頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算とは?まず全体像から
みらい(新人医療事務)
あおいさん、レセプトの手術欄で「頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算」という項目を見かけました。名前が長くて、どんな加算なのか見当がつかなくて…。
あおい(元・医療事務)
これは令和8年度(2026年度)の診療報酬改定で新設された、手術に対する加算のひとつです。厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト」でも「令和8年6月1日 特掲診療料 新設」として、「医科点数表第2章第10部手術の通則の9に掲げる頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算」と記載されています。つまり、手術料の「通則9」に位置づけられた比較的新しい加算なんです。
みらい(新人医療事務)
新設なんですね。「センチネルリンパ節生検」というのがまず分からなくて…。
あおい(元・医療事務)
センチネルリンパ節(見張りリンパ節)は、がんが最初に転移するとされるリンパ節のことです。ここに転移がなければ、より広い範囲のリンパ節郭清(切除)を省ける可能性がある、という考え方に基づく検査です。頭頸部(下顎・上顎・唾液腺など)の悪性腫瘍手術で、この検査を放射性同位元素を用いて行った場合に、所定点数へ上乗せするのがこの加算です。
みらい(新人医療事務)
なるほど。手術に付随する上乗せの加算、というイメージですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。単独で算定する検査項目ではなく、対象となる手術の点数に条件を満たしたときに加算する、という形になります。まずは対象手術・点数・要件・届出を順番に確認していきましょう。

点数と根拠条文(令和8年度)
みらい(新人医療事務)
何点の加算になるんですか?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表(告示)では、次のように定められています。
告示(診療報酬点数表 第10部 手術 通則)令和8年度
「当該手術(K463の1及び3並びにK463-2を除く。)について、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において放射性同位元素を用いたセンチネルリンパ節生検を行った場合は、頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算として、3,000点を所定点数に加算する。」
みらい(新人医療事務)
3,000点なんですね。「所定点数に加算」というのは?
あおい(元・医療事務)
対象となる手術そのものの点数に、条件を満たしたときに3,000点を上乗せする、という意味です。手術の区分ごとに基本の点数は異なりますが、この加算はそこへ一律で上乗せする位置づけになります。
みらい(新人医療事務)
条文に「放射性同位元素を用いた」とありますね。
あおい(元・医療事務)
そこは大事なポイントです。この加算の条文では「放射性同位元素を用いたセンチネルリンパ節生検」と明記されています。センチネルリンパ節生検には色素を用いる方法もありますが、この頭頸部の加算については、条文上は放射性同位元素を用いた場合が対象として書かれています。実際に用いた方法が要件に合うかどうかは、実施内容と公式資料で確認しておきたいところです。
対象になるのはどの手術?
みらい(新人医療事務)
「対象手術」というのは、具体的にどの手術なんでしょう?
あおい(元・医療事務)
令和8年度の点数表では、通則の中でK439、K442の2及び3、K455、K458、K463の1及び3並びにK463-2という手術群がまとめて挙げられています。そのうち、このセンチネルリンパ節生検加算については、条文で「K463の1及び3並びにK463-2を除く」とされています。整理すると、次の表のようになります。
| 区分番号 | 手術名 | センチネル生検加算の対象 |
|---|---|---|
| K439 | 下顎骨悪性腫瘍手術 | 対象になり得る |
| K442(2・3) | 上顎骨悪性腫瘍手術(2 切除/3 全摘) | 対象になり得る |
| K455 | 顎下腺悪性腫瘍手術 | 対象になり得る |
| K458 | 耳下腺悪性腫瘍手術 | 対象になり得る |
| K463(1・3)・K463-2 | 甲状腺悪性腫瘍手術 ほか | 対象から除外 |
みらい(新人医療事務)
上顎骨悪性腫瘍手術は「2・3」と限定があるんですね。
あおい(元・医療事務)
はい。K442 上顎骨悪性腫瘍手術には「1 掻爬」「2 切除」「3 全摘」といった区分があり、条文で挙げられているのは「2及び3」です。また、甲状腺の悪性腫瘍手術(K463の1・3、K463-2)は、この加算の対象からは除かれています。どの区分の手術を実施したかで扱いが変わるので、実施した手術の区分番号を最初に確認するのが出発点になります。
どんな場面で算定候補になりますか?
みらい(新人医療事務)
うちで対象手術を行ったら、それだけで加算候補になりますか?
あおい(元・医療事務)
それだけでは判断できないんです。この加算には、算定上いくつかの確認ポイントがあります。厚生労働省の通知(診療報酬点数表に関する事項)でも、通則9の頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算について「以下の要件に留意し算定すること」として、要件が示されています。その最初の要件として、「触診及び画像診断の結果、頸部リンパ節への転移が認められない頭頸部悪性腫瘍」に係る場合、という趣旨の記載があります。
みらい(新人医療事務)
つまり、事前の触診や画像診断で頸部リンパ節への転移が認められないケースが想定されている、ということですね。
あおい(元・医療事務)
そのとおりです。センチネルリンパ節生検は、そもそも「明らかな転移がない段階で、最初に転移するリンパ節を調べる」という考え方の検査なので、この要件は検査の趣旨とも整合しています。要件の全文や細かな運用は改定・訂正で変わることがあるため、必ず最新の公式通知でご確認ください。

届出と施設基準の確認
みらい(新人医療事務)
この加算、届出は必要なんですか?
あおい(元・医療事務)
必要です。条文に「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において」とあるとおり、施設基準を満たしたうえで届出を行っている医療機関で実施した場合が対象です。前述のとおり、施設基準届出チェックリストでも「新設」の届出項目として掲載されています。
みらい(新人医療事務)
施設基準の中身は、この記事で判断できますか?
あおい(元・医療事務)
施設基準を満たしているかどうかは、当サイトで最終判断はできません。実施医師や設備などの具体的な要件は、届出の様式や施設基準の通知に沿って自院で確認していただく必要があります。届出が済んでいない、または施設基準の充足が確認できていない段階では、「算定候補」ではなく「要確認」として扱うのが安全です。
押さえておきたいポイント(令和8年度)
- 令和8年度改定で新設された、手術の通則9に基づく加算
- 点数は3,000点(放射性同位元素を用いたセンチネルリンパ節生検を行った場合)
- 対象手術はK439・K442の2及び3・K455・K458(甲状腺のK463の1・3、K463-2は対象外)
- 触診・画像診断で頸部リンパ節転移が認められない頭頸部悪性腫瘍が想定されている
- 施設基準の充足と地方厚生局長等への届出が前提
似た名前の項目との違い
みらい(新人医療事務)
「頸部郭清術を併せて行った場合」の加算も同じ手術群のところに出てきましたが、これとは別物ですか?
あおい(元・医療事務)
別物です。同じ手術群について、点数表では「区分番号K469に掲げる頸部郭清術を併せて行った場合は、所定点数に片側の場合は4,000点を、両側の場合は6,000点を加算する」という別の加算も定められています。こちらは頸部郭清術を併施したときの加算で、今回のセンチネルリンパ節生検加算(3,000点)とは要件も点数も異なります。名前や条文の位置が近いので、どちらの加算の話をしているのかを取り違えないよう注意しましょう。
みらい(新人医療事務)
手術の「通則」には、こういう上乗せの加算がいくつもあるんですね。
あおい(元・医療事務)
そうなんです。たとえば2以上の手術の50%併施加算やHIV抗体陽性患者の観血的手術加算なども、手術の通則に定められた算定ルール・加算です。それぞれ要件が違うので、混同しないよう一つずつ確認していくのがおすすめです。
令和8年度改定での変更点
みらい(新人医療事務)
この加算は、前の改定にもあったんですか?
あおい(元・医療事務)
いいえ。この頭頸部悪性腫瘍センチネルリンパ節生検加算は、令和8年度(2026年度)改定で新たに設けられた加算です。厚生労働省の施設基準届出チェックリストでも「令和8年6月1日 特掲診療料 新設」と掲載されています。前回改定(令和6年度)時点に同名の加算は確認されていないため、令和8年度から新しく確認が必要になった項目という位置づけになります。
みらい(新人医療事務)
新設ということは、これまで算定してこなかった医療機関でも、今後は確認対象になりますね。
あおい(元・医療事務)
はい。対象となる頭頸部の悪性腫瘍手術を行う可能性がある医療機関では、施設基準・届出・症例の条件を整理しておくと、算定機会の確認に役立つと考えられます。ただし新設項目は運用の解釈が示されることもあるので、疑義解釈などの追加情報にも目を配っておくとよいでしょう。
まず自院で確認したいときは
みらい(新人医療事務)
実際にうちの手術が対象になるか、ざっと確認する方法はありますか?
あおい(元・医療事務)
加算の要件を一つずつ確認したいときは、加算チェッカー/AIに質問できるページ(/ask)を使ってみてください。「どの区分の手術か」「触診・画像診断で頸部リンパ節転移が認められないか」「放射性同位元素を用いたセンチネルリンパ節生検か」「施設基準を満たし届出済みか」といった観点を整理する助けになります。取り漏れの傾向を確認したい場合は、取り漏れシミュレーター(/simulator)もあわせてご利用いただけます。
最終確認のお願い
この記事は令和8年度(2026年度)の厚生労働省の公式資料をもとに、情報を整理してお伝えするものです。点数・対象手術・施設基準・届出などの要件は改定や訂正で変わることがあります。最終的な算定可否は、必ず自院の状況と厚生労働省・支払基金など審査支払機関の最新の公式資料でご確認ください。