みらい(新人医療事務)
「外科医療確保特別加算」という名前の加算を見つけたんですけど、これって普通の加算表みたいに点数が決まっているものじゃないんですか? 表を見ても点数が書いてなくて…。
あおい(元・医療事務)
いいところに気づきましたね。この加算は固定の点数ではなく、対象になる手術の点数に「上乗せ率」をかける仕組みなんです。令和8年度診療報酬改定で新設された加算で、外科の担い手を確保するための仕組みという位置づけです。
みらい(新人医療事務)
上乗せ率、ですか?
あおい(元・医療事務)
はい。厚生労働省の医科点数表 第10部手術の通則23には、こう書かれています。「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、長時間かつ高難度な手術を実施した場合であって、対象診療科の医師が、当該手術を行ったときは、外科医療確保特別加算として、当該手術の所定点数の100分の15に相当する点数を加算する」とあります。つまり、対象手術の点数の15%を上乗せする加算です。
みらい(新人医療事務)
15%上乗せ…結構大きいですね。でも「対象診療科」とか「長時間かつ高難度な手術」とか、条件がいくつもありそうです。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。ここを丁寧に確認しないと、算定候補になるかどうかの判断を誤ってしまいます。順番に見ていきましょう。

外科医療確保特別加算とは
みらい(新人医療事務)
そもそも、どんな趣旨で作られた加算なんですか?
あおい(元・医療事務)
消化器外科や心臓血管外科、小児外科、循環器内科など、若手医師の確保が難しくなっている診療科を対象に、令和8年度改定で新設された加算です。対象となる手術を、届出を行った対象診療科の医師が実施したときに、当該手術の所定点数の100分の15を加算する、という仕組みです。
みらい(新人医療事務)
「対象診療科」というのは、どうやって決まるんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に定義があります。「『通則23』に規定する対象診療科とは当該加算を算定するものとして、地方厚生(支)局長に届出を行っている診療科をいう」とされています。つまり、届出をした診療科だけが対象診療科になり、その診療科に所属する医師が対象手術を行った場合に算定候補になる、という順番です。
みらい(新人医療事務)
手術ならなんでもいいわけではないんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。「長時間かつ高難度な手術」は、厚生労働省が医科点数表の区分番号(Kコード)で個別に指定しています。当サイトが収録している一次資料の範囲では、区分番号K522-3、K524などから始まる一連の手術が該当手術として列挙されています。具体的にどの手術が対象になるかは、届出を行う診療科ごとに一次資料(医科点数表・留意事項通知)で個別に確認する必要があります。
対象手術は個別列挙・自己判断で広げない
「長時間かつ高難度な手術」に当たるかどうかは、厚生労働省が区分番号で個別に指定した手術に限られます。似たような大がかりな手術だからといって、自院の判断で対象を広げることはできません。必ず一次資料の該当区分番号と照らし合わせて確認が必要です。
対象医療機関・対象診療科
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関にも条件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。まず、施設基準に適合しているとして地方厚生局長等に届出を行った保険医療機関であることが前提です。その上で、対象診療科として届出を行っている必要があります。厚生労働省の疑義解釈では、次のように整理されています。「外科医療確保特別加算を算定する診療科については、地域医療体制確保加算2の2の(3)に規定する特定診療科であることとあるが、地域医療体制確保加算2を届出ている必要があるか」という問いに対し、「原則として地域医療体制確保加算2を届け出ている必要がある」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
「原則として」ということは、例外もあるんですか?
あおい(元・医療事務)
あります。同じ疑義解釈にこう続きます。「特定機能病院において、地域医療体制確保加算の施設基準通知の1の(3)及び(4)に規定する病院勤務医の負担軽減・処遇改善等に資する体制に係る基準並びに2の(3)及び(4)に規定する特定診療科に係る基準を満たす場合には、地域医療体制確保加算2を届け出ていなくても、『地域医療体制確保加算2の2の(3)に規定する特定診療科である』の要件を満たすこととする」とされています。特定機能病院かどうかで扱いが変わる、確認が必要なポイントです。
みらい(新人医療事務)
地域医療体制確保加算 や 急性期総合体制加算 を先に届け出ているかどうかが関わってくるんですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。外科医療確保特別加算は単独で完結する加算ではなく、これらの加算の届出状況とセットで確認する必要がある加算、と捉えておくとわかりやすいと思います。
関連する加算の届出状況を先に確認
外科医療確保特別加算の対象診療科要件は、地域医療体制確保加算2(原則)または特定機能病院としての基準充足(例外)とつながっています。まず自院がどちらのルートに当てはまるかを確認してから、外科医療確保特別加算の届出可否を検討するとスムーズです。
点数の考え方(加算率100分の15)
みらい(新人医療事務)
点数の考え方をもう一度整理してもらえますか?
あおい(元・医療事務)
表にまとめました。
| 項目 | 内容(令和8年度) |
|---|---|
| 加算の形式 | 固定点数ではなく、対象手術の所定点数に対する加算率 |
| 加算率 | 対象手術の所定点数の100分の15(15%) |
| 算定単位 | 対象手術を実施するごと(手術1件ごとに加算) |
| 新設時期 | 令和8年6月1日(令和8年度診療報酬改定で新設) |
| 届出書様式 | 様式87の67(外科医療確保特別加算の施設基準に係る届出書添付書類) |
みらい(新人医療事務)
「対象手術を実施するごと」というのは、月1回とかの制限ではないんですね。
あおい(元・医療事務)
はい、生活習慣病管理料のような月1回の管理料とは違い、対象診療科の医師が対象手術を実施したそのつど、当該手術の所定点数に15%を加算する形です。件数の制限そのものは算定のたびにあるわけではありませんが、施設基準として年間の実施件数の要件があります。次で説明しますね。
施設基準(年間200例以上の実施)
みらい(新人医療事務)
施設基準にはどんな数字の要件があるんですか?
あおい(元・医療事務)
厚生労働省の疑義解釈にはっきり書かれています。「外科医療確保特別加算の施設基準において、『医科点数表第2章第10部に掲げる長時間かつ高難度な手術(中略)を合わせて年間200例以上実施していること』とされているが、当該要件は、外科医療確保特別加算の算定に係る届出を行った特定診療科において、当該対象手術を合算して年間200例以上実施していることを指すものか」という問いに対して、「そのとおり」と回答されています。
みらい(新人医療事務)
200例というのは、届出をした診療科全体で合算した数字ということですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。特定の1つの手技だけで200例というわけではなく、対象手術をまとめて合算して年間200例以上、という基準です。実施件数の判定期間についても定めがあります。届出関連の通知では、「外科医療確保特別加算及び内視鏡手術用支援機器加算に係る年間実績件数」について、「1月から12月までの1年間の実績をもって施設基準の適合性を判断し、当該要件及び他の要件を満たしている場合は、翌年の4月1日から翌々年の3月末まで所定点数を算定できるものとする」とされ、新規届出の場合は「届出前12月の実績をもって施設基準の適合性を判断」するとされています。
みらい(新人医療事務)
実績の集計期間がずれると、判定の基準もややこしそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。既存の実績で届け出るのか、新規届出として届出前12か月の実績で判定するのかによって、必要な実績期間の区切り方が変わります。ここは自院の届出時期に照らして個別に確認が必要なところです。
年間200例は「届出診療科の合算」
年間200例以上という施設基準は、外科医療確保特別加算の届出を行った特定診療科において、対象手術を合算して判定します。1人の医師や1つの手技だけの実施件数で判断するものではなく、実績期間の区切り方(既存実績か新規届出前12か月か)によっても確認すべき数字が変わるため、慎重な確認が必要です。
届出の進め方
みらい(新人医療事務)
届出はどんな書類を出すことになるんですか?
あおい(元・医療事務)
施設基準に係る届出書添付書類として、様式87の67が定められています。厚生労働省の通知には、「様式87の67 外科医療確保特別加算の施設基準に係る届出書添付書類 1 算定を行う診療科名( )科」とあり、算定を行う診療科名を明記する形式になっています。
みらい(新人医療事務)
医師の情報も書くんですか?
あおい(元・医療事務)
はい。人員配置に関する届出様式の記載上の注意には、「外科医療確保特別加算を届け出る場合には、備考に所属の診療科名を記入すること。また、当該診療科の経験を5年以上有する常勤医師については、備考欄の当該診療科名の前に◎を記入すること」とされています。当該診療科の経験年数が5年以上の常勤医師かどうかを区別して記載する必要がある、という点は見落としやすいポイントです。
みらい(新人医療事務)
対象手術を主に行っている診療科名も書くんでしたっけ?
あおい(元・医療事務)
そうです。届出様式の記載上の注意には「外科医療確保特別加算の対象手術を主として実施する診療科名を全て記載すること」ともあります。加えて、届出を行う年度の前年1年間の対象手術の実施件数の記載や、対象となる全ての診療科において、当該診療科の経験を5年以上有する常勤医師数の合計が6名以上であることも、記載上の注意として示されています。
届出書類は複数の様式にまたがる
外科医療確保特別加算の届出は、様式87の67(施設基準に係る届出書添付書類)だけでなく、人員配置に関する届出様式(常勤医師の経験年数を◎で区別して記載)や、対象手術の実施件数を示す資料など、複数の書類がセットになっています。1枚の様式だけで完結すると思い込まず、関連様式をまとめて確認しておくと安心です。

自院で確認する順番
みらい(新人医療事務)
情報が多くて、どこから確認すればいいか迷ってしまいます。
あおい(元・医療事務)
確認する順番はこの4つです。
自院で確認する順番
- 自院が対象診療科(消化器外科・心臓血管外科・小児外科・循環器内科など医師確保が必要とされる診療科)として、地方厚生(支)局長への届出を予定できるかを確認する
- 地域医療体制確保加算2の届出があるか、または特定機能病院として基準を満たすことで例外要件に当てはまるかを確認する
- 対象診療科において、対象手術(長時間かつ高難度な手術として区分番号で指定されたもの)を合算して年間200例以上実施しているか、実績期間を整理して確認する
- 様式87の67をはじめとする届出書類(診療科名・常勤医師の経験年数・実施件数)を準備し、地方厚生(支)局に相談する
みらい(新人医療事務)
この順番なら、どこが自院で足りていないか整理しやすそうです。
あおい(元・医療事務)
そうですね。特に1と2は前提条件なので、ここが揃っていない場合は、外科医療確保特別加算単独では届出できません。まず土台となる届出の有無を確認するのが近道です。
よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
見落としやすいポイントってどんなところですか?
あおい(元・医療事務)
いくつかあります。
対象手術の範囲を自己解釈で広げてしまう
「長時間かつ高難度」という言葉のイメージだけで対象手術を判断してしまうケースです。実際には区分番号で個別に指定された手術に限られるため、自院で実施している手術がリストに含まれているかを一次資料で確認する必要があります。
地域医療体制確保加算2の届出状況を見落とす
外科医療確保特別加算だけを単独で検討し、前提となる地域医療体制確保加算2(または特定機能病院としての例外要件)の届出状況を確認していないケースです。この加算は単体で完結しないため、関連加算の届出状況とあわせて確認する必要があります。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
この加算、前回の令和6年度改定のときからあったんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。前回改定(令和6年度)にはこの加算そのものが存在せず、令和8年度改定で新設されました。厚生労働省が公表している施設基準届出チェックリストにも、「令和8年6月1日 特掲診療料 新設 外科医療確保特別加算」と明記されています。施行日は令和8年6月1日で、それ以降に対象診療科の医師が対象手術を実施した場合に算定候補となります。
みらい(新人医療事務)
新設ということは、まだ届出をしていない医療機関も多そうですね。
あおい(元・医療事務)
そうかもしれません。新設加算のため、施設基準・届出様式ともに運用が始まったばかりの部分もあります。疑義解釈も複数回にわたって発出されているので、今後も追加の解釈が示される可能性がある点は念頭に置いておくとよいと思います。
新設加算のため疑義解釈の追加に注意
外科医療確保特別加算は令和8年度改定で新設された加算です。施行後も疑義解釈が複数回発出されており、対象手術の範囲や施設基準の運用について今後も解釈が追加・整理される可能性があります。届出前に最新の疑義解釈を確認することをおすすめします。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
診療所でも算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
制度上、対象診療科としての届出があれば診療所も対象になり得ますが、対象手術は長時間かつ高難度な手術として指定された、大がかりな外科手術が中心です。実態としては、こうした手術を実施できる体制を持つ病院での検討が中心になることが多いと考えられます。自院で対象手術を実施しているかどうかがまず出発点です。
みらい(新人医療事務)
対象手術を実施していれば、届出をしなくても自動的に加算されますか?
あおい(元・医療事務)
いいえ、届出は必須です。施設基準に適合しているとして地方厚生局長等に届出を行った保険医療機関で、かつ対象診療科として届出を行っている医師が実施した場合に限られます。届出をしていない場合は算定できません。
みらい(新人医療事務)
年間200例に届いていない場合はどうなりますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準を満たさないことになるため、その時点では届出の対象外の可能性があります。実績期間の区切り方(既存実績か、新規届出前12か月の実績か)によって確認すべき期間が変わるため、地方厚生(支)局への相談も含めて確認することをおすすめします。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。届出状況や体制を入力すると、確認すべきポイントが整理できます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。