臓器移植術加算とは(麻酔の注加算)
みらい(新人医療事務)
「臓器移植術加算」っていう名前を見つけたんですけど、これって手術の加算ですか、それとも麻酔の加算ですか?
あおい(元・医療事務)
麻酔の加算です。L008(声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)という全身麻酔の区分に対する「注」の加算で、令和8年度の点数は15,250点です。
みらい(新人医療事務)
全身麻酔そのものではなく、その上乗せなんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。全身麻酔の所定点数に、この15,250点を追加で加算する形になります。厚生労働省の告示(医科点数表)には「同種臓器移植術(生体を除く。)の麻酔を行った場合は、臓器移植術加算として、15,250点を所定点数に加算する。」と定められています。
みらい(新人医療事務)
「生体を除く」というのが気になります。
あおい(元・医療事務)
大事なポイントです。ここでいう「同種臓器移植術」は、亡くなった方(死体)からの臓器提供を前提にした移植手術を指していて、生きているドナーからの生体移植は、この加算の対象になっていません。生体移植の麻酔だからといって、この加算は算定候補になりません。
対象となる手術・対象医療機関
みらい(新人医療事務)
「対象になる手術」って、具体的にどれなんですか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に、対象となる手術が個別に列挙されています。原文では「臓器移植術加算は、『K514-4』同種死体肺移植術、『K605-2』同種心移植術、『K605-4』同種心肺移植術、『K697-7』同種死体肝移植術、『K709-3』同種死体膵移植術、『K709-5』同種死体膵腎移植術、『K716-6』同種死体小腸移植術又は『K780』同種死体腎移植術が算定できる場合に限り算定する。」とされています。
みらい(新人医療事務)
つまり、この8つの手術のどれかが算定できる場合だけ、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。一覧にすると、こうなります。
| 区分番号 | 手術名 |
|---|---|
| K514-4 | 同種死体肺移植術 |
| K605-2 | 同種心移植術 |
| K605-4 | 同種心肺移植術 |
| K697-7 | 同種死体肝移植術 |
| K709-3 | 同種死体膵移植術 |
| K709-5 | 同種死体膵腎移植術 |
| K716-6 | 同種死体小腸移植術 |
| K780 | 同種死体腎移植術 |
みらい(新人医療事務)
例えばK780の同種死体腎移植術って、手術本体の点数もかなり大きいんですよね?
あおい(元・医療事務)
はい。医科点数表ではK780 同種死体腎移植術は98,770点と定められています。移植手術そのものが高点数の大規模な手術で、その麻酔にこの加算が上乗せされる、という位置づけです。
みらい(新人医療事務)
対象になる医療機関は決まっているんですか?
あおい(元・医療事務)
点数表の分類上は、入院で行われる医療行為として、診療所・病院のどちらでも算定対象に含まれています。ただし外来や在宅では対象になりません。実際にこの8つの対象手術を実施しているかどうかが前提になるので、まずは自院で対象手術の実施実績があるかを確認するところから始めることになります。
点数区分(令和8年度)

みらい(新人医療事務)
図を見ると、L008の全身麻酔に加算が乗っかる形なんですね。
あおい(元・医療事務)
そうです。L008自体の所定点数がいくらになるかは、医科点数表のL008区分で個別に確認する必要があります。臓器移植術加算の15,250点は、そのL008の所定点数に、対象手術の麻酔である場合に追加で乗せる加算です。点数だけを見て「これだけもらえる」と捉えるのではなく、まず対象手術に該当するかどうかを確認する加算だと考えてください。
点数を見る前に確認したいこと
臓器移植術加算は「同種臓器移植術(生体を除く。)」の麻酔に限定されています。生体移植の麻酔では算定候補になりません。まず、行った移植が死体からの提供によるものかどうかを確認してください。
施設基準・届出は必要か
みらい(新人医療事務)
この加算、届出が必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
臓器移植術加算そのものについては、届出は不要とされています。施設基準として個別に定められているものも、今回確認した資料の範囲では見当たりません。
みらい(新人医療事務)
じゃあ、届出は気にしなくていいんですか?
あおい(元・医療事務)
加算自体の届出は不要ですが、前提となるのは対象手術(K514-4やK780など)を実施できる体制です。対象手術そのものの実施体制・施設基準については、今回のこの加算の一次資料には記載がないので、別途、各手術区分の施設基準を確認する必要があります。「届出が不要だから何もしなくていい」ではなく、「対象手術を実際に行える体制かどうか」を確認する加算だと捉えてください。
届出不要=対象外ではない
届出が不要なのは、この加算特有の要件だからです。対象手術(K514-4等)自体の施設基準・実施体制の充足は、別の区分の話として自院で確認が必要です。
算定タイミングと注意点
みらい(新人医療事務)
算定するタイミングって、何か決まりがありますか?
あおい(元・医療事務)
対象手術のための麻酔(L008)を実施した日に、その麻酔の所定点数と合わせて算定する加算です。臓器移植術加算そのものについて、算定日以外の個別の記録要件は、今回確認した一次資料の範囲では見当たりません。
みらい(新人医療事務)
ほかの麻酔の加算と一緒に算定することはあるんですか?
あおい(元・医療事務)
L008には、この臓器移植術加算のほかにも、術中経食道心エコー連続監視加算や神経ブロック併施加算など、複数の注加算が並んで規定されています。臓器移植術加算そのものについて、他の注加算との併算定を明示的に禁止する規定は、今回確認した資料の範囲では見当たりません。ただし、それぞれの注加算には個別の算定要件があるので、あわせて算定する場合は各要件を個別に確認してください。
みらい(新人医療事務)
曖昧なままにしないで、ちゃんと確認したほうがいいんですね。
あおい(元・医療事務)
そうですね。「たぶん大丈夫」で進めず、レセプト担当と麻酔担当科で、対象手術・麻酔記録・生体か死体かの3点をつき合わせるのが確実です。
令和8年度改定での変更点(前回改定からの差分)
みらい(新人医療事務)
前回の改定から、何か変わったんですか?
あおい(元・医療事務)
前回改定(令和6年度)からの主な変更は、今回確認した一次資料の範囲では確認されていません(確認日: 2026年7月)。臓器移植術加算は、対象となる同種臓器移植術(生体を除く。)の麻酔に対する加算として、令和8年度の医科点数表・留意事項通知にも同様の規定で収載されています。
改定差分の確認範囲
今回確認したのは令和8年度の医科点数表(告示)と留意事項通知です。点数・対象手術の範囲について、令和6年度からの変更点は、この資料の範囲では見当たりませんでした。個別の改定経緯まで確認したい場合は、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の資料一式でご確認ください。
自院で確認する順番
自院で確認する順番
- 対象手術(K514-4同種死体肺移植術、K605-2同種心移植術、K605-4同種心肺移植術、K697-7同種死体肝移植術、K709-3同種死体膵移植術、K709-5同種死体膵腎移植術、K716-6同種死体小腸移植術、K780同種死体腎移植術)のいずれかを実施したか確認する
- その麻酔がL008(声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔)で算定されているか確認する
- 移植が生体からのものではなく、死体(脳死・心停止後)からの提供であることを確認する
- ここまで確認できれば、臓器移植術加算は算定候補になります。最終的な判断は自院の記録と公式資料で確認してください

よくある取り漏れ
みらい(新人医療事務)
現場でよくある見落としってありますか?
あおい(元・医療事務)
いちばん多いのは「生体移植か死体移植かの確認漏れ」です。同じ腎移植でも、生体腎移植術(K780-2)は今回の対象一覧に含まれておらず、対象になるのは死体腎移植術(K780)だけです。手術名が似ているので、レセプト担当が区分番号まで見ずに転記してしまうケースがあります。
取り漏れ・誤算定になりやすいポイント
・生体移植(例: 生体腎移植術K780-2)は対象外。対象は「生体を除く」死体からの同種臓器移植術に限られます。 ・対象手術は8つの区分番号(K514-4/K605-2/K605-4/K697-7/K709-3/K709-5/K716-6/K780)に限定されているため、それ以外の移植関連手術では対象になりません。
みらい(新人医療事務)
似た名前の加算と混同することもありそうですね。
あおい(元・医療事務)
移植に関わる加算は複数あります。例えば術中経食道心エコー連続監視加算や術中脳灌流モニタリング加算も、同じL008の注加算として並んで規定されているので、混同しないよう区別して確認してください。また、K780等の手術本体側の加算として移植臓器提供加算もありますが、これは麻酔の加算である臓器移植術加算とは別の区分の加算です。
よくある質問
みらい(新人医療事務)
生体移植の麻酔でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
一次資料では「生体を除く」と明記されているため、生体移植の麻酔は対象になりません。対象外の可能性が高いケースです。
みらい(新人医療事務)
対象の8つの手術以外でも算定できることはありますか?
あおい(元・医療事務)
留意事項通知に列挙された8つの区分番号が算定できる場合に限られると明記されているため、それ以外の手術では算定候補にならないと考えられます。
みらい(新人医療事務)
届出をしていなくても算定候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
臓器移植術加算そのものは届出不要とされています。ただし対象手術自体の実施体制の確認は別途必要になるので、届出の有無だけでなく、対象手術の実施実績もあわせて確認してください。
みらい(新人医療事務)
外来や在宅でも算定できますか?
あおい(元・医療事務)
対象となる同種臓器移植術は入院で行われる手術のため、外来・在宅では対象になりません。
自院が算定候補か確認したい方へ
みらい(新人医療事務)
うちが算定候補になるか、自分でも確認してみたいです!
あおい(元・医療事務)
自院が算定候補になるかは 加算チェッカー で確認できますよ。対象手術の実施実績や麻酔記録の状況を整理しながら、確認すべきポイントを一緒に洗い出せます。
最終確認のお願い
最終的な算定可否は、自院の届出状況・公式資料・審査支払機関の判断でご確認ください。