掲げる特定疾患療養管理料を算定している患者については算定しない。」とあります。つまり、同じ患者さんに特定疾患療養管理料(/addition/b000)を算定している月は、「ロ」自体が算定候補にならず、結果としてこの注2加算も算定候補になりません。
みらい(新人医療事務)
「ロ」が算定できない月は、加算も自動的に算定できなくなるということですね。
あおい(元・医療事務)
はい。さらに、留意事項通知の(4)にはこうあります。
イ・ロ両方に該当する場合
(4): 同一の患者に対して、同月内に「イ」及び「ロ」の双方に該当する指導が行われた場合は、主たるもの一方の所定点数のみを算定する。
みらい(新人医療事務)
イとロを両方満たしていても、どちらか一方しか算定できないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。加えて、医科点数表の第2章特掲診療料の通則にも、ウイルス疾患指導料を含む複数の医学管理等の項目について、同一月内での併算定に関する取り決めがあります。
第2章特掲診療料 通則の併算定規定
「第1部に規定する特定疾患療養管理料、ウイルス疾患指導料、小児特定疾患カウンセリング料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、慢性疼痛疾患管理料、小児悪性腫瘍患者指導管理料及び耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料並びに第2部第2節第1款の各区分に規定する在宅療養指導管理料及び第8部精神科専門療法に掲げる心身医学療法は特に規定する場合を除き同一月に算定できない。」とされています。同一患者・同一月に、この一覧にある他の医学管理等の項目とウイルス疾患指導料(ロ)を重ねて算定できるかどうかは、この通則に照らした確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
併算定の除外はけっこう広い範囲に及ぶんですね。うちの患者さんで他の指導料を算定していないか、月ごとに確認しないといけなさそうです。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。レセプト作成の際は、同月内の他の医学管理等の算定状況を必ず確認する習慣をつけておくと安心です。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
前回の令和6年度改定から、この加算に変更はあったんですか?
あおい(元・医療事務)
当サイトが収録している一次資料の範囲では、後天性免疫不全症候群療養指導加算(ウイルス疾患指導料の注2加算)そのものについて、点数・算定要件・施設基準に関する令和6年度(2024年度)改定からの変更点は確認されていません(確認日: 2026年7月・厚生労働省一次情報ベース)。ウイルス疾患指導料本体(イ・ロ)や特定疾患治療管理料の枠組み全体の改定経緯まで含めて確認したい場合は、特定疾患治療管理料(B001)の記事もあわせてご覧ください。
みらい(新人医療事務)
「変更なし」と決めつけずに、確認できた範囲をそのまま伝えてくれるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。資料に書かれていないことを「変わっていないはず」と決めつけるのは避けたいので、こういう言い方にしています。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
結局、うちが算定候補になるか、どういう順番で確認すればいいですか?
あおい(元・医療事務)
次のステップで確認してみてください。
自院で確認する順番
- 対象患者の確認: 後天性免疫不全症候群に罹患している患者、又はHIVの感染者かどうかを確認する
- ロの算定要件の確認: その月に「イ」との重複がないか、特定疾患療養管理料(B000)を算定している患者ではないかを確認する
- 施設基準の届出状況を確認: 地方厚生(支)局へこの加算の施設基準を届け出ているかどうかを院内で確認する
- 併算定の確認: 同月内に他の医学管理等の項目(特定疾患療養管理料等)を算定していないかを確認する
- ここまで満たしていれば算定候補として扱い、最終判断は自院の届出書類・審査支払機関の確認に委ねる
みらい(新人医療事務)
施設基準の届出があるかどうかを確認する、というのが一番のポイントなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。届出をしていなければ「ロ」の330点は算定候補になっても、この220点の加算は算定候補になりません。逆に届出済みであれば、対象患者への指導実施を確認したうえで算定候補として扱えます。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある取り漏れのパターンってありますか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
よくある取り漏れ・確認ポイント
届出の見落とし: 「ロ」の330点だけ算定して、施設基準を届け出ているのに220点の加算を付け忘れているケース。 併算定チェック漏れ: 同月に特定疾患療養管理料を算定してしまい、あとから「ロ」自体が算定できないことに気づくケース。 HIV感染者の扱いの誤解: 後天性免疫不全症候群を発症していないHIV感染者への指導も「ロ」の対象に含まれることを見落とし、算定対象から外してしまうケース。
みらい(新人医療事務)
「発症前のHIV感染者」も対象に含まれるっていうのは、意外と見落としそうですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。留意事項通知に明記されているので、対象患者の判断に迷ったら条文の文言に立ち返って確認するのが確実です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
最後にいくつか質問してもいいですか?
あおい(元・医療事務)
どうぞ。
みらい(新人医療事務)
この加算だけを単独で算定することはできますか?
あおい(元・医療事務)
できません。この加算はウイルス疾患指導料の「ロ」に対する上乗せ(注2加算)という位置づけなので、「ロ」の算定が前提になります。「ロ」を算定していない月にこの加算だけを算定することは、条文上想定されていません。
みらい(新人医療事務)
届出をしていない医療機関でも、指導内容さえ満たしていれば加算できますか?
あおい(元・医療事務)
できません。条文上「地方厚生局長等に届け出た保険医療機関」であることが明記されているため、届出をしていない場合はこの220点の加算は算定候補になりません。まずは届出状況の確認が必要です。
みらい(新人医療事務)
診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
病院・診療所を区別する記載は条文上確認できていないので、施設基準を満たして届け出ていれば、診療所であっても算定候補になり得ます。ただし個別の届出可否は貴院の状況によりますので、確認が必要です。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。